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“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術ニュース●東京大学、高知大学とKEK、中性子星などの高密度天体内部のハドロン物質からクォーク物質へ連続的な変化のしくみを解明

2025-08-26 09:33:48 |    宇宙・地球
 東京大学大学院理学系研究科の田島裕之助教とリアン・ハオジャオ准教授、高知大学の飯田圭教授(研究当時、現:放送大学 教授)、高エネルギー加速器研究機構の古城徹准教授らによる研究グループは、中性子星などの高密度天体内部で期待されるハドロン物質からクォーク物質への連続的な変化であるハドロン-クォーククロスオーバーのしくみを説明する理論構築に成功した。

 中性子星の観測データから、天体内部でのクォーク物質の存在可能性が徐々に明らかになりつつあるが、星の最深部でどのようにハドロン物質がクォーク物質に変化しているかは未解明であった。

 同研究では「BEC-BCS クロスオーバー」と呼ばれる物性現象をヒントにし、この課題にアプローチした。

 物性系で観測できる BEC-BCS クロスオーバーを正確に説明できる理論を応用することで、音速の増大とハドロン形成・解離過程の関係を統一的に説明する理論の構築に成功し、極限状態の物理現象に対する深い理解に迫ることができた。

 同研究成果は、分野を超えた多体問題の理解に大きく貢献するものといえる。

 さらに、場の量子論に基づいた同研究は、先行研究と比べて高い汎用性を有しており、今後の高密度天体研究に役立つことが期待される。<高エネルギー加速器研究機構(KEK)>
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●科学技術ニュース●東京大学とKEK、ハイパーカミオカンデの本体となる巨大地下空洞の掘削を7月31日に完了し11月1日に一般公開へ

2025-08-21 09:51:28 |    宇宙・地球
 東京大学が主導して岐阜県飛騨市で建設を進めている次世代超大型水チェレンコフ宇宙素粒子観測装置「ハイパーカミオカンデ」において、検出器本体を設置する巨大地下空洞の掘削が、約2年9か月をかけ、2025年7月31日に完了した。

 ハイパーカミオカンデ計画は、東京大学と高エネルギー加速器研究機構(KEK)を中核機関とする国際共同研究プロジェクトで、2025年7月現在、世界22か国・約630名の研究者が協力して推進している。

 直径69m、高さ94mの本体空洞は、岩盤内の人工空洞として世界最大級。最も重要な建設工程の一つが完了し、2028年の観測開始に向けて計画は大きく前進した。

 スーパーカミオカンデ一般公開の開催日が11月1日に決定した。

 スーパーカミオカンデは、岐阜県飛騨市神岡町の地下1,000mに設置された、5万トンの水タンクと光センサーからなる検出器でニュートリノなどを観測し、宇宙や素粒子の研究をしている。

 スーパーカミオカンデ一般公開では、普段は見られない地下実験施設へご案内する。

 【開催日】2025年11月1日(土)予定。参加方法などの詳細は決まり次第公開。<高エネルギー加速器研究機構(KEK)>
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●科学技術ニュース●理研など、AIの深層学習で超新星爆発の物理過程を予測するモデルを開発し銀河形成シミュレーションコードに初めて統合

2025-08-06 09:36:52 |    宇宙・地球
 理化学研究所(理研)数理創造研究センター 数理基礎部門の平島 敬也 基礎科学特別研究員、東京大学 大学院理学系研究科の藤井 通子 准教授、森脇 可奈 助教、東北公益文科大学 公益学部 公益学科の平居 悠 講師、神戸大学 大学院理学研究科の斎藤 貴之 准教授、牧野 淳一郎 特命教授、マックス・プランク天体物理学研究所のウーリッヒ・フィリップ・ステインワンデル 博士研究員、フラットアイアン研究所 計算天体物理学センターのシャーリー・ホー グループリーダーの国際共同研究グループは、人工知能(AI)の深層学習を用いて超新星爆発の複雑な物理過程を予測するサロゲート・モデルを開発し、これを銀河形成シミュレーションコードに初めて統合した。

 同研究成果は、シミュレーション中にリアルタイムで深層学習の推論を行い、従来実現が難しかった一つ一つの星を直接扱う「星ごと(star-by-star)」の高分解能銀河シミュレーションを加速した最初の例。

 今回開発された手法は、われわれの住む天の川銀河の形成と進化における超新星フィードバックの詳細な解析に貢献すると期待される。

 従来、超新星爆発の衝撃波によるガスの膨張の再現(超新星フィードバック)がシミュレーションを進める上でボトルネックとなっていたが、同国際共同研究グループが今回開発したAIモデルがこのプロセスを高速かつ精度よく予測することで、この課題を解決した。

