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“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術ニュース●エクスフュージョン、世界初、レーザー核融合による連続運転で1秒間に10回模擬燃料に対するレーザーの連続照射実証に成功

2025-08-26 09:33:06 |    エネルギー
 エクスフュージョン(EX-Fusion)は、レーザーフュージョン基盤技術の実証研究施設において、世界で初めて1秒間に10回、模擬燃料に対して高精度にレーザーを照射し続けることに成功した。

 これは、レーザー核融合による連続運転に関する極めて重要なマイルストーンであり、今後の発電炉の商用化に向けた大きな一歩となる。

 今回の実証は、浜松市のEX-Fusion研究施設にて、自社開発のターゲット供給装置およびレーザー制御装置を用い、模擬燃料(ターゲット)に対し毎秒10回(10Hz)という高頻度でレーザー照射を行ったもの。

 この結果、照射の高精度な連続性と安定性が確認され、プラズマの継続的生成にも成功。

 これは、将来の商用炉で想定される「1秒間に複数回の燃料照射」という運転条件を実験的に満たした、世界初の成果となる。

(1)浜松施設における装置導入と連続照射環境の構築

 EX-Fusionは、自社開発のターゲット供給装置およびレーザー制御システムを浜松施設に導入し、10Hzでの安定照射を実現。これにより、長時間連続照射を見据えた運転環境の整備が本格始動した。

(2)「1時間連続中性子発生」実現に向けた課題の明確化

 初期実験を通じて、今後必要となる技術的改良項目、レーザー出力の増強、照準精度の向上、排熱処理などが明確になった。これにより、次フェーズへの移行に向けた技術ロードマップの具体化が進んでいる。

(3)レーザー核融合発電炉における工学的意義

 レーザー核融合は、理論的・実験的にエネルギー純増を確認された唯一の方式だが、連続運転の実証例は世界的にも乏しいのが現状。今回の成果は、その運転環境の技術的成立性を世界で初めて示した実証であり、社会実装に向けた信頼性の裏付けとなる。

 EX-Fusionは、今回の成果を起点として、「1時間以上の中性子連続発生」の実現を次のマイルストーンに設定。今後は、より高エネルギーでのレーザー照射、システムの長時間安定稼働、ターゲット供給精度のさらなる向上を目指して開発を進めつ。併せて、国内外の大学・研究機関・企業との連携を強化し、レーザー核融合商用炉の社会実装を加速する。<エクスフュージョン(EX-Fusion)>
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●科学技術ニュース●海上パワーグリッドと屋久島電工、電気運搬船による屋久島の再生可能エネルギーを島外輸送する事業の検証を開始

2025-08-19 09:33:01 |    エネルギー
 パワーエックス(岡山県玉野市)の子会社で電気運搬船事業を展開する海上パワーグリッド(東京都港区)と屋久島電工(東京都文京区)は、豊富な水資源に恵まれた屋久島の水力発電によって得られるクリーンな電力を電気運搬船によって種子島をはじめとする周辺離島へ運搬する事業の検証を実施することを合意した。

 日本一雨が降ると言われる屋久島は、2千メートル級の山があり、水量、落差共に大きい豊かな水力資源を抱えており、島内で使う電力のほぼ全てを水力で発電された電力で賄っている。

 海上パワーグリッドが手掛ける電気運搬船は、船に搭載した蓄電池に電気を蓄電し、電気を海上輸送することができる世界初の送電手段。

 この海上送電技術と屋久島電工が保有、運営する水力発電所から生み出される再生可能エネルギーを組み合わせることで、新たな海上電力輸送ソリューションを実現。

 現状は、内燃力発電による電力で賄われている周辺離島の脱炭素化に貢献することを目指す。

 今後、詳細な検証を進め、2028年頃の運行開始を目指す。<海上パワーグリッド>
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●科学技術ニュース●東京農工大学とJAMSTEC、分子で動く超小型コンピュータを実現

