“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術ニュース●JAXAと清水建設、「金属積層造形を用いたロケット液体燃料タンク製造技術」に関する共同研究を本格化

2024-01-24 09:40:26 |    機械工学
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と清水建設は、JAXAの「革新的将来宇宙輸送システム研究開発プログラム」のオープンイノベーションによる共創体制の枠組みのもと、「金属積層造形を用いたロケット液体燃料タンク製造技術」に関する共同研究を進めているが、このたび、第1ステージとして積層造形技術の基礎的な成立性を確認できたため、将来の大型タンクへの適用に向け、サブスケール供試体の試作に向けた検討をスタートする。

 同共同研究は、次期基幹ロケットや民間主導による新たな宇宙輸送システムに向け、ロケット構造の抜本的な低コスト化を実現するため、清水建設が保有する金属積層造形(Additive Manufacturing:AM)のWAAM技術(Wire-Arc Additive Manufacturing:アーク溶接による溶接ビードをロボットアームにより積層することで、立体的な造形を達成する技術)と、JAXAが保有する宇宙輸送システム技術を組み合わせることで、アルミ合金製液体燃料タンク等の大型構造体を低コストかつ短期間で製造する技術の確立を目指すもの。

 2022年7月、同プログラム第2回研究提案募集(RFP)の課題解決型研究として採択され、これまでに小型部分要素試作により板厚や造形速度、品質、造形品の機械的特性の評価・実証を行ってきた。

 今後はこれまでの成果を踏まえ、サブスケール供試体の試作に向けた積層造形装置の整備や、造形プロセスの確認等を行い、供試体の試作を通して造形精度や品質安定性などの検証を行う。

 さらに、清水建設では、地上用途としてこの技術を建設材料の製造にも活用していく。<宇宙航空研究開発機構(JAXA)>
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●科学技術ニュース●東北大学と米国 ロスアラモス国立研究所、き裂で超音波が3次元的にどのように散乱するかを捉える計測技術を開発

2022-05-31 09:34:20 |    機械工学
 東北大学 大学院工学研究科の小原 良和 准教授らの研究グループは、以前より、米国 ロスアラモス国立研究所との国際共同研究により、超音波フェーズドアレイを用いた3次元超音波映像法PLUSの開発を進めているが、この度、計測精度向上の鍵となる散乱波を3次元的に捉える観察法の開発に成功した。

 同技術の活用により、これまで熟練者の経験に頼っていた検査を科学的根拠に基づいて最適化し、材料欠陥の新たな超音波検査装置の開発も可能になる。

 これにより、航空機、自動車、発電プラント、橋、トンネル、高速道路など多くの分野において、超音波検査のき裂測定精度を高め、安全・安心で持続可能な社会への貢献が期待できる。<科学技術振興機構(JST)>


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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「メイカーのための ねじのキホン」(門田和雄著/技術評論社)

2022-04-27 09:33:17 |    機械工学







<新刊情報>



書名:メイカーのための ねじのキホン

著者:門田和雄

発行:技術評論社

 メイカームーブメントにより、若い世代の方々にとって「ものづくり」が身近になった。同書ではそうした方々に、機械工学の教育者である著者が、やさしくていねいに、ねじの基本となる知識をまとめて説明している。とりあえずこの1冊を持っておけば、ねじの調べ物には困らない、といった事典的な使い方も可能。
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●科学技術ニュース●慶應義塾大学と産総研、デュアルコム分光を用いた平板光学材料の超高精度な屈折率・厚さ計測手法を開発

2022-02-04 09:34:21 |    機械工学
 慶應義塾大学大学院理工学研究科の住原花奈(現在は修了)、同大学理工学部物理学科岡野真人元専任講師(現防衛大学校准教授)、渡邉紳一教授、産業技術総合研究所物理計測標準研究部門光周波数計測研究グループの大久保章主任研究員、稲場肇研究グループ長の研究グループは、平板材料の厚さと屈折率を、同時に極めて高精度に計測する技術を開発した。

