今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

1131 白老(北海道)ウポポイでさあ歌いましょうと虹の橋

2023-10-16 11:09:39 | 北海道
「ウポポイ」はアイヌ語で「(大勢で)歌うこと」の意味だという。正式呼称は「民族共生象徴空間」と難解な国立施設だ。愛称が優しい響きのウポポイとなったのは良かったけれど、「アイヌ文化の復興・創造等のナショナルセンターです」と、役人的表現の自己紹介はいただけない。もっと素直に「長く不当にアイヌ民族を差別してきた日本政府が、謝罪と和解のために設けました」と言った方が解りいい。道央・白老町のポロト湖畔、広大な空間である。



白老町がある胆振地方は昨日、激しい嵐に襲われたらしい。一夜明けて風雨は収まり、ポロト湖は湖面近くに虹が漂っている。目線と同じほどの低い虹など、これまで見たことがない。アイヌの人たちが歓迎してくれているのだなと、お調子者の年寄りは勝手に解釈してウポポイの客になる。巨大な国立アイヌ民族博物館や、アイヌの家を再現した伝統的コタンが復元されたりしている。舞踊や口琴を鑑賞できるチキサニ広場は、今日はお休みらしい。



博物館には見事なアイヌの工芸品が展示されている。そんな中で派手な色彩のポスターが気になった。「OKI DUB AINU BAND」というバンドのライブ告知ポスターらしい。音楽世界に疎い私がネットで調べてようやく知ったのは、樺太アイヌの伝統楽器を復活させて世界的に活躍しているロックバンドだということだ。隣には、細いギターのような不思議な楽器が展示されている。嬉しいことに、アイヌ文化はすでに世界に飛び出している。

(「阿寒湖アイヌコタン」で)

ウポポイは開園3年だから、新しくて気持ちがいいけれど、まだ土に馴染んでいない印象を受ける。阿寒湖畔のアイヌコタンで味わったような生活感が伝わってこないのだ。ただ団体客も大勢訪れているようだから、「先住民族のアイヌ文化は我が国の貴重な文化であり、その振興・復興・創造に努める」とする設立の趣旨が浸透し、成果を上げていくことを待とう。OKI BANDのようなエネルギーが、次々と生まれるウポポイになったら素晴らしい。

(ポートランドにて)

米国オレゴン州ポートランドの日本庭園には、かの地の先住民とアイヌの文化を並べる展示館がある。イヌイットと呼ばれる人たちとアイヌには、風貌に始まって工芸品など、比較どころか区別することが難しいほどの共通点があることに驚いたものだ。人類がアフリカからユーラシア大陸に移動し、日本列島にたどり着いて定着した人々と、さらにベーリング海峡を越えてアメリカ大陸を南下した集団があったのだろう。その痕跡を今に見る。



アイヌ民族初の国会議員だった菅野茂さんに、話を聞いたことがある。北海道アイヌが送らざるをえなかった暮らしを、私はあまりに長く何も知らずにいたことを教えられた。今更ながら私は今、樺太アイヌを主人公とする『熱源』という小説を読んでいる。サンフランシスコ近郊で暮らす妻の妹が、日本人読書サークルで取り上げられた書籍だと教えてくれたのだ。先月、宗谷岬からサハリンを遠望したばかりの偶然もあって、興味深く読んでいる。

(砂澤ビッキ「四つの風」=札幌芸術の森)

札幌芸術の森に、砂澤ビッキ氏の作品が展示されている。鑿を入れた4本の巨木が並び立つ「四つの風」と題するオブジェだが、3本は倒れ、一本しか残っていない。しかし自然の作用に任すという作者の意図に添って、館は全てが土に還るまで公開を続けるという。砂澤氏の木彫作品は、根っ子にあるアイヌの伝統をにじませながら、さらなる生命を感じさせてくれる。ウポポイでいろいろなことを思い出し、再び考えることになった。(2023.10.6)























(ポートランドにて)

(「阿寒湖アイヌコタン」で)

(「ウポポイ」のポスター)




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