暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

令和6年の初釜は耕雲亭にて・・・(6)終章・おたより

2024年02月02日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

    (紅梅が満開になりました・・・散歩道にて)

       (我が家の蝋梅の木にメジロが訪問中です)

 

つづき)

ブログに書き始めたら思いがけず長くなってしまいました。

最後にゲストのKYさまとHYさまから頂いたおたよりを初釜の思い出に掲載させていただきます。よろしかったらご一読くださると嬉しいです・・・。  

 KYさま

暁庵さま

今日は一段と寒い1日でしたね。お疲れがでてらっしゃらないかと案じております。

日曜日は素晴らしい初釜にお招きいただき、ありがとうございました。

ふたつの社中の皆さまの真心のこもった茶事に、年の初めから背筋が伸び、また今年もお茶と共にありたいという気持ちが強くなりました。

N先生のお席は、お若い方が多く、フレッシュな緊張感がありながらも、N先生、また共に教えてらっしゃるS先生のチャーミングなお人柄に心地よく身を委ねながらの楽しいお席でした。2人の良き師に恵まれ、きっと社中の皆さまはお茶の学びが楽しいに違いないと思わせる、あたたかさがありました。いつまでも初心を忘れてはいけないと、あらためて感じることができました。お干菓子のお味もよく、知っている菓子店の物でしたが、再発見しました。

暁庵先生のお席は、濃茶席にふさわしい凛とした空気が流れる中、指先まで美しい丁寧に時間をかけた点前と、深く薫る茶の香の中で、年の初めに体感する贅沢なひとときを堪能させていただきました。竹の花入も初めて見るもの、其々の茶碗も興味深いものばかりで眼福でした。

自分もいつか、このように亭主を務められるよう、これからも茶の世界に身を置いていきたいという思いが強くなりました。ありがとうございます。

主菓子の出し方も大変美しく華があり、勉強になりました。もちもちとした柔らかな花びら餅は中にも工夫があり、ご馳走でした。

そして「源氏香」の昼食も、新年の寿ぎあふれる、目にも舌にも嬉しいものでした。さすがはYさま!

はじめましての正客Rさまも、とても気立の良い方で、場を上手に盛り上げてくださり、お目にかかれたことを嬉しく思っております。温かなお人柄にすっかりファンになりました。これからもご一緒できる機会があれば嬉しいです。

本当に茶の道と、またその場で交わる人々との時間が、自分にとって大切なものであるという認識を深めることができました。あらためまして感謝でいっぱいです。

ただ、自分の不注意から、皆さまにご迷惑ご心配をおかけしたことだけが心残りです。

本年も何卒よろしくお願い申し上げます。    KYより

 

 

     (耕雲亭の小間・・・内部の造りや材が素晴らしいそうです)

 HYさま

拝啓 

北国でも稀に見る大雪という便りを聞き寒さが殊の外厳しいこの頃でございます。

先日はお招きを賜りまして誠にありがとうございました。

耕雲亭でも初釜に参加させて頂けるという幸運に感謝申し上げます。

東京日本橋のホテル内部とは思えない露地から始まり、本格的な内部の造りに感銘を受け、手がけた数寄屋大工の細部へのこだわりに心躍り大変勉強になりました。(注:HYさまは一級建築士、数寄屋建築を手掛けています・・・)

炭手前も美しく各自への濃茶も大変美味しくお正客様の問答も大変立派でした 又、お道具も素晴らしくありがたく拝見しました。一座建立のとても楽しいひと時でした。

濃茶席のみならず薄茶席でのN先生のお話は楽しく、室礼も新年に相応しく素敵でした。

源氏香での昼食では同席されたRさまよりゲストの方々へ「茶道への糸口」をお尋ねになり、内容がとても興味深く心に残りました。先輩YKさまとご一緒できましたのも大変心強く嬉しくご配慮に感謝申し上げます

暁庵先生のお言葉の中で他力本願とおっしゃっていましたが、このご縁も自分自身ではありえないものと感じております。この有意義な機会をお与えくださり、心から御礼申し上げます。

誠にありがとうございました。

お疲れのことと存じます。くれぐれもご自愛くださいませ。 かしこ   HYより

 

「ふっ~」  やっとが終わりました・・・長期間、読んでくださりありがとうございます!

