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●科学技術ニュース●産総研、新しいリアルタイム分光分析法の開発しガスが発生しても妨害されずに溶液の高精度な測定が可能に

2022-09-26 11:09:05 |    化学
 産業技術総合研究所(産総研)触媒化学融合研究センター 官能基変換チーム 川波 肇 上級主任研究員と、化学プロセス研究部門 化学システムグループ 小平哲也 上級主任研究員は、筑波大学大学院数理物質科学研究群化学学位プログラム 李日升(博士後期課程)と共同で、気泡が発生する化学反応の進行過程でも反応溶液の安定した分光測定ができる新しい手法を開発した。

 水素は化石燃料に代わるエネルギー源として注目されている。そのままでは輸送効率が低いため、一度ギ酸に変換して輸送する手法が研究されている。ギ酸から水素を再生するには、高効率・長寿命の触媒が必要。この研究では、水中の反応時に生成するガス(水素、二酸化炭素)の存在で、紫外線や可視光などによる測定方法で反応過程を観察することは困難であった。

 気体と液体が混合した反応溶液を高速でかき混ぜると、気体と液体の密度の違いによる遠心力の差で、それぞれが速やかに分離される。今回、この現象を利用することで、ギ酸の脱水素化で水素を発生する反応溶液の紫外可視拡散反射スペクトルの測定について、気体の存在による測定時のノイズを大幅に減らすことができた。さらに長時間にわたるスペクトルの時間的変化を高精度で安定的に測定できるようになった。

 同技術は、さまざまなガス生成反応での触媒性能の評価や反応速度の検討などに適用ができる。

 この分光技術の高い汎用性から、赤外分光法やX線分光法などのさまざまな分光法に適応し、未解決だった反応機構の解明に役立てて行く。また、技術を使ってギ酸の脱水素化反応時の詳細な反応機構の解明により、触媒の長寿命化を進めまる。高性能な触媒の開発を通じて、ギ酸を水素キャリアとする高効率なシステムの実用化、水素エネルギー社会の実現に貢献する。<産業技術総合研究所(産総研)>
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