暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

夕去りの茶事・・・ハワイへ帰る友を迎えて  その1

2016年07月25日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)
 
   烏瓜をやな籠に

(つづき)                    
7月23日の夕刻、ハワイへ帰る友を迎えて夕去りの茶事をしました。

正客は、ハワイから京都・今日庵へ留学し、1年間の茶の修行を終えられたSさまです。
茶事へお招きしたいと思いながら、やっと帰る間際に御目文字が叶いました。
連客は、日頃親しくご厚誼頂いている、次客Oさま、三客M氏、四客長野新氏(釜師、珠己様に代り・・)、五客Iさま、詰はFさまです。
夕去りを楽しみに来てくださったお客さまは、茶の湯をこよなく愛し、個性と魅力あふれる方々、暁庵も心躍る思いでお待ちしていました。


 京都で表装した七夕のお軸

待合の置床には七夕の絵。
7月7日のひと夜限りではもったいなく、8月7日までの1ヶ月間は七夕の趣向を楽しむことにしています。
ひととせに・・・大好きな七夕の歌を口ずさみつつ。

   ひととせにひと夜と思えど七夕の
        逢いみむ秋の限りなきかな     紀貫之

待合の煙草盆に半東N氏愛蔵の祥瑞詩入筒茶碗を火入として初使いしました。
当日16時待合集合のはずでしたが、板木がなかなか鳴りません・・・。
やっと板木の音が聞こえ、半東N氏が冷えた梅ジュースを古伊万里の汲み出しに入れてお出し、露台の腰掛待合へご案内しました。


祥瑞詩入筒茶碗を火入に初使いです

蹲踞の水を使い、迎付です。
枝折戸を開け、初めてSさまとの顔合わせです。
涼しげな紺色の絽の着物をお召しのSさま、連客の皆様と無言で挨拶を交わし、じーんと胸に迫るものがありました。

茶道口の襖の前に座り、衣擦れの気配を聞きながら席入を待つひと時、
後座の席入の時もそうですが、茶事の中でも心ときめく瞬間です。
これからお客様とどのような茶事が展開されていくのだろうか・・・期待と不安が頭の中で渦巻き、やがて観念し静かに襖を開けました。

  「どうぞ、お入りを」
  「失礼いたします」
いつもの会話ですが、無事にこの日を迎えることが嬉しく、心浮き立つ思いで席中へ入ります。

Sさまはじめお客様一人一人と、ご来庵の喜びを込めて挨拶を交わしました。

本床に膨らんだ蕾のある烏瓜をやな籠に入れました。
夕去りの花は夕方に咲く白い花がベストです。
夕顔、夕化粧(おしろい花)、宵待草(月見草)など、野山を探索し楽しみましたが、意外と家近くに咲いていた烏瓜に決めました。
刻々と移ろいゆく光の中でレースのような繊細な花が次々と咲いてくれることを願いながら・・・。


 翌日の夜に咲いた烏瓜の花
(思うようにいかないものですね・・・)

挨拶が終わり、笹、重硯箱と短冊を持ち出し、七夕に因んでお茶に関する願いごとや、
Sさんへのエールなどを書いて笹へ飾って頂きました。
思い思いに書かれた短冊の詞をご披露したいところなのですが・・・・。


 彦星と織姫を短冊が彩って・・・

      Sさま、また来なはいや!        暁庵
      一日も長く楽しく茶事ができますように・・・     暁庵
 

    夕去りの茶事・・・ハワイへ帰る友を迎えて  その2へつづく   夕去りの茶事支度