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“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術ニュース●第45回「猿橋賞」、名古屋大学の上川内あづさ教授が受賞

2025-04-24 09:46:02 |    ◆受賞◆
 第45回「猿橋賞」は、名古屋大学・上川内あづさ教授(東京都出身)が受賞した。

 研究業績要旨:「昆虫脳における聴覚情報処理原理の解明」

 脳の重要な機能の1つである聴覚情報処理機構の理解は、神経科学・生命科学の重要なテーマの1つである。上川内氏は、聴覚情報処理システムの理解を目指して、分子遺伝学的手法を用いることが容易な優れたモデル動物ショウジョウバエに生理学・行動学・分子生物学・形態学等の多様な技術を適用し、以下のような独創的研究成果を挙げてきた。

 ショウジョウバエは、触角にあるジョンストン器官で触角の様々な動きをモニターすることで重力情報と聴覚情報を知覚しているが、それぞれの情報を受け取る神経細胞は、その反応特性が異なるのみならず、両者の神経回路も異なっていた。この研究はヒトの内耳で聴覚と平衡覚が受容され異なる脳部位で情報処理されるのに類似した機構がモデル動物ショウジョウバエでも用いられていることを初めて明らかにしたものであり、動物種を超えた聴覚情報処理の原理の理解につながることが期待される。

 また、コンピュータ科学と神経科学の融合を進め、画像認識アルゴリズムを利用した聴覚行動解析プログラムの開発に成功し、ハエの正確な行動解析を可能にした。これは現在、国際的潮流となっている動物行動のビッグデータ解析に先鞭を付ける成果で、この手法を最大限に活用して、以下のような画期的な成果を挙げていった。<女性科学者に明るい未来をの会>
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●科学技術ニュース●ノーベル化学賞、グーグル・ディープマインド社のAI研究者ら3人が受賞

2024-10-09 19:33:00 |    ◆受賞◆
 2024年のノーベル化学賞は、米ワシントン大学のデイビッド・ベイカー氏と、米グーグル・ディープマインド社のデミス・ハサビス最高経営責任者、同社のジョン・ジャンパー氏が受賞した。

 受賞理由は、「たんぱく質の立体構造の高精度な予測や新たなたんぱく質を人工的に設計できるAI技術を開発し、生命科学の研究や創薬に革新をもたらした」。


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●科学技術ニュース●ノーベル物理学賞、米プリンストン大学とカナダ・トロント大学の2氏が受賞

2024-10-08 19:36:15 |    ◆受賞◆
 2024年のノーベル物理学賞は、米プリンストン大学のジョン・ホップフィールド氏と、カナダ・トロント大学のジェフリー・ヒントン氏の2氏が受賞した。

 受賞理由は、「人工知能の計算手法の一つ「機械学習」に関する発見と発明」。


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●科学技術ニュース●ノーベル生理学・医学賞、遺伝子制御に関わるRNAの発見で米2氏が受賞  

2024-10-07 19:33:19 |    ◆受賞◆
 2024年のノーベル生理学・医学賞は、米マサチューセッツ州立大学メディカルスクールのビクター・アンブロス氏と、米ハーバード大学のゲイリー・ラブカン氏が受賞した。

 受賞理由は、「マイクロRNAの発見と転写後遺伝子制御におけるその役割について」。


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●科学技術ニュース●NEDOとJST、「大学発ベンチャー表彰2024」受賞者を決定

2024-08-30 09:35:34 |    ◆受賞◆
 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と科学技術振興機構(JST)が主催する「大学発ベンチャー表彰」は2014年度に開始した制度で、大学などの研究開発成果を活用して起業したベンチャーのうち、今後の活躍が期待される優れた大学発ベンチャーを表彰するとともに、特にその成長に寄与した大学や企業などを表彰する。

 同表彰は、大学などの研究開発成果を用いた起業および起業後の挑戦的な取り組みや、大学や企業などから大学発ベンチャーへの支援などをより一層促進することを目的としている。

 本年度の募集は、2024年4月1日(月)~5月14日(火)の期間で行い、46件の応募があった。外部有識者からなる「大学発ベンチャー表彰2024」選考委員会による応募書類の審査および面接審査を経て、大学発ベンチャー8社とその支援大学・支援企業の受賞を決定した。

