暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

辛卯年(2011年)の納会

2011年12月19日 | 稽古忘備録
12月15日は辛卯年(2011年)の納会でした。

「先今年無事 目出度千秋楽」
 の軸が掛けられ、今年最後の稽古となりました。

広間の炉に初めて見る釜が掛かっていました。
たっぷりした釜の形は肩衝釜でしょうか? 
宝尽くしの地紋が美しく浮き出ていて、魅力的でした。
「迷ったけれど、つい買ってしまいました・・・」
とおっしゃっていた先生の気持ちがよくわかります。

棚は、鵬雲斎大宗匠お好みの三和棚。
松の棚板、竹の柱、透かし梅の腰板で松竹梅が意匠されていて、
俵形の染付の水指が一際映えていました。

                
               
全員で先生にご挨拶し、壷荘付花月から始まりました。
先輩方の要望(?)もあり、壷の紐を結ぶ月を引きました。
口切の時に特訓を受けたおかげで、お役を無事つとめることができました。
松を名乗り、壷を床に置いて花月へ戻ると、これも先輩方のはからいで
三服目の月を引き、美味しく一服を頂戴することができました。
そのあとで後炭所望と平花月が行われ、いよいよ昼食です。

昼食は恒例の「埋み豆腐」が出されました。
当番のUさんが腕まくりで作ってくださったのですが、
あとで「ほとんど先生が作られて、私は温めて器によそうだけでした」
でも、手際よくお膳がだされ、流石に懐石好きのUさんでした。

向付にはゆずり葉が敷かれ、うるめイワシが乗っています。
ゆずり葉は今年から来年に年をゆずる・・という意味で、使われるとか。
「埋み豆腐」は、煮物椀に木綿豆腐が炊きたてのご飯の間に埋められ、
熱いみそ汁がかかっています。
豆腐は出汁でさっと煮て温めておきます。
最後に刻み海苔を上に散らします。

先生心づくしの金時豆甘煮の小鉢が添えられていました。
大根の煮物と京漬物がまわされ、八寸とお酒もでました。

                 
                  (花は白ヤマブキと椿・大神楽、花入は琉球焼の徳利)

「納会は暮のあわただしいときなので、できるだけ手間を省いて
 毎年このようにしています」と先生。

素朴で、温かく、滋養のある「埋み豆腐」を食べて
今年も美味しく和やかに納会できるシアワセを噛みしめました。

昼食後に全員で雪月花之式を修練し、盛りだくさんな内容でした。
こうして辛卯年の納会が無事終了しました。


                           



研究会 正午の茶事

2011年12月16日 | 稽古忘備録
12月10日、久しぶりに○○支部の研究会へ参りました。

課目は、正午の茶事でした。
研究会で茶事について学べる機会は今までなく、張り切って出かけました。
利休百首より選ばれた一首がその日の次第とともに書かれていました。

    茶の湯には梅寒菊に黄葉み落ち
         青竹枯木あかつきの霜

中央に設けられた仮設舞台には茶室、
他にも待合、露地、枝折戸、蹲が用意され、
正午の茶事にふさわしい設えや道具組でした。
懐石もみんなで調理したそうで、
○○支部の役員の方々の意気込みが伝わってまいりました。

                

講師は冨士田宗啓先生です。

最初に先生は、次のようなことをお話しになりました。
今から行われる正午の茶事は教本の通りの茶事だと思いますが、
「茶事には決まりがない」ということを先ず理解して頂きたい。
私がこれからお話しすることも、
その通りにしなくてはいけないということでなく、
考え方、仕方の一つとして茶事の参考にして頂きたいと思います・・・。

心の中で頷きながら、誠実な先生という印象を持ちました。
そして、経験談やご自分の考え方を交えた正午の茶事の講義は、
これからも茶事を心がけていきたい私にとって、
一つ一つのお教えが心に響く中身の濃い内容で、有難かったです。

                
                      (蝋梅と初嵐)

