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★科学技術ニュース★JAMSTECなど、近未来気候でも豪雨はより強くなり連続無降水日は増加するシミュレーション結果発表

2019-01-18 09:32:47 |    宇宙・地球

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)気候変動適応技術開発プロジェクトチーム、気象庁気象研究所及び北海道大学の研究グループは、文部科学省地球観測技術等調査研究委託事業「気候変動適応技術社会実装プログラム」(SI-CAT)に参画し、海洋地球科学分野等で利用されてきたJAMSTECのスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を用い、工業化以降の世界平均地上気温が2°C上昇した気候状態を対象として、多数の高解像度温暖化シミュレーションを実施した(ここで注目した気候状態は、追加的な緩和努力を行わない場合の近未来<2030~2050年頃)>のものに相当)。

 このシミュレーション出力を解析した結果から、「パリ協定」に準拠した国際的な温暖化緩和・抑制に向けた取り組みが機能したとしても、近未来気候においては極端な降水(年最大日降水量)の強度は増大する可能性が高いことが分かった。

 また、連続して降水が無い期間(連続無降水日数)も増大する結果となった。

 同研究グループは、文部科学省「気候変動リスク情報創生プログラム」(2012~2016年度)が開発し、多数の高解像度地球温暖化シミュレーションに基づいて、過去(1951~2010年)及びRCP8.5シナリオに従って工業化以降4°C程度の気温上昇が生じた21世紀末(2080~2100年頃)を想定して作成した「地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース (d4PDF)」を発展させ、2°C程度の気温上昇が生じると予測される近未来(2030~2050年頃)を想定した気候予測データベースを作成してきた。 

 同研究の実験で作成された近未来気候予測データベースは、d4PDFの中核のひとつであり、2018年8月10日より「データ統合・解析システム(DIAS)」を通じて広く一般に公開され、同研究で対象とした降水のみならず、様々な分野において国や地方自治体、大学、民間企業等の関係者による利活用が始まっている。

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★科学技術ニュース★JAMSTECと九州大学、人工知能(AI)を用いて気候実験データから熱帯低気圧のタマゴを高精度に検出する新手法を開発

2018-12-27 09:56:33 |    宇宙・地球

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)地球情報基盤センターは、九州大学大学院システム情報科学研究院と共同で、ディープラーニングによって、全球雲システム解像モデルNICAMによる気候実験データから、発生前の熱帯低気圧の予兆を示す雲(熱帯低気圧のタマゴ)を精度よく検出する手法を開発した。

 開発した手法は特に夏の北西太平洋において、発生1週間前の熱帯低気圧のタマゴを高精度に検出可能であることを示した。同成果により、人工知能(AI)技術を活用した新しい台風発生予測の実現に向けて大きな手掛かりが得られたと言える。

 同研究は、これまでの物理方程式に基づく気象モデルを用いたModel-drivenな手法による将来予測の課題を克服すべく、過去に蓄積された大量のシミュレーションデータから現象発生の予兆を示す特徴を直接的に学習し、熱帯低気圧の発生を予測しようとする新たなアプローチの研究と考えられる。

 大量の気象ビッグデータが蓄積されていく現在において、同研究の成果はData-drivenな手法を用いた気象予測の新たな展開を拓くものとして期待される。

 同成果によって、NICAMによる気候実験データを用いた熱帯低気圧のタマゴの検出に限っては、高い検出性能が得られた。一方で、現実の熱帯低気圧の発生を事前に予測するためには、データ同化を行ったシミュレーションデータや、衛星観測によって得られた雲画像に対しても同程度以上の検出性能が得られるよう、最先端の情報科学または統計数理的な手法を取り入れ、引き続き検討を進める。

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★科学技術ニュース★JAMSTECと東京大学、フィリピン・台湾沖の風系パターンが熱帯低気圧の発生分布を変えることを実証

2018-12-11 09:33:39 |    宇宙・地球

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)と東京大学は、大気状態の過去推定データなど様々な観測データを用いて、フィリピン・台湾振動(Philippine-Taiwan Oscillation=PTO)が熱帯低気圧発生の分布に影響していることを示した。

