烏瓜をやな籠に
(つづき)
7月23日の夕刻、ハワイへ帰る友を迎えて夕去りの茶事をしました。
正客は、ハワイから京都・今日庵へ留学し、1年間の茶の修行を終えられたSさまです。
茶事へお招きしたいと思いながら、やっと帰る間際に御目文字が叶いました。
連客は、日頃親しくご厚誼頂いている、次客Oさま、三客M氏、四客長野新氏(釜師、珠己様に代り・・)、五客Iさま、詰はFさまです。
夕去りを楽しみに来てくださったお客さまは、茶の湯をこよなく愛し、個性と魅力あふれる方々、暁庵も心躍る思いでお待ちしていました。
京都で表装した七夕のお軸
待合の置床には七夕の絵。
7月7日のひと夜限りではもったいなく、8月7日までの1ヶ月間は七夕の趣向を楽しむことにしています。
ひととせに・・・大好きな七夕の歌を口ずさみつつ。
ひととせにひと夜と思えど七夕の
逢いみむ秋の限りなきかな 紀貫之
待合の煙草盆に半東N氏愛蔵の祥瑞詩入筒茶碗を火入として初使いしました。
当日16時待合集合のはずでしたが、板木がなかなか鳴りません・・・。
やっと板木の音が聞こえ、半東N氏が冷えた梅ジュースを古伊万里の汲み出しに入れてお出し、露台の腰掛待合へご案内しました。
祥瑞詩入筒茶碗を火入に初使いです
蹲踞の水を使い、迎付です。
枝折戸を開け、初めてSさまとの顔合わせです。
涼しげな紺色の絽の着物をお召しのSさま、連客の皆様と無言で挨拶を交わし、じーんと胸に迫るものがありました。
茶道口の襖の前に座り、衣擦れの気配を聞きながら席入を待つひと時、
後座の席入の時もそうですが、茶事の中でも心ときめく瞬間です。
これからお客様とどのような茶事が展開されていくのだろうか・・・期待と不安が頭の中で渦巻き、やがて観念し静かに襖を開けました。
「どうぞ、お入りを」
「失礼いたします」
いつもの会話ですが、無事にこの日を迎えることが嬉しく、心浮き立つ思いで席中へ入ります。
Sさまはじめお客様一人一人と、ご来庵の喜びを込めて挨拶を交わしました。
本床に膨らんだ蕾のある烏瓜をやな籠に入れました。
夕去りの花は夕方に咲く白い花がベストです。
夕顔、夕化粧(おしろい花)、宵待草(月見草)など、野山を探索し楽しみましたが、意外と家近くに咲いていた烏瓜に決めました。
刻々と移ろいゆく光の中でレースのような繊細な花が次々と咲いてくれることを願いながら・・・。
翌日の夜に咲いた烏瓜の花
(思うようにいかないものですね・・・)
挨拶が終わり、笹、重硯箱と短冊を持ち出し、七夕に因んでお茶に関する願いごとや、
Sさんへのエールなどを書いて笹へ飾って頂きました。
思い思いに書かれた短冊の詞をご披露したいところなのですが・・・・。
彦星と織姫を短冊が彩って・・・
Sさま、また来なはいや! 暁庵
一日も長く楽しく茶事ができますように・・・ 暁庵
夕去りの茶事・・・ハワイへ帰る友を迎えて その2へつづく 夕去りの茶事支度