 その結果、従来8カ月程度かかっていた銀河進化の計算を、6カ月短縮して約2カ月で完了できるようになった。

 同研究により、従来は現実的な計算時間では困難とされてきた、一つ一つの星を直接扱う「星ごと(star-by-star)」の高分解能銀河シミュレーションが可能になった。

 今回の成果では、比較的小規模な矮小銀河を対象としたが、現在はその約100倍の質量を持つ、私たちの住む天の川銀河と同程度のサイズの銀河を対象に、同様のシミュレーションを進めている。

 これにより、天の川銀河において、星の質量ごとに異なる運動や、生成・放出される元素の種類や量の違いなどを、より詳細に捉えることが可能になる。

 これまでは、一つの粒子が複数の星を代表するという近似により、統計的にその運動や元素組成を扱ってきたが、同研究はその制約を超えるものになる。

 今後は、シミュレーション内で太陽に近い質量や元素組成を持つ星を特定し、観測データとのより精密な比較を通じて、天の川銀河の化学的かつ力学的な進化の理解が一層進むことが期待される。<ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)>
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●科学技術ニュース●千葉大学と名古屋大学、地球の磁気バリアの破れを可視化するX線が宇宙天気の新たな診断ツールに

2025-08-05 09:44:27 |    宇宙・地球
 千葉大学大学院融合理工学府博士前期課程の百瀬遼太氏(研究当時)、同大国際高等研究基幹の松本洋介准教授、名古屋大学宇宙地球環境研究所の三好由純教授らの研究グループは、太陽から吹き付ける高速プラズマ流(太陽風)によって地球の磁気バリアが剥がされる様子を、X線で可視化する新しい手法を発見した。

 同研究は、打ち上げが計画されている「GEO-X」などのX線撮像衛星が宇宙天気の診断に活用できることを示唆するもの。

 同研究グループは、太陽風―地球磁気圏相互作用モデルと太陽風電荷交換反応によるX線放射モデルを組み合わせて、ジオスペースにおけるX線強度分布について調べた。

 今回、X線強度分布を計算するために、スーパーコンピューター「富岳」を用いた大規模シミュレーションを実施した。
 
 その結果、激しい太陽風が到来した際には太陽側磁気圏境界で発生する磁気リコネクション領域でX線が特に明るく放射されることを発見しました。

 そこで、モデル内に仮想的なX線撮像衛星を配置し疑似観測することで、磁気リコネクション領域のX線写真を作成することを試みた。

 月と同程度の遠方から撮像すると、明るい領域は尖った特徴的形状を持っており、磁気リコネクションが進行している磁場の形状を反映していることがわかった。

 磁気バリアがどの程度の効率で剥がされているかを特徴づける量として「リコネクション率」がある。リコネクション率は磁場のエネルギーからプラズマのエネルギーに変換される割合を表す量でもあり、磁気リコネクションによるエネルギー解放を理解するうえでも重要な量。

 限られた状況下ではあるものの、これまでレーザー実験や太陽コロナ領域の観測などでリコネクション率を実験的に推定する試みがなされており、その効率が10%程度であることが報告されていた。

 それに対して同研究は、磁気圏境界のX線で明るい領域の尖り具合とリコネクション率が良い対応関係にあることを示すことで、新たなリコネクション率推定方法として提案したもの。

 同手法においてもその効率が約13%であることが推定され、これまでの報告と矛盾しない結果となった。

 同成果は、太陽側磁気圏境界から放射されるX線を撮像することで磁気圏内への太陽風エネルギー流入率を推定することが可能であり、宇宙天気の新たな診断ツールになりうることを示したもの。

 現在、日本では太陽風電荷交換反応によるX線放射を捉えるGEOspace X-ray imager (GEO-X) の開発が進んでおり、2027年以降の衛星打ち上げを計画している。

 また同様に、欧州宇宙機関と中国科学院の共同ミッションSolar wind Magnetosphere Ionosphere Link Explorer (SMILE) も開発が進んでおり、近年中の打ち上げが予定されている。

 これら X 線撮像ミッションによる協調観測と既存の人工衛星による「その場」観測を組み合わせることで、地球の磁気バリアの破れが多面的に理解されることが見込まれる。

 また、磁気リコネクションが持つ多スケール構造を観測的に明らかにすることで、核融合プラズマの閉じ込め向上や宇宙線加速機構の解明に寄与することが期待される。 <ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)>
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●科学技術ニュース●北海道大学とJAMSTEC、アナモックス反応における酸素同位体分別に世界で初めて成功し海洋窒素循環モデルの精密化推進  

