“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―                 科学技術研究者   勝 未来

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★科学技術ニュース★東北大学と理研、人工知能でタンパク質を自動設計

2018-09-07 09:29:52 |    生物・医学

 東北大学と理化学研究所の研究グループは、人工知能と実験を組み合わせることで、タンパク質の機能改変を従来よりも大幅に効率化する手法の開発に成功した。

 同研究グループは、緑色蛍光タンパク質(GFP)を黄色蛍光タンパク質(YFP)へ改変する問題に同手法を適用して、既知YFPよりも蛍光性能の高い新規YFPを多数発見することに成功したもの。

 同手法は、抗体や酵素などの医療・食品・環境で役立つ様々な機能性タンパク質の開発を加速することが期待される。

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★科学技術ニュース★産総研とキリンビール、ホップ由来の分子とタンパク質が表面に共存することを初めて実験的に確認

2018-08-23 09:29:17 |    生物・医学

 産業技術総合研究所(産総研)は、キリンと共同で、表面の解析に有効な分光法を用いてビール表面を直接測定し、表面におけるホップ由来の分子とビールに含まれるタンパク質の挙動を明らかにした。これらはビールの泡の形成・安定化に重要な情報である。

 ビールの泡には、タンパク質とホップの成分が含まれることはこれまで知られていたが、それらが泡中の液体部分に存在するのか、気体と液体との界面(気液界面)に存在するのかは不明であった。

 今回、固体や液体の表面・界面に存在する分子の振動スペクトルを選択的に測定できる和周波発生分光法(SFG分光法)を用いてビールの表面を調べたところ、ビールの表面にはビールの苦味の元を含むホップ由来の分子とタンパク質の両方が存在すること、さらに表面に現れているホップ由来の分子の存在量とビールの泡の安定性に相関があることが明らかになった。

 ビール表面の水に対してタンパク質とホップ由来成分の疎水性の構造が相互作用してネットワークを形成し、泡の最表面に現れることで高い安定性を持つ泡が形成され、さらに表面に現れるホップの量が増加することで泡がより安定化した、と考えることができる。

 ビールの泡の安定化には、表面のタンパク質の存在と共にホップ由来の分子の介在が重要であることは従来から提唱されてきたが、今回、ホップ由来の分子とタンパク質が表面に共存することを、初めて実験的に確認した。

 一般に、泡は材料の特性を大きく変化させることもあるため、泡の形成過程とその表面における分子挙動を調べることは、材料開発など他の分野にとっても重要な課題である。今後は、今回用いた表面・界面計測、解析技術を気液界面の分子挙動やさまざまな材料の特性解明へつなげていく。

 

 

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★科学技術ニュース★産総研とアイディエス、3Dプリンティング技術による人工歯(入れ歯)を実用化

2018-08-08 09:28:23 |    生物・医学

 産業技術総合研究所(産総研)は、アイディエスと共同で、3Dプリンティング用コバルトクロム合金粉末の薬事承認を取得し、患者に最適な人工歯を用いた歯科治療を可能にした。

 医療機器開発ガイドラインなどを参考に、現在の歯科治療に用いられ生体との適合性に優れたコバルトクロム合金の粉末を用い、製造条件の検討、各種性能試験を行った。

 歯科治療に用いるため必要となる医療機器としての承認は、アイディエスが取得した。歯科医院で口腔内のデータを取得し、歯科医師の指示に基づき、歯科技工処理を行い、患者に最適な形状の人工歯を設計する。

 設計データに基づき、医療機器として厚生労働省に登録された3Dプリンティング(三次元積層造形)装置を行いて積層造形する。

 造形材の表面仕上げ後、臨床使用する。破損やアレルギーに対するリスクが少なく、歯科鋳造では困難で長時間を要する立体構造の人工歯(補綴修復物)が短時間で造形できる。

 これらの技術により、歯科鋳造や切削加工での作製に比べて、製造時間の短縮、信頼性が向上すると共に、口腔内データがデジタル化され、製品設計が迅速化できる。また、必要に応じて同じ製品をすぐに作製できる利点もある。

