“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「すばらしい人体」(山本健人著/ダイヤモンド社)

2021-09-30 09:32:36 |    生物・医学



<新刊情報>



書名:すばらしい人体~あなたの体をめぐる知的冒険~

著者:山本健人

発行:ダイヤモンド社

 人体の構造は美しくてよくできている。同書は外科医けいゆうとして、ブログ累計1000万PV超、Twitterフォロワー8万人の著者が、人体の知識、医学の偉人の物語、ウイルスの発見やワクチン開発のエピソード、現代医療の意外な常識などを紹介。人体の素晴らしさ、医学という学問の魅力を紹介するサイエンス書。
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●科学技術ニュース●東芝デバイス&ストレージ、車載半導体の動作検証時間を約10分の1に短縮できるシミュレーション技術を開発

2021-09-30 09:32:03 |    電気・電子工学
 東芝デバイス&ストレージは、モデルベース開発(Model Based Development: MBD)向けに、車載半導体の動作検証時間を同社従来技術に比べて約10分の1に短縮できるシミュレーション技術を開発した。

 今回開発したシミュレーション技術により、同社半導体を用いた機器の動作を迅速に評価可能となり、車載機器の開発および設計時間の短縮に貢献する。

 モデルベース開発では、機能をブロックに分け、そのブロックを繋いでいくことで全体の機能や性能を検証するが、車載機器で重要視される熱やEMIノイズなどの指標を検証するためには、各ブロックにおける半導体の動作も考慮した高精度なモデルが必要。

 一方、実際の機器の動作を詳細に再現するほど、計算時間も増大してしまうという問題があった。

 今回同社が開発したシミュレーション技術は、「Accu-ROM」と呼ばれる技術が特長。同技術では、メカ機構のみの動作を検証した後にメカ機構のモデルを簡素化し、その後半導体の動作を計算することで、動作速度の差から発生していたメカ機構における無駄な計算を大幅に削減している。

 また、半導体の計算では、予め検証範囲を熱やEMIノイズなど検証する頻度が多い指標に限定したVHDL-AMSモデルをSPICEモデルから自動で生成し、シミュレーションに組み込むことで、SPICEモデルによる計算よりも時間を短縮した。

 これらの特長を備えた「Accu-ROM」技術により、同社従来技術では32時間51分かかっていた車載半導体の熱やEMIノイズのシミュレーションを3時間27分で完了させることに成功した。

 同社は今後、同技術を用いて、低ノイズで放熱性の高い車載半導体の開発を促進するとともに、同社製品の車載機器への搭載を容易にする開発環境を提供していく。また、同技術を産業機器や家電など車載機器向け以外の用途にも展開する。(東芝)
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●科学技術ニュース●極地研、オーロラ帯の過去3000年間の変化の再現に成功

2021-09-30 09:31:38 |    宇宙・地球
 国立極地研究所の片岡龍峰准教授と統計数理研究所の中野慎也准教授は、オーロラ帯の位置を求める計算手法について、近年の観測データを用いて統計的に検証し、その手法を地磁気モデルに応用するという方法で、過去3000年のオーロラ帯の変化を連続的に再現することに成功した。

 この再現により、過去3000年間で日本とオーロラ帯との距離が最も近かったのは12世紀であることが確認できた。これは、鎌倉時代の歌人・藤原定家が「明月記」の中で述べた、1204年2月に京都からオーロラ見えたという情報と整合性がある。

 同研究では、磁力線を磁気圏まで辿った先の頂点高度で緯度を再定義する「頂点緯度」を古地磁気モデルに適用し、オーロラ発生位置の正確な再現を試みた。古地磁気モデルとしてCALSモデルよりも高精度なIGRFモデルを用い、過去50年の地上磁力計によるオーロラ電流観測データの統計解析結果をモデル計算と比較したところ、「頂点緯度」を用いた手法は双極子緯度や伏角緯度よりも妥当であることが確認された。

 次に、頂点緯度をCALSモデルに適用することで、過去3000年のオーロラ帯を再現した。再現の結果、オーロラ帯の位置は、12世紀に日本に最も距離が近かったこと、つまり、その頃が過去3000年の間で最も日本でオーロラが見られやすかった時期であったことが確認された。また、12世紀前後のオーロラ帯の位置は、ノルウェーの古文書「散文のエッダ」や「王の鏡」のオーロラに関する記述とも整合することを確認した。

 さらに、19世紀のドイツの科学者ヘルマン・フリッツが作成した、18~19世紀のオーロラ目撃事例をプロットした地図に見られる「オーロラ帯がイギリスのほうへ膨らんでいる」という特徴的な歪みについても、同研究の計算結果と一致した。

 将来起こりうる大規模な磁気嵐によって、オーロラが広範囲で発生すると、オーロラの誘導電流によって主要都市の電力ネットワークが破壊され、深刻な停電被害が引き起こされる危険性が高まる。同研究によって、現在から過去3000年間の最も精緻で信頼できるオーロラ帯の世界地図を獲得したことは、そのような将来の世界的な停電被害を想定するためのハザードマップの基礎をなす成果ともいえる。<国立極地研究所>
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「文理融合 データサイエンス入門」(小高知宏、小倉久和、黒岩丈介、高木丈夫、小高新吾著/共立出版)

