暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

炉開きの茶事-1  壺荘と献上かざり

2014年11月18日 | 思い出の茶事  京都編
                高松市・玉藻城の菊花展にて

11月に突入した途端、行事や旅行が続きました。
どれも得難い経験なので、ゆっくり書いていきます・・・。

              
              紅葉が見ごろです・・・鷹峯・常照寺にて(6日撮影)

11月2日(日)炉開きの茶事へ招かれました。

10月31日、11月1日と前日まで灑雪庵・名残りの茶会があり、
正直、かなり疲れていましたし、片づけもまだ終わっていません。
でも、Mさまからのお招きが「一人亭主で2日間頑張ったご褒美」のように思われ、
茶友Yさま、Nさまと待ち合わせ、いそいそと出かけたのでした。

待合掛けは「千里同風」。
後日(14日)、茶道資料館「茶の湯の名椀」展で、
無爾可宣(むにかせん)から南浦紹明(なんぽしょうみょう)へ送られた
「送別の偈」に「千里同風」の一句を見出し、やっと待合掛けの意味を悟った次第です。

席入すると、床に「好日」のお軸と網袋に入れられた茶壺が飾られていました。
「好日」は谷耕月和尚筆、鵬雲斎大宗匠参禅の師のお一人だそうです。
半年ぶりに対面する炉のなんと温かく、なんと釜が大きく魅力的なことか。
炉縁は高台寺蒔絵、炉開きにふさわしい華やかさです。

              

ご挨拶で、ご亭主から
「横浜へ帰る前にと思い、何とか今日の茶事に漕ぎ着くことができました・・・」
と伺い、私のことを忘れずに覚えていてくださって・・・胸が熱くなりました。
さらに床に飾られた壺を見て、とても嬉しくドキドキしながら
「ご都合により、お壺の拝見をお願いします(3年ぶりかも・・・)」

銹朱色の網袋が外され、口紐が取られ、口覆が置かれました。
ご亭主が正面を確かめられた頃に
「お口覆ともにお壺の拝見を」と声を掛けました。

右から左へ転がしながら拝見すると、小振りですが形佳く、
黒、茶、焦げ茶、薄茶、青など網目のように交じり合った釉薬が複雑な景色を生み出し、
うっとりしながら二度も転がしました。
地元兵庫県の立杭焼(たちくいやき)、母上の代から使われていた壺だとか。
口覆は角倉金襴、これも大好きな裂地でした。

              
                  後座の紐飾

壺が水屋へ引かれ、いよいよ炉の初炭手前です。
新瓢の炭斗が運び出されました。
古色あふれる釜は富士形だそうですが、かなりの大釜で鐶付は遠山、
なまず肌が好い味わいを醸し出しています。
作は大西浄久、二代大西浄清の弟で、浄清に次ぐ名手とされています。
また釜蓋は、逆さ瓢のつまみ、座は桔梗、古色の中に雅な造りでした。

炉中を拝見すると、石の炉壇が珍しく、五徳は大釜を支えるのに頼もしい猫爪です。
そして、丹精の灰に菊炭が3本、半年ぶりの炉中の風情を味わっていると、
湿し灰が撒かれ、炭が置かれ、炉の季節到来の幸せを実感しました。
香合の持ち出しが無かったので、どんな趣向かしら?と楽しみです。

「お香を用意させて頂きました」
香盆が運び出され、香所望です。
次客Yさまにお願いし、ご亭主も同席して頂き、香炉が廻わされました。
やさしく確かな伽羅の香りに心が和み、一つとなるような充実したひと時・・・。
母上から受け接いだという香木は伽羅(薫玉堂)、香銘は「千代の峯」です。

そして次は「もうびっくり!」の懐石でした。 


        炉開きの茶事-2 壺荘と献上かざり へつづく