★僕がときどきお参りしている神社に、刑場(首切り場)の露と消えた人々の魂を弔う【塚】がある。
旗竿地の奥まった【塚】周辺には、亡魂の恨み辛み、亡魂の未練、亡魂の悔い、亡魂の無念さがジクジクにじみ出ている。
100年たとうが、200年たとうが、300年たとうが、このジクジクは消えそうにない
「成仏してください」なんて僕にはとてもいえない。
「安らかに」なんて僕にはとてもいえない
お参りのたびに、いつも、ただ、僕はうちひしがれる。(うちひしがれてつらい気持ちになるのがわかっているのに僕の足は自然と塚に向かってしまう。その心の深層に立ち向かってみなければいけないと思うのだが、理屈をこねるだけに終わってしまいそうで、僕はそれを避けている。)
100年たとうが、200年たとうが、300年たとうが、このジクジクは消えそうにない
「成仏してください」なんて僕にはとてもいえない。
「安らかに」なんて僕にはとてもいえない
お参りのたびに、いつも、ただ、僕はうちひしがれる。(うちひしがれてつらい気持ちになるのがわかっているのに僕の足は自然と塚に向かってしまう。その心の深層に立ち向かってみなければいけないと思うのだが、理屈をこねるだけに終わってしまいそうで、僕はそれを避けている。)
★少し前のことだ。
お参りに行ったらめずらしく先客がいた。
ひとりの女性が塚を抱きしめんばかりにひざまずいている。
胸がいっぱいになった。
熱いものがこみあげた。
ジャマをしてはいけないと思い、女性に気づかれないように黙礼して立ち去ろうとしたときだった。
女性が立ち上がった。
ひとりの女性が塚を抱きしめんばかりにひざまずいている。
胸がいっぱいになった。
熱いものがこみあげた。
ジャマをしてはいけないと思い、女性に気づかれないように黙礼して立ち去ろうとしたときだった。
女性が立ち上がった。
手にタオルをもっている。
彼女は塚を抱きしめていたのではない。
濡れタオルで塚のうしろ側を拭いていたのだ。
ああ、こういう弔い方があるのか……と思った。
亡魂といっしょに菓子を食べるのもいい。
亡魂といっしょにブラックニッカを飲むのもいい。
こうすることによって、ただうちひしがれているだけの今の僕の状態から一歩、亡魂に接近できるかもしれないと思った。
ま、ごくあたりまえのことに気づいただけなのだが、ずいぶん心が安らかになった。
彼女は塚を抱きしめていたのではない。
濡れタオルで塚のうしろ側を拭いていたのだ。
ああ、こういう弔い方があるのか……と思った。
亡魂といっしょに菓子を食べるのもいい。
亡魂といっしょにブラックニッカを飲むのもいい。
こうすることによって、ただうちひしがれているだけの今の僕の状態から一歩、亡魂に接近できるかもしれないと思った。
ま、ごくあたりまえのことに気づいただけなのだが、ずいぶん心が安らかになった。
★またある日のこと――
この【塚】が、なんと、ポケモンGOのポケストップに選定されているということに気づいた。
この【塚】が、なんと、ポケモンGOのポケストップに選定されているということに気づいた。
スマホを手に神社に接近すると、ポケストップがクローズアップ→タップ→【塚】の画像をスワイプ→【塚】がクルクル回転→と、モンスターボールがコロコロと飛び出でてきた。
なんとも不思議な感慨に打たれたのだが、この「感慨」にかすかな既視感があった。
すぐにわかった。
あの日、塚にひざまずく女性のうしろ姿を見たときの気持ちに似ていた。
コロコロ飛び出るモンスターボールに亡魂も目をクリクリさせていることだろう。
【塚】周辺はポッポの巣だ。
亡魂にも群れるポッポたちが見えているにちがいない。
頭突きをかましてきたり、威嚇して迫ってきたりする、ポッポのヘンテコリンなしぐさを、きっとおもしろがって眺めていることだろう。
【塚】周辺はポッポの巣だ。
亡魂にも群れるポッポたちが見えているにちがいない。
頭突きをかましてきたり、威嚇して迫ってきたりする、ポッポのヘンテコリンなしぐさを、きっとおもしろがって眺めていることだろう。
やるなぁ~! Pokemon GO - Niantic!
この【塚】をポケストップに選定してくれて、ホンマ、ありがとう!
僕の魂は先客の女性の姿でひと目盛りほど深く【亡魂】に接近し、【ポケモンGO】でさらにひと目盛り深く接近できたといえる。