職員室通信・600字の教育学

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大阪の古書店の、野積みの書物の中から、『晩夏』を見つけ、ページをめくり、奥付をあけ、堀が押した

2009-11-08 16:50:46 | Weblog

◆昭和16年。
 堀辰雄が『晩夏』を出版するとき、出版元の甲鳥書林から、しゃれた検印紙が送られてくる。
 それで、堀も、「こちらもひとつ」と自慢の印を使うことにした……というエピソードは、少し前に紹介した。

 念のために「検印紙」の補足説明――
 甲鳥書林から送られてきた、本の発行部数と同じ枚数の検印紙1枚1枚に、堀が押印し、その数に応じて甲鳥書林が、堀にお金を支払うというシステム。
 今は見かけない。
 たぶん、廃止になったのだろう。
 しばらくは「著者との話し合いにより検印廃止」と表記されていたが、現在は、その表記もない。

 堀が、そのために軽井沢から東京の自宅に宛てた速達――

「小生の紫檀の違い棚の上に、小さな紫檀の四角い箱があり、その中に例の支那の印がいくつもはいっているけれど、それの上側か、(あるいはその中にしまったと思っているのは小生の思い違いで、違い棚の上に他の三つ四つの印とともにむき出しで置いてあるかも知れない)どこかそのへんのところに『我思古人』という大きな印といっしょに『一硯一琴之品』「」という小さな印があるはず。
 どうかそれをそこいらへんで探してみて、も見つかったら至急送ってください。」

 と依頼している。

 この書簡を読んだ高校生のわたしは、ぜひ、その印が押された『晩夏』(甲鳥書林)が見たいと思った。
 ずっとあとになって、大阪の古書店の、野積みの書物の中から、『晩夏』を見つけ、ページをめくり、奥付をあけ、堀が押した、その印をみたときには、かなり感動した。(画像)

 本の値段は、200円か300円くらいだった。
 今は、古書店もインターネットで情報を共有しているから、事情が違うと思うが、当時、大阪での堀の扱いは、この程度だった。

 ちなみに、現在の相場は、もちろん初版かどうか、傷みがあるかどうかで違ってくるが、だいたい4000円~8000円くらいだ。

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