2021-09-30 09:31:06 |    情報工学



<新刊情報>



書名:文理融合 データサイエンス入門

著者:小高知宏、小倉久和、黒岩丈介、高木丈夫、小高新吾

発行:共立出版

 同書は、文系・理系の垣根を越えて、広く大学初年次の学部生に向けたデータサイエンスの入門書。「“データサイエンス”とは何か?」と問うところから始まり、データサイエンスに関する統計学、機械学習・AIなどに関する話題、代表的なデータ処理ツールといった、データサイエンスにまつわる考え方・使い方をしっかり身につけられるような構成としている。文理融合の立場から、本文中での高度な数学はなるべく避け、傍注やコラムで各章のトピックにまつわる解説や小噺などを随所に採り挙げることで、データサイエンスやその先の高度な関連分野にも興味を持ってもらえるように工夫を凝らしている。
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「優しいロボット」(松井龍哉著/大和書房)

2021-09-29 09:32:57 |    ロボット工学



<新刊情報>



書名:優しいロボット  

著者:松井龍哉

発行:大和書房

 鉄腕アトムからアシモ、ペッパーまで…完全な形の「人型ロボット」の実現の道のりは遠い。しかし、私たちは「人にそっくり」なロボットを本当に必要としているのだろうか?建築家・丹下健三の薫陶を受け、その後渡仏。帰国後にロボットのデザイン、開発に関わってきた著者が、キャリアを振り返りつつ、デザインの本質を思索する。
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●科学技術ニュース●三井物産、米PCT社と日本でのリサイクルポリプロピレン製造事業開発に向けた取組みに合意

2021-09-29 09:32:32 |    化学
 三井物産は、米国PureCycle Technologies, Inc.(PCT社、本社:フロリダ)と、日本におけるリサイクルポリプロピレン樹脂製造事業の共同開発に向けた覚書を締結した。

 海洋プラスチック問題や気候変動といった環境問題を背景に、日本でも更なるプラスチックのリサイクル活用が求められている。

 しかし、包装材料や自動車材料に広く利用されるポリプロピレン樹脂(PP樹脂)は、分離が難しい着色料等の添加剤を含んでいることが多く、リサイクル材が利用出来る用途は限られている。

 PCT社は、廃プラスチックからヴァージン材と同等品質であるUltra-Pure Recycled Polypropylene(UPRP)と呼ばれるリサイクルPP樹脂を生産する技術ライセンスを有し、UPRPの生産に成功している。

 現在、2022年末の稼働を目指して米国オハイオ州に年産約5万トンの工場を建設中で、PCT社にはL'Oréalをはじめとするブランドオーナーから、品質に妥協することなく自社製品にリサイクル材を採用したいとの強い引合いが寄せられている。

 同工場で生産されるリサイクルPP樹脂は既に20年先まで長期引取契約として概ね販売合意済みで、他にジョージア州オーガスタでも大規模リサイクル工場の建設を計画している。

 三井物産は中期経営計画でサステナビリティ経営/ESGの進化をCorporate Strategyの一つに掲げており、同案件の推進により消費財や食品の容器、自動車内装材向け等にもリサイクルPP樹脂の用途拡大を目指す。<三井物産>
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●科学技術ニュース●NICTなど、シリコン基板を用いた窒化物超伝導量子ビットを開発し安定に動作する超伝導量子回路が可能に

2021-09-29 09:32:09 |    電気・電子工学
 情報通信研究機構(NICT)は、産業技術総合研究所、名古屋大学と共同で、超伝導材料にアルミニウムを使用しない超伝導量子ビットとして、シリコン基板上のエピタキシャル成長を用いた窒化物超伝導量子ビットの開発に世界で初めて成功した。

 この量子ビットは、超伝導体として超伝導転移温度が16 K(-257 ℃)の窒化ニオブ(NbN)を電極材料とし、ジョセフソン接合の絶縁層に窒化アルミニウム(AlN)を使用しエピタキシャル成長させた全窒化物の素子であり、ノイズ源である非晶質の酸化物を一切含まない新しい超伝導材料から成る新型量子ビット。

 今回、この新材料量子ビットをシリコン基板上に実現することで、平均値としてのエネルギー緩和時間(T1)が16マイクロ秒と位相緩和時間(T2)が22マイクロ秒のコヒーレンス時間が得られた。

 これは、従来の酸化マグネシウム基板上の窒化物超伝導量子ビットの場合と比べてT1は約32倍、T2は約44倍に相当する。

 超伝導体として窒化ニオブを使うことで、より安定に動作する超伝導量子回路の構築が可能となり、量子演算の基本素子として、量子コンピュータや量子ノードの開発への貢献が期待される。