その一つ、先生が正客としてある茶事へ招かれた時のお話です。
亭主は先輩の奥様で、その先輩(業躰先生)は数年前にお亡くなりになったそうです。

煙草盆がだされました。
すべてに行き届いた見事な道具がだされる中で
灰吹きだけが青竹ではなく古びたものだったので、
不審に思いお尋ねしたそうです。

すると、ご亭主は
「これは亡くなった主人の手造りでして、
 主人にもこの席へ座っていてもらいたい・・と思いまして
 古いものですが置かせて頂きました」

先生は先輩の業躰先生を想い、ご亭主の気持ちに涙したそうです。
そして、その日の茶事のこころはこれだとも・・・。

会場でお話を伺った他の方々も、もちろん私もほろりでした。

正客はその茶事のテーマ、または核心をつかむべく努力すること。
特にご亭主の心入れの道具や設えなどへは注意を払い、
感謝をつたえることが大事ですとも。

                

最後に、出演者はじめ、裏方で懐石や会場を準備された方々へも
その労をねぎらって下さって、気持の好い研究会となりました。
冨士田先生、役員の方々、有難うございました!

たくさんのお教えと刺激を頂戴し、病気(茶事をしたい病)が出かかりましたが、
来春の京都行きを控え、しばらくはお預けです。
今はお招き頂いた茶事や茶会へ伺うことを楽しみに過ごしています。

                           

師走 貴人清次薄茶

2011年12月06日 | 稽古忘備録
師走最初の稽古は、小習と四ヶ伝です。
先生のご指導の下、Kさんと一緒に稽古に勤しむのもあと数か月。
そう思うと、「今はとにかく稽古をがんばろうね!」と励まし合っています。
床の軸は、「歳月不待人」。

                

最初にKさんが初炭平点前です。
釜は乳母口の布団丸釜です。
炉になると釜が大きくなるので持ち上げるときに大変ですが、
大振りの釜から湯気が立ち上る様子は、目にも温かく、喉にも好ましく・・・です。
湿し灰がさらりと撒かれ、程よい隙間をつくって炭が置かれました。
赤い火が真塗の炉縁に映えだすと、一層湯気が揚がりはじめます。

濃茶にふさわしい湯相になりました。
台天目、次にKさんが唐物を見て頂くと、はや12時になりました。
「午後は入子点と貴人清次薄茶をお願いします」
「1時から再開しますので、昼食を食べて支度していてくださいね」

                

更好棚に水指、老松割蓋茶器(又玄斎お好み)をかざりました。
「貴人清次薄茶点前のお稽古をお願いいたします」

渦蒔絵の高坏と干菓子器にそれぞれ干菓子を盛り、
高坏の柄を右手で持ち左手を下へ添えて貴人へ運び出しました。

一度膝前に置いてから両手で高坏を持って、貴人前に置きます。
左、右と膝退し、「お菓子をどうぞ」と挨拶します。
左足で立ち、そのまま真後ろへ左、右と二歩下がってから茶道口へ下がります。
真後ろへ二歩下がるところが出来ず、二度やり直しました。
次に、お次へ干菓子器を運び出しました。

千鳥板を懐紙の間にはさみ、お次(つぐ)の茶碗と建水を持ち出します。
千鳥板を置く位置ですが、
「教本では炉縁の延長線で上から二目となっていますが、
 上から二目、炉縁の延長線から二目にしてください。
 そのほうが茶巾も柄杓も取り置きしやすいです」とご指導がありました。

お次も茶碗の取次、貴人茶碗の返し方やタイミングなど細部のご指導があり、
Kさんと二人で汗びっしょりでした。
「先生、いろいろお教えいただきありがとうございます。
 貴人清次は難しいです・・・よいお勉強をさせていただきました」
「私も大変よいお勉強になりました」・・・と先生。

本当に充実感のあるお稽古でした。
来月の小習は、貴人清次濃茶点前を見て頂きますね。

                        

辛卯の「炉開きと口切の会」 (2)

2011年11月07日 | 稽古忘備録
  (つづき)
先生、社中の先輩方の前で初めての口切でした。

壷の正面の封印を改めてから、小刀をとり、
茶壺と蓋の合口に小刀を突き立てるように入れ、
左手でゆっくり壷を回しながら切っていきました。

蓋を取り、口覆の前に置いて尋ねました。
「いずれのお茶をさしあげましょうか?」
正客は連客と相談の上、所望の茶を決めておきます。
「どうぞ、ご亭主様におまかせいたします」

壷をしっかり持ち、傾けて上合に詰茶を出します。
茶壺から「千代の寿」の袋を選び、右の挽家へ入れ、蓋をしました。
上合を回して、あけた詰茶を「詰」と書かれた左の挽家へ入れ、
残りを壷へ戻します。
この時、「トントントン・・・」と軽く叩いて茶を動かします。
この音も口切のご馳走でしょうか?

