工学部教授のT先生から以下のような問い合わせが来た。
非常に興味ある内容なので紹介する。
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河村 先生
ご研究の方,いかがですか?
Y先生から時々話を伺っております.
二関節筋の機能について興味があり,ロボットに応用できないかと以前
から考えております.二関節筋の作用機序は,リンクの姿勢や力の作用
方向によって複雑に異なるようです.
ところで先生のご専門のCKCとOKCの差異について教えて頂けませ
んか?
昨年頂きました科研費の成果報告書を読ませて頂いております.
報告書のp108 にありますように連鎖機構は確かに機械工学から発した
語彙でしょう.ロボット機構では,リンク系が閉じたものを閉連鎖
(closed-loop chain),開いたリンク系を開連鎖(open-loop chain)
などと呼んでいます.閉連鎖は歩行時の両脚支持期や両脚での立位姿勢
も閉連鎖と呼んでいます.また産業ロボットのように腕が空間で運動し
ているときは開連鎖となり,その手先が対象物と接する場合は閉連鎖と
なります.
そこで先生が実施された実験で,筋力計を用いて足底でぐっと固定端を
押し下げる運動は,確かに閉連鎖ですが,報告書p21のORSの論文ですが,
足首の上に筋力計を固定し,膝の伸展力や屈曲力を計測する運動様式が
開連鎖となる理由は何でしょうか?
工学系からすれば筋力計のアームと下腿部は閉じており,閉連鎖と解釈
できますが,臨床側では開連鎖と呼んでいる理由は何でしょうか?足部
がフリーになっているからかどうか不明ですが,ご教示頂ければ幸いで
す.
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(私の返事は以下の通りである。)
T先生
最近は大学での校務がかなりの負担で、まいっています。
さて、下記の疑問ですが、工学関係者なら誰でも指摘するものです。
その他にも臨床では片脚立脚の状態も閉連鎖と解釈しています。重力によって動きが制限されて近似的に閉連鎖と捉えているからです。
臨床でのCKCの概念は1955年のSteindlerの記述によるもので、工学系との解釈の差はここに原因があります。
Steindlerは四肢末端に相当の外力が働くときCKCになると記述しています。
むちゃくちゃいい加減な記述で、そのため混乱が生じました。
Chaoは臨床ではCKCなどという言葉は使うべきではないと言っておりました。
むしろ、拮抗筋の作用状態でOKCは単独収縮、CKCは共同収縮と捉えるのが臨床では適しています。
下記の状態では工学的にはCKCですが、臨床的には大腿四頭筋の単独収縮を起こす足関節に重りを当てて膝伸展を行う運動様式と同じですからOKCと解釈されます。
私は運動様式を正確に定義するには外力の作用方向と力の大きさすなわちベクトルで表現すべきと考えています。
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臨床で使われているCKCの概念は、工学の定義とはかなり隔たりがあることはこれまでも知っていた。
改めて質問されてその認識を強くした。
来週日本リハ学会近畿地方会でCKCについて講演するので、早速このことに触れるつもりだ。
また、Clinical Rehabilitationから原稿を依頼されているのでこのことについても書こうと思う。
非常に興味ある内容なので紹介する。
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河村 先生
ご研究の方,いかがですか?
Y先生から時々話を伺っております.
二関節筋の機能について興味があり,ロボットに応用できないかと以前
から考えております.二関節筋の作用機序は,リンクの姿勢や力の作用
方向によって複雑に異なるようです.
ところで先生のご専門のCKCとOKCの差異について教えて頂けませ
んか?
昨年頂きました科研費の成果報告書を読ませて頂いております.
報告書のp108 にありますように連鎖機構は確かに機械工学から発した
語彙でしょう.ロボット機構では,リンク系が閉じたものを閉連鎖
(closed-loop chain),開いたリンク系を開連鎖(open-loop chain)
などと呼んでいます.閉連鎖は歩行時の両脚支持期や両脚での立位姿勢
も閉連鎖と呼んでいます.また産業ロボットのように腕が空間で運動し
ているときは開連鎖となり,その手先が対象物と接する場合は閉連鎖と
なります.
そこで先生が実施された実験で,筋力計を用いて足底でぐっと固定端を
押し下げる運動は,確かに閉連鎖ですが,報告書p21のORSの論文ですが,
足首の上に筋力計を固定し,膝の伸展力や屈曲力を計測する運動様式が
開連鎖となる理由は何でしょうか?
工学系からすれば筋力計のアームと下腿部は閉じており,閉連鎖と解釈
できますが,臨床側では開連鎖と呼んでいる理由は何でしょうか?足部
がフリーになっているからかどうか不明ですが,ご教示頂ければ幸いで
す.
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(私の返事は以下の通りである。)
T先生
最近は大学での校務がかなりの負担で、まいっています。
さて、下記の疑問ですが、工学関係者なら誰でも指摘するものです。
その他にも臨床では片脚立脚の状態も閉連鎖と解釈しています。重力によって動きが制限されて近似的に閉連鎖と捉えているからです。
臨床でのCKCの概念は1955年のSteindlerの記述によるもので、工学系との解釈の差はここに原因があります。
Steindlerは四肢末端に相当の外力が働くときCKCになると記述しています。
むちゃくちゃいい加減な記述で、そのため混乱が生じました。
Chaoは臨床ではCKCなどという言葉は使うべきではないと言っておりました。
むしろ、拮抗筋の作用状態でOKCは単独収縮、CKCは共同収縮と捉えるのが臨床では適しています。
下記の状態では工学的にはCKCですが、臨床的には大腿四頭筋の単独収縮を起こす足関節に重りを当てて膝伸展を行う運動様式と同じですからOKCと解釈されます。
私は運動様式を正確に定義するには外力の作用方向と力の大きさすなわちベクトルで表現すべきと考えています。
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臨床で使われているCKCの概念は、工学の定義とはかなり隔たりがあることはこれまでも知っていた。
改めて質問されてその認識を強くした。
来週日本リハ学会近畿地方会でCKCについて講演するので、早速このことに触れるつもりだ。
また、Clinical Rehabilitationから原稿を依頼されているのでこのことについても書こうと思う。
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