 今後は、積層造形技術の保険適用を目指す。また、新たな材料であるコバルトクロム(Co-28%Cr-6%Mo)合金の国産粉末での認可を目指す。さらに、敏感なアレルギー患者への配慮のため、チタン材料での人工歯の開発を目指す。

 

 

 

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★科学技術ニュース★理研、発光バイオセンサーにより動物間コミュニケーションの新戦略を発見 

2018-08-07 09:32:38 |    生物・医学

 理化学研究所(理研)の研究チームは、発光バイオセンサーを利用して、動物の神経活動と行動の同時計測システムを開発し、動物間コミュニケーションの新戦略を発見した。

 同研究成果は、より自然に近い環境下で自由行動する動物の神経活動をリアルタイムで観察可能にしたもので、今後、謎に包まれた動物のコミュニケーション戦略のさらなる発見とその神経基盤の解明に貢献すると期待できる。

 多くの動物は、同種とコミュニケーションをとるために、社会的および性的行動を調節するフェロモンなどを放出している。なかでも、キイロショウジョウバエ(ハエ)では、オスのフェロモン「cVA」によりさまざまな行動が調節されているが、cVAがいつどこで放出され、どのように受容されているかはほとんど分かっていなかった。

 そこで同研究チームは、cVAに特異的に応答する神経細胞に発光バイオセンサーを発現させ、自由に行動するハエからリアルタイムで神経活動を計測するシステムを開発した。

 その結果、cVAはオスのマーキング行動を通して、腹部先端から放出される分泌物に多く含まれることが分かった。さらにこの分泌物は、オスとメス双方を惹きつけ、求愛行動の場を作り出すことを見いだした。

 cVAは長年研究されてきたが、それが消化管由来の分泌物に含まれ、マーキング行動により特定のタイミングで積極的に放出され、社会的コミュニケーションに利用されていることが初めて明らかになった。

 今回開発した発光バイオセンサーを用いたシステムは、自然環境により近い状況で動物を自由に行動させ、特定の神経細胞の活動を可視化できるという利点がある。

 このようなアプローチにより、動物がどのようにして情報交換をするのかといったコミュニケーションの戦略や、どのようにして複数の同種を見分けるのかという個体認識のメカニズムの理解につながると期待できる。また、近年発展しているゲノム編集の技術と同システムを組み合わせることで、ハエに限らずさまざまな動物において社会的行動の神経基盤を解明できる可能性がひらける。 

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★科学技術ニュース★理研、植物の一挙一動を監視する全自動植物表現型解析システム「RIPPS」開発

2018-07-18 09:29:10 |    生物・医学

 理化学研究所(理研)の研究チームは、植物の育成コントロールと成長観察を全自動で行う表現型解析システムを開発した。

 同研究成果は、植物が低水分ストレスなどの環境を感知し適応するメカニズムの解明と、水などの資源利用に関わる重要因子の発見を加速し、食料生産技術の最適化や資源利用効率向上型作物の育種に貢献すると期待できる。

 植物は、生育環境に応答して時々刻々とその形質を変化させる。乾燥などの環境ストレス条件での耐性獲得や生長制御のメカニズムを理解するためには、精密にコントロールした環境下での植物の生長や変化を、時間を追って詳細に観察する必要がある。

 今回、同研究チームは、120個の植物をベルトコンベアで搬送しながら土壌水分などの生育環境を自動で個別に制御し、24時間体制で成長を観察するオートメーションシステム「RIPPS(RIKEN Integrated Plant Phenotyping System)」を開発した。

 同システムを利用して、段階的に変化させた低水分条件下における、植物の成長応答および水利用効率の解析に成功した。

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★科学技術ニュース★産総研と日本触媒、多様な微生物が協働で工業廃水中の有害物質1,4-ジオキサンを安定的に分解 