2025-07-30 09:35:48 |    宇宙・地球
 北海道大学大学院工学研究院の岡部 聡教授、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の小林香苗特任研究員らの研究グループは、嫌気性アンモニア酸化(アナモックス)反応における酸素同位体分別(18ε)を求めることに世界で初めて成功した。
 
 海洋の窒素循環は、地球環境の維持に不可なサイクルであり、その仕組みを正確に理解することにより、気候変動対策や生態系の保全に大きく寄与することができる。

 しかし、その中で重要な役割を果たす嫌気性アンモニア酸化(アナモックス)による窒素除去のプロセスについては、まだ未解明な点が多く残されている。

 特に、アナモックスの酸素同位体分別(18ε)は、反応が複雑であるため、これまで全く研究が行われていなかった。

 同研究では、海洋性アナモックス細菌Ca. Scalindua sp.(Scalindua)の高度に集積した培養液を用いて、アナモックス反応の酸素同位体分別(18ε);(1) NO2-からN2への変換(18εNO2-→N2)、(2) NO2-からNO3-への酸化(18εNO2-→NO3-)、(3) NO2-酸化時の水由来の酸素(O)の取り込み(18εH2O)、の測定に世界で初めて成功した。

 さらに、Scalinduaは、亜硝酸(NO2-)と水(H2O)の間での酸素同位体交換を、従来の非生物的な交換速度の約8〜12倍の速さで促進することが確認された。

 その結果、NO2-中のO原子の約34%が、硝酸(NO3-)へ酸化される前にH2Oと交換され、さらに、NO3-への酸化過程で1個のO原子がH2OからNO2-に取り込まれることが確認された。

 この反応により、亜硝酸酸化によって生成されるNO3-の酸素同位体比(δ18ONO3-)が、周囲の水の酸素同位体比(δ18OH2O)に急速に近づく現象が明らかになった。

 既往の研究では、好気的な硝化反応(酸素存在下でアンモニアが硝酸に酸化される反応)によって生成される硝酸(NO3-)の酸素同位体比(δ18ONO3-)は、亜硝酸(NO2-)と水(H2O)の間の酸素同位体交換や、分子状酸素(O2)や水からの酸素の取り込みによる同位体効果により、周囲の水の酸素同位体比に近づくことが知られていた。

 今回の研究成果では、これに加えて、無酸素(嫌気)環境下において、アナモックス細菌により亜硝酸が硝酸へ酸化される際も、同様の現象が起こることが確認した。

 この結果は、海洋の窒素の損失量を評価するための地球化学的指標であるδ18ONO3-やδ18ONO2-が水の酸素同位体比によって書き換えられ、アナモックスや脱窒の酸素同位体シグナルが消失する可能性があることを示している。

 そのため、海洋の窒素循環を評価する際には、これらの指標の変動を慎重に分析する必要がある。

 同研究の成果は、海洋の窒素循環におけるアナモックス反応の役割をより正確に理解するための、欠けていた重要なピースを補う画期的な一歩となった。

 今後、この知見を活かし、海洋窒素循環モデルの精密化を進めることで、気候変動予測や生態系保全への貢献が期待されれる。窒素循環の正確な理解を深めることで、持続可能な海洋資源の管理や気候変動対策に寄与していきたいと考えている。<国立環境研究所(NIES)>
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●科学技術ニュース●国立環境研究所、2020~2022年の間に地球規模で起こった大気メタン濃度の急上昇の要因を明らかに

2025-07-24 09:32:35 |    宇宙・地球
 国立環境研究所地球システム領域の丹羽洋介主幹研究員らの研究チームは、2020~2022年の間に地球規模で起こった大気メタン濃度の急上昇の要因を明らかにした。

 同研究チームによる解析の結果、この急激な濃度上昇は、主に、熱帯から北半球低緯度(南緯15度から北緯35度)にかけての湿地や水田などの農業、埋立地などにおける微生物が起源のメタン放出が増加したことによって生じたことが分かった。

 また、その中でも特に東南アジアや南アジアといったアジアの低緯度地域における影響が大きいと推定された。

 この結果は、地上観測局や船舶、航空機、人工衛星といった様々なプラットフォームによる観測データを、それぞれ数値シミュレーションに基づく解析に入力し、異なる解析間の整合性をみることによって得られた。

