今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

487 ブリュッセル =1=(ベルギー)

2013-01-16 17:27:44 | 海外
世界一美しいと形容される広場、ブリュッセルのグランプラス(Grote Marki/Grand Place)では、明日のクリスマスを待つ市民が列を成し、いま点灯されたのであろうプレゼピオ(イエス誕生の馬小屋の模型)に熱い視線を送っている。昨年のこの日は、これを陽光のローマで眺めたのだったが、この日は冷たい雨の中である。だが日暮れのように暗い土地(アーベントランド)のクリスマスは、かえって深い祈りが感じられるのだった。



グランプラスは無骨な石畳が雨に濡れ、四囲を囲む市庁舎、王の家、ギルドハウスなどが中世ヨーロッパを偲ばせてくれる。ただこのシーズン特有のサービスなのだろうか、どぎつい原色でライトアップされて落ち着かない。いくらチョコレートの国だからといって、石造りの庁舎タワーがチョコレート色に浮かび上がった時は、ブリュッセル市民のセンスを疑った。世界遺産は人類の宝だとすれば、余りもてあそばないでいただきたい。



「フランダースの犬」を思い出すまでもなく、ベルギーは私などにはフランドルと言った方がイメージを結び易い。実際にはオランダ・フランスの一部も含めた地域を指し、なかなか複雑な歴史のエリアらしいが、ブリュッセルは日本の平安時代末期ころから都市が形成されはじめ、毛織物産業で繁栄するフランドル地方の中核都市として発展した。19世紀に大改造されたパリよりも、むしろ中世の面影を濃く残している街なのかもしれない。



旧市街は5角形をした城塞の中で営まれ、グランプラスを中心にすれば、どの方角へも歩いて行けるほどの狭さだ。東から西へ緩やかに傾斜し、東の高台に王宮がある。その一帯を山の手とすれば、グランプラス西側は下町にあたるのだろう、ショッピング街や古い教会、マーケット広場などが密集している。ブリュッセルは国の人口の10%が集中し、人口密度はヨーロッパの街で一番高いらしい。そのせいか、街はとにかく人出が多い。



サンタクロースの衣装をつけた小便小僧を見上げ、証券取引所から王立モネ劇場を抜けて聖カトリーヌ教会に行くと、クリスマス市の露店がひしめいて歩くこともままならなくなった。そんな人混みを物々しい武装警官グループがパトロールしていると思うと、重火器を手にした迷彩服の3人が周囲に鋭い視線を向けている。ヨーロッパにテロの危険が迫っているのか、EU本部のある街ならではの警戒体制なのか、日本では見られない光景だ。



ベルギーといえばチョコレートとビール、それにタンタン(Tintin)だ。漫画センターは休館していたけれど、建物の壁に描かれた冒険中の彼には何度か出会った。チョコの元祖といわれる有名店は長い列ができ、ちょっと油断していたら売り切れてしまった。「この店は有名らしいけど、なぜ土産がマロングラッセなのか」と息子に問い詰められ、説明に難渋した。聞いていた通り、料理もおいしい街だった。なかでもムール貝料理!



当然のことながらパリではフランス人、アムステルダムではオランダ人とすぐ分かる人々を多く見かけたが、ブリュッセルはどちらかといえばフランス的顔立ちが多いように思えた。旅人的視点でこの3都市を大胆に比較すれば、観るべきはパリ、風情はアムステルダム、暮らしよさはブリュッセルという印象だった。ブリュッセルを拠点に、西ヨーロッパの街を巡ることができたら、実に効率的で楽しい旅になることだろう。(2012.12.23-25)

















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