【受賞者一覧】

文部科学大臣賞

  ベンチャー:キュエル株式会社
 
  支援大学など:大阪大学 量子情報・量子生命研究センター

経済産業大臣賞

  ベンチャー:ソニア・セラピューティクス株式会社

  支援大学など:東北大学 大学院工学研究科
 
  支援企業:平田機工株式会社

科学技術振興機構理事長賞

  ベンチャー:株式会社エキュメノポリス

  支援大学など:早稲田大学 グリーン・コンピューティング・システム研究機構 知覚情報システム研究所

新エネルギー・産業技術総合開発機構 理事長賞

  ベンチャー:AWL(アウル)株式会社

 支援大学など:北海道大学 情報科学研究院

日本ベンチャー学会会長賞

  ベンチャー:トレジェムバイオファーマ株式会社

  支援大学など:京都大学 大学院医学研究科
 
  支援企業:三洋貿易株式会社

アーリーエッジ賞

  ベンチャー:TopoLogic(トポロジック)株式会社

  支援大学など:東京大学 大学院理学系研究科

大学発ベンチャー表彰特別賞

  ベンチャー:プラチナバイオ株式会社

  支援大学など:広島大学 ゲノム編集イノベーションセンター

  ベンチャー:リンクメッド株式会社

  支援企業:量子科学技術研究開発機構 量子医科学研究所
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●科学技術ニュース●「猿橋賞」、緒方芳子氏(京都大教授)が受賞

2024-04-19 10:22:34 |    ◆受賞◆
 2024年の「猿橋賞」(主催:女性科学者に明るい未来をの会)は、京都大教授の緒方芳子氏(47歳)が受賞した。

 緒方芳子氏の専門は量子統計力学で、受賞テーマは「量子多体系の数学的研究」。物理学の世界で量子の動きに法則性を見いだす量子力学を、数学的に説明した業績が評価された。

 贈呈式と記念講演は、5月11日に日本工業倶楽部会館(東京都千代田区)で開かれる。
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●科学技術ニュース●2023年ノーベル化学賞、「量子ドット」の発見で米マサチューセッツ工科大学のムンジ・バウェンディ氏など3氏が受賞

2023-10-04 19:55:28 |    ◆受賞◆
 2023年のノーベル化学賞は、米マサチューセッツ工科大学のムンジ・バウェンディ教授、米コロンビア大学のルイス・ブルース教授、旧ソビエト出身のアレクセイ・エキモフ氏の3人が受賞した。

 受賞理由は、1ミリの100万分の1という「ナノ」の技術で作られた「量子ドット」と呼ばれる、極めて微細な結晶を発見するなどしてナノテクノロジーの発展につながる基礎を築いたこと。
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●科学技術ニュース●2023年のノーベル物理学賞、「アト秒光パルスの発生」でピエール・アゴスティーニ氏、フェレンツ・クラウス氏、アンヌ・ルイリエ氏の3氏が受賞

2023-10-03 21:30:55 |    ◆受賞◆
 2023年のノーベル物理学賞を、アト秒物理学に関する研究で、米オハイオ州立大学のピエール・アゴスティーニ氏、独マックス・プランク量子光学研究所のフェレンツ・クラウス氏(61歳)、スウェーデンのルンド大学のアンヌ・ルイリエ氏(65歳)の3氏が受賞した。

 授賞理由は、「アト秒(100京分の1秒)光パルスを発生させる実験方法の確立」。
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●科学技術ニュース●ノーベル生理学・医学賞、独ビオンテックのカタリン・カリコ氏と、米ペンシルベニア大のドリュー・ワイスマン教授が受賞

2023-10-02 19:46:08 |    ◆受賞◆
 2023年のノーベル生理学・医学賞は、独バイオ企業ビオンテック顧問のカタリン・カリコ氏(68歳)と、米ペンシルベニア大のドリュー・ワイスマン教授(64歳)が受賞した。

