“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「水素エネルギーが一番わかる」(白石 拓著/技術評論社)

2024-05-23 09:32:37 |    エネルギー



<新刊情報>



書名:水素エネルギーが一番わかる

著者:白石 拓 

発行:技術評論社(しくみ図解シリーズ)

 トヨタ自動車がガソリン車に代わる脱炭素素車として水素エンジン車を開発し、自動車レースに出場したことで、燃料としての水素が脚光を浴びた。水素が注目されるのは、カーボン・ニュートラルであることのみが要因ではない。水素エンジンは水素燃焼時に生じる水蒸気の爆発的な膨張力(運動エネルギー)で駆動する。また、燃焼の際に発生する熱エネルギーはボイラーや水素火力発電所で使用され、マツダはロータリーエンジンで水素を燃やして発電した電気で電気自動車を走らせている。さらに,イオンとして電気エネルギーを運ぶこともできる。燃料電池は水素イオンと酸素イオンを化合させて電気を発生させる「発電装置」であり、トヨタ自動車は燃料電池でつくった電気でモータを回して走る燃料電池車「MIRAI」を2020年にモデルチェンジした。このように,水素は単に燃焼時に二酸化炭素を排出しない「クリーン・エネルギー」として価値があるだけでなく,さまざまな形態のパワーを発出できるポテンシャルの高いエネルギー源。今後、核融合発電を含め,水素エネルギーの利用がますます広がっていくことが予想されている。同書はこうした状況を踏まえ、水素エネルギーの基礎的な知識をすべて網羅し、わかりやすくまとめた書籍。
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「よくわかる最新 核融合の基本と仕組み」(山﨑耕造著/秀和システム)

2024-04-30 09:36:41 |    エネルギー



<新刊情報>



書名:よくわかる最新 核融合の基本と仕組み~SDGsとGXを推進する燃料豊富な革新エネルギー源~

著者:山﨑耕造

発行:秀和システム

 核融合炉は、脱炭素時代の持続可能なエネルギー源として実用化が期待されている技術。日本では2023年4月、核融合に関する国家戦略が決定され、関連国内産業を創出する必要性が強調されている。海外でも米英を中心に、さまざまなスタートアップ企業が設立され、期待が高まっている。同書は、核物理学やプラズマ物理学など核融合の基礎知識と、核融合炉実用化に必要な技術や課題について図解でわかりやすく解説した入門書。
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●科学技術ニュース●産総研、メタンハイドレートが分布する海底のメタン動態から好気性・嫌気性微生物の共存がメタン消費のカギであることを発見

2024-03-20 09:47:11 |    エネルギー
 産業技術総合研究所(産総研)地圏資源環境研究部門 地圏微生物研究グループ 宮嶋 佑典 研究員、燃料資源地質研究グループ 吉岡 秀佳 研究グループ長、環境創生研究部門 鈴村 昌弘 研究部門付、環境生理生態研究グループ 青柳 智 主任研究員、堀 知行 上級主任研究員らを中心とする研究グループは、2020年、メタンハイドレートが分布する山形県酒田市沖の海底の堆積物を対象に、化学分析と微生物分析、安定同位体トレーサー培養試験の結果を用いて、微生物がメタンを消費する速度を推定した。

 また、海底下の酸化還元境界層において、生育に酸素を必要とする微生物(好気性微生物)と必要としない微生物(嫌気性微生物)が共存してメタンを消費していることを新たに発見した。これらの知見は、重要なエネルギー資源であり温室効果ガスでもあるメタンの海底での収支の正確な理解に貢献する。

 産総研は、経済産業省の委託により、将来の国産エネルギー資源として期待される表層型メタンハイドレートの研究開発を実施している。

 当該プロジェクトでは、資源量の把握や深海における掘削・揚収技術などの検討に加えて、メタンハイドレートの開発に伴う海洋環境や生態系への影響評価についても重要な課題として取り組んでいる。