 PTOは、フィリピン・台湾沖において風系のパターンが数年ごとに南北で振動するように入れかわる現象。同沖は、台風の種となる熱帯低気圧が発生する海域であることから、その関連性を調べるため、1979年~2014年における同海域の風の水平渦度の差(PTOインデックス)と熱帯低気圧の発生分布を比較した。

 その結果、貿易風が弱まりフィリピン沖の風が反時計回りに強く、台湾沖の風が連動して時計回りの風が強い(PTOインデックスがプラス)場合、北緯18度より南側の海域でより多くの熱帯低気圧が発生していること、また、フィリピン沖の反時計回りの風が弱まり、台湾沖の風も時計回りの風が弱まる(PTOインデックスがマイナス)場合、北側の海域でより多くの熱帯低気圧が発生していることを明らかにした。

 さらに、PTOインデックスがプラスの場合、日本周辺に接近してくる熱帯低気圧(その多くは台風)の数が多くなることもわかった。

 従来から、太平洋における熱帯低気圧発生の年ごとの変動とエルニーニョなど様々な大規模気候変動との関連が指摘されてきたが、同研究は、フィリピン・台湾沖における風系パターンという領域に局在した気候変動が、その領域での熱帯低気圧発生パターンをより良く説明することを示したもの。

 今後は、PTOとの関連が指摘されるエルニーニョもどきも含め、大気・海洋結合モデルによる総合的な予測に向けて研究を進めていくことにしている。

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★科学技術ニュース★「チバニアン」実現に向け審査の第2ステップの小委員会の審査を通過

2018-11-28 09:50:48 |    宇宙・地球

 千葉県市原市の地層「千葉セクション」を、国際境界模式層断面とポイント(GSSP)とする申請が、審査の第2ステップである小委員会の審査を通過した。

 千葉セクションは、日本の研究チームが2017年6月に地質時代の前期‐中期更新世境界のGSSPに申請し、同年11月に第1ステップの審査を通過していたもの。

 今後、小委員会から第3ステップの審査を行う委員会に向けて、千葉セクションの審査を行うよう答申が出される。

 審査は全部で4ステップあり、最終的に第4ステップの審査に通過すれば、千葉セクションはGSSPとなり、約77万年前~約12万6千年前の地質時代の名称が「チバニアン」と名付けられる。

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★科学技術ニュース★JAMSTECなど、西之島の噴火が大陸生成を再現していたことを証明

2018-11-16 09:30:14 |    宇宙・地球

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、産業技術総合研究所(産総研)およびニュージーランドカンタベリー大学と共同で、小笠原諸島の西之島の海底および陸上に噴出した溶岩の採取・分析を行った結果、西之島直下のマントルが融解して安山岩質マグマを噴出していることを明らかにした。

 安山岩質マグマは、太陽系で地球にのみ噴出する特異なマグマで、大陸地殻を形成する原料として地球表層の形成に深く関わっている。同研究グループでは、西之島で安山岩マグマが噴出することから、大陸の出現を再現しているのではないかと仮説を提唱していたが、今回の研究結果はその仮説を実証したもの。

 これまでにも、特異なボニナイトのような安山岩質マグマがマントルから直接生成されたことは指摘されていたが、現在活動中の海底火山の安山岩からその証拠を発見したのは同研究が初めて。

 この成果は地球における大陸の成因を明らかにするとともに、人間活動の基盤となる陸地を形成するプロセスの解明に向けて重要な役割を果たすことが期待される。

 今後は、この仮説が他の地殻の薄い海底火山でも成立しているのか、地殻の薄い海洋島弧で同じようにマントルにおいて安山岩質マグマが生成しているのかを検証していく。

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★科学技術ニュース★産総研、南部フォッサマグナ(伊豆衝突帯)の歴史を凝縮した身延地域の地質図を刊行

