“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

◆科学技術書<新刊情報>◆不完全性定理とはなにか(竹内 薫著/講談社)

2013-04-30 10:59:34 | ●科学技術書・理工学書 <新刊情報>(2018年5月4日以前)●

 

<新刊情報>

 

書名:不完全性定理とはなにか~ゲーデルとチューリングの考えたこと~

著者: 竹内 薫

発行:講談社(ブルーバックス)

 「証明が不可能である」を、ゲーデルとチューリングの二人の天才は、どのように証明したのか?正しくても常に証明できるとは限らない。驚くべき二人のアイディアを、できるだけ分りやすく紹介する。 
 

 

 
 

 

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◆科学技術テレビ番組情報◆NHK「サイエンスZERO」/BS朝日「BBC地球伝説」/TBSテレビ「夢の扉+」/他

2013-04-29 10:19:44 |    ◆TV番組◆


<テレビ番組情報>

 

NHKテレビ Eテレ  サイエンスZERO 毎週日曜日 午後11時30分~0時00分
                            再放送毎週土曜日 昼12時30分~1時00分
 
5月5日(日) 打倒ソニックブーム! 超高速旅客機の挑戦 

女優:南沢 奈央/サイエンス作家:竹内 薫/アナウンサー:中村 慶子
JAXA航空本部:吉田憲司

 飛行機が音速を超えると、必ず発生する爆音ソニックブーム! これを解決する最新鋭の機体がついにお目見え! 史上唯一の超音速旅客機コンコルドから続く闘いの舞台裏です!

BS朝日   BBC地球伝説 午後8時~9時

4月29日(月) シェフがめぐる 地中海 豊かなる食の旅
                       シチリア/プーリア 味わい豊かな野草たち
4月30日(火) シェフがめぐる 地中海 豊かなる食の旅
                       ケルキラ ギリシャ伝統の野菜料理
5月1日(水) シェフがめぐる 地中海 豊かなる食の旅
                       マヨルカ/カタルーニャ 情熱のスペイン料理
5月2日(木) シェフがめぐる 地中海 豊かなる食の旅
                       モロッコ/トルコ エキゾチックな食文化

シェフがめぐる 地中海 豊かなる食の旅(4月24日~5月2日)

 イギリスの有名シェフ、リック・スタインが地中海に面した様々な地域を巡り、バラエティ豊かな食文化とそれを支える人々の姿を紹介する6回シリーズ

TBSテレビ   夢の扉+ 毎週日曜日 午後6時30分~7時
 
5月5日(日) “犯罪の巣窟”ニューヨークの地下鉄を再生させた日本人
           ~“デザインの力”で人々の行動を変え より良い社会をつくる!~

ナレーター:中井貴一

ドリームメーカー:工業デザイナー 宇田川 信学

 アメリカ前国務長官ヒラリー・クリントン、ポップスの女王マドンナと並び、「過去25年間で、最も影響力のあるニューヨーカー100人」に選ばれた日本人がいる。工業デザイナー、宇田川信学、48歳。危険、暗い、汚い・・・。かつて、世界最悪と言われたニューヨークの地下鉄。その再生を託された宇田川は、“地獄の地下鉄”を、女性も子供も安心して利用できる地下鉄に蘇らせた立役者だ。ニューヨーカーを変えた、宇田川デザインの持つ“力”とは?日本が世界に誇る工業デザイナーの挑戦に迫る。

NHKテレビ Eテレ   地球ドラマチック 毎週土曜日 午後7時00分~44分
                            再放送 毎週月曜日 午前0時00分~0時44分
 
5月4日(土) アンコール放送  奇跡の生還に導く声~“守護天使”の正体は?~

 “奇跡の生還”を果たした人たちの多くに、共通した体験があった。不思議な声に導かれたというのだ。声の正体はいったい何か。脳科学者のユニークな研究を交えて伝える。2001年9月11日にニューヨークのワールドトレードセンターで働いていた男性、ダイビングの途中で命綱を見失った女性、宇宙飛行士、登山家。まったく異なる危険から生還した人々がきいた「導く声」とは? 極限状態に置かれた人間の脳の働きについての研究を紹介。人間の秘められた力か、脳の錯覚か。こうした体験に遭遇した人たちのインタビューと、科学者による最新研究を伝える。


