河村顕治研究室

健康寿命を延伸するリハビリテーション先端科学研究に取り組む研究室

シーティングベルトによるレッグプレス・エクササイズ

2010-07-11 | CKCトリビア
シーティングベルトを座ったままの姿勢で使って効果的な膝の運動ができるのではないかと考えていた。
私はレッグプレスをしている時の床反力を計測するシステムを持っているので、それでどのような出力をしているのか調べてみようと考えた。
しかし、ベルトを突っ張ると床反力計に力は伝わらないのでこのままでは計測はできない。
そこで、特殊なベルトを使って、床反力計の裏側をベルトが回るように設定して、シーティングベルトを突っ張る時の足部出力の具合を計測してみることにした。


通常のレッグプレスではこのように股関節近くから足部に向かって出力が行われる。
この時、大腿四頭筋優位の出力となっている。


シーティングベルトを突っ張ると、予想通り出力が膝よりに変位する。
ハムストリングを使った出力になったのかと筋電図を計測してみたが、筋収縮は大腿四頭筋優位のままであった。

シーティングベルトを突っ張ると膝近辺から足部中央に向かって出力が行われている。
しかし、ハムストリングの筋活動が高まるわけではなかった。
これは予想外の結果である。


しかし、よくよく考えてみるとハムストリングがほとんど収縮しなくても、下腿軸に沿って外力が加わると、膝関節の剪断力はほとんど働かない。
結果としては膝関節に安全な運動様式となっている。

これは、安全で安楽な膝の運動として有望である。



各条件においての膝関節に働く負荷の状態を記述する。この考察は膝蓋大腿関節を無視した2次元での考察である。脛骨に注目して力の釣り合いを考えたとき、脛骨にかかる外力 ( Fa ) と、大腿四頭筋の発揮する力 ( Fb ) および大腿骨の接触力 ( Fc ) のベクトルは閉じて三角形を形成する。関節の接触力はさらに軸圧 ( C ) と脛骨前方引き出し力に対する抵抗力 ( S ) に分解される 。このようなモデルを考えたとき、多くの開運動連鎖のような脛骨の遠位に負荷をかけた運動では、軸圧、脛骨前方引き出し力ともに大きいことが示される。そこで、脛骨の近位に負荷をかけるようにすると、脛骨前方引き出し力は減少する。また、脛骨軸に対してより浅い角度で負荷をかけると脛骨前方引き出し力は減少する。さらに、大腿四頭筋とハムストリングの共同収縮を引き起こした場合も同様に脛骨前方引き出し力は減少する。この図において大腿四頭筋 ( Q ) とハムストリング ( H ) の合力が Fb となる。閉運動連鎖の最大の特性はこの大腿四頭筋とハムストリングの共同収縮により前方引き出し力が減少するという co-contraction theory にあると考える。
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