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★科学技術ニュース★JAMSTEC、 「南海トラフ地震発生帯掘削計画」を実施

2018-10-12 09:37:09 |    宇宙・地球

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、国際深海科学掘削計画(IODP)の一環として、地球深部探査船「ちきゅう」によるIODP第358次研究航海「南海トラフ地震発生帯掘削計画:プレート境界断層に向けた超深度掘削」を実施する。

 期間は、2018年10月7日~2019年3月31日。資機材等を積込み後、2018年10月10日に清水港を出港。2019年3月21日に清水港へ着岸予定。2019年3月22日~3月31日は、着岸中の「ちきゅう」船上にて試料の分析等を行う。
  
 「南海トラフ地震発生帯掘削計画」では、巨大地震や津波の発生源とされるプレート境界断層や巨大分岐断層及びその上盤を掘削し、地質試料を採取・分析するとともに、掘削孔を用いた岩石物性・状態の現場計測(検層)及び地殻変動等の観測(モニタリング)を実施する。

 目的は、断層の地震性滑りを決定づける物理化学条件等を明らかにし、南海トラフにおける地震・津波発生メカニズムを解明すること。

 同研究航海に関する特設ウェブサイトを開設している。同ウェブサイトでは、研究航海の概要や参加研究者の紹介を行うとともに、研究航海の進捗を随時更新する予定。

 「南海トラフ地震発生帯掘削計画」特設ウェブサイト:http://www.jamstec.go.jp/chikyu/j/nantroseize/index.html

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★科学技術ニュース★秋田大学と東京大学、過去8000年間に本栖湖に火山灰をもたらした富士山の噴火史を復元

2018-10-11 09:34:32 |    宇宙・地球

 秋田大学と東京大学の研究グループは、国際共同研究「QuakeRecNankaiプロジェクト」で行われた富士五湖での科学掘削により本栖湖で初めて得られた4 mの連続コア試料を、詳細に分析・年代測定したが、それにより、過去8000年間に本栖湖に火山灰をもたらした富士山の噴火史を復元した。

 欠落のないコア試料で堆積年代を細かく調べることで、噴火の詳しい時期の特定、陸上で得られている火山灰の分布の見直しを行うことができ、未知の2回の噴火の発見があった。

 今回の研究では、本栖湖から得られたコア試料に対して、肉眼観察と蛍光X線分析を組み合わせてコアを詳しく観察して、火山灰がどこに挟まっているかを調べた。

 次に、合計30個の放射性炭素年代測定値と、年代が判明している2枚の火山灰層を使って、コア試料のどの深さが現在から何年前に当たるかを示すグラフ(年代モデル)を作った。この年代モデルはかつてない高精度なもの。

 その結果本栖湖のコア試料は、過去約8000年間の連続した記録であることが分かった。陸上で行われた研究との比較から、コアに挟まれるスコリア層のうち3枚は大沢噴火、大室噴火、最後の山頂噴火(剣ケ峰スコリア)に対比できることが分かった。

  富士山は噴火した場合の社会的影響が非常に危惧される火山であることから、同研究は、将来の噴火や災害の予測をする上で重要な成果となる。

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★科学技術ニュース★産総研と名古屋大学、日本列島の成り立ちを知る上で重要な糸魚川-静岡構造線の最北端にあたる地質図幅を完成

2018-09-25 09:28:46 |    宇宙・地球

 産業技術総合研究所(産総研)と名古屋大学は、新潟県南西部の「糸魚川」地域での地質調査の結果をまとめた5万分の1地質図幅「糸魚川」(著者:長森 英明・古川 竜太・竹内 誠・中澤 努)を完成し刊行した。

 この図幅は産総研が提携する委託販売店(https://www.gsj.jp/Map/JP/purchase-guid.html)より9月20日から委託販売を開始した。

