万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

条約の無効論はチベットに

2009年06月23日 15時58分25秒 | 国際政治
韓日併合は反人道的犯罪のため無効、日本人学者(聯合ニュース) - goo ニュース
 今日の国際法では、武力による威嚇や武力の行使による条約の強制は無効とされております(「条約法に関するウィーン条約」)。しかしながら、1910年という時期において、この無効を主張することが妥当かと言いますと、いささか無理があるように思えるのです。

 民族自決の原則の定着には、時代や地域によってばらつきがあります。19世紀という時代にあっては、ヨーロッパでは民族自決が国家独立の根拠とされながらも、その他の地域ではこの原則は適用されず、合法的な植民地支配が続いていました。また、政府同士の合意による領土の割譲なども、合法的な行為とされていたのです。アジアでも、中国の冊封体制が敷かれていました。

 アジアやアフリカにまで民族自決の原則が拡大するのは、第二次世界大戦を経た後のことです。この見解には、もちろん、他民族の領土を奪うことは人類の普遍的な道徳に反するとする反論があるかもしれません。しかしながら、この原則を、いくらでも過去に遡って適用できるとなりますと、おそらく、すねに傷のない国はありません。現在、地球上に存在している国の多くは、他の国を滅ぼしたり、他民族の土地を奪って成立した歴史を持つからです。

 ようやく戦後に至って、武力や威嚇による条約の強要が禁じられるようになったのですから、無効論を展開するならば、チベットの「17条協定」こそ問題にすべきと言えましょう。現在の違法行為に目を瞑ってはならないと思うのです。

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