 光学レンズをはじめとした光学素子の設計には、材料を構成する物質の屈折率を正確に決定することが不可欠。また、光学レンズ加工前の平板材料の正確な厚さの決定も重要。

 今回、光の位相変化量を正確に直接計測できるデュアルコム分光法を用いて、平板シリコン材料の厚さと屈折率を、非接触で、多波長に対して高精度に同時計測する手法を開発した。

 同手法は、材料の屈折率を、平板形状のまま、究極的な精度で計測できる画期的なもの。今後、各種光学材料の正確な屈折率計測に応用することで、光学素子の高精度設計につながることが期待できる。

 今回の実験では環境温度の評価不足のため、シリコン平板の屈折率の相対精度は2×10-5に留まったが、測定値のばらつき(標準偏差)は4×10-6であり、精度評価の結果から、一般的な高精度の環境温度評価を行えば、最小偏角法の計測精度と同等の相対精度4×10-6が達成できると考えている。

 今後は環境温度も正確に評価しながら注意深く計測を進め、各種光学材料の正確な屈折率値を調査する。同手法を各種光学材料の精密屈折率計測に応用するとともに、デュアルコム分光法を用いたさらなる高精度物性計測に取り組む。<産業総合研究所(産総研)>
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●科学技術ニュース●産総研、スピニング加工においてAIを使ってローラーの最適な動作経路を瞬時に決定する技術を開発

2022-02-03 09:32:50 |    機械工学
 産業技術総合研究所(産総研)製造技術研究部門 素形材加工研究グループ 権藤 詩織 研究員、荒井 裕彦 テクニカルスタッフは、一枚の金属板から立体形状に成形するへら絞り(スピニング)加工において、AIを使ってローラーの最適な動作経路(ローラーパス)を瞬時に決定する技術を開発した。短時間で容易に、立体形状の高さや板厚が狙い通りの寸法となるように成形できる。

 スピニング加工は、回転する金属板の一部にローラーを押し当てて少しずつ変形させ、立体形状に成形する加工法である。プレス加工などの他の塑性加工法とは異なり、最終形状のみの金型さえあれば成形できるという特徴から、短時間での製品試作や多品種変量生産の場面で利用価値が高い。

 しかしながら、製品の高さや板厚などの寸法はローラーの動かし方ひとつで大きく変わってしまうため、狙い通りの寸法となるように加工するには、ローラーパスの決定に試行錯誤を重ねる必要があり、多大な時間と労力が必要であった。

 今回開発した技術では、少数のデータを使い、ローラーパスと寸法の関係をニューラルネットワークでモデル化し、さらに、反復解法と呼ばれる計算技法を用いて、具体的な目標仕様を実現する最適なローラーパスを瞬時に決定できる。

 これにより、一度の成形で狙い通りの寸法となるような加工が可能となる。少数のデータをAIに学習させ、目標仕様から最適加工条件を逆算して求める手法は即応性が高く、様々な素形材加工手法へも適用が期待できる。

 今後、スピニング加工において取り扱う素材や金型の寸法、材質を拡張しながら、目標形状やローラーパスの複雑化に対応した、柔軟なモデルの開発を引き続き行う。同時に製造現場での実装を試み、より製造現場に寄り添うモデル開発を行う。また、同成果は、スピニング加工のみならずその他の素形材加工技術にも原理的に応用可能である。産学官の連携により本成果を他の加工法へ適用し、データ駆動型ものづくりを展開していく。手軽に低コストで加工条件出し工程のDXを試みたいと考えている企業の支援を積極的に行っていきたい。<産業技術総合研究所(産総研)>
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●科学技術ニュース●三菱重工工作機械、金属3Dプリンターの造形サービスを拡大

2021-07-30 09:59:15 |    機械工学
 三菱重工グループの三菱重工工作機械は、レーザー金属積層造形技術を用いた"金属3D(三次元)プリンター"の試作や受託生産などといった造形サービスを拡大すうる。

 従来の大型造形物向けデポジション(DED)方式の金属3Dプリンターに加え、新たに小型造形物向けバインダージェット(BJT)方式の金属3Dプリンターをサービスラインアップに追加することで、1mmサイズの小型部品から1mを超える超大型部品まで幅広い造形物の製作に対応する。