 2020年からは、日本海の山形県酒田市沖や新潟県上越市沖の表層型メタンハイドレートが分布する海域において、海洋観測船や遠隔操作型無人潜水機(ROV)を用いた海洋環境調査を継続的に実施してきた。

 これらの海域では、メタンを含む水の湧き出し(メタン湧水)を示す微生物マット(微生物の集合体)に表面が覆われた特徴的な海底面が多数存在することが確認され、微生物マット直下の堆積物に重金属などが濃集していることがわかった(詳細は2022年11月7日 産総研「主な研究成果」)。

 今回はこの微生物マットで覆われた海底下の堆積物中における微生物活動とメタン消費に焦点を当てた研究を実施した。

 濃度分析の結果、微生物マットで覆われた海底面から15cmまでの深度には、参照地点の堆積物と比較して高濃度のメタンが溶存していた。
 
 また、海底直上の海水は酸素を豊富に含むが、微生物マット直下の堆積物では酸素が急激に減少し、表面の5mm以内でしか検出されないことがわかった。

 これは、参照地点では酸素が海底面から1.5cm程度の深さまで比較的ゆるやかに減少し、それ以深で検出限界以下となる結果と対照的。

 遺伝子・脂質解析の結果は、酸素を利用してメタンを消費する「好気性メタン酸化バクテリア」と酸素がない環境でメタンを消費する「嫌気性メタン酸化アーキア」が、微生物マット直下でのみ共存していることを示していた。

 また、微生物マットで覆われた海底下の堆積物について、微生物によるメタンの消費速度を推定するために、炭素の安定同位体をトレーサーとした培養試験を実施した。

 メタンは微生物により二酸化炭素に変換されるため、堆積物に安定同位体濃縮メタンを添加して培養を行うと、二酸化炭素の炭素同位体比が時間とともに増加する。

 この同位体比の増加速度から、メタンの消費速度を推定した。海底に近い温度で、培養開始時に酸素を与えた系と無酸素の系とで培養を行った結果、培養の初期において、前者のメタン消費速度は後者のそれの4倍近いことがわかった。<産業技術総合研究所(産総研)>
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「電力の自由化と原子力発電」(森田 章著/幻冬舎ルネッサンス)

2024-02-12 09:36:05 |    エネルギー



<新刊情報>



書名:電力の自由化と原子力発電

著者:森田 章

発行:幻冬舎ルネッサンス

発売:幻冬舎

 原発事故に係る膨大な費用はどのように対処されているのか。「国(政府)」が今後とるべき方針とは?「原発」「福島原発事故」に関わる関連法規や豊富な判例を読み解くことで、「電力自由化」=資本主義の本質に迫る。【著者】森田 章 1949年生まれ。同志社高校卒業。神戸大学法学部卒業。1977年神戸大学大学院法学研究科修了(法学博士)。1978~79年米国イェール・ロー・スクール客員研究員。1991年から同志社大学教授。公認会計士試験委員、法制審議会会社法部会臨時委員、司法試験考査委員を歴任。現在は同志社大学名誉教授、弁護士法人三宅法律事務所客員弁護士。
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「日本のエネルギーまるわかり」(塙 和也著/日本経済新聞出版)

2023-12-28 10:34:54 |    エネルギー



<新刊情報>



書名:日本のエネルギーまるわかり

著者:塙 和也

発行:日本経済新聞出版(日経文庫)

 「脱炭素のスピードが速すぎる」。日本企業の思いを代弁するとこういう言葉になるだろう。欧州では、2020~30年代までに石炭火力発電をゼロにするなど、50年のカーボンニュートラルに向けて順調にスキームをこなす一方、日本はいまだ東日本大震災の影響が残り、原発再稼働に向けて動き出したばかりだ。燃費の規制などで国が主導する欧州に比べ、日本ではまだ企業の自助努力に頼るばかり。コロナ規制でも国家が全面に出てきた欧米と違って、日本は「お願い」に頼る場面が多く、脱炭素対応では先進国の中でも一周も二週も遅い状況となっている。日本は「GX経済移行債」などの取り組みが始まったばかり。菅前首相が発表した「2030年に温暖化ガス削減目標を46%(13年度比)」を確実に達成していくことが第一関門となる。同書は、日本のエネルギー政策、脱炭素の取り組みを体系的にまとめた入門書。現場取材を通した姿を描く。
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●科学技術ニュース●NEDO事業でMIRAI-LABO、太陽光路面発電パネルと蓄電池を組み合わせた「自律型エネルギーインフラAIR」を実証実験