 今回、地表踏査に基づき、詳細が不明であった「糸魚川」地域の地層の分布や時代を決定し、地層の区分を行い、地質図幅を完成させた。

 これにより糸魚川-静岡構造線の最北部が含まれる地質図幅が全て完成し、100万年前以降に急激な隆起活動があったことが判明した。

 また、これまでユーラシアプレートと北アメリカプレートとの境界が糸魚川-静岡構造線を通るとの説があったが、今回、「糸魚川」地域を含む最北部地域はプレート境界ではないことが明らかとなった。

 この5万分の1地質図幅の刊行により、「糸魚川」地域の詳細な地質が明らかとなり、学術研究の資料となる。今後、土木・建築、防災・減災の重要な基礎資料として、また、地元住民の地域に対する理解促進のための資料としての利活用が見込まれる。

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★科学技術ニュース★JAMSTECなど、海底堆積物がマントル深部を巡る大循環をしていたことを解明 

2018-08-16 09:29:03 |    宇宙・地球

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)地球内部物質循環研究分野の羽生毅主任研究員らは、南京大学のリーフイ・チェン教授らと共同で、南太平洋のピトケアン島とラロトンガ島から採取した火山岩の組成分析を行い、海底堆積物がマントル深部まで沈み込み、溶岩として地表へ戻るという大循環をしていることを明らかにした。

 同研究では、ピトケアン島とラロトンガ島から採取した海洋島玄武岩を精密測定した結果、今まで知られている海洋島玄武岩の中で最も低いマグネシウム同位体比(δ26Mg)を持つことを発見した。

 これは、採取した火山岩が海底堆積物に由来することを示している。つまり、過去の海洋で生成した海底堆積物がプレートの沈み込みによりマントル深部まで運搬されて蓄積し、マントル上昇流(マントルプルーム) によって再び地表下まで運ばれ、それが融解することで、ピトケアン島やラロトンガ島の玄武岩質マグマを生成したということが言える。

 同研究は、地球表面にあった物質が数十億年続くマントル対流によって地球内部に運ばれて循環し、多様なマントル物質を形成してきたという地球進化史の描像に、新たな知見を与え、またマントルと地球表層の炭素循環の理解に近づく重要な成果。

 今後は、炭素(二酸化炭素)のみならず、水素(水)や塩素等の揮発性成分にも着目し、固体地球と地球表層の物質的な関わりを明らかにしていく必要がある。

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★科学技術ニュース★JAMSTECなど、最新鋭研究船「かいめい」による初の全海洋底に到達可能(フルデプス対応)調査実施

2018-07-20 09:35:09 |    宇宙・地球

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、水産研究・教育機構および気象庁と共同で、海底広域研究船「かいめい」による伊豆・小笠原海溝域の海洋観測を実施し、海水の特徴を示す一般的な指標である温度・塩分・溶存酸素・各種栄養塩(硝酸・リン酸・ケイ酸)を精密に分析した結果、伊豆・小笠原海溝域では水深7,000mから海底に至るまでの「超深海」の領域で、これら成分が均一に分布していることが判明した。

 一方で、メタン・マンガン・全有機物量といった成分は、超深海において一様ではない分布を示した。特にメタンの炭素同位体組成は、伊豆・小笠原海溝内の南北・東西・深浅で明瞭に異なる空間分布を示した。

 これらの結果からは、伊豆・小笠原海溝内の斜面において堆積物の再懸濁が起こり、再懸濁に伴って放出された成分が反時計回りの海溝内海流に運ばれながら変質していることが推測される。

 海溝斜面堆積物の再懸濁は、伊豆・小笠原海溝域での過去の調査や、他の海溝域における水塊微生物や海溝軸堆積物の調査からも示唆されており、整合的な結果が得られたといえる。

 「かいめい」は、全海洋底に到達可能(フルデプス対応)なCTD多連採水装置を標準搭載している。同研究ではこのフルデプス採水装置を活用し、南北に長い伊豆・小笠原海溝を網羅する13の観測点を設定し、海洋表層から海底直上までの海水特性の鉛直分布調査を3航海にわたって実施した。