 三菱重工工作機械が新たに導入するのは、デジタルメタル社製の金属3Dプリンター「DMP2500」。同装置が採用するBJT方式は非常に精緻な造形が可能である上、量産志向が高いという特長を持っている。

 これまで、独自のDED方式を採用した“LAMDAシリーズ”による造形サービスを提供してきたが、特長が異なる方式の装置を導入することで幅広い造形ニーズに応え、造形物に応じた最適な製造法および装置の提案・提供が可能となる。

 また、デジタルメタル社との間では、DMP2500をはじめとした同社製金属3Dプリンターの国内販売契約を2020年7月に締結。DED方式金属3Dプリンターに加えてBJT方式金属3Dプリンターも三菱重工工作機械の販売ラインアップに追加することで、同装置導入後のアフターサービスにも幅広く対応していく。(三菱重工業)
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●科学技術ニュース●NIMS、構造材料データシート発行

2021-04-08 09:37:23 |    機械工学

 物質・材料研究機構(NIMS)は、機械、構造物の強度設計における設計応力の設定や材料選択のための基盤的データとして産業界で活用されている構造材料データシートの2020年度分を6冊のデータシートを発行した。

<概要>

(1) 火力発電プラント用耐熱鋼クリープデータシートの改訂版および微細組織写真集

 シート名 : 『NIMS CREEP DATA SHEET No. 52B  発電ボイラー用ステンレス鋼管 火SUS 410J3 DTB (12Cr-2W-0.4Mo-1Cu-Nb-V) のクリープデータシート』

 シート名 : 『NIMS CREEP DATA SHEET No.M-13 ボイラ・熱交換器用炭素鋼鋼管STB410(0.2C)クリープ試験材の微細組織写真集』

(2) ステンレス鋼、アルミニウム合金の疲労データシート

 シート名 : 『NIMS FATIGUE DATA SHEET No.129 二相ステンレス鋼SUS327L1 (25Cr-7Ni-4Mo) の低・高サイクル疲労特性データシート』

 シート名 : 『NIMS FATIGUE DATA SHEET No.130 アルミニウム合金A6061-T6 (Al-1.0Mg-0.6Si) のギガサイクル疲労特性データシート』

(3) 大気曝露試験片に生成したさびの断面写真集

 シート名 : 『NIMS CORROSION DATA SHEET No.CoF-5大気曝露試験片に生成したさびの断面写真集、Fe-Cr,Fe-Ni二元系合金のさび断面 (2年曝露) 』

(4) チタン合金 (鍛造材) の極低温疲労の宇宙関連材料強度データシート(国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構と連携)

 シート名 : 『NIMS SPACE USE MATERIALS STRENGTH DATA SHEET No. 30Ti-6Al-4V ELI合金 (φ300mm鍛造材) の極低温疲労き裂進展特性データシート』

(物質・材料研究機構<NIMS>)

 

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●科学技術ニュース●NEDOと13法人、レーザー加工の課題解決に寄与するプラットフォーム「柏IIプラットフォーム」を構築

2021-03-22 09:29:53 |    機械工学

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2016年度から2020年度まで実施中のプロジェクト「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」で開発された最先端のレーザー光源や加工機を集約し、東京大学、産業技術総合研究所、三菱電機、スペクトロニクス、大阪大学、浜松ホトニクス、パナソニック、パナソニック スマートファクトリーソリューションズ、金門光波、千葉工業大学、レーザー技術総合研究所、ギガフォトン、島津製作所はこのたび、各装置が持つ加工品質の計測・評価技術やデータベースといった共通基盤技術を組み合わせることで、レーザー加工の課題解決に寄与するプラットフォーム「柏IIプラットフォーム」を構築した。

 加工ユーザーは同プロジェクトで開発された最先端のレーザー光源やレーザー加工機を容易に利用できるほか、集約されたレーザー技術と共通基盤技術、データベースの効果や適用可能性などを検証することが可能。

 NEDOと13法人は今後、レーザー加工に関する産学官協創のために東京大学が設立した「TACMIコンソーシアム」と連携し、さまざまな材質、用途での加工事例を蓄積していくことで、同プラットフォームの機能向上に取り組む。

