万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

歴史は直進しない

2008年11月10日 15時12分38秒 | 国際政治
伊東 乾の「常識の源流探訪」 KY空幕長の国益空爆 不用意な情報発信は危機管理意識の死角から(日経ビジネスオンライン) - goo ニュース
 同時多発テロの後、ブッシュ政権が、アフガニスタン戦争とイラク戦争を遂行した際には、アメリカ国民の多くも、この時掲げられた”テロと闘い、タリバンの恐怖政治とフセインの独裁政治を打倒し、民主主義と自由を広める”という戦争目的に熱烈な支持を与えたものです。次期大統領にオバマ上院議員が当選した今では、すっかりと様変わりし、”イラク戦争は間違いだった”という論調が支配的です。

 それでは、後の人類は、これらの戦争をどのように評価するのでしょうか。国連安保理の決議なき戦争は”侵略戦争”であるとする立場に立てば、”侵略”の認定を受けるかもしれませんし、その後の両国の混乱とアメリカの負担を鑑みて、国策を誤った”忌わしい戦争”と見做されるかもしれません。しかしながら、その一方で、アフガニスタンとイラクの両国において、残酷な恐怖政治が終わりを告げ、民主化と自由化への一歩を踏み出したことを評価して、歴史的な意義があったと評されるかもしれません。

 とかくに、失敗に終わった戦争や政策は、全面的に否定されがちですが、よく観察してみますと、失敗の中にも何かしらの価値を含んでいることがあります。日本国とて、先の大戦については、「村山談話」が、侵略戦争と決め付けていますが、この戦いなくして植民地支配が終わることがなかったことを考えますと、別の側面からの評価もあり得ることなのです。歴史というものは、直進するものではなく、様々な事件や経験を経ることによって、紆余曲折しながら是非曲直がただされてゆくものなのではないでしょうか。

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コメント (21)
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