2023-11-02 09:56:05 |    エネルギー
 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業」で、MIRAI-LABO(株)は、道路面に敷設できる太陽光発電パネル「Solar Mobiway」と、中古電気自動車(EV)から排出されたバッテリーを再利用するEVリパーパス蓄電池を組み合わせた「自律型エネルギーインフラAIR(Autonomous Intelligent Road)」を、(株)オリエンタルランドの協力のもと、同社の本社敷地内(千葉県浦安市)に設置し、バッテリーコントローラーおよび自律電源システムの実証実験を行った。

 同実証実験では、充放電を同時に行いつつ無瞬断にバッテリーを切り替えることが可能なバッテリーコントローラーの機能確認のほか、効率を向上させるMPPT機能の改善検討を行い、「自律型エネルギーインフラAIR」の性能評価を行った。

 同実証実験によって蓄積したデータを基に、2025年度の事業化を目指す。

【実証実験の概要】

(1)期間:2023年7月18日~2024年7月17日

(2)実験場所:(株)オリエンタルランドの協力のもと、本社敷地内(千葉県浦安市)で実証実験を実施。太陽光路面発電パネルが大規模に設置でき、一定頻度以上の交通により生じる影のデータを収集できる歩道用と車道用の道路上、それぞれ約100m2(合計約200m2)に「自律型エネルギーインフラAIR」を設置した。

(3)実験内容:同実証実験では、充放電を同時に行いつつ無瞬断にバッテリーを切り替えることが可能なバッテリーコントローラーの機能確認を行った。具体的には、新たに開発したEVリパーパス蓄電池用の無瞬断バッテリー切り替え制御方法と、切り替え時の過電流に対応可能な安全監視機能について機能を確認し、性能改善に向けた検討を行う。

 また発電時、人や車両が太陽光路面発電パネル上を通行する際の影の影響で発生する電圧や電流、発電量の変動データを取得・検証するとともに、蓄積したデータを基に、既存のMPPT制御よりも発電効率を向上させた太陽光路面発電用の新MPPT制御アルゴリズムを開発し、実用性の確認を行う。

 さらに、これらを組み合わせた「自律型エネルギーインフラAIR」としての性能評価を行う。1年間を通じて不日照時でも安定した電力を72時間連続で出力可能であることなど、システム仕様の確認を行う。

 MIRAI-LABOは、「自律型エネルギーインフラAIR」を全国のテーマパークや遊園地に提案・展開することを目指している。また、同実証実験をきっかけに、コンビニやショッピングモール、公園、学校施設など自然エネルギーを導入できる敷地を保有しつつも、導入に苦慮する企業や団体、自治体に対しての提案を計画している。この実証実験によって蓄積したデータを基に、2025年度の事業化を目指す。<新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)>
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「エネルギー危機の深層」(原田大輔著/筑摩書房)

2023-10-02 09:50:25 |    エネルギー



<新刊情報>



書名:エネルギー危機の深層~ロシア・ウクライナ戦争と石油ガス資源の未来~

著者:原田大輔

発行:筑摩書房(ちくま新書)

 今世紀最大の危機はなぜ起きたか。ウクライナ侵攻と一連の制裁の背景をエネルギーの視点から徹底的に読み解き、混迷深める石油ガス資源の最新情勢を解きほぐす。
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「異次元エネルギーショック」(橘川武郎 、平沼 光編著/日本経済新聞出版)

