お遍路は最高に贅沢な旅だと言う人に会ったことがあります。一人ではなく複数の人がそう言っていました。ぼくももちろん同意見。でも一般的に見れば、最高の贅沢な旅といえば、豪華客船世界一周の旅。両方とも一番贅沢だけれど、全然違う、両極端といってもいいくらい。だから豪華客船の旅をする人は絶対お遍路なんかしないし、お遍路をする人は絶対豪華客船には乗らない、楽しみ方が本当に全然違うからそう信じていました。
つい先日、気になる遍路宿があって調べていたら、おもしろいブログに当たりました。遍路日記なのですが、豪華客船で世界一周もしているし、長安からローマまでシルクロードの旅もしている。そういう人がどうしてお遍路に出るのか理解できません。3年前70才になったのをきっかけに通しで70日かけて歩くことにした。年齢と同じ日数で歩けばよいと聞いた、と言うけれど、ぼくはそんなことを聞いたことは一度もありません。60歳前後で始める人が多いけれど、多くの人は40日前後で歩く、ゆっくりな人でも50日前後、もちろん60日かける人もいるけれど、それはごくごく少数派。費用のことがあるから歩けるものならできるだけ多く歩いて安く上げたい。
その人は普段歩く人ではなく、練習も積まないまま四国に来て1日15~20kmのペースで歩く、ぼくが遍路日記のブログを読むのは、遍路宿の情報をきっちり書いているものに限ります。それ以外のことはもう何回も歩いているので、あらためて知りたいこともありません。その人のブログには1軒漏らさず宿の料金や設備の善し悪しが記載されています。しかも、歩く距離が短いので、普通のお遍路さんがあまり泊まらない宿が多く、ぼくも評判を聞いたことがない宿で知りたい宿がいっぱいあってすごく参考になりました。
宿の人や同宿の人にいい宿を教えてもらうけれど、どうしても普通の人と歩く距離が大部違うので、なかなか教えてもらういい宿に泊まることができず、結構問題のある宿に泊まっています。ぼくの聞いていた評判よりもひどいのもあれば、さほどでもないというのもありました。
彼は結局横峰寺の手前、今治の湯ノ浦温泉で中断するのですが、そこまで48日かけて、少し問題のある宿、かなりひどい宿に12軒ほど泊まっていました。初めてとはいえなかなかの確率です。ぼくなんか1軒でもそういうのに当たるとかなりがっくりして次の日の歩きにも影響が出かねないくらいだから、それだけ当たると旅が楽しくなくなってくるかもしれない。豪華客船と比べるとそのギャップの大きさは、ダメージの大きさはぼくらの想像を遙かに超えているかもしれない。彼が中断してしまったのは足を痛めて歩けなくなったからではない、空海の教えに共感できなくなったからだと書いていましたが、結局のところ歩く旅が楽しくなかったからだという気がします。もし、彼が総てぼくが推奨するような宿に泊まっていたら、中断することはなかったかもしれない。それだけ宿の選択は大事だということかもしれません。先輩のいうことが総て正しいとは限りませんが当てずっぽうで選ぶよりは遙かによい旅ができることは確かだと思います。