“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術ニュース●東京大学と理化学研究所、高速スピン応答によるテラヘルツ光の電流変換に成功し磁性材料の量子幾何効果を介した新技術、高機能デバイス開発に道

2024-07-24 09:50:43 |    通信工学
 東京大学 大学院工学系研究科の荻野 槙子 大学院生(研究当時)、森本 高裕 准教授、高橋 陽太郎 准教授らを中心とする研究グループは、理化学研究所 創発物性科学研究センターの永長 直人 グループディレクター、十倉 好紀 グループディレクターらの研究グループと共同で、磁性と強誘電性を持つマルチフェロイクスのスピン励起に注目することで、テラヘルツ領域での光起電力効果の実証を行った。

 今回得られた成果は、今まで実現が難しいと考えられていたテラヘルツ領域の光起電力効果が、マルチフェロイクスという磁性材料中の量子幾何効果を介して実現可能であることを示している。

 また、テラヘルツ帯でのエネルギー変換の効率が、可視や近赤外の光起電力効果に匹敵する大きさを持つことが分かった。

 マルチフェロイクス中のスピンが持つこのユニークなテラヘルツ光機能は、高速通信やさまざまなセンシング技術への利用が期待されているテラヘルツ帯の高機能デバイス開発につながることが期待できる。

<ポイント>

①磁性と強誘電性を併せ持つマルチフェロイクスのスピンの集団運動を用いることで、テラヘルツ帯の光を直流電流に変換することに成功した。

②古典的な電荷の流れを必要としない、量子幾何効果に由来した全く新しいエネルギー変換の原理を実証することができた。

③従来の技術では困難であったテラヘルツ光による光起電力効果の実現により、現在でも高速・高感度の光検出技術が欠如しているテラヘルツ・赤外領域での光デバイスへの応用が期待できる。

<科学技術振興機構(JST)>
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「Bluetooth無線化講座」(水野剛、清水芳貴、三浦淳著/技術評論社)

2024-07-03 10:09:00 |    通信工学



<新刊情報>



書名:Bluetooth無線化講座~プロが教える基礎・開発ノウハウ・よくあるトラブルと対策~

著者:水野剛、清水芳貴、三浦淳 

発行:技術評論社

 Bluetoothは、スマホやパソコンといった既存デバイスとの無線通信を手軽に実現できる便利な技術。しかしながら、いざBluetoothで無線化することを考えると、「具体的にどうアクションを起こせばいいのかわからない」「アプリをつくったことがない」「ハードをつくるのはたいへん」などのハードルが出てくる。実際にBluetoothを使って開発を始めると、「データ落ちが発生した」「思っていたほど通信距離が伸びなかった」「採用したBluetoothモジュールでは、使いたい標準機能が使えない」などのトラブルが発生することはよくある。開発したものをいよいよ販売する段になっても、「Bluetooth認証の費用が想定外だった」「海外認証が思っていた以上にたいへんだった」などのトラブルは多々ある。同書は、必須の前提知識から解説し、よくあるトラブルをどのように解決するかを学んでいく。これまで,Bluetoothに関するノウハウはメーカーに蓄積され、自社の資産として外部に公開されることがなかった。そんななかで、エンジニアの役に立つように有益な情報をシェアしてきたのが、ムセンコネクトのオウンドメディア「無線化講座」。モジュール選定のポイントや開発ノウハ、アプリ開発のポイントは、長年の経験から得られたムセンコネクトの知恵である。これらを押さえて、Bluetooth化に挑戦してみてほしい。
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「パケットキャプチャ無線LAN編<第2版>」(竹下 恵著/リックテレコム)

2024-04-24 09:41:35 |    通信工学



<新刊情報>



書名:パケットキャプチャ無線LAN編<第2版>~Wiresharkによる解析~

著者:竹下 恵

発行:リックテレコム

 Wireshark開発プロジェクトメンバーである著者が、パケット解析のノウハウを徹底解説。オープンソースのLANアナライザソフト「Wireshark」を使って、無線LANのパケットを解析する方法を記した書籍。無線LAN端末が送受信するパケットの内容やセキュリティ(データの完全性チェック、暗号化、復号など)の仕組みは、ブラックボックスになっているが、Wiresharkを活用することで、これらを「見える化」できる。同書では、サンプルパケットをもとに、その詳細を明らかにしている。また、「接続できない」「通信が遅い、切れる」といった各種トラブルシューティングについても丁寧に解説。今回の<第2版>では、現行の符号化やスペクトラム拡散技術を広く紹介するとともに、他のオープンソースソフトウェアや商用ツール(無料体験版)を用いて最新のデータリンク層技術も確認できるようにした。無線LANに関わる方や興味がある方必携の1冊。
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「体験しながら学ぶ ネットワーク技術入門」(みやた ひろし著/SBクリエイティブ)

