“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―                 科学技術研究者   勝 未来

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■科学技術書・理工学書ブックレビュー■「べテルギウスの超新星爆発」(野本陽代著/幻冬舎新書)

2012-06-18 10:36:58 |    宇宙・地球

書名:ペテルギウスの超新星爆発―加速膨張する宇宙の発見―

筆者:野本陽代

発行所:幻冬舎

発行日:2011年1月30日第1刷発行

目次:第1章 ベテルギウスに爆発の兆候?!
          晩年を迎えたベテルギウス
          ベテルギウスに爆発の兆候?! など
    第2章 星の誕生と進化
          地球中心から太陽中心へ
          太って赤くなるのは老化現象 など
    第3章 たそがれを迎えた星たち
          彗星の番人の誤算
          客星現る など
    第4章 宇宙の扉を開く
          ミクロの世界、マクロの世界
          宇宙の過去を見る方法 など
    第5章 宇宙はどこまでわかったか
          夜空はなぜ暗いのか
          昨日のなかった日 など
    第6章 加速膨張する宇宙の発見
          謎のエネルギーの存在
          恐竜の絶滅と超新星探し など

 この書籍の筆者の野本陽代氏は、慶応義塾大学法学部卒業して翻訳業を営むサイエンスライターなのではあるが、これまで出版してきた天文学の著作を読むと専門の天文学者顔負けの博識ぶりにはただただ敬服させられる。このことは、2004年から2011年まで文部科学省宇宙開発委会委員を歴任していたことからも裏付けられる。

 そんな野本陽代氏の最新の著作がこの「べテルギウスの超新星爆発―加速膨張する宇宙の発見―」(幻冬舎新書)である。ペテルギウスとは、我々にお馴染みのオリオン座にある1等星のことであるが、このペテルギウスが近く爆発するかもしれないというニュースが世界中を駆け巡った。この星は地球から約630光年と比較的近い距離にあるので、爆発すれば満月と同じくらいの明るさになると言われている。

 明るいだけなら問題はないのであるが、爆発と同時に強力な放射線が発射され、地球がその放射線を浴びれば人類を含む地球上の生物に致命的ダメージを与えるのではないかとも言われてきた。幸い、この放射線から地球の位置がずれていたので事なきことが分った。ことほど左様に宇宙は日々激しく活動しているわけである。この本はそんな宇宙の成り立ちから、これからの宇宙がどう変化を遂げていくのかを超新星という現象を例にとり、誰でもが理解できるよう平易に解説してある。

 現在の宇宙は膨張していることを証明したことに対し、2011年のノーベル賞が授与されたが、この受賞者がまだ学生の駆け出し時代から筆者は交流を持っていたという。この宇宙膨張のいきさつを紹介する第6章などは、何か推理小説でも読んでいるような感覚に襲われる。宇宙がどう生まれ、これまで人類がそれをいかに探求し、さらにこれからの展開はどうなるのかに興味がある人には欠かせない書といえる。
(STR:勝 未来)

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■科学技術書・理工学書ブックレビュー■「電気の歴史」(高橋雄造著/東京電機大学出版局)

2012-06-11 10:45:27 |    電気・電子工学

書名:電気の歴史~人と技術のものがたり~

著者:高橋雄造

発行所:東京電機大学出版局

発行日:2011年7月10日第1版第1刷

目次:はじめに
    電気技術史年表
    第1章 古代からの電気と磁気
       1. 人類が電気を知る
       2. 天然磁石から羅針盤へ 
    第2章 近代電気学のはじめ ―静電気の時代
       1.ギルバート―近代電気学の創始者
       2. ゲーリゲから摩擦起電機へ ほか
    第3章 電池の発明から動電気の時代へ
       1. ガルバーニからボルタへ ―電池の発明
       2. 電流の磁気作用 ―エールステズの発見 ほか
    第4章 発電機と電動機
       1. ビキシの発電機
       2. 自励発電機の発明と発電機の実用化 ほか
    第5章 電信と電話 ―電気の最初の大規模応用
       1. 腕木伝信
       2. 電信の発明 ほか
    第6章 電灯と電力技術の時代
       1. 白熱電球の発明と配電事業の開始
       2. エジソン ほか
    第7章 電気技術の世界の形成と拡大
       1. ウィリアム・スタージャンと「電気・磁気年報」およびロンドン電気協会
       2. 学会と雑誌 ほか
    第8章 20世紀の社会と市民生活における電気 ―蓄音機からラジオ,テレビまで
       1. 20世紀の電気技術
       2. 生活と娯楽と電気技術 ―蓄音機(レコード),映画の発明 ほか
    第9章 半導体とコンピュータ
       1. 戦争とエレクトロニクスの進歩
       2. トランジスタの登場 ほか
    むすび ―電気技術の将来
    付録 ―電気の歴史の本
    参考文献
    図版出典
    あとがき
    索 引

  現在、わが国は原発の再稼働の是非が喫緊の課題となっている。このこと自体、現代の産業にとっては、電気エネルギーの存在なくしては、成り立たないところまで来ていることの証明にもなる。同書は、そんな電気の歴史を平易な語り口で解説してある。このため、これから電気を学ぼうとしている学生、それに電気の歴史をもう一度振り返って見たい電気の技術者、さらに電気に興味を持つか、あるいは電気の知識の必要に迫られている一般の市民・・・のいずれにも参考になる内容となっている。

 これから家庭に太陽光発電設備や電気自動車(EV)を導入しようとしている一般市民にとって、電気の知識をより知っていた方が、太陽光発電やEVに対する理解度が増し、関心も高まることに繋がる。もう電気の知識は一般市民でも欠かすことのできないテーマとなってきている。その際に同書は恰好の参考書となる。

 古代から始まって19世紀末までまんべんなく述べてあるが、特に発電機や電動機についての発達史については、詳細に解説がなされ、参考になる。通常の技術史は、難解な技術用語が目に付き、一般の読者ではなかなか読みこなすには骨が折れるケースが多いが、同書は発明者の人間性にまで一歩踏み込んで書いてあるので、あたかも一般の歴史書を読むような調子で読み通せるのがいい。

 いずれにせよ電気は、原発以外でもますます我々の生活と切っても切れない存在になってきており、誰にとっても電気の理解は重要なことになりつつある。その際に同書の果たすべき役割は大きい。巻頭に掲載されている「電気技術年表」は人類の電気の発見から現在の最先端の電気機器までを一望できる。
(STR:勝 未来)

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