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■科学技術書・理工学書ブックレビュー■「ここが一番面白い!生命と宇宙の話」(長沼 毅著/青春出版社)

2014-06-03 10:34:44 |    宇宙・地球

書名:ここが一番面白い!生命と宇宙の話~たとえば、地球は水の惑星ではなかった!~

目次:はじめに
    第1章 生命はどこからやってきたのか
    第2章 人間はなぜ、人間になることができたのか
    第3章 広大な宇宙に第2の地球を探して
    第4章 人類が宇宙へと旅立つ日
    第5章 最後、宇宙は鉄になる

著者:長沼 毅

発行:青春出版社

 少し前までは、太陽系以外に地球のような惑星は、この広い宇宙を探してもなかなか探し出すことはできなかった。ところが、1995年に太陽系以外の惑星の第1号が発見されると、次々に新しい惑星が発見され、今ではその数は数百に及ぶという。何故、最近になって太陽系以外の惑星の発見が相次ぐのかというと、天体観測の技術が大幅に向上したからである。太陽系外惑星を探すことは、東京から100㎞ほど離れた富士山頂において、電球の周りを回る蚊の姿をとらえるほど困難さがあるといわれる。太陽系外惑星の発見は、これからも加速度的な速さで進められることが予測されている。太陽系外惑星とは、①恒星に極めて近い距離を公転している灼熱のガス惑星②極端な楕円軌道を持つため、恒星に近づく灼熱の夏と、遠ざかる極冬を繰り返すエキセントリック・プラネット③恒星を持たないで宇宙空間を漂う浮遊惑星④超新星爆発の後に残るパルサーから生まれる死の惑星⑤炭素を主成分とするため純度の高いダイヤモンドが大地に眠る炭素惑星・・・などがあるが、今後さらに新しいタイプの惑星の発見は相次ぐことになろう。そうなると、それらの惑星には地球のように生物が住んでいるのかどうかという素朴な疑問が生じてくる。そんな素朴な疑問に答えてくれるのが、「ここが一番面白い!生命と宇宙の話~たとえば、地球は水の惑星ではなかった!~(長沼 毅著/青春出版社)」なのである。

 著者の長沼 毅氏は、生物学者で、現在、広島大学大学院生物圏科学研究科准教授を務めている。自ら“辺境生物学者”を名乗り、地球上の辺境の地に直接出向き調査を行っているだけに、同書は説得力のある内容となっており、それが何よりも同書の強みである。「深海の高圧や火山の高温、南極の低温に砂漠の乾燥など、そういう極端な環境条件でもやっていける生き物には、必ずと言っていいほど飛び抜けた能力があり、それを知る度に、地球生物の限界についての生命観が広がっていく」と著者は言う。そんな例として、同書の「はじめに」おいて、2010年、NASA(米国航空宇宙局)が発表した「猛毒である『ヒ素』を食べて増殖する異質な生命体の発見」の話が出てくる。生命が誕生する条件とは①有機物があること②有機物を反応させる場となる液体があること③生命活動を維持させるエネルギー源があることーの3つという。NASAの発表に生物学者が沸き立ったわけは、「生体を構成する元素を置き換える」という生物の可能性が示唆されたことにある。つまり、過酷な環境下にある太陽系外惑星にも生物が存在する可能性は十分に考えられるということだ。

 この書の副題として「たとえば、地球は水の惑星ではなかった!」と書かれている。これを見て「オヤ?」と思わない人はないであろう。何故かと言うと、我々は、「地球は水の惑星だ」と子供の時から叩き込まれてきたので、今さら「地球は水の惑星でない」と言われても、そう簡単に納得するわけにはいかない。その理由について、著者の長沼氏は、次のように、いとも簡単に解説する。「地球上にある水はわずかなもの。全質量の0.02%しかありません。地球より小さい木星の衛星の方が、地球よりよっぽど水を持っています。水の量だけを考えると、地球は『水の惑星』と大見得を切るのはどうかと思います。ただ、表面が液体の水に覆われた惑星と言う分にはよいでしょう」。ここまで読んでようやく「地球は水の惑星でない」根拠を理解することができた。要するに、水は地球の表面を薄く覆っているだけの話ということだ。しかも、その水も我々が使う真水ともなると、さらに少なくなるというから話は深刻だ。地球の97%は海水で、真水はたったの3%だというのだ。さらに、その3%のうち、7割は南極とグリーンランドにある氷で、残りの3割だけが地下水であり、人類が生存していくために必要な真水なのだ。このようなことを考えると、「水」の貴重さを身に持って感じることができる。

 同書の流れは、「生命はどこからやってきたのか」に始まり、「人間はなぜ、人間になることができたのか」「広大な宇宙に第2の地球を探して」「人類が宇宙へと旅立つ日」「最後、宇宙は鉄になる」で終わる、壮大な人類史を辿っている。地球上の生命の由来は、地球そのものなのか、あるいは宇宙から運び込まれたものなのか、について誰もが理解できるよう、平易に解説がされているので、「なるほどそういうことなのか」と一つ一つ納得させられる。そして、この書がユニークなのは、生物学的な学問的アプローチに加え、「もし、宇宙人とばったり出会ったら」というようなFS的なアプローチが共存していることだ。そして、人類の宇宙への第一歩として著者は、火星を第二の地球にすることを提案している。既に、アメリカは火星に人類を送り込むプロジェクトに着手しているようであるが、昔の夢物語がそろそろ現実の課題になってきていることを、実感でる時代へと入りつつあるようだ。そんな時代に、多くの人が、地球や宇宙の正確な姿を把握しておくことが何より大切だが、同書は、これらのニーズに充分に応えられるだけの内容となっている。(勝 未来)


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