ーちいさな哲学者たちーCE N'EST QU'UN DEBUT/JUST A BEGINNING
2010年 フランス
【解説】
哲学のクラスを設けて考える力を養うユニークな教育方法が採用されているパリ郊外にある幼稚園の活動を追うドキュメンタリー。『イン・マイ・スキン人には言えない、私が本当にしたいこと』で撮影を務めたピエール・バルジェがカメラを回し、普通の幼稚園では教えない哲学を学ばせることで変化する園児の成長と変化をつぶさに観察する。人種問題や死について語る園児たちの姿に、教育の可能性について再考を迫られる興味深い一作。
【あらすじ】
1960年代に「こどものための哲学」という研究がコロンビア大学の教授によって提唱され、その理論をパリ郊外にある幼稚園では実践していた。それは哲学の勉強クラスを設けることで子どもたちが自分で考える力を養うユニークな教育法で、園児たちが愛や人種などのテーマで語り合うという斬新な試みにカメラが迫る。(シネマトゥデイ)
【感想】
「幼稚園で哲学の授業」と聞けばびっくりしてしまいますが、このドキュメンタリーを見る限り、楽しい授業だったようです。
舞台となったのは公立の幼稚園で、フランスの郊外で自然は豊かですが、団地が立ち並び、移民も多くてあまり豊かではない地区のようでした。
子供たちは、いろんな人種の子がいて、まだ回らない舌で一生懸命お話しする姿がすごくかわいい。
女の子たちの髪型もすごくかわいかったです。
「哲学の教室を始めます」と先生がろうそくに火をつけました。
子供たちが車座になって、先生が何を言うのか聞き耳を立てています。
先生が「考えるってどういうこと?」と質問しました。
ほとんどに子供が黙っている中で、ある子供が「考えが頭の中にあって、それが口を開けると出てくるの」と応えました。
そんな風にして始まりました。
次からはテーマが決められました。
「愛とは?」「死とは?」「貧しさとは?」「リーダーとは?」そして「自由とは?」
どのテーマも、大人に投げかけられたらたじたじとするようなテーマですが、子供たちは自由に発言しています。
発言しているだけで、答は当然ありません。
先生も意見は言わないし、いいも悪いも判断しません。
それでも、子供たちは自分で考え、討論らしい受け答えもできるようになっていました。
最後の授業では、「小学校へ行ったら哲学の授業がなくなるから寂しい」という意見も聞かれました。
でも、ある男の子は「考えろっていわれるのは嫌い」とか「女たちはいろいろ命令してうるさい」と本音も。
とにかく、自分の考えを頭でまとめて自分の言葉で言えるようになったことがすごい。
哲学って、つまり集中して考えることだったのね。
パスカルは言っています。
「人間は考える葦である」ってね。
その言葉が、ずっしりと理解できた作品でした。
いいドキュメンタリーでした。
幼児教育を志す人には見てもらいたいなあ。
子供だってちゃんと訓練をすれば、子供なりにちゃんと考えて意見も言える、ということがよくわかりました。
それどころか、子供の観察力や判断力は、時には大人が忘れている何かを気づかせてくれるかもしれないと思いました。