2025-07-04 09:34:44 |    エネルギー
 東京農工大学大学院工学研究院生命機能科学部門の川野竜司教授と同大学院工学府大学院生の滝口創太郎(研究当時・卓越大学院生)、鈴木春音(研究当時)、大原正行(研究当時)、同大学院GIR研究院の竹内七海特任助教、海洋研究開発機構(JAMSTEC)超先鋭研究開発部門の小宮健副主任研究員らのグループは、DNAの配列依存的な分子挙動を利用した単一分子DNAコンピューティングとナノポア(膜タンパク質やイオンチャネルによって、脂質二分子膜中に形成されるナノメートルサイズの微細な孔(ポア))技術を組み合わせ、脂質二分子膜中に埋め込まれた単一分子論理演算装置(single-molecule logic unit; sMOLU)を構築した。

 人工細胞膜内でDNAが酵素に応答してANDゲート(全ての入力がONの時のみ、特定の出力を生じる仕組み)として働くことで、リアルタイムな分子情報処理が可能になる。

 同研究成果は、医療や診断技術への応用が期待される。<海洋研究開発機構(JAMSTEC)>
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●科学技術ニュース●住友商事など、福島県阿武隈地域で国内最大の陸上風力発電所の商業運転を開始

2025-06-05 09:31:17 |    エネルギー
 住友商事、JR東日本エネルギー開発(JED)、ふくしま未来研究会、ジャパンウィンドエンジニアリング(JWE)、福島発電、清水建設、大林クリーンエナジー、レノバ、信夫山福島電力は、共同出資する福島復興風力合同会社を通じて2022年4月より建設を進めてきた、阿武隈第一風力発電所、阿武隈風力第二発電所、阿武隈風力第三発電所、阿武隈風力第四発電所について、2025年3月31日に完工し、同年4月2日よりFIP制度に基づく商業運転を開始した。

 また、同発電所で発電した再生可能エネルギー電力は、コーポレートPPAにより福島県内に事業拠点を持つ複数の企業および自治体へ供給され、売電収入の一部は福島県再生可能エネルギー復興推進協議会を通じて同発電所立地市町村などにおける地域の復興事業資金として活用される。

 阿武隈風力発電事業は、福島県が掲げる「2040年頃を目途に県内エネルギー需要の100パーセント相当以上を再生可能エネルギーで生み出す」という福島県再生可能エネルギー推進ビジョンおよび福島新エネ社会構想の下、2017年に公募で選定された福島復興風力合同会社が同県の支援事業費補助金の交付を受けて推進してきたもの。

 同発電所は、福島県田村市、大熊町、浪江町、葛尾村にまたがる阿武隈地域の稜線上に1基当たりの出力が3,200キロワットの風力発電機を46基設置した運転開始時点で国内最大の陸上風力発電所。

 総発電容量は約14万7,000キロワットとなり、年間想定発電量は約12万世帯分の消費電力量に相当する。

 同発電所は、当初FIT制度の活用を予定していたが、運転開始と同時にFIP制度に移行し、電力需要家との相対取引が可能となった。

 同発電所由来の再生可能エネルギー電力および環境価値は、住友商事が全量引き受けた上でアグリゲーター業務を担い、電力需要家にコーポレートPPAを通して供給する計画。

 年間発電電力量約3億6,000万キロワットアワーを全量取引することで需要家各社のCO2排出量削減を支援すると共に、福島県の「再生可能エネルギー推進ビジョン」や震災復興への貢献、地産地消の推進のため、各社と具体的な取り組みについて協議を進めていく。<住友商事>
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●科学技術ニュース●QST、LiSTieへ出資しフュージョンテクノロジーの社会実装を加速

2025-05-15 09:38:39 |    エネルギー
 量子科学技術研究開発機構(QST)は、研究開発成果の最大活用を図り、その普及・実用化により社会へ還元することを目的として、QSTが認定したベンチャー企業に対する支援を進めているが、今回、認定ベンチャーの成長を促進する更なる支援策として、また、フュージョンエネルギーの実現に必須なリチウム回収技術の開発と産業化を加速させるために、令和7年3月24日に認定ベンチャーであるLiSTie株式会社(CEO:星野 毅)へ出資した。