2024-02-20 09:55:29 |    通信工学



<新刊情報>



書名:体験しながら学ぶ ネットワーク技術入門

著者:みやた ひろし

発行:SBクリエイティブ

 設定からパケット解析まで、たくさん手を動かしながら、知識をスキルに育てよう。知識をただ読んで学ぶだけでない、設定からパケット解析まですべて実際に体験できるネットワーク技術書が登場。1台のPCの中に、スイッチ、ルーター、ファイアウォール、負荷分散装置を備えた仮想的なネットワーク環境を構築。それぞれの装置にログインして、VLAN、ルーティング、ファイアウォールの通信制御、HTTPS暗号化、負荷分散などをすべて実際に設定し、動作を確認できる。仮想ネットワーク環境は、セットアップスクリプトを用いて簡単に構築可能。現場で通用する確かなネットワーク技術力を獲得したいすべての方にお勧めの1冊。Windows 10以降(64ビット版)に対応。【目次】 1章 検証環境を作ろう 2章 レイヤー2プロトコルを知ろう 3章 レイヤー3プロトコルを知ろう 4章 レイヤー4プロトコルを知ろう 5章 レイヤー7プロトコルを知ろう 6章 総仕上げ
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「ネットワーク科学入門」(原書名:A First Course in Network Science/丸善出版)

2024-01-16 09:33:12 |    通信工学



<新刊情報>




書名:ネットワーク科学入門~Pythonで学ぶデータ分析とモデリング~

原書名:A First Course in Network Science

監訳:笹原和俊

発行:丸善出版

 同書は、マネジメントからマーケティング、生物学から工学、神経科学から社会科学まで、幅広い分野で登場するネットワーク科学について解説した入門書。同書の特徴としては、第一に、ネットワーク科学の基本的な概念と方法論が、現実の事例を挙げながら、図やイラストによる明解な説明で、初学者でも容易に理解できるよう工夫されていること。第二の特徴は、Pythonによる豊富なサンプルコードや、シミュレーションソフトであるNetLogoのデモに触れながら、ネットワークのデータ分析やモデル化のスキルを実践的に獲得できること。同書が、ネットワーク科学を学び、活用し、新しい発見をするための一助となることを望む。

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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「ネットワーク科学入門」(笹原和俊監訳/丸善出版)

2023-12-18 09:32:39 |    通信工学



<新刊情報>



書名:ネットワーク科学入門~Pythonで学ぶデータ分析とモデリング~

原書:A First Course in Network Science

監訳:笹原和俊

発行:丸善出版

 同書はマネジメントからマーケティング、生物学から工学、神経科学から社会科学まで、幅広い分野で登場するネットワーク科学について解説した入門書。同書の特徴としては、第一に、ネットワーク科学の基本的な概念と方法論が、現実の事例を挙げながら、図やイラストによる明解な説明で、初学者でも容易に理解できるよう工夫されていること。第二の特徴は、Pythonによる豊富なサンプルコードや、シミュレーションソフトである。NetLogoのデモに触れながら、ネットワークのデータ分析やモデル化のスキルを実践的に獲得できることである。同書が、ネットワーク科学を学び、活用し、新しい発見をするための一助となることを望む。
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「通信の信号処理」(林 和則著/コロナ社)

2023-11-24 09:36:53 |    通信工学



<新刊情報>



書名:通信の信号処理~線形逆問題、圧縮センシング、確率推論、ウィルティンガー微分~

監修:田中聡久

著者:林 和則

発行:コロナ社(次世代信号情報処理シリーズ 6)

 同書は、通信分野の非専門家や大学生、大学院生などの初学者を対象としたもので、その特徴は、従来の教科書にあるような要素技術ごとの解説ではなく、通信の典型的な問題に対する典型的な信号処理手法について解説することで、現在の通信システムで用いられている最先端の信号処理技術を理解するために必要な最低限の知識を、効率的かつ体系的に提供することを目的としている。
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「ゼロからわかる ネットワーク超入門」(柴田 晃著/技術評論社)

2023-11-09 09:32:45 |    通信工学



<新刊情報>



書名:ゼロからわかる ネットワーク超入門~基礎知識からTCP/IPまで<改訂第3版>~

著者:柴田 晃 

発行:技術評論社(かんたんIT基礎講座シリーズ)