2023-07-14 09:35:17 |    エネルギー



<新刊情報>



書名:異次元エネルギーショック~2050年への日本生き残り戦略~

編著:橘川武郎 、平沼 光

発行:日本経済新聞出版

 橘川武郎、高村ゆかり、瀬川浩司、平沼光、田辺新一、杉本康太、黒﨑美穂――。第一人者が集結し、政策を大胆に見直す。気候変動問題への対応、コロナ禍からの復興、地政学的なエネルギー安全保障への対応、そして、脱炭素経営の必要性など、様々な要素が複雑に絡み合い、我々はこれまでにない異次元のエネルギー危機に直面している。国産エネルギーの積極活用、再生可能エネルギー政策の注目点、エネルギー高騰時代のクリーンエネルギー技術、住宅・建築分野での徹底した省エネ、投資家・金融家視点でのエネルギー政策など、各分野の第一人者が大胆な改革を提示する。【目次】 第1章 ウクライナ危機の最大の教訓――エネルギー自給率の向上(橘川武郎) 第2章 再生可能エネルギー政策の三つの注目点(高村ゆかり) 第3章 エネルギー高騰時代のクリーンエネルギー技術を見極めよ(瀬川浩司) 第4章 エネルギーとのセクターカップリングでEV普及を(平沼光) 第5章 生き残りのカギは「徹底した省エネ」(田辺新一) 第6章 日本の電力市場の設計――これまでとこれから(杉本康太) 第7章 エネルギーショックに対峙する投資家の視点(黒﨑美穂) 第8章 メッセージ 日本の生き残る道(共同執筆)
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●科学技術ニュース●日立造船、長野市と新電力会社設立

2023-05-11 09:33:18 |    エネルギー
 日立造船は、長野市と再生可能エネルギーを中心とする電力供給を目的とした自治体新電力会社「ながのスマートパワー株式会社(長野市)」を 2023 年6月に設立し、2023 年 10 月からの電力供給を目指す。

 現在、日立造船は長野広域連合が所有するごみ焼却発電施設「ながの環境エネルギーセンター(ストーカ式焼却炉、処理能力:405t/日(135t/日×3 炉)、発電出力:7,910kW、完成:2019 年 2 月、運営会社:株式会社 EcoHitz ながの)」で発電された電力の内、余剰電力(2019 年度実績:年間約 40,353,000kWh)を買い取り、長野市立小中学校、高校全 79校に供給する電力地産地消のモデル事業を含む、91 ヶ所の市有施設に電気を供給している。

 新電力会社は、 2023年6月2日の設立を予定しており、同社と電力需給契約を結び、2023 年 10月1日からの長野市の市有施設への電力供給を目指す。

 また、エネルギー面だけでなく経済面からも地域循環型社会の実現に貢献するため、新電力会社の利益は地域内の再生可能エネルギーの有効活用事業などに投資する。

 長野市は、2022 年にバイオマス産業都市に認定され、長野地域連携中枢都市圏29市町村共同で「2050年ゼロカーボン宣言」も表明している。

 同件は、長野市にとってバイオマスの活用や2050年ゼロカーボンの実現に向けた具体的な取り組みの1つとなる。<日立造船>

【新電力会社の概要】

1.商 号:ながのスマートパワー株式会社
2.設 立:2023年6月2日(予定)
3.代 表 者:増田 謙一(日立造船株式会社 環境事業本部 運営ビジネスユニット長)
4.本 社:長野県長野市西後町610-12
5.事業内容:電力供給事業、再生可能エネルギー事業
6.資 本 金:6,000 万円
7.出資比率:日立造船 66.6%、長野市 33.4%
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「エネルギーの地政学」(小山 堅著/朝日新聞出版)

2022-11-18 09:34:19 |    エネルギー



<新刊情報>



書名:エネルギーの地政学

著者:小山 堅

発行:朝日新聞出版(新書)

 ロシアによるウクライナ侵攻を契機に、世界中に電力危機が広まっている。エネルギー経済研究の第一人者が、複雑な対立や利害を内包するエネルギー問題を地政学の切り口で論じ、日本が安全保障上のリスクにどう対峙するかを提言する。加えて、原発再稼働、脱炭素などの政策と戦略についても考察する。
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