2018-06-20 09:30:01 |    生物・医学

 産業技術総合研究所(産総研)は日本触媒と共同で、産総研で確立した、従来法より500倍の検出感度を有する高感度同位体追跡法を用いて、石油化学工業廃水中の有害物質1,4-ジオキサンを分解する微生物を多数発見するとともに、それらが協働的に働いて安定的な分解を維持できることを明らかにした。

 1,4-ジオキサンは、人への発がん性が疑われ、世界的な規制強化が進む有害物質である。近年、1,4-ジオキサンの処理方法として、低コスト・低環境負荷型の生物処理が大きな注目を集めているが、これまで1,4-ジオキサン分解菌は、時間と労力のかかる分離培養法でしか調べることができず、数種の分解菌しか知られていなかった。

 今回、産総研で確立した分離培養に頼らない高感度同位体追跡法を用いて、石油化学工業廃水の生物処理槽から多種多様な1,4-ジオキサン分解菌を発見し、それらの分解菌が協働して1,4-ジオキサンを安定的に除去することを見出した。

 これは、自然環境中の未知微生物の機能解明と動態制御につながる成果と考えられる。

 今後は、今回発見した1,4-ジオキサン分解菌の近縁種の情報(遺伝子やゲノムの配列情報など)から分解菌の性質を推定し、環境条件を最適化することで、石油化学工業廃水の生物処理槽内で1,4-ジオキサン分解菌の生育を活発にして、分解活性を維持・最大化する管理手法の確立を目指す。

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★科学技術ニュース★東邦大学など、白亜紀末の巨大衝突クレーターによる生物大量絶滅後、わずか数年で生命が復活した証拠を発見

2018-06-05 09:32:33 |    生物・医学

 東邦大学、東北大学、海洋研究開発機構、千葉工業大学は、米テキサス大学オースティン校と共同研究を行い、白亜紀末の巨大衝突クレーターの形成後ごく短期間で生命圏が復活したことを発見した。
  
 約6600 万年前の白亜紀末、直径約10km の小天体がメキシコ・ユカタン半島の北部沖に衝突し、環境が大激変して、恐竜を含む生物(当時の約76%)が大絶滅した。

 衝突時に形成された直径約200km のクレーター内部、つまり爆心地での生命圏の復活のシナリオを描くため、国際深海科学掘削計画(IODP)の第364次研究航海による掘削が2016年に行われ、全長800mの柱状試料が採取された。
  
 白亜紀からの移行期を含む約1m長の堆積岩に焦点をあてて、微化石・生痕化石・化学分析を組み合わせた詳細な研究を行った。

 その結果、クレーター内では衝突後2〜3年以内という想定外の極短期間で生物が復活し、少なくとも3万年以内には生態系が繁栄していたことを突き止めた。
  
 同研究において、天体衝突後の生命の復活シナリオを描くことができた。大量絶滅直後の生態系の復活は、そのタイミングや種の構成の両方において、予測が全く不可能な過程である、とも言える。同研究は、地球の歴史の中で幾度も生じた生物の大量絶滅の後の海洋生態系の復活に関して、重要な示唆を持つ。

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★科学技術ニュース★東京大学、生物の形質改良を加速する新しいゲノム改良技術を発明

2018-05-24 09:33:35 |    生物・医学

 東京大学は、豊田中央研究所、トヨタ自動車、理化学研究所と共同で、生物のゲノムDNAを大規模に再編成して形質の改良を著しく効率化する新技術の開発に成功した。

 今回、DNA切断活性を温度で調節できる酵素を生細胞内に導入し、一時的に細胞を加温して活性化させることで、細胞のDNAをランダムに切断/再結合(シャフリング)させ、効率的に多数の遺伝子が関わる複雑な形質を改良する新しい技術を開発した。

