万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

天安門事件から20年―民主化は権力分立から始まる?

2009年06月04日 17時43分23秒 | アジア
「ネット民主」が改革圧力に=天安門事件、4日で20年-中国(時事通信) - goo ニュース
 改革開放路線を主導した小平氏は、経済の市場化は推進しても、政治の分権化は許してはならない、と語ったと伝わります。天安門事件から20年が経ち、中国では、新たな民主化運動としてインターネットによる議論が起きているそうですが、この動きに反応するように、共産党中央編訳局の何増科・当代研究所長が、政治改革案として権力分立論を述べているそうです。

 何所長の案によりますと、政策決定権を共産党に、執行権を政府に、そうして、監督権を全国人民代表大会と人民政治協商会議にということのようです。監督権を、司法による行政に対する統制権と見なしますと、およそ、立法、行政、司法の三権分立に見立てることもできそうです。これまでの一党独裁よりは、チェック・アンド・バランスが働きますので、国民の権利侵害を防止するシステムとはなりそうです。しかしながら、民主化の観点から見ますと、重大な欠点があります。それは、政策決定の段階で、国民の民意が反映されないことです。全国人民代表大会は監督機関となりますので、現在の制度よりも多様性を失う可能性すらあります。

 権力分立は、一党独裁よりは一歩前進した形態であり、国民の権利を守る上で一定の役割を果たすことが期待できますが、国民の多様な意見を政治に反映させ、全ての国民のために政治権力を用いるという側面から見ますと、やはり、民主主義の欠落があるようなのです。政策決定権を共産党が独占しなくなったとき、その時こそ、天安門事件で一旦は潰えた民主化の芽が、中国の地でようやく育ち始めるときなのではないでしょうか。

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