オケ(全体のサウンド)に混じると印象が変わる可能性があることもあるが、根本的にはエンジニアの耳や技術を信頼できるのが重要。今回のレコーディングでの大きな”教訓その1”は「エンジニアは重要」。これまでのエンジニア(10年以上前の「Steps on Edge」以前の作品で携わった方)は、機材の取り扱いにはある程度熟練しているものの、サウンドに対するビジョンが今イチ不明確で、我々がプレイバックしている音を聴きながら、原因不明ながらも「なにか変」と感じている場合に、なにもソリューションが提供されなかったものだが、今回は違って、明確なソリューションを提示してくる。勿論そのソリューションでOKな場合も、そうでない場合もあるのだが、このソリューション力というのは非常に重要であり、これこそエンジニアの本領であるということを痛感す。よくアーティストがミキサーやエンジニアを指定して作品を作ることがあるが、それはこのソリューション力を求めての事なのだろう。この部分をこうしたい、とか、こんな雰囲気といった、非常に抽象的なニーズを音に変える能力に加え、演奏者自身がサウンドや曲全体の雰囲気について、明確なビジョンを描ききれず、非常に少ない言語・ボキャブラリー(場合によってはジャスチャー)にて必死に説明を試みるとき、それを理解し、技術でサウンドに転化させ、納得させうる能力について、今回は完全に感じ入る。その意味では、エンジニアは完全に技術者なのではなく、アーティスト(技術や知識はそれを表現する手段に過ぎない)なのであった。
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