2018-11-06 09:31:24 |    宇宙・地球

 産業技術総合研究所(産総研)は、山梨県南西端(一部、静岡県も含む)の身延地域での地質調査の結果をまとめた5万分の1地質図幅「身延」を刊行した。

 富士山の西部に位置する身延地域では、日本列島を分断する重要な地質境界である糸魚川−静岡構造線が中央を南北に走っており、これを境に西側は地質学的に四万十帯、東側は南部フォッサマグナと呼ばれる。

 四万十帯地域は、白亜紀~前期中新世(1億数千万年前~約1,500万年前)にアジア大陸東縁部の沈み込み帯で形成された付加体で構成されている。

 南部フォッサマグナ地域は、中期中新世(約1,500万年前)から現在まで、日本列島と、フィリピン海プレートの東縁部に位置する伊豆・小笠原諸島との衝突帯で形成された付加体からなる。

 いずれも日本列島の成立過程解明に極めて重要なポイントであり、身延地域はこれらの地質学的な歴史が全て盛り込まれた貴重な地域である。

 また、身延地域は、大きな地震被害が想定される東海地震の想定震源域北端に位置し、地震及び地震に伴う大規模な山体崩壊などに対する防災の観点からもこの地域の地質情報は重要である。

 今回、新たに得られた地質情報と、過去の膨大な研究成果を整理、照合して精度の高い5万分の1地質図幅「身延」にまとめた。

 この地質図幅は、学術研究に加え、地震被害予想とその防災・減災対策、土木建築事業、ジオツーリズムなどの観光振興の基礎となる資料としての利活用が期待される。

 身延地域は、七面山の大崩壊など、大規模な山体崩落や地すべり発生の地質・地形学的素因があり、その一部は南海トラフ沿いの大地震が誘因となっている可能性も指摘されている。今後、それらを含めた地震災害の軽減対策に向けた基礎資料として、この周辺も含めて広く地域への情報提供を行う。また、糸魚川-静岡構造線を挟んで全く異なる形成史からなる身延山や七面山など、多様でダイナミックな成り立ちを持つ自然資源を活用したジオツーリズムなどの観光振興を促す資料として、持続的地域社会づくりに貢献する。

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★科学技術ニュース★産総研など、石垣島、宮古島などを襲った1771年八重山巨大津波の発生原因を解明

2018-10-24 09:35:09 |    宇宙・地球

 石垣島、宮古島などを中心に約1万2千人の犠牲者を出した1771年八重山巨大津波の発生原因は、プレート沈み込み境界で発生した地震、活断層、海底地すべりなど、いくつかの説が提案されてきたが、結論は出ていなかった。そのため、同じような巨大津波が沖縄本島をはじめとする他の南西諸島でも発生する可能性があるのかどうかは不明であった。

 産業技術総合研究所(産総研)、海上保安庁、建築研究所、東北学院大学の研究チームは、石垣島と宮古島の南方沖で新たに得られた詳細な海底地形データや海底地質構造データの解析を行い、琉球(南西諸島)海溝沿いの斜面に長さ80 km以上、幅30 km以上の非常に大規模な海底地すべりを発見した。

 数値計算によって、この大規模な海底地すべりから発生する津波の高さが1771年八重山津波の津波高に匹敵することを再現できた。さらに、この大規模地すべりの発生に巨大な横ずれ断層が関与したことを示した。

 この成果によって、石垣島や宮古島周辺では今後も巨大津波が繰り返し発生する可能性があるが、同規模の巨大津波が他の南西諸島で発生する可能性は低いと推定される。この地域の津波の想定や防災対策に対して重要な指針を与えることが期待される。

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★科学技術ニュース★JAMSTEC、 「南海トラフ地震発生帯掘削計画」を実施

2018-10-12 09:37:09 |    宇宙・地球

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、国際深海科学掘削計画(IODP)の一環として、地球深部探査船「ちきゅう」によるIODP第358次研究航海「南海トラフ地震発生帯掘削計画:プレート境界断層に向けた超深度掘削」を実施する。

 期間は、2018年10月7日~2019年3月31日。資機材等を積込み後、2018年10月10日に清水港を出港。2019年3月21日に清水港へ着岸予定。2019年3月22日~3月31日は、着岸中の「ちきゅう」船上にて試料の分析等を行う。
  