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★科学技術ニュース★JAMSTEC、11億年前の海洋生態系を復元し先カンブリア代の海洋環境を明らかに

2018-07-17 09:31:58 |    宇宙・地球

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)生物地球化学研究分野の大河内直彦分野長は、オーストラリア国立大学のヨハン・ブロックス准教授らとともに、11億年前の地層中の記録から当時の海洋生態系の知見を得ることに成功した。

 先カンブリア代の海洋にどのような生物が存在し、どれほど複雑な生態系が確立されていたのかは、長らく謎に包まれてきた。特に太陽エネルギーを海洋生態系にもたらす一次生産者(植物プランクトン)として、どのような生物が当時存在していたのか、特に8億年前以前は生物化石がほとんど残されていないため、全く知られていなかった。

 そこで同研究では、アフリカ北西部に位置するモーリタニアから採取された11億年前の堆積岩を分析したところ、世界最古のクロロフィルの化学化石(ポルフィリンと呼ばれる化合物)が含まれていることを発見した。

 また、同研究ではそれを抽出してその窒素安定同位体比(15N/14N比)の精密測定などをおこなったところ、現在の海洋の状況とは異なり、当時の海洋表層における主たる光合成生物がシアノバクテリアであったことが明らかになった。

 この成果は、当時の海洋表層生態系において高次生物へ効率的にエネルギーが行き渡らず、それが、この時期に海洋における生物進化が顕著に見られなかった原因であったことを示唆した。

 先カンブリア代は、地質記録が希薄な時代であり、今回得た海洋表層環境の情報は、まだ一点の成果にすぎない。海洋は生物の進化が起きた場であるため、その環境は生物進化と直接関係していたと考えられ、このような知見は生物進化の見方に大きな影響を及ぼすものと考えられる。今後もこういった記録を得て当時の海洋像や海洋の進化に関して情報を蓄積していく必要がある。

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★科学技術ニュース★海洋研究開発機構など、PM2.5の窒素成分が植物プランクトン量の増大に寄与することを明らかに

2018-07-06 09:32:43 |    宇宙・地球

 海洋研究開発機構と神戸大学、国立環境研究所は共同で、東アジアから排出される大気中のPM2.5エアロゾル粒子(PM2.5)などに含まれる窒素化合物が、日本南方海域である西部北太平洋亜熱帯域の植物プランクトン量を増大させる大きな役割を果たしている可能性があることを「地球シミュレータ」を用いた数値計算と衛星データ解析の結果から明らかにした。

 海洋表層における植物プランクトン量をコントロールする要因の一つである栄養塩(窒素化合物など)は、主に海洋深層から供給される。一方、西部北太平洋亜熱帯域は海洋内部から海洋表層への栄養塩供給量が極めて少ないため、大気由来の栄養塩が重要である可能性が指摘されていた。

 しかしながら、大気から海洋への栄養塩供給過程の効果に対して、その沈着量からの推定のみで、海洋中のプロセスを考慮した海洋生態系への定量的な評価は行われていなかった。

 そこで、これまで個別に使われることが多かった大気化学領域輸送モデルと海洋低次生態系モデルを結合し、PM2.5などの大気物質が海洋へ沈着する過程を考慮できるように数値モデルの改良を行った。

 これらをもとに、同研究では、東アジア域から大気中に排出された窒素化合物が西部北太平洋域に沈着することに対する植物プランクトンの応答を初めて精密に見積もった。

 その結果、西部北太平洋亜熱帯域における表層の植物プランクトン量は、大気からの窒素化合物の供給過程を考慮すると、考慮しない場合に対し、2.3倍に増加することが明らかとなり、衛星解析による見積もりと整合的になることを見出した。

 これは、大気環境に大きな影響を与えているPM2.5などに含まれる窒素化合物成分が西部北太平洋亜熱帯域での植物プランクトン量の増大に大きな役割を担っている結果を示唆しており、大気物質と海洋生態系の直接的な関連性を明らかにした初めての成果となる。

