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★科学技術ニュース★AI向けクラウド型計算システム「ABCI」、深層学習の学習速度でソニーが世界最速に

2018-11-15 09:25:54 |    人工知能(AI)

 産業技術総合研究所(産総研)は、平成30年8月1日より運用を開始した「AI橋渡しクラウド(AI Bridging Cloud Infrastructure=ABCI)」の能力限界に挑戦する「ABCIグランドチャレンジ」を実施しているが、10月に実施した第2回「ABCIグランドチャレンジ」において、ソニーの研究グループが深層学習の学習速度の世界最速記録を大幅に更新した。

 「ABCIグランドチャレンジ」は、世界最大規模の人工知能処理向け計算インフラストラクチャ「ABCI」がもつ最大計算ノード数である1,088ノード(4,352GPU)を最大24時間、1研究グループでの占有利用ができる公募型チャレンジプログラム。

 10月に実施したABCIグランドチャレンジでは、ソニーの研究グループがImageNetの画像分類データセットを利用したResNet-50の学習を、2176GPUを用いて約3.7分で完了し、これまで最速とされていた中国Tencent社が7月に記録した6.6分を大幅に短縮した。

 また、「ABCIグランドチャレンジ」と併せて実施したベンチマークの結果、1ワットあたり14.423ギガフロップスで、Green500 Listの世界4位になった。また、6月に「Top500 List」で世界5位を獲得したのに引き続き、「HPCG Performance List」でも508.85テラフロップスで、世界5位になった。

 今回、優れた性能や省電力性が認められたABCIは、2018年8月より本格運用を開始している。本格運用では、学習済みモデルやオープンデータ、学習済みデータセットの提供を視野に入れたABCI利用サービスを構築する。ABCIを活用し、産学官連携や多様な事業者による利用を促進し、高い計算能力を活用した人工知能技術の研究開発・実証を加速し、社会実装を推進するとともに、人工知能分野の最重要課題への挑戦を支援する。

 なお、世界のスパコンの省エネ性能ランキング「Green500 List」で4位、共役勾配法による処理性能ランキング「HPCG Performance List」で5位を獲得した。

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★科学技術ニュース★日立製作所、音で稼働状態を認識するAI技術を開発

2018-11-13 08:31:58 |    人工知能(AI)

 日立製作所は、周囲の雑音に影響されず音に基づいて高精度に状況を認識することができるAI技術を開発した。

 同技術では、周囲環境から発生するさまざまな音(環境音)や周囲の物体や人から跳ね返ってくる音(反響音)などの雑音が含まれる音を、音源の方向や音色の違いなどの複数の観点に基づいて分解し、分解された音をもとに状況認識を行う。

 これにより、設備の稼働状態や人の活動状態を高精度に認識することができる。

 今後、さらなる機能向上などを図り、熟練者の経験に頼らず、工場内などさまざまな設備に囲まれた環境に適用が可能な、音に基づく自動設備診断の実用化を目指す。

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★科学技術ニュース★名古屋工業大学と理化学研究所、光ではたらくロドプシンタンパク質の機能予測を行う人工知能システムを開発

2018-11-01 10:01:15 |    人工知能(AI)

 名古屋工業大学と理化学研究所は、光を吸収する機能を有するタンパク質であるロドプシンの吸収波長をアミノ酸配列に基づいて予測するコンピュータアルゴリズムを、データ駆動型人工知能(機械学習)によって開発した。さらに,予測をもとにロドプシンの一部を改変し、従来よりも長い吸収波長を持つ変異型ロドプシンを作製することに成功した。

 ロドプシンタンパク質は分子内部にレチナールと呼ばれる色素を結合しており、特定の波長の光を吸収できるため、動物の神経活動や行動を光で制御する光遺伝学などで重要な役割を担う機能性タンパク質として知られている。

 自然界に存在する多様な野生型のロドプシンに加え、人工的にアミノ酸の一部を改変することで、異なる吸光波長を持つ変異型のロドプシンを人工的に合成することができる。

 しかし、どのような改変を行えば、どのような吸光波長が得られるのかは合成して初めて明らかになることであり、多大な人的・費用的コストをかけて研究者の経験と勘による試行錯誤が繰り返されていた。

 同研究成果は、さまざまな野生型ロドプシンの吸光波長を超高速かつノーコストで予測できるだけでなく、特定の吸光波長を持つ変異型のロドプシンを設計指針としても有用なもの。

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★科学技術ニュース★産総研、AIによる土石流検知センサーシステム開発

2018-10-18 09:54:44 |    人工知能(AI)

 産業技術総合研究所(産総研)は、国土交通省 国土技術政策総合研究所(国総研)と共同で、AI(人工知能)による次世代型の土石流検知センサーシステムを開発した。

 このシステムは、汎用部品を用いた安価なセンサーを土石流が発生する地域に複数、面的に配置して、それらセンサーからの振動波形をAIによって解析して真の土石流だけを検知できる。

 今回、土石流が頻発する桜島で、2017年に約1か月間、複数のセンサーの振動データを収集して学習データを生成し、その学習データから土石流判定AIソフトウエアを開発した。