 

 令和6の初釜は耕雲亭にて・・・(1)へ (2)へ (3)へ (4)へ (5)へ

 

 


令和6年の初釜は耕雲亭にて・・・(5)濃茶第4席へ

2024年01月31日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

    

つづき)

濃茶・第4席へ席入りしました。最終のお席です。

正客はN先生、N先生社中の方3人、詰が暁庵の5人でした。この席のお点前さんはY氏、「源氏香」のチーフでもあり、今回の初釜の功労者でもあります。耕雲亭の茶会に慣れていない暁庵をサポートして八面六臂の活躍をしてくださいました。

「あと2人は入れるので、「源氏香」の方をお招きしてはいかがかしら?」

「えっ!よろしいんですか?」

「なかなか耕雲亭の茶席へ入ることはないと思うので、良い経験になるのではないかしら」と私。それに「源氏香」の方たちが茶道を習い始めたことをうかがっていたのでした。

「源氏香」のお二人に五客と六客に入ってもらい、客7人となりました。

「あらっ!噺家さんかしら?」と思わせるM氏のユーモラスなご挨拶の後、主菓子が運ばれ、臨時参加のお二人へは懐紙が運ばれ、何があっても動じない後見や水屋の働きぶりが頼もしかったです。

濃茶点前が始まり、濃茶独特の緊張感が漂う中、一同が静かにY氏のお点前を見つめています。Y氏はいつものように姿勢よく帛紗をさばき、茶入を清め、茶杓を清めていきます。茶杓を茶入に置く手が少し震えました・・・。

考えてみれば無理もありません・・・入門コースでご指導頂いたN先生と同期生3人、「源氏香」の同僚2人、そして暁庵の7人が一斉にお点前を見つめているのですから、きっとプレッシャーがもの凄かったことでしょう。

すると、すかさずN先生が御軸について後見Iさんにお尋ねになり、座の緊張がほうっ~とほどけていきました。流石!N先生、Y氏もさぞや安堵したことでしょう。

茶筅通しをし、濃茶2碗(黒楽と高麗茶碗)を心を込めて練ってくださいました。

「とても美味しゅうございます」とN先生。濃茶は「延年の昔」(星野園詰)です。

 

 

お客さまは濃茶席が初めての方が多く、きっと緊張していたと思いますが、後見Iさんが御軸を始め各服点の茶碗、茶入と仕覆、茶杓、茶室の材のことなどを分かり易くお話しくださって興味深かったです。

改めて暁庵も、床の御軸「聴松」から松に降り積もる雪の音が聴こえてきたり、藪椿を生けた竹尺八のモダンな景色に魅せられたり、台目席の中柱(椿だそうです)に見惚れたり、濃茶席をいろいろ楽しみました。

 

  (モダンな景色の竹尺八・・・光悦寺古竹)

こうして和やかなうちに第4席が終了し安堵しました。

・・・ところが、第4席が終わってから、庭に面した障子の隙間から「源氏香」のお二人が上司であるY氏のお点前を拝見していたことを知りました。

そのことを伺った途端、詰めて頂いてもそのお二人に濃茶席へ入ってもらえばよかった・・・と後悔しました。一方で、お茶に対する熱意がヒシヒシと感じられ嬉しかったです。

 

  

ロイヤルパークホテルの耕雲亭で行われた令和6年の初釜はこうして無事に終わりました。

本当に楽しく初々しい(?)初釜になり、参席の皆さまに心から感謝申し上げます。

ありがとうございました!   (まだ続きます

 

 令和6の初釜は耕雲亭にて・・(6)終章・おたよりへ (1)へ (2)へ (3)へ (4)へ

 

 


令和6年の初釜は耕雲亭にて・・・(4)午後の薄茶・第3席へ

2024年01月30日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

       (露地を通って薄茶席へ向かうお客さま)

つづき)

「源氏香」で会食後、午後の薄茶・第3席と濃茶・第4席に参席しました。

腰掛待合で連客を待っていましたが、なかなか現われません(午後の最初の席だったので水屋が忙しかったことでしょう・・・)。

濃茶・第3席は既に始まっていて、Iさんのご挨拶、M氏の後炭手前、KRさんの濃茶点前、後見はIさん、半東&水屋はY氏とM氏です。きっとみんなで力を合わせておもてなししていることでしょう・・・(写真だけ記念に掲載します)

 

      (濃茶・第3席の席中です)

      (M氏の後炭手前が始まりました)

