河村顕治研究室

健康寿命を延伸するリハビリテーション先端科学研究に取り組む研究室

第16回岡山リサーチパーク研究・展示発表会

2011-09-01 | 研究・講演
テクノサポート岡山(岡山市北区芳賀5301)において第16回岡山リサーチパーク研究・展示発表会が行われた。
これは岡山県内の大学および岡山リサーチパークに関係する企業・機関の研究成果を発表する場とすると共に、その成果を県内に広めるための交流の場を設け、岡山県内産業の振興に奇与することを目的とするものである。
来年度からは私もこの会の実行委員に加わることになるので急遽演題を出した。

シーティングベルトによる下肢筋力トレーニング
◎ 山下 智徳、河村 顕治(吉備国際大学大学院 保健科学研究科)
  川上 真幸(ダイヤ工業株式会社 開発部門)

【目的】変形性膝関節症などの運動療法としてセッティングは安全かつ簡便でしばしば処方されるが、大腿四頭筋の筋収縮は起こるものの他の筋群の筋活動はほとんど認められない。今回、セッティングと座位保持に使用されるシーティングベルトを用いたCKCエクササイズの筋活動を表面筋電図で解析して比較検討した。
【対象と方法】対象は健常若年男性10名(年齢21.8±0.4歳、身長169.9±4.1cm、体重61.0±6.6kg)である。セッティングは椅子座位で足関節を背屈しながら膝関節を完全伸展させた。シーティングベルトを用いたCKCエクササイズは同様に椅子座位にて膝屈曲30度で固定して踵を床面に押しつけるようにシーティングベルトを足底で突っ張らせた。計測は右下肢について行い、中殿筋、大殿筋、大腿筋膜張筋、大腿直筋、内側広筋、外側広筋、内側・外側ハムストリングの筋電位を表面筋電図で計測し最大筋収縮時の値で正規化して分析を行った。
【結果】セッティングでは大腿筋膜張筋、大腿直筋、内側広筋、外側広筋に10~15%MVCの筋活動を認めたが他の筋肉にはほとんど筋活動を認めなかった。シーティングベルトを用いたCKCエクササイズでは計測を行ったすべての筋肉に筋活動が認められ、内側広筋、内側・外側ハムストリングでは有意に筋活動が高値を示した。その他の筋群では、有意な変化は認められなかった。
【考察】シーティングベルトは大腿直筋を模して作られているためシーティングベルトを突っ張ると股関節屈曲と膝関節伸展に作用する。したがってシーティングベルトの股関節屈曲作用を打ち消すためにハムストリングが強力に収縮する。さらにハムストリングの膝屈曲作用を打ち消すために広筋群もより強く収縮する。この現象を利用することで大腿四頭筋とハムストリングの強力な共同収縮が得られ、膝関節の理想的な運動療法が行える。

今後の展望
 シーティングベルトは本来腰痛患者の座位保持に有用なベルトなので、高齢者や整形外科術後患者などが使用するには最適である。高齢の変形性膝関節症患者や人工膝関節術後患者などに実際に使用してその有用性を検証する。さらに若年者に多い膝関節前縦靭帯損傷患者の靱帯再建術後では早期の荷重訓練ができず新しい下肢筋力トレーニング法が求められていた。そこで、前十字靭帯再建術後患者の早期リハビリテーションとしてシーティングベルトを使用し、その有用性を検証する。
 腰痛や膝痛を訴える高齢者人口は今後ますます増大すると見込まれるので、シーティングベルトを使った下肢筋力トレーニングは非常に有益であると考える。

発表内容の活用可能な分野
変形性膝関節症などによる膝痛のホームエクササイズとして、テレビなどを見ながら気楽に下肢筋力トレーニングが可能となる。
病院の整形外科で人工膝関節置換術後や膝関節の靱帯手術後の早期リハビリテーションとして使用できる。
病院や施設におけるリハビリテーションの道具として使用できる。

コメント
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