 このソフトウエアに対して、桜島の実データで交差検証を行ったところ、誤検知なしで全ての土石流を検知できる見込みを得た。従来手法では誤警報が約95%にも達しており、AIを用いた今回開発したシステムの有用性を確認できた。

 今回開発した土石流検知システムによる土石流の検知は、実時間での検知ではないので、今後は、この現場のPCに機械学習が完了した土石流検知部ソフトウエアを実装して実時間での土石流検知を行う。さらに計測データと質の高い学習データを蓄積して、桜島以外での箇所でも土石流を検知できることを実証する。一方、将来の普及を見据えて、安価で耐久性のあるセンサー開発を継続する。

 

 

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★科学技術ニュース★農研機構、人工知能とデータ連携基盤を統合した農業情報研究センターを開設

2018-10-03 09:32:33 |    人工知能(AI)

 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は、10月1日の組織改革で、政府が掲げる超スマート社会「Society 5.01)」の農業・食品分野での実現に向け、農業情報研究センターを開設した。

 同センターでは、外部からの人材も登用し、人工知能(AI)やビッグデータを活用して、スマート農業等を実現するための研究を行う。研究を通じて、農業・食品産業分野でのスマート化とAI人材の育成を推進する。

 同センターの目的は次の3点。

 (1)最新のAI技術、農業データ連携基盤として整備されつつあるビッグデータを活用し、農研機構独自の知見に立脚した、徹底的なアプリケーション指向の農業AI研究を推進する。

 (2)農業データ連携基盤の長期安定運用を目指した研究並びに運営体制を構築する。

 (3)農業が抱える様々な課題解決のため、AIを中心としたICT人材を育成する。

 同センターは、理事長直属の研究センターとして設置する。発足時の職員数は約30名(うち研究職23名)、場所は農研機構本部地区(つくば市観音台3-1-1)。2つの研究テーマである農業AI研究と農業データ連携基盤研究の研究推進責任者は、外部より第一人者の専門家を招聘する。

 同センターの人員は、平成31年度中に50名程度に拡大する。近い将来は民間企業等の研究者も受入れる予定。また、産業技術総合研究所や主要な大学との連携を推進する。


 

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★科学技術ニュース★NIMSと豊田工業大学、数千篇の論文の知識を1枚の図に整理するAIを開発しソースコードを無償公開

2018-09-27 09:35:37 |    人工知能(AI)

 物質・材料研究機構(NIMS)は、豊田工業大学シカゴ校と共同で、科学技術論文から材料設計に必要なプロセス・構造・特性に関する因子とその相関関係を抽出し,整理・可視化するAIを開発した。

 開発したAIを使って,数千篇の科学技術論文に収録された知識を1枚の図として整理することで、設計者の知識を補助し、合理的・効率的な材料設計が可能となる。

 同研究チームでは、材料データではなく、科学技術論文の文章データを自然言語処理によってコンピュータに読ませ、教師あり深層学習を適用することにより、材料設計に必要なプロセス・構造・特性に関する因子とその相関関係を抽出し、材料設計因子相関図を描画するアルゴリズムを開発した。

 ユーザーが性能を規定するいくつかの特性を選ぶことで、抽出された知識を基に、特性と関連する構造、構造を制御可能なプロセスに関する因子とその相関関係を関連性の強さとともに図として表現する。

 例えば,鉄鋼材料に関して“強度”と“延性”を特性として選ぶことで、両特性の制御に有効であると知られている微細複合組織に関する構造・プロセス因子との相関関係が出力される。

 同研究は、自然言語処理と深層学習を積極的に材料設計へ活用した先進的な取り組みであり、関連研究をさらに推し進めることができるよう、今回開発したAIのソースコードを無償で公開する。

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★科学技術ニュース★理研、AIで世界最高精度のNMR化学シフト予測を達成

2018-09-18 09:31:35 |    人工知能(AI)

 理化学研究所(理研)の研究チームは、機械学習アルゴリズムの探索により、核磁気共鳴(NMR)化学シフトの予測を世界最高精度で達成した。

 同研究で用いた化学シフトなどのNMRデータは、今後、理論化学と機械学習の組み合わせで材料物性予測を行うマテリアルズ・インフォマティクスなどの分野において、活用されると期待できる。

 気象予測、収穫・漁獲量予測、健康予測などの「予測科学」は人類の歴史上、常に大きな課題であった。最近では機械学習などのAI(人工知能)を利用することで、膨大なビッグデータからさまざまな事象を帰納的に予測するアルゴリズム開発が進められている。

 一方でNMRデータは、量子化学理論によって演繹的に予測できる。しかし、理論値と実測値との誤差が大きいため、補正値が必要であった。

 今回、同研究チームは、91種類の機械学習アルゴリズムを探索することで、演繹的な量子化学理論と帰納的な機械学習法を組み合せ、この誤差を学習・補正し、高精度に化学シフトを予測する手法を開発した。