 このように、メタンに関する様々な観測データを統合して解析することにより、メタン放出が増加している地域や起源を推定することが可能となり、地球温暖化対策(緩和策)への貢献が期待される。

 同研究チームでは、「結果(大気濃度)」から「原因(放出量)」を推定する逆解析と呼ばれる手法を用いた。

 同研究による逆解析では、NICAM-TMと呼ばれる大気の流れを計算するシミュレーションモデルに世界各地で得られた観測データを入力し、何度も修正を加えながらシミュレーションを繰り返すことで、観測データと整合性のあるメタン放出量の空間分布や時間的な変化を推定した。

 同研究では、濃度上昇が加速する前の期間も含めた2016~2022年を対象とし、地上観測データを使った場合(船舶観測を含む)、地上観測に加えて航空機観測のデータも使った場合、また、温室効果ガス観測技術衛星GOSATを使った場合の3通りの逆解析を実施し、相互に比較しながら解析を行った。

 地球温暖化によって永久凍土が融解し、大量のメタンが大気に放出されるというシナリオが危惧されているが、今回の解析で2020~2022年の放出量が増加したと考えられる地域は、永久凍土が主に存在する北極域ではなく低緯度の地域であった。

 しかし、なぜ放出量が増加したのか、微生物起源で生じた可能性は示されたものの、そのメカニズムの解明にまでは至っていない。

 今後は、同研究で確立した解析を継続していくことで、メカニズム解明に資するデータを蓄積していく。

 また、2023年以降は大気のメタン濃度の増加上昇幅は減少し、比較的落ち着いていることが観測されている(ただし濃度増加は続いている)が、再びメタン濃度の急激な上昇が発生した際には、即時に放出量の変化を把握できるよう、解析体制を整えていく。<国立環境研究所(NIES)>
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●科学技術ニュース●国立極地研究所など、太陽風の観測値からオーロラの広がりや電流の強さを瞬時に予測可能なエミュレータを開発

2025-07-18 10:04:25 |    宇宙・地球
 国立極地研究所の片岡龍峰准教授、情報通信研究機構(NICT)の中溝葵主任研究員、統計数理研究所の中野慎也教授、藤田茂特任教授の研究グループは、南北両半球のオーロラの広がりや電流の強さを瞬時に予測する新しい手法を開発した。
 
 オーロラの輪を再現する物理シミュレーション結果の膨大な計算データを用い、物理シミュレーション結果を模倣する機械学習エミュレータ「SMRAI2(サムライ2)」を開発することで、オリジナルの物理シミュレーションの約100万倍の高速化に成功し、これまで30日かかっていたものを数秒で出力できるようになった。

 高速なエミュレータを用いることで多数のシナリオを生成することができ、それに基づく現況分析や確率的な予測など、高度な宇宙天気予報への発展が期待できる。

 オーロラオーバル(オーロラの輪 )の広がりや電流の強さを迅速に予測することは、太陽活動に由来する宇宙環境の変動とその社会インフラへの影響を予測する宇宙天気予報において極めて重要。

 オーロラオーバルの広がりや電流の強さを予測する方法には、主に二種類あるが、それぞれに限界がある。

 同研究では、これまでに得ることが困難だった大量の物理シミュレーション結果に、機械学習モデルを組み合わせるという新たな発想で、両者の欠点を解消する第三の方法を世界に先駆けて実現することに成功した。

 同研究では、NICTが宇宙天気予報の一環として運用しているオーロラ電流系の物理シミュレーションREPPU改良版で計算された、数年分の入出力データを機械学習の学習データとした。

 Echo State Network(ESN)という時系列機械学習モデルを訓練することで、REPPU改良版のオーロラ電流系の計算結果を高度に再現するエミュレータSMRAI2(サムライ2)を開発した。

 SMRAI2は、任意の太陽風時系列データを入力として与えることで、南北両半球のオーロラオーバルの広がり、その時間変化、オーロラ電流の強さを表すAE指数などを瞬時に出力できる。

 オリジナルの物理シミュレーションREPPUと良く似た計算結果を得るために、約100万倍の高速化に成功し、これまで30日かかっていたものを数秒で出力できることが、SMRAI2の最大のメリット。

 SMRAI2のパフォーマンスを示す例として、例えば、人為的に作成した太陽風を一定時間与え続けることで、太陽風に対応して規則的に変化するオーロラの電流系パターンが、ほぼ完全に再現されることは、従来の経験モデルの上位互換であることを意味する。