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★科学技術ニュース★東京海洋大学と国立極地研究所、小型水中無人探査機(ROV)による南極湖沼の湖底連続撮影に世界で初めて成功

2018-06-13 09:27:46 |    宇宙・地球

 東京海洋大学の後藤慎平、国立極地研究所の田邊優貴子らのチームは、第59次南極地域観測隊の公開利用研究として実施した南極大陸の湖沼調査において、小型無人探査機(ROV)に搭載したステレオ視カメラによる湖底の連続撮影に世界で初めて成功した。

 今回の調査では、南極の特殊環境でも安定的に動作する小型のROVを新たに開発し、これまでは定量的な情報が得られていなかった、南極湖沼に棲息するコケボウズの分布状況の調査を実施した。

 さらに、氷と海底の狭い隙間に侵入可能という小型ROVの特徴を活用し、ダイバーでは調査が困難な海氷下の海底のステレオ視撮影を実施した。

 宗谷海岸沿岸は概ね1年を通して厚い氷に覆われており、海氷下の潜水調査は、安全性の面からほとんど行われていない。

 今回撮影されたステレオ視画像から湖底の三次元画像を作成し、湖底の等深線図と重ね合わせることで、コケボウズの深度ごとの分布状況を可視情報化する予定。

 今後、他の湖沼において同様の調査を実施することで、南極湖沼の変遷や生物加入の歴史を解く情報が得られると考えられる。

 また、今回の調査手法は生物学的分野だけでなく地学的分野や氷河研究などにも応用が可能であると考えられることから、今後の南極調査において幅広い分野の研究の成果創出に寄与することが期待される。

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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「火星で生きる」(スティーブン・ペトラネック著/朝日出版)

2018-06-11 09:45:28 |    宇宙・地球

 

<新刊情報>

 

書名:火星で生きる

著者:スティーブン・ペトラネック

訳者:石塚政行

発行:朝日出版

 2027年、流線形の宇宙船が火星に降りていく―いまや問題は火星に「行く」ことから、そこでどう「暮らす」かへと移った。イーロン・マスク、ジェフ・ベゾス、マーズワンといった民間プレーヤーが宇宙をめぐって激しく開発競争を展開するなか、新型ロケットやテラフォーミング技術など、火星移住に向けた準備は着々と進んでいる。駆り立てるのは地球の危機と人類の探求心。数々の科学誌 編集長を歴任したジャーナリストが、宇宙開発史から環境的・経済的な実現 可能性まで、「最後のフロンティア」火星の先にある人類の未来を活写する。

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★科学技術ニュース★NEDO、「宇宙ビジネス投資マッチング・プラットフォーム(S-Matching)」創設

2018-06-06 10:00:10 |    宇宙・地球

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、内閣府、経済産業省とともに、宇宙分野の新たなビジネス・アイデアを有する個人・ベンチャー企業と投資家・事業会社とのマッチングを円滑化する「宇宙ビジネス投資マッチング・プラットフォーム(S-Matching)」を創設した。

 S-Matching専用のWEBサイトを立ち上げ、個人・ベンチャー企業からのビジネス・アイデア募集および投資家・事業会社のS-Matchingへの入会申請の受け付けを開始した。6月上旬からWEBサイト上での実際のマッチングが可能となる。

 専用サイトを通じて、宇宙ビジネス起業家は、通年で宇宙ビジネス投資家に対し自らのビジネス・アイデアなどを直接アピールすることが可能となり、また、宇宙ビジネス投資家はコンセプトレベルから開発段階まで、多様な技術フェーズにあるアイデアを素早くキャッチアップすることが可能となる。

 同ウェブサイトを通じて、新たなビジネス・アイデアと投資家・事業会社とのマッチングの機会を提供することで、宇宙産業競争力の底上げに貢献する。

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