 インターネットを支える基盤技術の1つである「TCP/IP」や「ネットワークの基礎知識」についてわかりやすく解説した入門書。普段パソコンやネットワークを利用していて、「これはどういう仕組みなんだろう」と疑問に感じるところから順に、多くの図を取り混ぜながらこれらのしくみを紐解いていく。実際に動作させながらネットワークの概要が学べる。
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●科学技術ニュース●ソニーセミコンダクタ、電磁波ノイズエネルギーから高効率に電力を生成するモジュールを開発

2023-10-13 09:40:45 |    通信工学
 ソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)は、電磁波ノイズエネルギーを利用したエナジーハーベスティング(環境発電)用のモジュールを開発した。

 同開発品は、SSSがチューナー開発で培ってきた技術を応用することで、電磁波ノイズから電力を高効率に生成することができる。

 例えば、工場内のロボット、オフィス内のモニターや照明、店舗や家庭のモニターやテレビ、冷蔵庫などから常時発生する電磁波ノイズを利用し、低消費電力型のIoTセンサーや通信機器などの稼働に必要な電力の安定的な生成と供給を可能にする。

 IoT機器の普及・高度化とともに、増加するIoT機器への電力供給の問題が注目される中、同技術は高い効果に加え、幅広い応用が期待できるエナジーハーベスティング技術として、電力循環モデルの構築と、持続的なIoT社会の発展に貢献することをめざす。

 同開発品は、SSSがこれまでチューナー開発で培ってきたアンテナ技術をもとに、電磁波ノイズの発生源である電子機器などの金属部をアンテナの一部として活用しており、さらに電気への変換効率を高める整流回路を用いた独自の構造を採用している。

 これにより、小型なモジュールながら、数Hz~100MHz帯の電磁波ノイズを電気エネルギーに変換し、低消費電力型のIoTセンサーや通信機器などへの給電や電池などへの充電が可能となる。

 高効率な電力生成を実現する同方式によるハーベスティング技術は、業界初となる。

 従来、注目されていなかった電磁波ノイズを新たな電力源として有効活用することにより、IoTセンサーなどで必要とされる電力消費に対して、電力を安定的に供給することができる。

 さらに、モジュールを構成する部品点数を抑えることで、小型化により設置の自由度を高めた。また、電子機器が通電されていれば、待機時においても電力収穫が可能なため、屋内外を問わず、工場やオフィス、店舗、家庭など、幅広いユースケースでの活用が期待できる。<ソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)>
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●科学技術ニュース●NICT、サイバー攻撃統合分析プラットフォーム“NIRVANA改”の横断分析機能を開発

2023-07-04 09:31:18 |    通信工学
 情報通信研究機構(NICT:エヌアイシーティー)サイバーセキュリティ研究室は、サイバー攻撃統合分析プラットフォーム“NIRVANA改”(ニルヴァーナ・カイ)の新機能として、複数の組織から攻撃情報を収集し、MITRE ATT&CK(マイター アタック)の攻撃記述フレームワークに沿って、組織をまたぐ俯瞰的な分析を可能にする横断分析機能を開発した。

 これにより、従来は組織ごとに独立に行われてきたスタンドアロン型のセキュリティ対策から、結節点となる組織を中心にして複数の組織が緩やかに連携するネクサス型の新たなセキュリティ対策を確立することで、日本のサイバー攻撃対処能力の向上が期待できる。

 NICTはこれまで、組織内でのアラートの優先順位付けと異常な通信の遮断を可能にするサイバー攻撃統合分析プラットフォーム“NIRVANA改”の研究開発を進めてきた。

 NIRVANA改は、組織ごとに独立して稼働するスタンドアロン型のセキュリティ対策であったが、今回新機能として、複数の組織から攻撃情報をNICTが収集し、組織をまたぐ俯瞰的な分析を可能にする横断分析機能を開発した。

 横断分析機能では、各組織のエンドポイント(PC 等)において攻撃情報を収集するエージェントプログラムを導入する。

 このエージェントプログラムは、エンドポイント内で不正な挙動を行うプロセスを分析し、マルウェアを検出する。同時に、その挙動からMITRE ATT&CKで規定されているサイバー攻撃の戦術(Tactics)及び手法(Techniques)を特定する。

 今後は、NIRVANA改の横断分析機能を複数の国内組織と連携して導入・運用を進め、ネクサス型のセキュリティ対策のプラットフォーム構築を目指す。<情報通信研究機構(NICT)>
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