 また、実際に観測された複雑に変化する太陽風を与えることで、非常に複雑なオーロラジェット電流の時間変化も再現される。

 今後、SMRAI2のメリットである高速性を活かして、わずかに異なる様々な太陽風データの入力によって、結果にどれほどばらつきがでるのか、という評価をリアルタイムで行うアンサンブル予測や、リアルタイム観測データとエミュレータの結果をデータ同化手法によって補正を行うことで現実により近い予測を選び出すなど、高度な宇宙天気予報の発展が期待できる。<国立極地研究所(極地研)>
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●科学技術ニュース●国立極地研究所など、ヒトの目には見えないオーロラを初撮像

2025-07-17 09:38:36 |    宇宙・地球
 国立極地研究所の西山尚典助教、小川泰信教授を中心とする、東北大学、電気通信大学、産業技術総合研究所などの研究グループは、北極スバールバル諸島のロングイヤービンにおける観測から、世界で初めて波長1.1µmで発光するオーロラを撮像することに成功した。

 同成果は、空の明るい夏の時期や昼間など、地上からの観測の難しい「日照下オーロラ」の撮像につながる技術であり、多様なオーロラの生成メカニズムの解明への貢献が期待される。

 これまでのオーロラの光学観測は、緑色や赤色、青色といったヒトの目が認識できる可視光線と呼ばれる波長を使うことで発展してきた。

 古くは1地点の観測点で取得した画像データの解析が主流であったが、2000年以降、北米や北欧における地上光学観測の多点化・ネットワーク化が進むと、地理的に隣り合う画像データをつなぎ合わせることでグローバルなオーロラ現象(経度幅 ~100°)の分析が可能となった。

 しかしながら、地上光学観測ネットワークはオーロラ出現領域を「地理的には」カバーしている一方で、夜が明けて、観測点が昼に近づいてくると、空が明るすぎるため、微弱な発光であるオーロラの検出が難しいという問題がある。

 その解決策の一つと期待されているのが、可視光線よりも波長の長い短波長赤外領域(1.0µm -1.6µm)によるオーロラ観測。

 この波長帯では、太陽光は可視光線よりも地上に届きにくい性質があり、またオーロラ自体は、可視光線にも劣らない明るいオーロラが存在することが1970-80年代の研究で明らかになっている。

 しかし、1990年代以降、この波長帯を使ったオーロラの研究はほとんど実施されておらず、短波長赤外領域を用いたオーロラ観測における技術革新やその実証が待たれていた。

 同研究グループは、短波長赤外領域の光に感度を持つInGaAs検出器をオーロラ観測用に導入し、光学系は監視カメラ用のレンズなどを利用することで、比較的安価ながらも高性能な分光器とカメラを開発した。

 これらの観測機器をスバールバル諸島のロングイヤービンに設置し、波長1.1µmで光るオーロラの撮像と分光観測を世界で初めて成功させ(2023年1月21日現地時刻の19時45分前後)、30秒以下の高い時間分解能での測定能力を実証した。

 また大型レーダーであるEuropean Incoherent Scatter Svalbard Radar(ESR)との同時観測データの解析から、短波長赤外オーロラの発光する中心高度が100km - 120kmであることを突き止め、宇宙空間より降り込むエネルギーの比較的高い電子がこの発光に直接寄与していることを示した。

 InGaAs検出器は、食品や半導体、歴史的美術品などの多岐に渡る非破壊検査での需要が高く、その性能は近年著しく向上し続けている。

 現在のオーロラ観測は可視光線によるものが主流だが、InGaAs検出器の技術躍進に加えて、短波長赤外領域では「空が可視光線より暗い」「雲などの影響を受けにくい」といった特色を考えると、今後は短波長赤外領域によるオーロラ観測がますます重要となるであろう。

 同研究で初めて実証された技術は、地上からの観測の難しい「日照下オーロラ」の撮像につながる技術であり、多様なオーロラの生成メカニズムの解明への貢献が期待される。

 今回は夜間の撮像を報告したが、現在太陽活動の長期的な上昇期にあり、日照の時間帯に強いオーロラ現象が今後出現することで、現装置による日照下オーロラの観測の機会もあると考えられる。