 「南海トラフ地震発生帯掘削計画」では、巨大地震や津波の発生源とされるプレート境界断層や巨大分岐断層及びその上盤を掘削し、地質試料を採取・分析するとともに、掘削孔を用いた岩石物性・状態の現場計測(検層)及び地殻変動等の観測(モニタリング)を実施する。

 目的は、断層の地震性滑りを決定づける物理化学条件等を明らかにし、南海トラフにおける地震・津波発生メカニズムを解明すること。

 同研究航海に関する特設ウェブサイトを開設している。同ウェブサイトでは、研究航海の概要や参加研究者の紹介を行うとともに、研究航海の進捗を随時更新する予定。

 「南海トラフ地震発生帯掘削計画」特設ウェブサイト:http://www.jamstec.go.jp/chikyu/j/nantroseize/index.html

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★科学技術ニュース★秋田大学と東京大学、過去8000年間に本栖湖に火山灰をもたらした富士山の噴火史を復元

2018-10-11 09:34:32 |    宇宙・地球

 秋田大学と東京大学の研究グループは、国際共同研究「QuakeRecNankaiプロジェクト」で行われた富士五湖での科学掘削により本栖湖で初めて得られた4 mの連続コア試料を、詳細に分析・年代測定したが、それにより、過去8000年間に本栖湖に火山灰をもたらした富士山の噴火史を復元した。

 欠落のないコア試料で堆積年代を細かく調べることで、噴火の詳しい時期の特定、陸上で得られている火山灰の分布の見直しを行うことができ、未知の2回の噴火の発見があった。

 今回の研究では、本栖湖から得られたコア試料に対して、肉眼観察と蛍光X線分析を組み合わせてコアを詳しく観察して、火山灰がどこに挟まっているかを調べた。

 次に、合計30個の放射性炭素年代測定値と、年代が判明している2枚の火山灰層を使って、コア試料のどの深さが現在から何年前に当たるかを示すグラフ(年代モデル)を作った。この年代モデルはかつてない高精度なもの。

 その結果本栖湖のコア試料は、過去約8000年間の連続した記録であることが分かった。陸上で行われた研究との比較から、コアに挟まれるスコリア層のうち3枚は大沢噴火、大室噴火、最後の山頂噴火(剣ケ峰スコリア)に対比できることが分かった。

  富士山は噴火した場合の社会的影響が非常に危惧される火山であることから、同研究は、将来の噴火や災害の予測をする上で重要な成果となる。

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★科学技術ニュース★産総研と名古屋大学、日本列島の成り立ちを知る上で重要な糸魚川-静岡構造線の最北端にあたる地質図幅を完成

2018-09-25 09:28:46 |    宇宙・地球

 産業技術総合研究所(産総研)と名古屋大学は、新潟県南西部の「糸魚川」地域での地質調査の結果をまとめた5万分の1地質図幅「糸魚川」(著者:長森 英明・古川 竜太・竹内 誠・中澤 努)を完成し刊行した。

 この図幅は産総研が提携する委託販売店(https://www.gsj.jp/Map/JP/purchase-guid.html)より9月20日から委託販売を開始した。

 今回、地表踏査に基づき、詳細が不明であった「糸魚川」地域の地層の分布や時代を決定し、地層の区分を行い、地質図幅を完成させた。

 これにより糸魚川-静岡構造線の最北部が含まれる地質図幅が全て完成し、100万年前以降に急激な隆起活動があったことが判明した。

 また、これまでユーラシアプレートと北アメリカプレートとの境界が糸魚川-静岡構造線を通るとの説があったが、今回、「糸魚川」地域を含む最北部地域はプレート境界ではないことが明らかとなった。

 この5万分の1地質図幅の刊行により、「糸魚川」地域の詳細な地質が明らかとなり、学術研究の資料となる。今後、土木・建築、防災・減災の重要な基礎資料として、また、地元住民の地域に対する理解促進のための資料としての利活用が見込まれる。

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