 この方法を用いることで、熱帯環境下のような高温下で効率的にバイオエタノールを合成できる酵母や、新しい形質をもつ植物などを効率的に生み出すことに成功。

 また、ゲノム進化のプロセスを実験的に検証するためにも、この技術が有効であることが示された。

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★科学技術ニュース★理研、超高感度「3次元マイクロ流体SERSセンサー」を開発

2018-05-03 09:14:42 |    生物・医学

 


 理化学研究所(理研)光量子工学研究センター先端レーザー加工研究チームの杉岡幸次チームリーダーらの研究チームは、異なるフェムト秒レーザー加工技術を融合することにより、ごく微量の有害物質をリアルタイムで検出できる「3次元マイクロ流体表面増強ラマン散乱(SERS)センサー」を開発した。

 同研究成果は、大気、水、土壌、食品などに含まれるごく微量の有害物質を、その場でリアルタイムに検出する技術への応用が期待できる。

 今回、同研究チームは、3次元ガラスマイクロ流体チップ内に、SERSセンサーを集積することを提案した。まず、3次元マイクロ流体構造をガラスマイクロチップ内に構築し、さらに流体構造内部の所望の位置に、金属薄膜を選択的に堆積した。そして堆積した金属薄膜に、金属のナノドット周期構造を形成した。

 これら一連のプロセスは、1台のフェムト秒レーザーで行うことができます(全フェムト秒レーザー加工)。形成したナノドット周期構造がSERSセンサーとして機能し、ガラス基板上でのラマン散乱と比較して7.3×108倍のラマン散乱強度の増強が得られた。

 その結果、10ppb(1ppbは10億分の1)の検出感度で、異なる濃度のカドミウムイオン(Cd2+)をリアルタイムで検出できた。

 マイクロ流体SERSセンサーを用いれば、大気、土壌、水、食品などに含まれたごく微量の有害物質を、高速・超高感度にリアルタイムで検出するできる。また、常温での保存や、持ち運びのうえ現場での利用も可能であり、長期間にわたって繰り返し使用することもできる。

 また、ごく微量な有害物質の検出だけでなく、病気の早期発見・診断等医療用チップとしての利用も考えられ、安全、安心、健康な社会の実現に貢献すると期待できる。

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★科学技術ニュース★理研、大阪大学と慶應義塾大学、全ゲノムシークエンス解析で日本人の適応進化を解明

2018-04-26 08:21:33 |    生物・医学

 理化学研究所(理研)、大阪大学、慶應義塾大学は、日本人集団2,200人の全ゲノムシークエンス解析を行い、日本人集団の適応進化に関わる遺伝子領域を同定した。

 今回、共同研究グループは、バイオバンク・ジャパンおよび慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターにより収集された日本人集団2,200名を対象に、ゲノム配列情報に基づく適応進化の解析を行った。

 全ゲノムシークエンス解析を行い、集団中に低頻度で存在する遺伝的変異の分布を検討することで、過去数千年間において適応進化の対象となっていた四つの遺伝子領域を同定した。

 また、これらの遺伝的変異は日本国内の各地域(特に沖縄地方)で異なる頻度を持つことが明らかになった。

 さらに、日本人集団において知られている、病気の発症や臨床検査値に影響を与える遺伝的変異において、適応進化の強さを調べたところ、飲酒量などアルコール代謝と、脂質や血糖値、尿酸値など栄養代謝に関わる形質に影響を与えている遺伝的変異が、日本人集団の適応進化の主な対象となっていたことが分かった。

 これは、他の人類集団とは異なる結果であり、日本人集団に特有の適応進化が存在したことを示唆する結果。

 同成果は今後、日本人の歴史の解明や、遺伝的背景を考慮した健康の増進に寄与すると考えられる。また、より大規模な全ゲノムシークエンスデータが構築されることで、さらなる適応進化の解明が期待できる。


 

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