    (KRさんの濃茶点前です)

      (大活躍の腰掛待合)

間もなく腰掛待合へN先生と社中の方がいらっしゃって、蹲を使い薄茶・台3席へ席入りしました。

広間は六畳、京畳のせいかとても広々と感じられます。

 

 

床には「和 生萬福」の御軸、鵬雲斎大宗匠の御筆です。

令和6年のお題は「和」だそうで、和敬、調和、平和、唱和・・いろいろな「和」が頭を過ります。

初釜にふさわしく見事なしだれ柳が飾られ、竹筒に白い椿の蕾が一輪生けられていました。その一輪がしだれ柳と調和して好ましく、シンプルで素晴らしい演出・・・と感嘆しました。

あとで椿は「加茂本阿弥」と伺いました。香合は仁清写しのブリブリ香合です。

 

 

点前座に進むと、火相も湯相も素晴らしく、大ぶりの釜に惹きつけられました。芦屋の写しだそうで梅と竹の地紋があり、湯気を上げている存在感に圧倒されました。この釜の湯で薄茶を頂く幸せを感じます。

     (芦屋釜写しと桐文蒔絵の炉縁)

琵琶床には松飾りが置かれ、しだれ柳と共にお正月らしい雰囲気が漂います。琵琶床前の竹寿棚(鵬雲斎お好み)と、ひさご形の染付祥瑞の水指が空間を引き締めていて素敵でした。棗は蓋に2人の童子が遊んでいる蒔絵が珍しい大平棗です。

後見はS先生、3年前にN先生と一緒に耕雲亭で裏千家流初心者コースを担当された方で、今もご一緒にご指導されているそうです。

ご挨拶を交わし、運ばれてきた干菓子を頂戴しました。お点前が始まりましたが、きっと緊張されているだろうと思い、御軸やしだれ柳の花のことなどをお尋ねしました。

松と梅(・・・だったと思う)の干菓子がとても美味しく、千歳船橋の「東宮」製でした。その後に頂戴した薄茶のなんと!美味しかったことか・・・大輪の菊が描かれた茶碗で熱く、たっぷりと、ゆっくり頂戴しました。

思わず「とっても美味しいです!」とお伝えすると、お点前さんはホッと嬉しそう、私も嬉しくなりました。

次々と薄茶が華やかな茶碗に点てられて運び出されました。

ここで反省・・・私も濃茶・第2席のRさまみたいに連客のN先生の社中の方に感想などをお尋ねしたかったのですが、皆さま、干菓子とお茶を飲んで幸せそうなご様子だったので・・・。

こうして、薄茶・第3席が終わり、腰掛待合へ戻り、濃茶・第4席への席入りを待ちました。

正客はN先生と交代です。水屋の様子を見にいらしている間に腰掛待合で社中の方とお話ししていると、

「今日の茶会へ参加して、稽古をする意味が初めてわかりました」

その言葉がとても嬉しく、「これからも茶会や茶事で素敵なおもてなしが出来るよう、お稽古を頑張って下さいネ!」と心からエールを送りました。  つづく)

 

  令和6年の初釜は耕雲亭にて・・・(5)へつづく (6)終章・おたよりへ  (1)へ  (2)へ    (3)へ

 

 


令和6年の初釜は耕雲亭にて・・・(3)濃茶・第2席

2024年01月29日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

    (池の向う側に「源氏香」(和食レストラン)があります)

    (令和6年をお祝いしてお屠蘇で乾杯)

 

つづき)

濃茶第2席のお客さまは6名様、正客Rさま、次客から五客様まではN先生社中のSさま、Yさま、Oさま、Mさま、詰はKYさまです。

N先生社中の方は茶会デビューとのことで、ゲストのRさまとKYさまに正客と詰をお願いしました。

第2席は炭手前はなく、主菓子の運び出しから始まり、お点前は第1席に続いてT氏、後見はAYさん、水屋はKTさんと暁庵です。

 (台目席・・・水指は萩菱形、茶入は瀬戸・正木手)

御正客Rさまはアメリカ人ですが、茶の湯に魅せられて日本に住むこと二十数年、日々茶の湯の研鑽に励んでいる方です。茶道への熱い思いは半端ではなく、暁庵が心から尊敬するお茶人さんでもあります。

