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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

国籍法改正案―”認知”意思主義の誤り

2008年11月25日 16時43分47秒 | 日本政治
親子の確認を厳格化へ、国籍法改正による偽装認知防止(読売新聞) - goo ニュース
 国籍法改正案に対し、国民の多くが不安を抱く中で、法務省は、偽装認知を防ぐため、”親子の確認”の厳格化を定める通達を出す方針と報じられています。しかしながら、この措置だけで、十分に国民の不安を取り除くことはできるのでしょうか。

 まず、問題となるのは、”親子の確認”とは何か、ということです。民法では、近年まで、自然血縁尊重を原則としてきましたが、最近の最高裁判所の判例により、認知する側が親であることを主張すれば、血縁関係がなくとも子の認知ができるとする意思主義に変更になったと言われています(これでは”偽装認知”なるものも存在しない・・・)。もし実際に、この民法上の意思主義が国籍取得にも用いられるとしますと、”親子の確認”は、書類や写真があったとしても、認知ビジネスの防止に効果があるとは思えません。行政の窓口で、いくらでも緩い確認と裁量がまかり通るからです。この点を考えますと、国籍法上の認知は、血縁関係を原則とすると定め(DNA鑑定…)、しかも、父親の親権や扶養の事実などを要件に加える方が、まだ”親子の確認”の厳格化は期待できます。”親子の確認”とは、あまりに曖昧な表現であり、添付書類の内容などが明らかにされない限り、安心はできないのです。

 そもそも国籍法の問題が混乱するのも、認知の原則が意思主義に変えられたことにも原因があります。もし、この原則を反対のケース、つまり、親が、血縁関係にある実子との親子関係を否定する方向に用いられますと、これも家族崩壊の危機となりましょう。”赤ちゃんポスト”で明らかとなったように、育児を放棄する親は現実に存在しており、親の意思によって親子関係が左右されるようでは、むしろ、家族の安定性を損ねるのではないでしょうか。

 現行の国籍法が、準正を要件としたことにはそれなりに理由があり、婚外子の救済策としては、帰化という方法もあります。まだまだ国民的な合意には達しておらず、法律の間での不整合も見られますので、今国会で、国籍法の改正を急ぐ必要はないと思うのです。

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コメント (2)
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