“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術ニュース●神戸大学など、神経シナプス後部のタンパク質の集積を司る因子を発見

2024-04-23 09:41:24 |    生物・医学
 神戸大学大学院医学研究科生理学分野の貝塚剛志特命助教 (現英国エディンバラ大学臨床脳科学センター博士研究員)、内匠透教授 (理化学研究所生命機能科学研究センター客員主管研究員)、京都大学大学院医学研究科システム神経薬理学分野の林康紀教授らの国際共同研究グループは、プロテオーム(目的のサンプルに含まれるタンパク質を網羅的に検出する実験)のデータ分析により、シナプスに局在する主要なタンパク質のひとつとして「FAM81A」を発見した。詳細な解析の結果、FAM81Aは液-液相分離(2つの液体が混ざり合わずに互いに排除しあうことで2相に分離する現象)によって細胞内で液滴状の構造を形成し、シナプスの分子を集積させる性質を持っていることがわかった。

 私たちの脳の中では多数の神経細胞がシナプスと呼ばれる接続部分を介して巨大な情報処理ネットワークを形成している。

 興奮性シナプスの後部には、多数のタンパク質が集積したシナプス後肥厚 (PSD) と呼ばれる構造体が形成されており、ここには神経伝達物質受容体や足場タンパク質、酵素など、シナプスの機能において重要なタンパク質が局在している。
 
 これまで、プロテオーム解析によってPSDに局在するタンパク質が1,000種類以上報告されている。

 同研究では、PSDに局在するタンパク質の中で「主要ではあるが機能未知の分子」の探索を行った。

 すなわち「これまでの様々な解析で何度も存在が報告されているが、そのシナプスにおける役割がわかっていない分子」に注目し、その詳しい解析を行った。

 はじめに、PSDに局在するタンパク質のプロテオーム解析を行った論文を検索し、それぞれのデータセットで検出されているタンパク質のリストを作成した。

 各リストのタンパク質を共通のIDに変換して整理したところ、どのデータセットでも共通して検出されているタンパク質と、そうでないタンパク質があることがわかった。

 今後、動物を用いた実験によりFAM81Aが生体内で生理的条件下においてどのようにシナプスに影響しているかを研究することで、シナプスの機能や可塑性の分子メカニズムの理解が深まると考えられる。

 また、今回のように複数のプロテオームのデータを統合して分析する手法は、シナプスあるいは他の場所に局在するタンパク質を探索する上で有効な手法であると考えられる。<理化学研究所(理研)>
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●科学技術ニュース●理化学研究所、東京大学と愛知学院大学、超特異的な遺伝子ノックダウン法を開発し特異性が高く副作用の低い治療へ道

2024-04-18 09:31:33 |    生物・医学
 理化学研究所(理研)開拓研究本部 岩崎RNAシステム生化学研究室の岩崎 信太郎 主任研究員、アントニオス・アポストロプロス 国際プログラム・アソシエイト(研究当時、現研究生、東京大学 生産技術研究所 特任研究員)、河本 尚大 学振特別研究員PD、七野 悠一 研究員、東京大学 生産技術研究所の池内 与志穂 准教授、周 小余 特任助教、愛知学院大学 薬学部の築地 仁美 教授らの共同研究グループは、目的の遺伝子の翻訳を極めて特異的に抑制する新手法CRISPRδ(クリスパー・デルタ)を開発した。

 同研究成果は、遺伝子の機能を理解するという基礎生物学の発展に貢献するだけでなく、原因遺伝子の機能抑制を通じた疾患治療など、さまざまな応用につながることが期待される。

 遺伝子の機能を理解するためには、何らかの手法でその遺伝子の発現量を抑制し、抑制による影響を調べる必要がありる。しかし、既存の手法では目的の遺伝子以外も抑制してしまうことがあり、問題となっていた。

 同共同研究グループは、dCas13というタンパク質を標的メッセンジャーRNA(mRNA)に結合させ、その翻訳を非常に特異的に抑制する新手法CRISPRδを開発した。