NHK-BSプレミアム   コズミック フロント 毎週木曜日 午後10時00分~11時00分
                            再放送 月曜日 午後11時45分~0時44分
 
5月9日(木)  惑星 地球 生命大爆発の秘密

 生命の星・地球。この惑星にこれほど多様な生命が存在できるのは、単に「太陽からの距離がちょうど良く、液体の水が存在できたから」だけではない。意外にも、極めて重要な理由が、この惑星の内部に隠されている。その秘密を解き明かす鍵が火星だ。最新研究によると、太陽系誕生から間もない45億年前、火星も地球も同じく海で覆われていた。太陽からの距離だけなら、火星も生命に溢れた惑星となったハズだ。しかし現実には2つの惑星の運命は大きく分かれる。火星はその後、海を失い不毛の大地と化した。一方、地球は海を保ち、やがて複雑で豊かな生命を進化させることとなる。その原動力は何なのか?番組では、生命が一気に進化を爆発させた「カンブリア時代」に注目。当時の奇妙奇天烈な生物たちをCGで再現しつつ、惑星地球において生命が飛躍的に進化しえた秘密を、宇宙の視点で解き明かす。

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◆科学技術書<新刊情報>◆チューリングの大聖堂(ジョージ・ダイソン著/早川書房)

2013-04-26 11:19:31 | ●科学技術書・理工学書 <新刊情報>(2018年5月4日以前)●

 

<新刊情報>

 

書名:チューリングの大聖堂―コンピュータの創造とデジタル世界の到来―

著者:ジョージ・ダイソン

訳者:吉田 三知世

 グーグルに象徴されるデジタル世界の基礎は、原爆を創ったのと同じ天才たちによって創られていた!コンピュータの仕組みと理論の両方への関心を満足させる、決定版「デジタル世界」創世記。グーグル、アマゾンが君臨する現代のデジタル世界は、もとをたどれば数学者チューリングの構想した「チューリングマシン」に行きつく。そして理論上の存在だったチューリングマシンを現実の装置として創りあげたのが万能の科学者フォン・ノイマンだ。彼の実現した「プログラム内蔵型」コンピュータが数に関する概念を変え、デジタル宇宙を創生したのだ。しかし、フォン・ノイマンがそれを成し遂げたのは、産業や学問のしきたりにとらわれない、プリンストンの高等研究所という舞台あればこそであった。チューリングは何を考え、フォン・ノイマンはどう立ち回り、アインシュタインやゲーデルを擁した高等研究所はいかにしてその自由性を得るにいたったのか。そして彼らとともにコンピュータ開発を支えた科学者・技術者はいかにして関わりを持つようになり、現代に直結するどんな偉業を成し遂げたのか。高等研究所などに収められた詳細な文献や写真資料、豊富なインタビュー取材をもとに、大戦後の混乱でこれまで必ずしも明らかでなかった歴史事情や、知られざる人々の肖像をちりばめて綴る、決定版コンピュータ「創世記」。(早川書房の紹介文から) 

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■科学技術ニュース■東北大学など、磁気の波を用いた熱エネルギー移動に成功

2013-04-25 09:57:50 |    エネルギー

 東北大学金属材料研究所の安東秀助教、東北大学原子分子材料科学高等研究機構の齊藤英治教授、日本原子力研究開発機構先端基礎研究センターの前川禎通センター長、東邦大学理学部の大江純一郎講師らは、磁気の波(スピン波)を用いて、熱エネルギーを望みの方向に移動させる基本原理の実証に成功した。

 これにより、新しい熱エネルギー輸送法として、次世代電子情報・マイクロ波デバイスの省エネルギー技術への応用が期待される。
 
 近年、持続可能な社会の実現に向けた環境・エネルギー問題への取り組みが活発化する中で、クリーンで信頼性の高いエネルギー源の開発や、電子・マイクロ波デバイスの省電力化が求められている。

 これまでデバイスに情報を入出力する方法として電流やマイクロ波が用いられてきたが、多くのエネルギーが熱として浪費され、この発熱によりデバイスの動作が不安定となる問題があるため、効率的な排熱方法の開発が望まれていた。
 
