暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

歌舞伎  京鹿子娘道成寺

2010年02月05日 | 歌舞伎・能など
歌舞伎座さよなら公演という副題につられて
11月の「仮名手本忠臣蔵」に次いで
1月「壽 初春大歌舞伎」夜の部へ出かけました。

我家のパターンは、11月顔見世から見始め、正月公演まで見ると
軍資金が尽きて疎遠となり、11月頃にまた目覚めて・・・
なので、今回が現歌舞伎座の見納めかもしれません。
そう思うと、見るもの触れるもの全て名残り惜しく感じられます。

一番期待の演目は、「京鹿子娘道成寺」で
中村勘三郎が白拍子花子を踊りました。
金の烏帽子をつけて奉納の舞を格調高く舞い、
手ぬぐい、振り出し笠、鼓、鈴太鼓などの小道具を
変えて娘の恋心を踊ります。

「恋の分里 武士も道具を 伏せ編み笠で
 張りと意気地の吉原  チントテチン チントテチン」

歌詞も意味もわからず口伝えに覚えた踊りの曲が次々に唄われ、
亡き母に日舞を習った幼き日を思い出しながら、
気持ちだけ勘三郎と一緒に踊っていました。

勘三郎の娘ぶりはかわいらしく、所作に上品な色気があり、
役者の命を吹き込んだ踊りに惹きこまれていきました。

小道具とともに衣装が替わり、娘道成寺の見所の一つです。
特に「引き抜き」という早替わりはいつもワクワクします。

後見役が踊りの振りに合わせ、左へ体をねじって左袖、
右へねじって右袖、裾という具合に踊りながらしつけ糸を抜いていきます。
それから上半身、下半身の着物を同時にひっぱって一気に脱がします。

踊り手と後見役の息がぴったり合わないとうまくいかないそうですが、
さすが、一瞬にして「引き抜き」成功。
鮮やかな衣装に早変わり、大拍手です!         

実は、白拍子花子は清姫の怨霊で、次第に本性を現し、
鐘の中へ入り蛇体に化身します。
市川団十郎扮する大館左馬五郎が大きな青竹を持って登場し、
青竹で怨霊を押し戻したところで、幕になります。

青竹は「破邪」といって悪霊を退散させる力があると
信じられていたのです。
歌舞伎から当時の民間信仰を知るのも興味深いことです。