今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

1165 銚子(千葉県)銚子のイワシは確かに美味い

2024-05-14 08:38:56 | 茨城・千葉
千葉駅午前6時30分発の総武本線各駅停車銚子行きは、パラパラと空席が残る程度の混み具合だった。佐倉で隣のボックス席が空になったので移ろうと腰を上げると、前方から小走りにやって来た小柄な女性が、手にした袋をサッと放り投げ、私を押し退けるようにして席を占めた。そして靴を脱ぐや両脚を前の座席にドサッと延ばし、残った席をコートやバッグで塞ぐ。おもむろに汚れた紙の束を取り出し、足元に並べて1枚1枚点検し始めた。



驚いて、しばらく彼女を観察する。歳のころは40代だろうか、服装も身体もとても疲れているように見える。終夜営業の居酒屋でも経営しているのか、夜通し働き、帰宅の電車で売上伝票を整理している、といった風情だ。電車は八街ー成東と進んで九十九里の平坦部に出る。通学の高校生で次第に混み合って来ても、彼女は席の独占を続け、少し居眠りして旭に着く前に降りて行った。「九十九里の女」は、マナーは悪いが働き者なのかもしれない。



千葉から銚子まで2時間。付け根を横断して半島の広さに気づく。車窓の大半は凡庸な農村風景が続き、その挙句に到着したからか、人口55000人の銚子がひときわ大きな街に見える。駅前のバス停の長い列は、屏風ヶ浦へ続くマリーナに面した千葉科学大学の学生たちだ。薬学部や看護学部のほか危機管理学部というユニークな学部を持つ大学で、開校20年になる。ところが経営する学校法人が「定員割れが続いて維持できない」と言い出した。



市から巨額の補助金と土地提供を受けながら、あとは市に頼むと泣きつくとは情けない話だ。岡山に本部を置く学校法人で、全国で手広く大学経営をしている、最近では政治家との癒着がニュースになった法人である。バスで一緒になった大学の職員らしい女性に話を聞くと、学生は北海道や沖縄からも集まっているという。素晴らしいロケーションですねとキャンパスを賞めると、「今日のようないいお天気の日は、ですけれどね」と笑った。



銚子駅前には「銚子市と共に歩む大学」と書かれた科学大学の大きなアーチが架かっている。バスで一緒になった学生は、みんな実に真面目そうである。こうした若者が集うのは、街にとって大いに望ましいことだ。ただ全国600の私立大学の、半数以上が定員割れというデータもある。少子化で地方の大学運営はますます厳しくなっていくだろう。財政状況がかなり厳しいらしい銚子市がどのような判断をするか、市民も学生も気掛かりである。



民間組織が発表した「消滅可能性自治体」が論議を呼んでいる。私が乗って来た総武本線の沿線は、銚子市を含めほとんどが「若い女性が激減して消滅する」可能性があるとされた。乗り合わせた高校生らは元気に談笑しているけれど、この子供たちのほとんどが、やがて街を出て行くのだろう。わが街を消滅させてはならない、しかし若者を引き止めることは難しい。だとすれば「帰って来たくなる故郷」「移住して来たくなる街」づくりを進めるしかない。



銚子の街歩きは14年ぶりになる。前回は港に行きそびれた。全国1の水揚げを誇る漁港の街に行って港を見ないのは、東大寺を訪れて大仏様に会わずに帰るようなものだろう。今回はポートタワーに登って利根川河口に広がる街と漁港を見晴らした。私は「銚子といえばイワシ」と思い込んでいるので、海産物の直売所ではイワシの一夜干しを買った。店頭には「泣きたくなるほどうまい」とあった。美味かったが、泣くほどではない。(2024.5.10)



















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