 今回、安助教、齊藤教授らは、磁気の波(スピン波)を利用することで、熱エネルギーを望みの方向に移動させることができる基本原理を考案し、これを実証した。

 この手法により、熱エネルギーを制御して熱源から離れた場所へ運び、デバイスからの排熱効率を上げることが可能となった。

 今後、この手法を用いることで電子デバイス・マイクロ波デバイス中の発熱の問題が解決され、次世代省エネルギーデバイス技術の開発に貢献することが期待される。
 

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◆科学技術書<新刊情報>◆自滅する人類―100年後の地球―(坂口謙吾著/日刊工業新聞社)

2013-04-23 10:38:04 | ●科学技術書・理工学書 <新刊情報>(2018年5月4日以前)●

 

<新刊情報>

 

書名:自滅する人類―分子生物学者が警告する100年後の地球―

著者:坂口謙吾

発行:日刊工業新聞社

 環境問題、エネルギー不足、人口増加などへの注目が続いているが、これらの問題を生物学的にみると「人類滅亡」への予兆であるといえる。このままでは、あと100年以内に人類は滅びてしまう―。本書では、これまでの生物の誕生から滅亡までを振り返ることで、人類が今おかれている危機状況を示し、今後長期的に繁栄するためにはどうすべきかを問う。(日刊工業新聞社の紹介文から)


 

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◆科学技術テレビ番組情報◆NHK「サイエンスZERO」/BS朝日「BBC地球伝説」/TBSテレビ「夢の扉+」/他

2013-04-22 13:45:25 |    ◆TV番組◆

 

<テレビ番組情報>

 

NHKテレビ Eテレ  サイエンスZERO 毎週日曜日 午後11時30分~0時00分
                            再放送毎週土曜日 昼12時30分~1時00分
 
4月28日(日) アンコール放送 湖に眠る奇跡の堆積物

女優:南沢 奈央/サイエンス作家:竹内 薫/アナウンサー:中村 慶子
ニューカッスル大学:中川 毅

 日本の湖に、世界の科学者が驚嘆したお宝が! それは7万年にもわたって作られてきた「奇跡の堆積物」。縄文土器の年代から、マヤ文明衰退の原因まで、歴史が書きかわります!

BS朝日   BBC地球伝説 午後8時~9時

4月22日(月) 地中海6つの旅:水と文明
4月23日(火) 地中海6つの旅:塩と文明
4月24日(水) シェフがめぐる 地中海 豊かなる食の旅
           コルシカ/サルデーニャ 地中海の山の幸
4月25日(木) シェフがめぐる 地中海 豊かなる食の旅
           サルデーニャ/シチリア 最高の魚料理

シェフがめぐる 地中海 豊かなる食の旅(4月24日~5月2日)

 イギリスの有名シェフ、リック・スタインが地中海に面した様々な地域を巡り、バラエティ豊かな食文化とそれを支える人々の姿を紹介する6回シリーズ

TBSテレビ   夢の扉+ 毎週日曜日 午後6時30分~7時
 
4月28日(日) 学級崩壊の予兆や、いじめ

ナレーター:坂口憲二

ドリームメーカー:早稲田大学教授 河村茂雄

教室に潜む「見えない問題」をあぶりだす画期的なアンケートが登場。

NHKテレビ Eテレ   地球ドラマチック 毎週土曜日 午後7時00分~44分
                            再放送 毎週月曜日 午前0時00分~0時44分
 
4月27日(土) アンコール放送 カリスマ料理人 機内食を大改革!
 