 認定ベンチャーへの出資は、QSTが平成28年に設立されて以降初めての実施となる。今回の出資は、リチウム回収技術に関するQST知財をLiSTieへ実施許諾する対価として、LiSTieから普通株式を取得する。

 LiSTieが今後開発するリチウム回収技術がフュージョンエネルギー開発に必要となる海水からのリチウム回収技術を進展させることが期待される。

 QSTはフュージョンエネルギーの実現に向けた研究開発を推進しており、その一環として燃料生成に必要なリチウムを海水中から回収するためのイオン伝導体リチウム分離法(Li Separation Method by Ionic Conductor;LiSMIC)を開発してきた。
 
 令和5年4月には統合イノベーション戦略推進会議にて策定された「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」において、“フュージョンエネルギーの産業化”が掲げられる中、QSTでは近年需要が急増するリチウム市場を睨みLiSMIC技術の早期社会実装に取り組んできた。
 
 LiSTieは、LiSMIC技術の早期社会実装を目指して、令和5年7月に創立されたQST認定ベンチャー。

 世界初のセラミックス膜を使用した超高純度リチウム回収装置であるLiSMICユニットの販売を中心としたビジネスモデルを構想している。

 LiSMICユニットは、工業廃水、リチウムイオン電池リサイクル、塩湖、鉱石、海水等の様々なリチウム源から純度99.99%の超高純度リチウムをワンパス(膜1枚を通すのみ)で回収できることが大きな特徴で、リチウムを安価に安定して供給することを可能とするもの。

 日本だけでなく、世界的な事業展開を通じてリチウムの効率的な回収と安定供給を通じて、サステナブルな未来の実現を目指す。<量子科学技術研究開発機構(QST)>
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●科学技術ニュース●東京大学と核融合開発に関わる民間企業8社、フュージョンエネルギーの早期実現に向けて社会連携講座を開設

2025-05-15 09:37:47 |    エネルギー
 東京大学およびStarlight Engine、京都フュージョニアリング、電源開発、日揮、フジクラ、古河電気工業、丸紅と他 1 社(民間企業8社)は、「フュージョンシステム設計学」社会連携講座を 2025年5月1日に開設した。

 近年、フュージョンエネルギー(水素などの軽い原子核同士が高温・高圧下で融合して別の重い原子核に変わる際に発生する「核 融合エネルギー」)の早期実現を目指し、世界中で発電実証に向けた競争 が激化している。

 日本も内閣府の「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」に基づ く取り組みを加速することで、世界に先駆けて2030年代の発電実証の達成を目指しており、民間でも Starlight Engine等が推進するフュージョンエネルギー発電実証プロジェク ト「FAST」(燃焼プラズマからフュージョンエネルギーを取り出し、そのプラズマ維持と工学的な課題を統合的に実証する世界で初めてのプロジェクト)などが始動している。

 一方で、発電実証やその先のフュージョンエネルギーの実現にはプラントの総合設計と設計 学が必要不可欠。

 フュージョンプラントの構成は、閉じ込め方式、用途(試験、商用発電、 RI 製造、工業用熱源など)、規制法・規格に大きく左右されるが、現在これらの設計を支える学術体系、技術体系はいまだ構築段階にある。

 また、技術開発のスピードを維持・加速させるためにも、フュージョンエネルギーに携わる次世代人材の戦略的な育成が喫緊の課題となっている。

 東京大学と民間企業8社は、産学連携による社会連携講座を開設し、それぞれの専門領域を集結する。そして、現在、フュージョンに関連する勉学を志している学生とともにフュージョ ンシステム設計に関する研究を推進し、これらの設計を支える学術体系および技術体系の整備とフュージョンエネルギーの早期実現を目指す。同時に、フュージョンエネルギー人材を育成し、産業界の発展に貢献していく。 <日揮>

