今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

1132 函館(北海道)朝市に運ばれカニも泡を吹く

2023-10-17 07:49:17 | 北海道
ホテルの朝食バイキングは飽きたから、函館は朝市で食べようと駅前の市場街をブラブラする。そこへ小型トラックがやって来て、市場の働き手と判る男たちが集まってきた。どさどさと、保冷庫から黄色いプラスチックケースを道路に投げ下ろす。「わー、蟹だ!」「泡を吹いているから生きているのね!」などと歓声を挙げているのは観光客ばかりだ。寡黙な男たちは朝市の稼ぎ頭だろうに、蟹を存外乱暴に扱い、仕分けしてどこかに運んで行った。



時間は前後するが、前日の白老から函館に向かう特急列車は、長万部の先で「倒木のためしばらく停まります」のアナウンスでストップしてしまった。2時間以上遅れると特急券は払い戻しされるのだそうで、15分超過したために現金が返ってきた。それを元手に豪華な夕食を考えたのだけれど、胃の疲れから蕎麦にした。平凡な蕎麦屋さんに見えたものの創業は明治23年というから、箱館戦争の記憶がいくらか残るころから続くお店だろうか。



函館は17年ぶりになる。駅や駅前はすっかり整備され、やたらとホテルのビルが目立つ。それだけ観光客が多いのだろう。コロナ前と比較する材料は持たないものの、賑わっているように見える朝市や赤れんが倉庫群の観光名所も、まだまだのようだ。札幌の狸小路商店街がドラッグストアとカラオケ店だらけのつまらない通りになっていて驚いた。聞けば古くからの店はコロナ禍でバタバタ閉店した結果だという。どの街もコロナの傷跡は深い。



函館が北海道の南端で、気候が温暖だということを、五稜郭に行って強く感じる。アカマツが天を衝くほどに伸びているからだ。北海道では限られた樹相だろう。地を這うフジの古木に感心していると、「昔、誰かが勝手に植えた樹じゃ」と突然声がかかった。散歩中らしいご老体が「役人が怒ってな、勝手なことをしてはいかん、伐採せよと命じるものだから、智慧者がですな、ではあの桜並木も伐りましょうと煙に巻いて伐採を免れたんじゃ」と宣う。



土地人が土地の自慢をするのは、郷土愛が伝わってくるようで聞いていて楽しい。おかげで五稜郭は桜の名所となり、フジは今も美しい花を咲かすというのだから、勝手に植えた市民は表彰されていい。だが五稜郭の佇まいが17年前とどうも様子が違って落ち着かない。中心に建つ箱館奉行所の記憶が蘇らないのだ。それもそのはずで、箱館戦争後に解体された奉行所が復元されたのは、13年前だという。土方らはこの風景の中で戦ったのか。



旧幕府の残党が北海道を独立国家にしていたらどうだっただろう。酪農国家のデンマークと比較してみる。デンマークは北海道の半分ほどの国土に、北海道より60万人ほど多い580万人が暮らしている。デンマークの一人当たりGDPは6万ドル超といった水準のようで、為替レートの設定がわ
からないから北海道ととりあえず比較できないものの、どうもデンマークの方が豊からしい。北海道はもっと豊かになる力を秘めているのではないか。



15世紀に津軽の豪族がこの地に「箱のような館」を建てたことで「箱館」となった街の名が、「蝦夷」が「北海道」と改められた明治2年に「函館」と表記変更されたのだという。ただその理由は定かでない、というのだから不思議な話である。青函トンネルを通ったことがないので、帰路は新幹線を選んだ。車内放送に従ってカメラを構え、入口を何とか捕えたのだが、頑張った甲斐もないほどの、ありきたりのトンネル入口であった。(2023.10.6-7)

(青函トンネル北海道側口)































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