 イギリスのシェフで、奇想天外な料理で知られるカリスマ料理人ヘストン・ブルメンタールが、「マズイ食事」の代表格であるイギリスの航空会社の機内食を大改革!飛行機の機内食の改革には、狭い調理場、限られた時間、調理道具の制限など、さまざまな制限が立ちはだかる。ヘストン・ブルメンタールは、数々の悪条件を克服し、おいしい食事に生まれ変わらせることは、可能なのか? 3万5000フィートの上空を飛行する機内は気圧が低く乾燥しているため味覚が鈍る。ヘストンは環境と味覚の関係に科学的にアプローチ。究極の状況でおいしい料理を作るべく悪戦苦闘する。

NHK-BSプレミアム   コズミック フロント 毎週木曜日 午後10時00分~11時00分
                            再放送 月曜日 午後11時45分~0時44分
 
5月9日(木)  惑星 地球 生命大爆発の秘密

 生命の星・地球。この惑星にこれほど多様な生命が存在できるのは、単に「太陽からの距離がちょうど良く、液体の水が存在できたから」だけではない。意外にも、極めて重要な理由が、この惑星の内部に隠されている。その秘密を解き明かす鍵が火星だ。最新研究によると、太陽系誕生から間もない45億年前、火星も地球も同じく海で覆われていた。太陽からの距離だけなら、火星も生命に溢れた惑星となったハズだ。しかし現実には2つの惑星の運命は大きく分かれる。火星はその後、海を失い不毛の大地と化した。一方、地球は海を保ち、やがて複雑で豊かな生命を進化させることとなる。その原動力は何なのか?番組では、生命が一気に進化を爆発させた「カンブリア時代」に注目。当時の奇妙奇天烈な生物たちをCGで再現しつつ、惑星地球において生命が飛躍的に進化しえた秘密を、宇宙の視点で解き明かす。

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◆科学技術書<新刊情報>◆「宇宙の果てまで―すばる大望遠鏡プロジェクト―」(小平桂一著/早川書房)

2013-04-19 10:55:42 | ●科学技術書・理工学書 <新刊情報>(2018年5月4日以前)●

 

<新刊情報>

 

書名:宇宙の果てまで―すばる大望遠鏡プロジェクト20年の軌跡―

著者:小平桂一

発行:早川書房

 無謀と思われた科学計画はいかに実現されたか? 元国立天文台長の手になる稀有の記録。 宇宙の果てを見通す、世界最大級の望遠鏡を日本人の手で創りたい。夢としか思えないこの試みに挑んだ本書の著者ら天文学関係者は、粘り強く数々の困難を乗り越えていった。最大の難関である国家予算枠の獲得でも、「禁じる法律はない」という事実を拠り所に働きかける著者に霞ケ関も動かされ……未曾有の科学プロジェクト「すばる」建設の統括推進役を務めた著者が自らの天文学者としての歩みに重ねて綴る科学実録。(早川書房の紹介文から)

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■科学技術ニュース■東北大学など、磁気モーメントの波を利用した低エネルギー磁化スイッチングに成功

2013-04-18 10:33:21 |    電気・電子工学

 東北大学金属材料研究所の高梨弘毅教授および関剛斎助教のグループは、慶應義塾大学理工学部の能崎幸雄准教授および産業技術総合研究所ナノスピントロニクス研究センターの今村裕志研究チーム長との共同研究により、2つの異なる性質をもつ磁石をナノメートルの厚さ(ナノは10億分の1)で積層化することで、磁石の中に磁気モーメントの波(スピン波)を生成し、そのスピン波を利用して従来の10分の1という小さな磁場で磁化をスイッチングさせることに成功した。

 これにより、今後ハード超高密度磁気記憶デバイスの書き込み技術への展開などが期待できる。

 ディスクドライブ(HDD)や磁気ランダムアクセスメモリーに代表される磁気記憶デバイスは、磁石の向きで“1”と“0”の情報を記憶している。情報の書き込みには磁石の方向をスイッチングさせる必要があり、通常、外部から磁場を加える手法が用いられている。

 しかし、磁気記憶デバイスの高記録密度化が進むにつれ、スイッチングのための磁場(スイッチング磁場)が急激に増大し、動作電力低減の観点から深刻な問題となっていた。

 研究グループは、鉄白金(FePt)合金とパーマロイ(NiFe)合金というスイッチング磁場の異なる2つの磁石をナノメートルの領域で積層化させた薄膜を作製した。FePt合金はスイッチング磁場の大きな磁石(ハード磁性材料)であり、パーマロイ合金はスイッチング磁場の小さな磁石(ソフト磁性材料)。