 CRISPRδは、ゲノムに通常存在する内在性の遺伝子だけでなく、ウイルス特異的な翻訳様式や神経変性疾患の原因となり得る特殊な翻訳様式も抑制できることが分かった。

 同研究は、翻訳を対象とした新しい遺伝子ノックダウン手法CRISPRδを開発し、非常に高い特異性で翻訳抑制できることを明らかにした。

 遺伝子ノックダウン技術は、遺伝子機能の理解に基づく基礎生物学の発展と、バイオテクノロジーや疾患治療などの応用的な側面にも貢献してきた。実際にRNA干渉を用いた医薬品もすでに実用化されている。

 今回、CRIPSRδはウイルスや神経変性疾患と関連する特殊な翻訳様式も抑制できることが分かりった。

 よって、ウイルス感染や神経変性疾患に対して、より特異性が高く副作用の低い治療を提供できる可能性も期待される。<理化学研究所(理研)>
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●科学技術ニュース●理研と東京大学、ロングリードメタゲノムによる植物共生微生物叢の分子基盤を解明

2024-04-10 09:32:46 |    生物・医学
 理化学研究所(理研)環境資源科学研究センター 植物免疫研究グループの白須 賢 グループディレクター、増田 幸子 研究員、生命医科学研究センター 共生微生物叢研究チームの須田 亙 チームリーダー、東京大学 大学院新領域創成科学研究科の岩崎 渉 教授、木口 悠也 特任助教、按田 瑞恵 特任助教、同大学院農学生命科学研究科の佐々木 和浩 助教(研究当時)らの共同研究グループは、ロングリードメタゲノム解析(数万塩基対以上の長い核酸配列を大量にシークエンス<DNAを構成する塩基の順序を決定する技術>できるロングリードシークエンサーを用いて、特定環境中の核酸配列を網羅的に解析すること)により植物共生微生物叢の遺伝情報を網羅的に調べ、その分子基盤を解明した。

 同研究成果は、ゲノム情報を用いた新規有用微生物の単離などにつながると期待される。

 植物には多くの微生物が共生しており、その中には窒素やリンを植物に供給するものや、他の植物病原菌の生育を抑えるものなど、植物の生育に重要なものがあることが知られている。

 しかし、これらの機能を発揮するのに重要な、微生物の遺伝情報についてはほとんど分かっていなかった。

 今回、同共同研究グループは、ロングリードシークエンサーを用いてイネ地上部の共生微生物叢のメタゲノム解析を行した。

 得られた16S rRNA遺伝子(約1,500塩基対から成る細菌の系統分類の指標となる遺伝子。全ての細菌が持つ)配列のうち約4分の3は新種のものであった。

 また、新規の完全長染色体、プラスミド、バクテリオファージなどの配列を得た。

 新規のプラスミド上には、植物との相互作用に関わる4型分泌装置などを見いだした。

 解明した植物共生微生物叢のゲノム情報を基に、新規の有用微生物の単離ができると考えられる。

 また、植物共生微生物叢以外の土壌や水系などの自然環境サンプルにも、ロングリードメタゲノムを用いることでいろいろな新規の配列が得られることが期待される。<理化学研究所(理研)>
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●科学技術ニュース●北海道大学、ヒト由来の移植用ミトコンドリア活性化細胞の製造に成功

2024-02-29 10:10:29 |    生物・医学
 北海道大学 大学院薬学研究院の山田 勇磨 教授、原島 秀吉 教授と同 大学病院 小児科の武田 充人 講師、白石 真大 医員の研究グループは、ミトコンドリアを活性化した移植用ヒト由来心筋前駆細胞(Human MITO cell)の製造に成功し、心筋虚血再灌流モデルラットを用いた細胞移植療法の検証実験を行い、「ミトコンドリア活性化ヒト由来心筋前駆細胞(Human MITO cell)」が心疾患を対象とした細胞移植療法において良好な治療成績を示すことを明らかにした。

 細胞移植療法は、心不全に対する有望な治療法として障害心筋の再生効果が期待されているが、治療効果の向上が課題とされている。

 そのため同研究グループは、エネルギー産生を担うミトコンドリアを活性化した移植用ヒト由来心筋前駆細胞(Human MITO cell)を製造すれば、治療効果の向上が期待できると考えた。

