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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

国民国家が融解する悲劇

2008年11月23日 16時26分02秒 | 国際政治
2025年、国民国家システムは消滅 米情報機関が予測(朝日新聞) - goo ニュース
 ”国家”を悪とみなす理想主義者にとっては、国民国家システムの消滅は、喜ばしいことなのかもしれません。しかしながら、現在、国民国家が果たしている役割を考えますと、喜んでばかりはいられないように思うのです。

 何故ならば、国家とは、そもそもアイデンティティーを共有する共同体を守ってきたものですし、また、その中に生きる人々の生命、身体、財産を保護する存在でもあったからです。しかしながら、国家の枠組みが融解し、民族の枠組みを定かではなくなり、誰が誰に対して権利や義務を持つのかもあやふやとなりますと、人間は、砂粒の如くにばらばらの存在になるかもしれません。と同時に、国家もまた民族といった集団や個人を保護する役割を果たさなくなるのです。国家間の境界が解けるによって、帝国型の支配が忍び寄るかもしれませんし、私的な支配が人間を絡め取るかもしれません。

 それでは、国際機関が、国民国家に替わる役割を担ってくれるのでしょうか。国際機関は、国民国家よりもはるかに制度整備が遅れているのですから、統治の役割を担えるようなレベルにはありません。代替物がないにもかかわらず、国民国家を壊してしまうとしますと、その狭間で、誰からも保護されない人々が大量に出現するとも限らないのです。この状況が、果たして人類にとって幸福であるのか、まことに疑問に思うのです。

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コメント (8)
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