 これら磁石の中における磁気モーメント(小さな磁石に相当)の運動を調べたところ、磁気モーメントの回転(歳差)運動が波のように伝搬するスピン波が存在していることが明らかとなった。さらに、パーマロイ合金内のスピン波を外部から強制的に生成した場合、スピン波がFePt合金まで伝搬し、FePt合金のスイッチング磁場が10分の1に低減することを発見した。

 今回の成果は、HDDの超高記録密度化と低消費電力化を同時に実現するための飛躍的な技術革新である。さらに、最近注目を集めているスピントロニクス素子の低消費電力化への応用も可能であり、幅広い応用展開が期待される。

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■科学技術書・理工学書ブックレビュー■「世界でもっとも美しい10の科学実験」(R・P・クリース著/日経BP社)

2013-04-16 10:45:35 |    科学技術全般

書名:世界でもっとも美しい10の科学実験

著者:ロバート・P・クリース

訳者:青木 薫

発行所:日経BP社

発行日:2006年9月19日1版1刷発行

目次:序文  移り変わる刹那
    第1章 世界を測る エラトステネスによる地球の外周の長さの測定
    第2章 球を落とす 斜塔の伝説
    第3章 アルファ実験 ガリレオと斜面
    第4章 決定実験 ニュートンによるプリズムを使った太陽光の分解
    第5章 地球の重さを量る キャヴェンディッシュの切り詰めた実験
    第6章 光という波 ヤングの明快なアナロジー
    第7章 地球の自転を見る フーコーの崇高な振り子
    第8章 電子を見る ミリカンの油滴実験
    第9章 わかりはじめることの美しさ ラザフォードによる原子核の発見
    第10章 唯一の謎 一個の電子の量子干渉
    終章  それでも科学は美しくありうるか?

 この書、「世界でもっとも美しい10の科学実験」の書名を見たら誰でも、典型的な科学技術書と感じると思うが、実は著者のロバート・P・クリースは、米ニューヨークのStony Brook大学の哲学科の教授である。つまり、純粋の科学者が書いた技術書ではなく、哲学サイドから科学の成果をいろいろな角度から観察し、世界を驚かせた10の実験を今一度見直して、科学史における新たな位置づけを試みたのが、この書籍なのである。哲学において科学哲学という、科学の成果を哲学的な見地で考察する専門分野がある。特に、最近では、量子論の最先端の研究においては、科学哲学者が参画し、研究することすら行われているのだ。

 この書で取り上げられた実験は、エラトステネスの「地球の外周の長さの測定」、ガリレオの「落下の実験」と「斜面の実験」、ニュートンの「プリズムを使った太陽光の分解」、キャベンディッシュの「地球の密度の測定」、ヤングの「光の干渉パターンの実験」、フーコーの「振り子の実験」、ミリカンの「油滴実験」、ラザフォードの「原子核の発見」、それにヨーンソンおよび外村彰の「電子の量子干渉実験」の10の実験である。これらの実験の多くは、理科系の学生なら、学校の授業で一度は教わったことのあるものなので、そう驚くことはないのであるが、この書によって、それらの実験の背景が初めて浮かび上がり、読みながら「そうか、この実験にはこんな背景が隠されていたのだ」と再認識させられる。

 学校の教科書は、数式の羅列であり、多くの学生はもうそれだけでうんざりしてしまう。その結果、それらの実験の本質を見逃しがちになる。その点、この書には、一切数式は出てこないので、数式に弱い読者にはこの上ない科学技術の実験の解説書となっている。しかも、ただそれだけではなく、これらの実験がどのような思考の上に立って行われたのかが、実験者の目線に立ち、目の前に立ちはだかる困難をどのようにして克服していったのかが、時系列的に解説されており、読者は、あたかも実験者本人になった気分で、読み進むことができる。ガリレオとかニュートンの業績は広く知られているが、例えば、キャヴェンディッシュやミリカンについてはあまり知られていない。1個の電子が帯びる電荷の値を実験で明らかにしてノーベル賞を受賞したミリカンの実験が行われたシカゴ大学に出向いた筆者は、ミリカンの名を誰も知らない現実に直面し、唖然とする。