【「フュージョンシステム設計学」社会連携講座】

 社会連携講座とは、公共性の高い共通の課題について、大学と民間企業または研究機関など の学外機関が、それぞれの技術・知見を活かして共同で研究を実施する制度。「フュージョ ンシステム設計学」社会連携講座では、核融合研究の第一人者である東京大学大学院新領域創 成科学研究科の江尻晶教授を担当教員とし、2025年4月1日に新設した同研究科附属フュージョンエネルギー学際研究センターとともに、フュージョンプラントの設計について学術としての基礎を築くとともに、フュージョンプラントを構成する以下の要素などについて、産学連携で取り組む。· フュージョンシステムの高度化に向けた革新技術の研究 · フュージョンエネルギーの多様な応用可能性の検討 · 法規制・規格基準の整備状況を踏まえた施設・機器の要件とその確立に関する検討 · その他、フュージョンエネルギーの実用化、社会実装にかかわる課題
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●科学技術ニュース●2030年代に核融合発電の実証を目指す「スターライト・エンジン」が設立

2025-04-23 09:38:36 |    エネルギー
 2030年代に核融合発電の実証を目指すフュージョンエネルギー発電実証プロジェクト「FAST」を推進する新会社「スターライト・エンジン(Starlight Engine)株式会社」が、2025年4月3日に設立した。

 フュージョン(核融合)エネルギーの早期実現に向けて世界中で開発競争が加速するなか、2030年代の発電実証を目指す民間主導の産学連携プロジェクトとして2024年11月に「FAST」が始動した。

 FASTはトカマク型を採用し、京都フュージョニアリング株式会社をプロジェクトリーダーに、日本を代表する核融合研究者と産業パートナー、国際連携パートナーが連携し、プロジェクトを推進している。

 今回、プロジェクトを一層加速させるために、FASTを推進する新会社として「スターライト・エンジン(Starlight Engine)株式会社」を設立した。

 Starlight Engineという社名は太陽や恒星の輝きの源がフュージョンエネルギーであることを表しており、「Starlight」と「Engine」を組み合わせて名付けた。

 代表者には、大手総合商社やベンチャーキャピタルを経て、現在は京都フュージョニアリングの取締役兼COOを務める世古圭が就任。

 Starlight Engineは、FASTプロジェクト全体の統括を行うとともに、今後予定される技術開発やビジネス開発、資金調達、立地選定、サプライチェーン構築などを推進していく。

 また、Starlight Engineは、商業プラントの建設を目指し、プラント技術や統合システムを海外輸出する民間事業主体となる。

 なお、京都フュージョニアリングは、産業パートナーの1社として、引き続きFASTプロジェクトに貢献していく。

 「FAST(Fusion by Advanced Superconducting Tokamak)プロジェクト」は、2030年代のフュージョンエネルギー発電実証を行う民間主導の国内プロジェクト。重水素(Deuterium)と三重水素(トリチウム:Tritium)による核融合反応(D-T)による燃焼プラズマの生成・維持を行うとともに、エネルギー変換、燃料システムを一体化したフュージョンエネルギー発電システムを実証するプロジェクト。

 プラズマの閉じ込め方式には、最も多くの研究と実験データがあり、コスト管理と技術リスク管理が可能なトカマク型を採用している。フュージョンエネルギーの商業化に向けて発電実証や技術的課題の解決を目指す。

 FASTを通じて以下の技術的課題を解決し、フュージョンエネルギーの商業化に向けて開発を加速させる。

 ①D-T燃焼の実証:フュージョンエネルギーの中核技術であるトリチウムを使用した燃焼プラズマの生成と持続、制御②エネルギー取り出しと利用:核融合反応により発生するエネルギーの取り出しと変換(発電等)と利用③トリチウム生成と燃料サイクルの実証:核融合反応の燃料となるトリチウムを増殖し、抽出、利用する技術の実証④システムインテグレーション:フュージョンエネルギーシステムを統合し、安全で持続的に運転するプラント技術の開発と実証。