 Human MITO cellは、ミトコンドリア標的型ナノカプセル(MITO-Porter)を用いてヒト心筋前駆細胞(CDC:cardiosphere-derived cell)のミトコンドリアに機能性分子を送達し製造する。

 心筋虚血再灌流モデルラットを作成しHuman MITO cellを用いた細胞移植の治療効果を評価した結果、Human MITO cell移植群において、心機能の改善、心筋組織の線維化を抑制する治療効果が観察できた。

 これらの治療効果は、Human MITO cellの心筋投与だけでなく静脈投与でも認められ、従来の細胞移植療法の効果を大幅に上回るもの。

 Human MITO cellを移植細胞として用いることで、細胞移植の課題点を解決する可能性があり、心不全を含む心疾患治療への応用が期待される。

 さらに、Human MITO cellの投与経路を検討することで、細胞移植療法の臨床応用を飛躍的に加速させることが期待される。<科学技術振興機構(JST)>
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●科学技術ニュース●宮崎県都農町、完全閉鎖循環式陸上養殖では世界初となる「クエタマ」「タマカイ」の養殖に成功

2024-02-22 09:32:46 |    生物・医学
 宮崎県都農町、岡山理科大学、NTT東日本、NTT西日本は、2022年12月より「水産業夢未来プロジェクト」として、都農町の新たな水産業創出に向けた取り組みを実施しているが、2023年3月より、実証用養殖プラントにおいて、ICTと好適環境水を活用した「クエタマ」「タマカイ」の9か月間の試験飼育を実施し、完全閉鎖循環式陸上養殖では世界初となる試験養殖に成功した。

 今後は、特に高い生残率と成長率を確認できた「タマカイ」の本格的な量産体制の構築を進める。

 2023年3月末に都農町に完成した7.4トン水槽×2基の実証用養殖プラントにおいて、日本をはじめとするアジア各国で高級魚として好まれているハタ科の中で、完全閉鎖陸上養殖方式では成功事例が無い「クエタマ」と「タマカイ」を選択し、約9か月間の試験飼育を実施してきた。

 同養殖環境においては、岡山理科大学保有技術の好適環境水・養殖ノウハウ・養殖プラントシステムとNTT東日本グループの持つICTを組み合わせることで、生育速度の向上と生産に関わる作業の効率化・最適化の実現に取り組んでいる。

 また、岡山理科大学から都農町に遠隔指導をすることによる地域の養殖人材育成と手技・ノウハウの獲得をめざしていいる。

 「クエタマ」および「タマカイ」の両魚種の中で「タマカイ」については、94.2%という高い生残率と、養殖における一般的な成長速度の約3倍という高い成長率の両立が確認された。特に、高い生産性は今後の量産化・ビジネス化に向けた大きな成果であると考えている。

 また、今回、試験飼育に携わった飼育員は養殖経験が全くなかったが、養殖経験のない飼育員でも現地で不安なく養殖作業に取り組めるように、魚の生育に対して影響を与える水質項目等の環境状況・魚の生育状況をデータ化・見える化して管理することや、岡山理科大学から的確な遠隔指導を受けるようにしたことで、手技・ノウハウを積み上げながら過去に事例がない高いレベルの養殖を実施することができた。

 今回、試験飼育を行った両魚種のうち、特に「タマカイ」については、元々持ち合わせている先進性・ブランド性とあわせて、高い生産性を確認できたことから、今後は「タマカイ」を注力魚種として扱う予定。

 また、取得したデータを活用したデータ駆動型による生育環境の自動制御やより高いレベルでのリアルタイム遠隔指導体制の構築をめざしていく予定。

 今回の成果をもとに、「水産業夢未来プロジェクト」の推進と実現に向けて、都農町漁協など地域の水産事業者等との連携により、完全閉鎖循環式スマート陸上養殖における「タマカイ」の本格的な量産体制の構築、2024年春に竣工予定の加工場の活用および都農町の新たな特産品の商品化・販売の実現、新たな地域ブランドの創出に向けた取り組みを進める。<NTT東日本>
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●科学技術ニュース●東京大学、腸内細菌が産生する膜小胞が引き起こす大腸がん発生メカニズムを解明

