新井満が作曲し歌うCDが入っている『千の風になって』を 書店で見つけたのは少し前のことだった。
運転しながらCDを聴いてみようと思っていたのだが、まだCDを聞いていない。先日 実家で偶然BSで彼が歌っているのを聞いた。暖かい声だった。
この本は 写真集でもある。彼自身が写したのであろう(彼は写真家でもある)美しい風景に短いことばが重なる。それが実に心に沁みる光景となっている。
四季のそれぞれの一番いいところを取り出している そんなものばかりだ。
そのなかで 短く添えられた言葉が 溶け込んで 写真を見ているだけで、その風景をかすめる風が ささやいている気がしてくる。
死と再生の詩だと 彼は言う。
彼と妻との会話がおもしろい。
自分の方が先に逝くだろうから、葬儀のときは自分が歌うこの歌を流してくれと妻に言うと、妻が わたしの方が先に死んだらどうするんですか というが、彼は絶対おれのほうだと言う。
それに対して 妻が「一生のお願いがあるんだけど」という。「何?」と聞くと「(生まれ変わるのに)ナマコだけはやめてください」と答える。ナマコは妻の大の苦手なものだという話が書かれていた。
仲の良いお二人だなと その様子を想像し微笑ましくも思えた。
彼は この英語詩がどこでどうやって作られたのか?という疑問にある仮説を考えた。それがまた心に響く。
ページ数も少ないのであっというまに読んでしまうが、この本は何度も何度も開いてしまう。
昨年 亡くなった父もきっとわたしたちの周りで見守っているのだろうなと 思えてくる。
泣かないでください・・・という言葉に 救われる気がする本だ。