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ー闇の列車、光の旅ー
SIN NOMBRE/WITHOUT NAME
2009年 メキシコ/アメリカ
ケイリー・ジョージ・フクナガ監督 エドガル・フローレス(カスペル/ウィリー)パウリナ・ガイタン(サイラ)クリスティアン・フェレール(スマイリー)テノッチ・ウエルタ・メヒア(リルマゴ)
【解説】
009年のサンダンス映画祭で監督賞と撮影監督賞を受賞した、感動的なロードムービー。現在の中南米の厳しい状況を、ホンジュラス移民の少女とメキシコのギャング団の一員である青年の偶然の出会いを軸に描く。監督はこれが長編デビュー作となる新鋭のケイリー・ジョージ・フクナガ。ヒロインをメキシコのテレビで活躍するパウリナ・ガイタンが好演する。不法移民やギャングという闇の世界で生きる者たちの感動の人間ドラマが胸に染みる。
【あらすじ】
サイラ(パウリナ・ガイタン)は、父と叔父とともにホンジュラスを出て自由の国アメリカを目指す。3人はどうにかメキシコまでたどり着き、米国行きの列車の屋根に乗り込むことができる。ほっとしたのもつかの間、ギャング一味のカスペル(エドガール・フローレス)らが、移民たちから金品を巻き上げるために列車に乗り込んで来て……。(シネマトゥデイ)
【感想】
日系の新進監督ケイリー・ジョージ・フクナガが09年のサンダンス映画祭で監督賞と撮影賞を受賞した作品です。
予告編で見た、列車の上に乗って国境を目指す人々の群れ。
すごい光景です。
カスペル(エドガール・フローレス)というギャングの名前を持つウィリー。
メキシコのギャング、MS(マラ・サルバトルチャ)のメンバーで、忠誠を誓うタトゥーも入れている。
12歳の少年スマイリー(クリスティアン・フェレール)を呼び出して、組織に入れる儀式をした。
ガスペルはリーダーのリルマゴ(テノッチ・ウエルタ・メヒア)に一目置かれているが、秘密があった。
恋人のマルタとの秘め事。
でも、このことは絶対にリルマゴに知られてはならない。
しかし、秘密が暴かれる日は早く来た。
ガスペルの浮気を疑ってマルタが集会にやって来たのだ。
ガスペルは袋だたきに会い、マルタは殺されてしまう。
泣き崩れるガスペルにリルマゴは容赦がない。
スマイリーとともに列車強盗に連れ出した。
二人の忠誠心を試そうとしたのだ。
世界でも貧しい国とされているホンジュラスの暮らすサイラ(パウリナ・ガイタン)。
出稼ぎでアメリカで暮らしていた父が強制送還されて帰って来た。
父にはアメリカに新しい家族がいた。
ホンジュラスの暮らしに見切りをつけ、ちち、叔父とともにアメリカを目指す決心をしたサイラ。
明日をも知れない危険な旅に出た。
ようやく確保した列車の屋根の居場所。
列車はのろのろと進む。
雨が降って来た。
ビニールシートを広げ雨を避ける。
そこへ、リルマゴ一味が乗り込んで来たのだ。
銃やナイフを突きつけて金を脅し取る。
サイラの元にもギャングどもがやってきた。
「サルマ・ハエックに似ているぞ」とリルマゴ。
強姦しようと押さえつけたとき、ガスペルの刀がリルマゴの首を斬りつけた。
列車から落ちるリルマゴ。
ガスペルはスマイリーを下ろし、自分は列車の端に座り込んで流れる景色をぼーっと見ていた。
人々はガスペルを殺そうとするが、サイラはそのつど妨害する。
父に禁じられても、ガスペルに近づいて行く。
ガスペルが列車を降りたとき、サイラもついて来た。
ギャングは裏切り者のガスペルを許さない。
どこまでも追ってくる。
「なぜついて来たんだ?恋人を守れなかった自分に。もう明日のない自分に」
ガスペルはうめく。
サイラはひるまない。
「あんたを信じている」
ラストは、かなり衝撃的ですが、これは悲劇なのか、サイラは光を見つけたのか?
うーん、そんなに簡単じゃない問題に、私の思いは立ち止まってしまいました。
不法移民は悪いことですが、命の危険を冒してまで自分の国を脱出する人のことを考えたら、ほんと、どうにかしないと!と思います。
また一方の、「シティ・オブ・ゴッド」でも描かれていたメキシコのギャング。
幼い少年までギャングにされて悪事に利用されるのは、とても残酷なことです。
それもまた、生きる手だてのない貧困の結果だと思います。
この映画に描かれている国家の貧困。
その問題を真っ正面から取り上げたのが、日系の監督というのが、なんとなく誇らしい気がしました。