 昨今「IoT/ビッグデータ/AI」時代の到来により、AI予測に必要な分析ビッグデータの蓄積が求められている。NMR法は農林水産物やヒト検体などの代謝混合物を対象に、簡単な試料調製法でビッグデータを取得することに適している。最近では、NMR装置のコストダウンや小型化が進んでいることから、一連の研究成果は今後、簡易NMR装置とAIアルゴリズムによる評価手法が普及することで、重要因子を代謝マーカーとした人間や農産物の恒常性予測と管理につながると期待できる。

 

 

 

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★科学技術ニュース★東京大学、人工知能により専門家の約2万倍の速さでスペクトルを解釈

2018-09-14 09:27:58 |    人工知能(AI)

 東京大学の研究グループは、物質解析に広く利用されるスペクトルを、人工知能で「解釈」と「予測」する新手法を開発した。

 スペクトルを「解釈」し、原子配列や電子構造の情報を獲得するには、研究者が専門知識を使って高度なスペクトルの理論計算を実施し、その結果を職人技で解析する必要がある。

 内殻電子励起スペクトルの理論計算には、数時間から数日を要し、膨大な数のスペクトルを理論計算で解釈することは、現実的に不可能。

 そのような旧来の「研究者駆動型」のスペクトル解釈の限界を乗り越えるために、同研究グループは人工知能で用いられている機械学習法を利用した。

 今回開発した手法では、「物質情報の樹形図」と「スペクトルの樹形図」という、2つの樹形図(2本の木)を使う。互いに相関した2本の木を利用することで、高速かつ高精度に内殻電子励起分光スペクトルの「解釈」ができる手法の開発に成功した。また、同手法を使えば、物質の構造情報を入力することで、スペクトル形状を「予測」することも可能。

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★科学技術ニュース★NEDO、優れたAIベンチャー企業の研究テーマ6件を採択

2018-08-14 09:27:51 |    人工知能(AI)

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、AIの社会実装を進めることを目的に、優れたAIベンチャー企業の研究テーマ6件を採択した。

 全国30件の応募の中から、コンテスト方式で研究テーマを選定した。各社は最大2年間の研究開発を実施する。

 NEDOはベンチャー企業支援を通じて、政府の「人工知能技術戦略」に基づき、AIの重点分野への社会実装を促進し、新たな需要の創出や既存分野との融合による産業競争力の強化を目指す。

【採択テーマおよび委託予定先】

<生産性分野 最優秀賞>

株式会社DeepX

食品(非定形・軟体物)を定量でピックアップするAIアルゴリズムの研究開発 

45百万円

<健康、医療・介護分野 最優秀賞>

PuREC株式会社/名古屋大学

AIによる高純度間葉系幹細胞の品質検査高度化の調査研究 

45百万円 
 
<空間の移動分野 最優秀賞>

該当無し

<審査員特別賞>

(健康、医療・介護)

    株式会社MICIN

    機械学習を用いた認知機能リスク因子の探索 

    30百万円

(生産性)

    IDECファクトリーソリューションズ株式会社/Rapyuta Robotics株式会社

    AI、クラウド、センサ、画像処理を活用したミドルウェア汎用ロボットコントローラの調査研究 

    20百万円
 
(生産性)

    MI-6株式会社

    MI(マテリアルズ・インフォマティクス)による材料探索に関する調査研究 

    20百万円

(生産性)

    株式会社ロックガレッジ

    AI/クラウドソーシング・ハイブリッド型広域人命捜索システム 

    20百万円 

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★科学技術ニュース★理化学研究所と国立がん研究センター、AIで早期胃がん領域の高精度検出に成功

2018-07-27 09:30:36 |    人工知能(AI)

 理化学研究所(理研)と国立がん研究センターの共同研究チームは、少数の正解データにより構築された人工知能(AI)による、早期胃がんの高精度な自動検出法を確立した。

 同研究成果は、検診における胃がんの見逃しを減らすことで、早期発見、早期治療につながると期待できる。

 今回、共同研究チームは機械学習の方法の一つ、ディープラーニングを使って、内視鏡画像から早期胃がんを自動検出する方法を考えた。

 ディープラーニングを画像中の物体検出へ応用する場合、一般には数十~数百万枚の正解画像が学習用データとして必要だが、早期胃がんの場合、良質の正解画像を大量に収集することは困難。

 そこで、少数の正解画像から小領域をランダムに切り出し、さらにデータ拡張技術を利用して画像を約36万枚まで増やした。その画像をコンピュータに学習させた結果、陽性的中率(コンピュータが「がん」と判断した画像中、実際に「がん」であった割合)は93.4%、陰性的中率(コンピュータが「正常」と判断した画像中、実際に「正常」であった割合)は83.6%であった。

 さらに、早期胃がんの有無に加えて、その領域まで高精度で自動検出することに成功した。

 同研究で畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の学習用データとして使用した約200枚の画像のうち、医師ががん領域を示した画像はわずか100枚であった。にもかかわらず、コンピュータは平均して約90%という高い確率で「がん」または「正常」を判断できた。この結果は、内視鏡専門医の判断に迫るもの。

 一般的に、機械学習の正解率は学習データの質と量によって決まるため、より多くの良質な情報を学習に利用すれば、さらなる正解率の向上が期待できる。

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