詰のKYさまは昨年の立礼の茶事で懐石を担当してくださった方で、江戸千家流をお習いしています。直前のアクシデントを乗り越えて参席してくださり、涙が出るほど嬉しかったです。

T氏が濃茶を2碗練り、水屋から詰KYさまへ持ち出しした頃に暁庵は茶席へ入り、ご挨拶しました。実は打ち合わせでは最初にご挨拶の予定でしたが、何かに取り紛れて忘れてしまったのです・・・トホホ。

席へ入ると、T氏が茶入、茶杓を清めて拝見に出すところでした。

折しも御正客Rさまが連客の皆さまに感想をお尋ねしているところでして、Rさまらしい・・・と思いました。

「初めての茶会でどれもこれも珍しく緊張して言葉もありません・・・でもご亭主が茶碗に濃茶を入れた時に好い薫りが部屋を満たしていったのが印象に残りました」

「お濃茶が良く練れていて美味しく飲みやすかったです・・・」

すらすら感想を述べられた訳ではなく、そんなことを聞かれてびっくりしたのでしょうか? お顔が少しこわばっている方もいらして、何とか緊張をほぐして差し上げたい、茶席を愉しんでもらいたい・・・とRさまと私。

暁庵にはそんなお客さまたちが初々しく羨ましく、今日の薄茶席でのおもてなしや濃茶席のお客さまの経験はこれから茶道をしていく上できっと良い経験になることでしょう。これからの成長ぶりが楽しみに思いました。

 

茶入、茶杓、仕覆が拝見に回り、後見のAYさんが茶入についてお話しています。

茶入は瀬戸・正木手、昨年東京美術倶楽部で出逢った茶入で今回が初使いです。

本歌の「正木」は中興名物で根津美術館に収蔵されています。

赤褐色の釉と黄釉が片身代わりにかかっているのを正木のかづらの黄葉紅葉に見立てて、「古今集」と「新古今集」に記載されている2首の和歌から小堀遠州が「正木」と命名しました。

   み山には 霰降るらし外山(とやま)なる

         正木のかづら色づきにけり      古今集

 

   神無月 時雨降るらし佐保山の

        正木のかづら色まさりゆく      新古今集

 

暁庵の瀬戸の「正木手」は表千家流十二代即中斎の御銘で「松ノ緑」です。

肩衝ですが小ぶりにゆえに引き締まった印象で、褐色と黒色の釉薬が入り混じる中にまさに「正木」を思わせる黄釉薬が一筋景色をなしていて、美しく個性的です。

3つの仕覆があり、初釜では辰年をお祝いする意味で「丸龍金襴」の仕覆を選びました。

茶杓は煤竹、紫野 隋応戒仙(雪山)師の御銘で「雲錦」です。茶杓には湧き上がる雲の様な景色があり、「今は冬だけれど、やがて春、夏、秋と季節がめぐってくることでしょう・・・時の流れの中にそれらを待ちわびて慈しむ心」を感じてもらえれば幸いです。

 

これにて午前の部を終わり、池をはさんで向かい側にある和食レストラン「源氏香」で一同揃って新年の祝杯を上げ、「源氏香」心尽くしの会食を楽しみました。 つづく)

 

 

 

令和6年の初釜は耕雲亭にて・・・(4)へつづく (1)へ  (2)へ  (5)へ  

(6)終章・おたよりへ

 

 


令和6年の初釜は耕雲亭にて・・・(2)水屋と濃茶・第1席

2024年01月23日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

    (御軸は「聴松」、紫野大亀師の御筆です)

 

つづき)

令和6年1月14日の朝、KTさんと待ち合わせて東京駅へ向かい8時20分に到着。タクシーでロイヤルパークホテルへ向かいました。8時50分に支度担当の5人が耕雲亭に集合し、9時45分席入りの第1席に間に合うように各担当に別れて準備を進めます。水屋は十分な広さですが、薄茶席のN先生社中もいて5人に留めて正解でした。

先ずはお湯、Y氏が湯が入ったポット2つと大きな薬缶をすでに準備しています。

耕雲亭は炉が使えるので(嬉しい!)炉と炭の準備はM氏が担当です。炉中を整え、下火を入れ、薄茶席の炉の準備、2つの釜をかけるまでお任せしました。

床の御軸、花をいけるなど濃茶席の設えはT氏の担当です。

AYさんは抹茶を篩って茶入と棗に入れ、茶巾、茶筅など点前の準備をしています。午前の濃茶2席はAYさん、午後の2席はIさんが案内と後見を担当するので二人で何やら打ち合わせ(?)をしているみたい・・・。