 今後、回路構造や作製プロセスの最適化に取り組み、更なるコヒーレンス時間の延伸、大規模集積化の実現に向けて研究開発を進めていく予定。<産業技術総合研究所(産総研)>
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「電磁気学<増補修訂版>」(兵頭俊夫著/裳華房)

2021-09-29 09:31:43 |    電気・電子工学



<新刊情報>



書名:電磁気学<増補修訂版>

著者:兵頭俊夫

発行:裳華房(テキストシリーズ‐物理学)

 同書は、著者の高校物理未履修者向けの講義の経験を活かして書かれた、大学初年級向けの教科書。初学者への配慮から、まず実験事実を提示し、それを基本原理から理解する過程を飛躍を避けつつ懇切丁寧にやさしく解説。また同書では、マクスウェル方程式の積分形による電磁気学の体系の理解と、それに基づいた応用力の養成を目指している。<増補修訂版>では、本文全体にわたって表現をより正確かつ簡潔にする方向で修訂するとともに、2019年に施行された国際単位系(SI)の改定に準拠して記述を修正。また、旧版では付録として扱っていた「マクスウェル方程式の微分形」を章に格上げしてより丁寧に記述し、旧版にはなかった「電磁波」についての解説の章も新たに設けた。さらに、「ベクトル解析」「電磁気学の単位系」の話を付録に追加して、読者の学習の便を図った。
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「『役に立たない』研究の未来」(初田哲男、大隅良典、隠岐さや香著/柏書房)

2021-09-28 09:37:37 |    科学技術全般



<新刊情報>



書名:「役に立たない」研究の未来

編者:柴藤亮介

著者:初田哲男、大隅良典、隠岐さや香

発行:柏書房

 いつの時代も、研究者は未知に挑み、人類の発展に貢献してきた。誰も解明していない謎を追う人。社会課題の解決に努める人。いつ、何の役に立つかがわからなくても、未来へより多くのものを託そうとする人。彼らの人生をかけた挑戦の積み重ねの先に、今の私たちの生活がある。そして、その原点にはいつだって飽くなき知的好奇心があった。しかし、日本では現在、運営費交付金の減少や科学技術関係予算の過度な「選択と集中」などが原因で、研究者が知的好奇心をもとにした基礎研究を行いづらい状況にある。それゆえ、イノベーションの芽を育てるための土壌が崩れつつある。令和の時代において、研究者たちはどのように基礎研究を継続していくことができるのだろうか?社会はどのようにその活動を支えられるだろうか?そもそも、私たちはなぜそれを支えなければならないのだろうか?同書は、各分野の一線で活躍する3名の研究者が、「『役に立たない』科学が役に立つ」をテーマにした議論を中心に、書下ろしを加えたうえでまとめたもの。これからの「科学」と「学び」を考えるために、理系も文系も、子どもも大人も、必読の一冊。「役に立つ」ってなんだ? 「学ぶ」ってなんだ? 科学とお金と私たちのこれからについて、最前線の研究者たちとともに考える。
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●科学技術ニュース●東芝、消費エネルギーを1/4に削減し、常温常圧で濃縮率を2.4倍向上できる濃縮技術を開発

2021-09-28 09:37:12 |    化学
 東芝は、水溶液に含まれる成分や物質(有価物)を抽出する濃縮技術において、従来の濃縮方法に対して1/4の消費エネルギーと、2.4倍の高濃縮率を両立する正浸透膜法向けの浸透圧物質の開発に成功した。

 従来の濃縮技術は蒸発や加圧といった処理が必要となり、濃縮には大量のエネルギーを要していたが、今般開発した技術は、濃縮対象の水溶液から浸透圧の原理を用いて水を自発的に取り除くことで、省エネルギーを実現。

 また、開発した浸透圧物質は、濃縮処理後に水と容易に分離できるため、再利用が可能。

 同技術は、化学品や医薬品の製造、廃液処理、レアメタルの回収等への適用が考えられる。水の再利用、天然資源の持続可能な利用と廃棄物による環境負荷の低減も見込めるため、循環型社会形成への貢献も期待できる。

 今回、東芝は、低温・非加圧で濃縮処理が可能な正浸透膜法に着目した。

 正浸透膜法は、物質の「濃度が低い水溶液」と「濃度が高い水溶液」を浸透膜で仕切ると、水が濃度の低い水溶液から濃度の高い水溶液へと膜を通過して自然に移動し、濃度を均等に保とうとする現象を利用した濃縮方法。

 従来の逆浸透膜法の消費エネルギーが約4kWh/m3であるのに対し、正浸透膜法の消費エネルギーは約1kWh/m3といわれており、消費エネルギーを1/4に削減することができる。

 東芝は、この正浸透膜法において、濃度の高い水溶液に注入することで水の自発的な移動を促進させる浸透圧物質を独自に開発し、省エネルギーな高濃縮処理と高い水分離性を実現した。

 開発した浸透圧物質が溶け込んだ水溶液(浸透圧溶液)は、事前に吸収させたCO2を脱離することで水と浸透圧物質が分離するため、浸透圧物質は繰り返し利用することが可能。(東芝)
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