2024-02-22 09:32:11 |    生物・医学
 東京大学 医学部附属病院 光学医療診療部の宮川 佑 特任臨床医、同院 消化器内科の大塚 基之 講師(研究当時、現 岡山大学 学術研究院 医歯薬学域 教授)、藤城 光弘 教授らの研究グループは、口腔内細菌の一種であるアクチノマイセス・オドントリティカス(A.odontolyticus)が大腸がんの発がん初期の過程に密接に関与することを明らかにした。

 これまでの腸内細菌のゲノム解析の結果から、A.odontolyticusが大腸がんの発がん早期の患者の便中に多く見られることが知られていたが、この細菌の大腸がん発症への関与について(がんの原因なのか結果なのか)は不明であった。

 今回の研究で、A.odontolyticusが産生する細胞外小胞である膜小胞(Membrane vesicles:MVs)が、腸管上皮細胞の炎症を惹起すること、また腸管上皮細胞内の活性酸素種を増加させDNA損傷をもたらすことで、発がんを惹起する可能性が示された。

 そのメカニズムとして、A.odontolyticus由来のMVsがToll様受容体2(TLR2)を介して大腸上皮に炎症性シグナルを誘導するとともに、MVsが腸管上皮細胞内に取り込まれてミトコンドリアの機能障害を引き起こすことで活性酸素種の過剰な産生をもたらし、その結果大腸上皮細胞のDNA損傷を惹起して、発がんに関与していることを同定した。

 ①口腔内細菌の一種であるアクチノマイセス・オドントリティカス(A.odontolyticus)が大腸がんの初期段階の発がん過程に関与することを見いだした。

 ②A.odontolyticusが菌体外に放出する細胞外小胞が、大腸上皮細胞での炎症やDNA損傷を惹起し、発がんに関わることを証明した。

 ③今後これらの結果を踏まえた新たな大腸がん予防策開発への貢献が期待される。<科学技術振興機構(JST)>
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●科学技術ニュース●名古屋大学など、発がんウイルス(EBウイルス)に感染した細胞の増殖が促進され、腫瘍が形成されるメカニズムを発見

2024-02-21 09:33:11 |    生物・医学
 名古屋大学 大学院医学系研究科 ウイルス学の木村 宏 教授、佐藤 好隆 准教授らの研究グループは、血液・腫瘍内科学の清井 仁 教授、佐合 健 大学院生、生体反応病理学の豊國 伸哉 教授、名古屋市立大学 ウイルス学の奥野 友介 教授、藤田医科大学 ウイルス学の村田 貴之 教授らとの共同研究で、発がんウイルス Epstein-BarrウイルスがB細胞を不死化する際にウイルス因子BNRF1が宿主因子IFI27を誘導し、安定した細胞増殖能を獲得することを明らかにした。

 Epstein-Barrウイルス関連リンパ腫は、一般に抗がん剤が効きにくく、予後不良であることが知られており、これらのリンパ腫に有効な治療法の開発が求められている。

 同発見は、BNRF1やIFI27を治療標的とする新たな治療法の開発につながると期待される。

 ①悪性リンパ腫の原因となるEBウイルス(Epstein-Barrウイルス)が持つBNRF1遺伝子は感染細胞の細胞死を抑制し、安定した増殖を可能にする

 ②BNRF1が誘導する“安定な細胞増殖”にはミトコンドリアたんぱく質IFI27が関与する

 ③BNRF1やIFI27が存在しないEBウイルス感染細胞の腫瘍形成能は著しく低下し、EBウイルス関連腫瘍の形成には効率的なエネルギー産生が必要である。<科学技術振興機構(JST)>
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●科学技術ニュース●京都大学、生きた動物脳内で発現する神経伝達物質受容体に目印を付ける新手法を開発

2024-02-20 09:55:59 |    生物・医学
 科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業において、京都大学 大学院工学研究科の浜地 格 教授、野中 洋 特定准教授、坂本 清志 特定准教授、白岩 和樹 博士課程学生らは、生きている動物脳内の天然に存在する神経伝達物質受容体たんぱく質を標識(ラベル化)する新手法を開発した。