   (後見役のお二人が熱心に打ち合わせ中みたいです)

KTさんと暁庵は茶碗を洗って並べたり、菓子の準備、KTさんは初炭手前をするのでその準備をしています。

T氏から「先生、花を見てください」と声が掛かりました。T氏お持ち出しの竹尺八に枝ものと紅い椿の蕾がいけられています。「お正月だから松を入れた方が良いでしょうか?」

松を入れてみましたが、無い方が良いと意見が一致しました。今年は椿の花付きが今一つなので大変だったのでは・・・と思っていると、「正月から家の椿が間に合うかどうか気をもみました」とT氏。何とか初釜に間に合ってT氏と椿に感謝です。

 

   (花はマンサクと藪椿、竹尺八は池田瓢阿作)

 

仕上げに掃除機をかけ・・・こうして約40分で準備が整い、9時45分頃にAYさんが腰掛待合のお客さまを濃茶席へご案内しました。

お客さま(正客:社中Iさま、次客:社中M氏、三客:YKさま、四客:HYさま、五客:社中Y氏、詰:社中KYさま)が席入りをすると、最初に暁庵が新年のご挨拶をし、次いでKTさんの初炭手前が始まりました。

(釜は鵬雲斎好みの涛声釜(十三代宮崎寒雉造)、炉縁は本栗(村瀬治兵衛造))

釜、炉縁、炭斗と灰器は耕雲亭の常什のもので、その他の炭道具は持ち込みです。

香合はブリブリ香合、高砂(翁と媼)や松竹梅の蒔絵が目出度く新年にふさわしいと選びました。宇和島市在住の裏千家流のK先輩から頂戴したもので、K先輩も喜んでいらっしゃることでしょう。

香は坐忘斎好みの「松涛」(松栄堂)です。

 

 (仕付け棚に莊られたブリブリ香合と羽箒)

初炭が終わり、濃茶点前が始まる前に主菓子の花びら餅(横浜市旭区の石井製)をお出ししました。お正客さまは縁高、五人の連客さまは菊蒔絵の蓋物です。すぐに召し上がっていただきましたが、暁庵は水屋で冷や汗をかいていました・・・。冷凍庫から朝6時に出したのですが、その日はとても寒く、なかなか常温に戻らなかったようなのです・・・気が付くのが遅くって汗 そして

少し冷たく堅めかもしれませんが、召し上がっていただいてからT氏の濃茶点前が始まりました。ゆっくりと美しく丁寧な所作で美味しい濃茶2碗を練ってくださったことでしょう。

他の流派と違い、裏千家流の点前所作は無駄なものをそぎ落とした、とてもシンプルな点前です。シンプルゆえに端正な美しさが素敵だと思っています。指の先まで神経が行き届いている、しかもゆったりとおおらかで、流れるような点前が何よりのご馳走と思い、社中一同と一緒にそれを目指しています。

そして濃茶が薫りよく、練り加減よく、濃さも量も程よくは一番大事なことです。

 

      (第1席の濃茶点前中です)

水屋で暁庵とKTさんは茶碗をしっかり温めながら、1碗目のお服加減をお尋ねする声を待っていました、T氏が2碗目にかかってから濃茶を入れて2碗ずつ練ってお出ししました。

各服点なので濃茶は4~5gとし、最後のひと啜りまで飲みやすいように少し薄めにするので、その分しっかり練ってお出しするよう心がけました。

社中の皆さまが持ち寄った茶碗を温めたり、茶碗に濃茶を入れて練ったりしていると、それぞれの持ち主の顔が浮かんで来て、「どうしてこの茶碗と出合ったのかしら?」「個性あふれる茶碗から持ち主を当てるクイズも面白そう・・・・」

茶席の中はお点前のT氏と後見のAYさんにすべてお任せして、水屋は茶碗を洗ったり、次の席の菓子や点前準備をしたり、湯を足したり、それなりに忙しいです。

一席目が無事に愉しく終了してヨカッタ! これでこの後のお席も上手く回って行くことでしょう。つづく)

 

   令和6年の初釜は耕雲亭にて・・・(3)へつづく  (1)へ戻る  (4)へ  (5)へ   (6)終章・おたよりへ