 新型コロナウイルスに対する「mRNAワクチン」の実用化につながる新たな技術を開発したことによる。
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●科学技術ニュース●第43回(2023年)「猿橋賞」、”宇宙気候学”の宮原ひろ子氏が受賞

2023-04-20 09:34:34 |    ◆受賞◆
 第43回(2023年)「猿橋賞」は、宮原ひろ子氏が受賞した。


 研究業績:「太陽活動の変動のメカニズムおよびその気候への影響に関する研究」

 黒点数やフレアー発生数の増減にみられる太陽活動の変動は、およそ11年の周期を基本としている。太陽活動に伴い、太陽が持つ巨大な磁場は大規模に変動し、大局的に見たN極とS極は活動のピークの度に逆転を繰り返している。太陽活動は、近年では地球に到来する(銀河)宇宙線によってもモニターされている。

 宇宙線粒子は電荷を持つため、太陽磁場の影響が及ぶ太陽圏内への侵入は常時阻まれているが、太陽活動が弱まると磁場も弱まり、地球にも流入しやすくなるからである。なお、地球に到来する宇宙線量は、太陽磁場の極性によっても影響を受けるので、太陽活動の基本周期の倍の22年周期も示すことが分かっている。

 放射性同位元素である炭素14(半減期約5700年)は、大気中の反応で宇宙線が作る中性子が窒素に吸収されてできるので、その量は宇宙線の流入量を反映する。このため植物や湖底の堆積物などに含まれる炭素14の量の測定から、過去の太陽活動の強弱を見積もることができる。

 宮原ひろ子氏は、長寿命の屋久杉などを使って、年輪を1枚ずつ剥がしてそこに含まれるごく微量の炭素14の量を測定することで、太陽活動の基本周期の長さが長期変動に伴ってどのように変化するのかを前例のない高い精度で復元することに成功した。

 この研究から宮原氏は、17世紀から18世紀にかけて黒点がほとんど見られなかった時期にも、弱いながらも活動周期が存在し、その長さが14年程度に長くなっていたことを発見した。この太陽活動が不活発な時期は小氷期と呼ばれた寒冷期にあたる。一方で、中世の温暖期の初期にあたる9世紀から10世紀には、太陽活動は非常に活発で、活動周期が9年程度に短くなっていたことも発見した。このことは、太陽活動の長期変動が、太陽内部の循環速度の変化と関係して起こることを示唆している。

 木の年輪の成長率からは、当時の気温を知ることができる。宮原氏の解析により、上記の寒冷期と温暖期の時期の気温変動の卓越周期は、それぞれ29年程度と19年程度であったことが分かった。これらは太陽活動周期の2倍の周期に相当しており、気候変動の原因に、宇宙線の地球への流入量の変動が寄与していることを示唆している。太陽活動に伴う日射量の変動は極めて小さいために、これまで謎であった太陽活動と気候変動の相関の原因が、初めて実証的に解き明かされたのである。

 宮原氏は、最近では炭素14の測定精度をさらに向上させ、近代の太陽面の直接観察から得られるのとほぼ同じ精度で11年周期を復元できるようにしたほか、過去に起こった巨大太陽フレアーを比較的規模が小さなものまで検出できるようにするなどして、太陽物理学の研究に貢献している。

 また、もう一つの宇宙線起源の放射性同位元素であるベリリウム10(半減期約140万年)を含む石灰質の堆積物を用いて、数10万年以上にわたって1年分解能で太陽活動を復元できる新たな手法を開発し、炭素14で測定できる時間範囲を超えて太陽活動を詳細に復元するプロジェクトも始めている。

 現在宮原氏は、武蔵野美術大学に所属しているが、これらの研究は、名古屋大学に始まり、東京大学、国立極地研究所、山形大学などの若い研究者との共同研究で進めてきた。宮原氏が始めた”宇宙気候学”の新しい研究ネットワークは、自大学のみならず全国的に拡大・発展を続けている。

 宮原氏は、太陽活動や太陽系周辺の宇宙環境が地球の気候や気象にどのような影響を及ぼしてきたのかを解説した書籍や、子ども向けの本も出版し、社会的に関心の高い気候変動についての話題を通して、一般の読者や子供たちに科学や研究の面白さを伝えている。
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