 従来は目印となるような蛍光を発するたんぱく質を、遺伝子組み換えにより観察したいたんぱく質とつないだ状態で発現させて観測していたが、①遺伝子組み換えが必要であること、②観測したいたんぱく質に対する機能阻害、③発現時の不具合の懸念から、より自然な状態でたんぱく質を標識(ラベル化)する技術の開発が望まれていた。

 同研究グループは今回、リガンド指向性アシルイミダゾール化学(LDAI化学)を生きたマウスの脳で用いることで、遺伝子操作を伴わずにマウス脳内の天然に存在する神経伝達物質受容体を化学標識することに世界で初めて成功した。

 同手法を用いて、生後発達期脳内のAMPA型グルタミン酸受容体(AMPA受容体(AMPAR))をパルスチェイス解析することで、一度機能を果たしたAMPA受容体が別の異なった役割を果たすシナプスに移動し再利用されていることを明らかにした。

 同技術は、たんぱく質の運命(動きや寿命)を解析する展開だけでなく、今後さまざまな機能性分子の導入により、動物個体内における天然のたんぱく質の機能解明に役立つことが期待される。<科学技術振興機構(JST)>
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●科学技術ニュース●理化学研究所と神戸大学、生体分子アクチンによる自発的な細胞骨格形成を空間的に制御できる技術を開発

2024-02-14 09:34:07 |    生物・医学
 理化学研究所(理研) 生命機能科学研究センター 構成的細胞生物学研究チームの山崎 陽祐 リサーチアソシエイト、宮﨑 牧人 チームリーダー、神戸大学 大学院農学研究科 修士課程2年の宮田 優里 大学院生、同バイオシグナル総合研究センターの森垣 憲一 教授(同大学院農学研究科 教授)らの共同研究グループは、生体分子アクチンによる自発的な細胞骨格形成を空間的に制御できる技術を開発した。

 同研究成果は、アクチンが担う細胞の運動や変形など基本的な生命機能の理解だけではなく、がん細胞の浸潤や転移など、アクチンが関わるさまざまな病気の原因の解明や治療法の開発への貢献が期待される。

 同共同研究グループは、細胞膜上でナノメートルサイズのアクチン分子が、細胞骨格と呼ばれる、自身の千倍以上大きなマイクロメートルサイズのネットワーク構造を自ら組み上げる仕組みに着目した。

 そこで、半導体製造に使われる光リソグラフィー技術によりアクチンネットワーク形成を誘導する領域の形やサイズなどのパターンを自在に制御できる人工生体膜を作製し、この膜上でさまざまな形状のアクチンネットワークを形成させることに成功した。

 この技術を使うことで、細胞膜上でアクチン分子が骨格構造を組み上げ、細胞の動きや形を制御する仕組みを、膜領域の物理的条件としての“形”と“サイズ”という新しい観点から理解することが可能となる。<科学技術振興機構(JST)
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●科学技術ニュース●京都大学、細胞核内のDNAが二重らせんの逆ねじりでゆるむ仕組みを解明

2024-02-09 09:34:20 |    生物・医学
 福手 淳平 京都大学 大学院生命科学研究科 博士後期課程学生、牧 功一郎 京都大学 医生物学研究所 助教、安達 泰治 同研究所 教授は、細胞内において、従来のトルクを発生するモーター分子に加え、DNAの軸回転を抑える構造が存在することで、DNAの二重らせんが逆にねじられる力学的な仕組みを明らかにした。

 具体的には、細胞に取り込ませた二重らせんのゆるいソラレン誘導体を蛍光標識することで、DNAの二重らせんがゆるむ発生場所をつきとめた。

 さらにクロマチン免疫沈降解析により、二重らせんがゆるむ場所では、DNAがたんぱく質の集合体にアンカリングされていることを見いだした。

 このDNAとたんぱく質集合体の結合を阻害すると二重らせん構造が元に戻ったことから、たんぱく質集合体へのアンカリングを介したDNAの軸回転の抑制が、DNAの二重らせんがゆるむために必要であることが示された。

 将来は、DNAの二重らせんを人為的にゆるめることで、遺伝情報の読み出しのオン・オフを制御することが可能となると考えられ、新たなゲノム編集・遺伝子治療技術としての応用が期待される。<科学技術振興機構(JST)>
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