 また、米国の研究グループによって、米国のマクマード南極基地から50km高度まで飛翔する大型気球に搭載させたInGaAsカメラを用いて日照下オーロラを撮像するミッションの準備が進められており、地上観測だけではなく大型気球や科学衛星などのプラットフォームへの応用を進めることで、地球の大気・オーロラに加えて太陽系惑星の大気観測にも大きな貢献が予想されている。<国立極地研究所(極地研)>
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●科学技術ニュース●JAMSTECなど、11年周期の太陽サイクルに合わせて海と陸の間で水が動いていたことを解明

2025-07-10 09:54:44 |    宇宙・地球
 海洋研究開発機構(JAMSTEC)地球環境変動部門の増田 周平上席研究員らは、Environmental Satellite ApplicationsのJ.P. Matthews氏(京都大学名誉教授)や京都大学大学院総合生存学館の山敷 庸亮教授と連携し、太陽サイクルの11年周期による全球平均海面高度変動に関する新たな研究成果を発表した。

 同研究では、これまでそのメカニズムが明らかにされなかった全球平均海面高度に見られる太陽活動11年周期と同期した変動成分の起源を解明することを目的に、近年整備が進んできた精密な衛星高度計をはじめとする過去の地球観測データセットの再評価を行った。

 太陽活動が活発な時期(太陽表面の黒点数が多くなるフェーズ)に、全球平均でみた海面高度は上昇する傾向がある。

 これは太陽放射の全波長のエネルギー(全放射フラックス)変動の変化による海水の熱膨張では量的に説明できないことが知られており、そのメカニズムはわかっていなかった。

 同研究者らは利用可能な長期の地球観測データを調べ、パーマー干ばつ深刻度指数(PDSI)と呼ばれる陸水の多寡に関する指数が同じく11年の周期の太陽活動と同期していることを見つけた。

 このことから、観測される太陽周期の海面変動は、海洋と陸域の水の移動によって引き起こされていることが示唆される。

 太陽活動が活発な時期には陸上の水が海洋により多く流れ込んでいるということになる。この定性的な変動特性を約30年間の精密な衛星観測データ(高度計のデータ、および重力場測定衛星による、陸域の水分貯蔵量のデータ)で確認したところ、定量的にも整合的な結果が得られた。

 これらの水の移動が太陽活動の変化とどう関係しているかを約160年間の歴史的データセットを用いて調べたところ、エルニーニョ南方振動(ENSO)の振る舞いが太陽活動の活発さに依存していることがわかった。

 ENSO現象は全球的な降水ひいては陸上の水分貯蔵量の変動に数年の時間スケールでは支配的な役割を果たしていることが知られてる。具体的には、太陽活動が、大気上層の風の逆転現象を示す準2年周期振動(QBO)を通じて、赤道域の季節内変動(マッデンジュリアン振動)を変化させ、それがエルニーニョ南方振動(ENSO)に影響を与え、その結果、降水パターンに変動をもたらし、陸上の水分貯蔵量に影響を与えることが統合的な解析により確認された。

 これにより、太陽活動の周期変動が地球の水循環に明確な影響を与えていることが理解され、海面変動のメカニズムに新たな視点が加わった。

 この研究成果は、過去および未来の全球平均海面の変動に関する動態の理解を深める重要な一歩となる。また、気候変動や海面上昇、さらには水資源管理における重要な情報を提供するもの。

 JAMSTECは今後も引き続き、地球規模の環境変動のメカニズム解明に向けた研究を進めていく。<海洋研究開発機構(JAMSTEC)>
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●科学技術ニュース●東京大学、地球内部の水・マグマをとらえ地震や火山の仕組みに迫る

2025-07-09 09:44:43 |    宇宙・地球
 東京大学地震研究所の岩森教授らの研究グループは、地震や火山活動に重要な役割を果たす「地球内部の水・マグマ」の3次元マッピングに成功し、マグマ―流体―地震の関連性を明らかにした。

 同研究では、東北地方中央部における地震波と電気伝導度の稠密観測および統合解析に基づき、水(地下深部の水溶液流体)と玄武岩質マグマ、安山岩質マグマの識別・定量的マッピングに初めて成功した。

 これまでの研究は、地震波速度または電気伝導度のいずれか、あるいは両者の定性的組み合わせに基づいていたため、液体の量や種類の推定に大きな不確実性があった。

 同研究の統合解析により、地下40㎞までの領域で、これまで推定が難しかった地下の状態(岩質と液体の種類、量比、液体連結度などの空間分布)をより高い確度でマッピングすることができた。

 今後、同様のマッピングを広域的に進めることで、火山噴火や地震発生の中長期評価、ひいては減災に役立つことが期待される。<海洋研究開発機構(JAMSTEC)>
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