壷に蓋をして、封紙をとり、左手で紙を引きながら糊ベラで糊をつけ、
合口に封をし、捺印をしました。
諸道具を元に戻し、口覆をかぶせます。
葉茶上合を水屋へ戻しました。

               
               
かぎ畳へ斜めに座り、左手で網袋と口緒をとり、口緒を懐に入れ、
右手に網を持たし、壷正面へ向きます。
壷を網に入れて、水屋へ下がります。
御茶入日記を下げて、茶道口で挨拶をしました。
「初炭はIさんと交代いたします」

先生と諸先輩から
「とても良かったです。流れるような口切の所作でした」
とねぎらいのお言葉があり、安堵しました。
前日のリハーサルのおかげ・・・と先生に感謝です。

               
              
初炭が終わると、Y先輩とI先輩が前日から腕まくりで作ってくださった
点心、煮物椀(蟹真蒸)、八寸(カラスミと豆腐味噌漬)で一献を頂戴しました。
写真がないのが残念なくらい、盛付が美しく、美味しい点心でした。
それからIさん手づくりの粟ぜんざいもしっかり食べました。

中立のあと、Uさんの台天目で濃茶(千代の寿、上林詰)、
Kさんの点前で薄茶を頂戴しました。
台天目では三つの天目茶碗と台が並び、眼福です。

先生のお心づくしのお道具も素晴らしかったのですが、
適材適所で皆さまの奮闘ぶりが一番心に残りました・・・。

こうして、辛卯の「炉開きと口切の会」が終わってしまいました・・・。
 

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辛卯の「炉開きと口切の会」 (1)

2011年11月05日 | 稽古忘備録
辛卯11月2日、「炉開きと口切の会」が和やかに行われました。

毎年、点前や水屋をみんなで分担して行われています。
今年は茶事形式で行われ、先生、客7名、亭主(交代で)、水屋兼懐石2名でした。

茶事次第は、席入、口切、初炭、懐石(点心・煮物椀・八寸)、菓子(粟ぜんざい)、
中立(銅鑼)、濃茶(台天目)、薄茶、退席でした。

              
              
席入後、亭主としてお客様と挨拶を交わしました。
正客は大先輩Sさんです。
「おめでとうございます。
 口切という大変栄誉なお席にお招き頂きまして、ありがとうございます」
「お出まし頂きまして、ありがとうございます。
 今日は口切の大役を仰せつかりました。
 一生懸命つとめさせて頂きますので 宜しくお願い申し上げます・・・」

挨拶が終わると、正客より
「何卒お壷の拝見を・・・」と声がかかりました。
床に荘られている壷をかぎ畳を大きく回って取りに行き、
かぎ畳に座り、網、口緒をはずして、勝手付に置きます。
口覆をはずして封印を正し、再び口覆をし、
かぎ畳を大きく回って正客前へ運びだしました。

              

拝見の間、亭主(私)はかぎ畳に座っています。
詰が壷を正客へ持っていく頃に席を立ち、水屋から御茶入日記を持って
正客前へ座り、壷の下座へ置き、壷を持ってかぎ畳を大きく回って戻ります。
口覆をはずし壷の封印を改めて、再び口覆をします。

お正客のS先輩より
「お壷は?」
「信楽でございます」
「釉薬の気色を味わい深く拝見させて頂きました。お口覆は?」
「青海波金襴でございます」
「ありがとうございました」

水屋から葉茶上合(はちゃじょうご)一式を運び出し、壷の下座へ置きます。
前畳縁内へ挽家(ひきや)二つを左右同時に出し、
その前に一式のった美濃紙を出します。
挽家の蓋を左右同時に開けて横に置きます。
壷の口覆をはずし、右肩に置きます。

いよいよ、口切です。

        (2)へつづく