 フュージョンエネルギーの技術領域は広く深いため、アカデミアや国立研究所と産業界との連携は不可欠。FASTプロジェクトには核融合研究の第一線で活躍する研究者がすでに多数参画しているが、加えて国内主要大学と共同研究契約を締結し、プラズマ設計からプラント開発まで幅広い研究開発と技術開発を進めていく。

 また、三井物産、三菱商事、丸紅、三井不動産、フジクラ、古河電気工業、鹿島建設などを含む商社、不動産会社、メーカー、ゼネコン等のJ-Fusion参加企業を中心とした産業パートナーと協力し、プロジェクトを加速させていく。<京都フュージョニアリング>
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●科学技術ニュース●QSTとNTT、世界初、大型核融合装置のプラズマ閉じ込め磁場予測に高精度なAI予測手法を確立

2025-03-20 09:34:45 |    エネルギー
 量子科学技術研究開発機構(QST)とNTTは、大型核融合装置のプラズマ閉じ込め磁場に適用するAI予測手法を確立した。
 
 QSTとNTTは、2020年に連携協力協定を締結し、世界に先駆けた革新的な環境エネルギー技術の創出をめざす共同研究を進めてきた。
 
 今回、混合専門家モデル(Mixture of Experts:MoE)という逐次変化する状況に応じて最適なAIモデルを重み付けして統合する手法を適用し、プラズマを高精度で予測する技術を確立し、世界最大のトカマク型超伝導プラズマ実験装置「JT-60SA」の実際のプラズマ閉じ込め磁場を評価した。

 その結果、磁場構造に依存するプラズマの位置や形状を実際のプラズマ制御に必要となる精度で再現することに世界で初めて成功した。

 従来の物理法則に基づく解析的な再構築手法では、逐次変化するプラズマ境界(周辺)部の位置形状の制御までが原理的に可能であったが、同手法によって、従来手法では不可能であった、プラズマの不安定性を回避するために重要となるプラズマ内部の電流や圧力の分布まで複数の制御量をリアルタイムに制御できる見通しを得た。
 
 同成果は、JT-60SAの今後の加熱実験において高温プラズマのリアルタイム制御に挑戦するにあたって有効であると共に、より大きなプラズマを少数の計測器で制御するイーターや原型炉などの核融合炉のプラズマ予測制御に繋がる画期的なもの。

 同成果を受けてQSTとNTTは、2020年に締結した連携協力協定をさらに延長することに合意し、引き続き、フュージョンエネルギーの早期実用化に向けて連携して取り組む。

 QST:プラズマ制御の知見に基づくロジックの設計や物理解析コードの提供、JT-60SA実データへの適用
 
 NTT:AIの技術提案、モデル設計

<量子科学技術研究開発機構(QST)>
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●科学技術ニュース●産総研など、天然メタンハイドレートのマクロとミクロの構造可視化に成功

2025-03-11 09:35:27 |    エネルギー
 産業技術総合研究所(産総研)エネルギープロセス研究部門 竹谷敏 上級主任研究員らは、北見工業大学 八久保晶弘 教授ら、高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所 平野馨一 教授ら、九州シンクロトロン光研究センター(SAGA LS) 米山明男 主任研究員らと共同で、十勝沖の海底から採取した天然のメタンハイドレートを非破壊構造観察、海水と共存する様子をとらえ、また、メタンハイドレートの分解過程をその場観察することに成功した。

 メタンハイドレートは、新たな国産エネルギー資源として期待されており、産総研は表層型メタンハイドレートのエネルギー資源化に向け、メタン回収・生産技術開発や海域調査、および環境影響評価を実施している。

 この回収・生産技術開発のためには、天然のメタンハイドレートの物性の理解が必要。しかし、既存の観察・分析手法では、メタンハイドレートと周囲の海水や氷との区別ができない。