 つまり、「世界に偉大な業績を残しても、その業績が忘れ去られることだってあるのだ。だから私は、有名人だけの実験を追いかけることはしない」とでも著者のロバート・P・クリース氏が語っているようでもある。ところでこの書には、2人の日本人が登場する。一人は、物理学者の長岡半太郎(1865年―1950年)であり、もう一人は、電子顕微鏡の第一人者で、ノーベル賞に最も近い日本人の一人と言われた外村彰(1942年―2012年)である。長岡半太郎は、原子の内部構造の「太陽系モデル」の提案者して、ラザフォードの「原子核の発見」の章の一部で紹介されている。一方、外村彰は、ドイツの物理学者のヨーンソンと併せてではあるが、「電子の量子干渉実験」の章で詳しく紹介されている。ガリレオやニュートンと並び、この書「世界でもっとも美しい10の科学実験」の中の一つの章として、日本人が採り上げられていることを知っている日本人は、果たして何人いるのだろうか。(勝 未来)

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◆科学技術テレビ番組情報◆NHK「サイエンスZERO」/BS朝日「BBC地球伝説」/TBSテレビ「夢の扉+」/他

2013-04-15 10:30:29 |    ◆TV番組◆

       

<テレビ番組情報>
 

 

NHKテレビ Eテレ  サイエンスZERO 毎週日曜日 午後11時30分~0時00分
                            再放送毎週土曜日 昼12時30分~1時00分
 
4月21日(日) 海の森が消える! 「海底砂漠化」のミステリー

女優:南沢 奈央/サイエンス作家:竹内 薫/アナウンサー:中村 慶子

東北大学教授 吾妻行雄

  海の中で最も豊かな生態系「海の森」が、世界中で謎の死滅を遂げている! その主犯は超意外な、ある生き物! 何億匹にまで増殖し森を食い荒らす衝撃映像で紹介!

BS朝日   BBC地球伝説 午後8時~9時

4月15日(月) 休止
4月16日(火) 地中海6つの旅:石と建築
4月17日(水) 地中海6つの旅:色と芸術
4月18日(木) 地中海6つの旅:信仰と科学

TBSテレビ   夢の扉+ 毎週日曜日 午後6時30分~7時
 
4月21日 「黄色い桜」に、「収穫量の多いお米」!

ナレーター:向井 理

ドリームメーカー:農学博士 阿部知子

品質改良のスペシャリストがイオンのビームで、被災地の特産物に新たな命を吹き込む。

NHKテレビ Eテレ   地球ドラマチック 毎週土曜日 午後7時00分~44分
                             再放送 毎週月曜日 午前0時00分~0時44分
 
4月20日 動物は何を考えているのか?

 本能のままに生きているように見える動物たち。彼らは何かを考えて行動しているんだろうか…。ユニークな実験を通して、そんな疑問を解消!動物の“思考”を徹底検証する。動物に“モラル”はあるのか? 2匹の犬に「お手」をさせ、片方だけに褒美をあげ続ける。犬に不公平という感覚はあるのか。ネズミは、見知らぬ仲間が、おりに閉じ込められて窮地に陥っているのを見て、助けようとするのか。また、動物の“決断”の秘密にも迫る。ハチの群れは、離れた場所に2つの巣箱があるとき、より条件の良い方を選んで巣作りをする。群れは、この“決断”をどうやって下しているのか。

NHK-BSプレミアム   コズミック フロント 毎週木曜日 午後10時00分~11時00分
                             再放送 月曜日 午後11時45分~0時44分
 
4月18日 広がれイカロス 夢の翼―世界初 宇宙ヨット開発秘話―

 4月22日(月)午後11時45分~ 2010年6月、小惑星探査機「はやぶさ」の偉業の陰で、実はもうひとつ画期的なミッションを日本は成功させていた。宇宙で帆を広げ、太陽光を受けて推進する世界初の宇宙帆船「イカロス」だ。太陽光の力は極めて微弱ながら宇宙空間は空気抵抗がないため、積もれば光速近くまで加速できるという究極の省エネマシン。しかしその実現は困難を極めアメリカNASAですら失敗、SF小説の中の存在でしかなかった。そんな高いハードルに挑戦したのが、日本JAXAの若手のプロジェクトチームだった。

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