 これにより各種装置の特性とユーザーニーズの効率的なマッチングや装置横断的な加工データ取得を実現し、効率的かつ迅速な最適加工条件の探索が可能なものづくりの実現を目指すとともに、日本の競争力強化に貢献する。

 同プロジェクトで開発したレーザー光源や加工機を、東京大学柏IIキャンパスおよび産業技術総合研究所柏センター内の柏IIプラットフォームに集約し、各業界のユーザーによるテストユースを進めている。まずは最適な加工条件を引き出すため、さまざまな材料を対象とした試験加工を行い、産業界と共有できるデータの集積を開始した。

 柏IIプラットフォームに集約したレーザー光源や加工機は、同プロジェクト終了後もTACMIコンソーシアムの枠組みを活用して運営する予定。ユーザーによるテストユースをさらに積み上げることで装置横断的な加工データ取得やユーザーニーズの把握を進めるとともに、データベースを拡充し産業界における顕在ニーズへの対応から潜在ニーズの掘り起こしまで、さまざまな課題解決の糸口となることを目指す。さらに同プラットフォームでのレーザー加工条件の探索結果を元にして、最適なレーザー加工機の産業への導入を促進することで、日本のものづくりにおける競争力強化に貢献する。(新エネルギー・産業技術総合開発機構<NEDO>)

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★科学技術ニュース★東大と産総研、プラモデルのように組み立てる超薄型半導体ひずみセンサチップ開発

2019-02-20 09:34:40 |    機械工学

 東京大学大学院新領域創成科学研究科の高松誠一准教授、伊藤寿浩教授と産業技術総合研究所(産総研)集積マイクロシステム研究センターの山下崇博主任研究員、小林健研究チーム長らの研究グループは、厚さわずか5マイクロメートルの超薄型半導体ひずみセンサチップを、実装機と呼ばれる精密組み立て装置を用いて、プラモデルのパーツのように1つずつ切り離して回路上に配置配線する技術を開発した。

 従来の半導体センサチップは、300マイクロメートル以上と厚く硬いため、ダイシングソーと呼ばれるのこぎり歯のついた装置で切り、実装機で搬送していた。

 同開発のセンサチップは5マイクロメートルと極薄であり、従来法ではチップが破壊される問題があった。そのため、プラモデルのようにセンサと枠の間に切り離し部を設け、弱く押すだけで切り離して搬送できる機械構造設計と精密組み立て技術を開発した。

 特に、切り離し部分に力が集中し、センサや集積回路部分には力がかからない構造の設計方法を確立した。

 同研究成果により、5マイクロメートルという非常に薄く、曲げることができる半導体チップの製造、組み立てが可能となり、次世代高性能フレキシブルエレクトロニクス実現への貢献が期待される。

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★科学技術ニュース★日本原子力研究開発機構 、レーザー光により自在な切断が可能な制御装置を世界に先駆け開発

2018-06-26 09:33:16 |    機械工学

 日本原子力研究開発機構は、切断性能(切れ味)の状況を反射光(レーザー照射によって発生する光)により時間とともに変化する状況を監視し、切断性能が低下する兆候を検出した場合には、レーザー出力や切断速度を調整するなど状況変化に合わせて、常に適切な切断性能の維持が可能な適応制御装置を世界に先駆けて開発した。

 この適応制御方式は、形状を認識するためのレーザースキャナ、切断性能を監視する光検出器などを外界センサーとして利用し、金属材料に対する溶断と、セラミックス材料に対する破砕の各動作を、ロボットシステムと連動して行うもので、これまでの研究により基礎基盤的な観点からの基本性能が確認された。

 この技術は原理的に、コンクリート中に鉄筋を埋め込んだビル構造物などの解体作業にも適用することが可能。

 今後は応用研究を主体としたフェーズに移行する予定。平成30年度からは、文部科学省 平成28年度補正「地域科学技術実証拠点整備事業」として採択された「ふくいスマートデコミッショニング技術実証拠点」設備を用い、レーザー溶断・破砕 適応制御装置の実機適用性能を実証していく計画。

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