 そこで、ミリメートルないしセンチメートルスケールの試料中の天然メタンハイドレートの分布(マクロスケール)を調べ、マイクロメートルスケールの内部構造(ミクロスケール)を可視化するため、位相コントラストX線CTとマイクロX線CTによる観察を行った。

 その結果、天然のメタンハイドレートは、メタンガス気泡の周囲に膜状に分布し、その際に形成されたと思われる擬似球状構造が維持されていることが明らかになった。
 
 また、メタンハイドレート分解時の経時変化を三次元観察することにも成功した。

 同研究で提案する観察手法を用いることにより、メタンハイドレートの生成・分解の挙動や堆積物の物性などの理解に寄与する。

 今後、メタンハイドレートのマルチスケール観察で得られる情報をもとに、メタンハイドレートの生成・分解挙動、堆積物の物性に関する理解を進める。

 表層型メタンハイドレートは、十勝沖だけではなく、日本近海や世界各地のメタンハイドレート分布域に見られる。他の海域のサンプルについても測定することで、海底におけるメタンの分布や生成・分解をより詳細に理解できると考えられる。

 表層型メタンハイドレートが分布する海域において、資源量の把握や環境影響評価に対して、同研究の測定方法により得られたデータが活用できると期待される。<産業技術総合研究所(産総研)>
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●科学技術ニュース●JAMSTECと産総研、暗黒の地下生態系に潜む微生物のメタノールを介した共生が天然ガス生成経路を支えていることを発見

2025-03-07 09:38:58 |    エネルギー
 海洋研究開発機構(JAMSTEC)超先鋭研究開発部門超先鋭研究開発プログラムのMasaru K. Nobu (延 優) 主任研究員、産業技術総合研究所(産総研)生物プロセス研究部門の加藤 創一郎上級主任研究員、五十嵐 健輔主任研究員、地圏資源環境研究部門の眞弓 大介主任研究員らの研究グループは、暗黒の地下生態系に潜む微生物のメタノールを介した共生が、新たな天然ガス生成経路を支えていることを発見した。

 天然ガスの主成分であるメタンは、酢酸利用アーキアや水素利用アーキアにより酢酸や水素から生成されていると考えられていた。

 一方、酢酸や水素を利用できず、メタノールなどのメチル化合物のみを利用可能な「メチル利用アーキア」が地下環境に普遍的に存在することが近年明らかとなり、メタノールもまた重要な天然ガス生成基質であることがわかってきた。

 しかし、メタノールが地下環境で供給されるメカニズムは謎に包まれていた。

 同研究では、地球深部地下に生息する未知の微生物の生理機能を調査することで、メタノールを代謝産物として生成する新奇生物代謝およびその代謝経路を世界で初めて発見し、その「メタノール生成バクテリア」がメチル利用アーキアにメタノールを直接供給することで共生的にメタンが生成されることを明らかにした。

 この発見により、メタノールが地下微生物間の共生関係を成立させる重要なコミュニケーションツールであり、メタノールを介した微生物共生が天然ガス生成に大きく寄与していることがわかった。

 この新たな天然ガス生成経路の発見は、地下微生物の活性促進による天然ガス増産など、地下エネルギー資源の有効活用技術の開発に繋がることが期待される。

 メタンは、エネルギー源、かつ強力な温室効果ガスであり、様々な環境におけるメタン生成機構を理解することは、天然ガス鉱床の探査や農地からの温室効果ガス排出削減といった技術の開発に重要となる。

 特に近年では、地下圏の微生物活性を制御・促進することで低質石炭や枯渇油田に残存する原油をメタンに変換し回収する、微生物炭層ガス増進回収技術や微生物石油増進回収技術が注目を集めている。

 同研究の成果は、そのような技術に必要な基盤的知見を提供することで、新しい地下エネルギー資源の有効活用技術の開発に繋がると期待される。<産業技術総合研究所(産総研)>
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