今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

821 ロンドン②(英国)

2018-07-20 06:17:09 | 海外
今日のバッキンガム宮殿には、ユニオンジャックが翻っている。ということは、エリザベス女王はご不在らしい。こちらに滞在されているときは、女王旗が掲げられるからそれと知れるのだという。それでも正面広場はたくさんの観光客である。お目あては、間もなく始まる衛兵の交代パレードだ。そんなものを見て何が楽しいか、と思わぬでもないけれど、せっかく来合わせたのだからと、私も群衆の一人になっている。



正式にはUnited Kingdom of Great Britain and Northern Irelandという名称らしいこの国については、戦後の日本の少年少女は「民主主義のお手本」だと教えられてきた。ただ、それ以上の知識がない私にしてみれば、「君臨すれども統治せず」という国王を君主に戴く立憲君主制の実際がよくわからない。民主主義のお手本に貴族制度が残る不思議。そして国王と国教会の長い歴史は、無信心者には理解不能だ。



30代のころ、私は1度だけこの街に来たことがある。西ドイツ(壁のある時代だった)を回ってパリに立ち寄り、ドーバー海峡を渡った。ハイドパークに近いホテルに泊まったのだろう、早朝の公園を散歩し、大英博物館を見学し、中華街で食事し、誘われてカジノにも潜り込んだ。バッキンガム宮殿では微動だにしない衛兵に感心したものだ。その時のロンドンは、ベルリンやパリほど異国を感じさせなかった。



今回も10日近く滞在して、見知らぬ国にいるという思いがさほど強くならないのが奇妙である。車の左側通行や英語の国だということに安堵感があるのだろうが、東京の雑踏にいるような感覚なのだ。ピカデリーやリージェント、チャリングクロスにパディントンと、次々現れる繁華街、通り、駅名の多くは耳慣れて、既視感さえ覚える。私の場合、それは多分にシャーロック・ホームズとハリー・ポッターのおかげだ。



社会の本質までは分かっていないにもかかわらず、日本人は表面上は随分と英国文化にコミットし、慣れ親しんでいる、ということなのだろう。そこには王室の存在も関わっているかも知れない。王室に寄せる英国市民の親しみぶりは日本でもしばしばニュースになり、日本人に自分たちと皇室との関わりを思い起こさせる。そして日本も英国も、皇室と王室を戴いてうまくいっているのだから理解し合える、と思い込む。



人類は国家を形成するまでに肥大すると、様々な愚行を繰り返したあげく、君主や統領、象徴といった存在を担ぎあげることで、ようやく社会の安定を得てきた。人になぜそうした「冠」が必要なのかは、私にとって永年の謎なのだが、それはなかなか効果的な知恵であることは、歴史が証明している。こんなことを考えた記念に「土産は衛兵の帽子にしようか」と提案すると、「それだけは止めて」とあっさり却下された。



ロンドンのランドマーク・ビッグベンは、化粧直し中ということで残念な姿である。そこに架かるウエストミンスター橋は、車道と歩道をセパレートする頑丈な柵が、風景にどこか馴染んでいない。1年前の車暴走テロの後、急遽設けられた柵だからだろう。この街は、何度もテロの標的にされてきた。しかし世界屈指の観光都市は、防御を強めながらも日常は変えない。それも「都市力」の一つなのだろう。(2018.6.24-7.2)



















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