暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

炉開きの日に・・2014年11月8日

2014年11月22日 | 稽古忘備録
                  だいぶ紅葉がすすんでいます

2014年11月8日はS先生宅の炉開きでした。
毎年、11月の最初の稽古日に炉開きのお祝いをしてくださいます。

床には「万年松在祝」、江雪和尚筆が掛けられ、
濃い紫の飾り紐で真行草に結ばれた茶壺が飾られています。
存在感溢れる茶壺は瀬戸の祖母懐(そぼがい)、鵬雲斎大宗匠により銘「香楽」です。
お軸と茶壺に再会すると、今年も炉開きへ参加できた喜びがこみあげてきました。

              

床柱の花入には白玉椿とハシバミが生けられていました。
竹花入は箆筒(へらつつ)写、職人が使う箆差しの形をしています。
本歌は四代仙叟の好みで、ごま竹の箆筒だそうです。
あとで「古宗室好 箆ら津々 碩叟(淡々斎)」の箱書きを拝見しました。

書院に置かれた優雅な「板文庫」に惹かれました。
料紙筥と硯箱を兼ねた文具で、文挟み板のような板に紐を通して、
上に料紙、硯をのせて紐で結び、書院などに飾ります。
手に取って拝見させて頂きましたが、料紙にさらさらと和歌を書くのでしょうか。
利斎作、蒔絵の硯箱は三代宗哲、文庫結びのひもかざりは友湖です。

              
                        珍しい板文庫              

ご挨拶の後、Kさんの台子の初炭手前から始まりました。
風炉から炉へ変わり、炉の設えが新鮮です。
淡々斎好の松唐草蒔絵の炉縁が炉開きの釜を華やかに惹き立てています。
釜は古芦屋の常張釜(上張釜とも)、胴に文字の鋳込みがありました。
釜の上に板状に突き出て、外側に張っている鐶付にびっくりです。
この珍しい鐶付は常張鐶付といい、唐犬釜や九輪釜にも使われているそうです。

常張鐶付なので、鐶も初めて見る常張鐶(掻立鐶とも)でした。
先生が手品師のように鮮やかに片方だけを返し、使い方をご指導頂きましたが、
何回も練習しないとかっこよく出来そうもありません。
釜が上げられ、炉中の様子、湿し灰の撒き方を実際に見せてくださったり、
炉開きの日の稽古は、道具や設えと言い、所作と言い、覚えることばかりで
頭がくらくらするほど満杯でした・・・。

             

初炭が終わると、湯が湧く間に大好物のぜんざいを頂きました。
先生と奥様の手づくりの粟ぜんざいは程よい甘さで、もう美味しく頂戴しました。
さて、炉開きの一番の楽しみな濃茶となりました。
いつも先生が濃茶点前をし、点ててくださいます。

先生の足運び、姿勢良い点前、流れるような所作、皆、息を呑んでみつめます。
ぷう~んと茶香が漂い、一碗目の濃茶が古帛紗を添えて出されました。
Tさんが茶碗を取り込み、一同総礼をし、次々と三服点てられた濃茶を頂きました。
丁寧に練られた濃茶は香り好く、まろやかな甘みが口の中でとろけるようです。
たしか「炉開き用の濃茶」で小山園だったような?
私は桜高台の古萩で頂戴し、古帛紗は淡々斎好みの七宝雪月花金襴です。

濃茶の後は、Yさんと私が台子薄茶点前のお稽古を兼ねて薄茶をお点てしました。
薄茶を頂きながら、炉開きのために準備してくださった、台子や道具組のお話を
愉しく伺いながら、先生のお心入れを一入感じ、一同幸せなひと時でした。
心の中でいつまでもこの時間が続いてほしい・・・と思いました。

午後も、行之行台子、台子の平花月とびっしりお稽古が続き、充実した一日でした。
先生宅へ伺う炉開きも最後かしら・・・寂しいより残念です。