“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術ニュース●アイコムと日本無線、プライベートLTE/5Gを使ったトランシーバーシステムを構築し海外の警察・消防などへの導入狙う

2024-04-10 09:32:15 |    通信工学
 アイコムと日本無線(JRC)は、プライベートLTEを活用したトランシーバーシステムの海外販売で協業する。

 IPトランシーバーに強いアイコムとプライベートLTEシステムの構築を強みとするJRCの両社の強みを生かし、閉域網での通話システムを構築する。販売はアイコムの海外子会社3社(北米、欧州、豪州)を通じて行う。

 プライベートLTEの海外市場において日本の無線機大手2社が協業し、事業活動を推進するのは、業界初(両社調べ)の取り組み。
 
 各国の警察・消防など社会の安全を守るパブリックセーフティー分野、鉱山、電力、鉄道などの産業分野では、高速、セキュアな専用ネットワークを構築するため、次世代通信規格のLTE、5Gへの移行が進展している。

 さらに高い通信性能を持つ5Gは、自動車、ヘルスケア、スマートシティなど、幅広い分野への新しいサービスやアプリケーションの活用が期待されている。

 映像伝送、先進コンピューターテクノロジー(AI、VR、IoT)などDX化が進む現在、LTE/5Gの高速無線通信の需要の高まりに合わせ、アイコムのユーザーデバイス、通話アプリケーション技術、JRCの基地局とネットワーク技術のそれぞれの強みを統合することで、端末からインフラ、アプリケーション、サービスまでをセットにした、トータルソリューションを提供できるようになる。

 このような両社の強みとグローバル販売チャネルを組み合わせて、世界のパブリックセーフティー分野、産業分野ユーザーが抱えるさまざまな課題を解決し、多様なニーズに対して柔軟に対応するソリューションを提供する。

 今後、アイコムとJRCは、それぞれの技術を高めながら、多様な顧客ニーズに柔軟に対応することができるユニークかつ高信頼性のプライベート無線ネットワークを提供していく。共にさらなる成長を目指し、世界の市場をリードしていく。

 プライベートLTEは、携帯電話などで用いられているLTE無線通信規格を使い、公衆網とは独立した専用の無線ネットワークシステム。高い通信性能と安全、確実な通信を実現。例えば、警察・消防などの公共安全分野、工場や建設現場、山間部や海上などの公衆網の電波が届かない環境での通信に用いられる。

 IPトランシーバーは、ボタンをひとつ押すだけのシンプルな操作で、複数の相手と同時に連絡ができる従来のトランシーバー通信と同様の機能を、LTE回線(LTE公衆網、プライベートLTE)を使って広いエリアで実現できる通信端末。

 今回協力するシステムは、アイコムのIPトランシーバー端末IP503H LITEと、JRCのプライベートLTEシステムTactical LTE Box JRL-174などで構成するもの。

 アイコムは、2018年からLTEキャリア回線(公衆網)を活用したIPトランシーバーを製造している。JRCのプライベートLTEシステムと組み合わせることで、プライベートLTEトランシーバーシステムの提供が可能となった。

 また、販路としては、海外8箇所(アメリカ、ドイツ、スペイン、オーストラリア、カナダ、ブラジル、中国、ベトナム)に販売拠点をもち、売り上げの7割を海外市場で上げているアイコムの販売網を活用する。<アイコム>
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●科学技術ニュース●NECと日本オラクル、IOWNを用いた共創活動を開始

2024-04-02 09:31:29 |    通信工学
 NECと日本オラクルは、NTTの次世代コミュニケーション基盤「IOWN」を活用したNECの「大容量・低遅延」を特長とするAPN(All-Photonics Network)と、分散クラウド環境下でのデータ管理を高速・低遅延で実現するオラクルのOracle Cloud Infrastructure(OCI)を組合せ、場所を越えた新たな協働・体験の具現化に向けて共創活動を開始した。

 同共創活動の起点として、NEC我孫子事業場内にあるNEC CONNECT Labにインタラクティブなリモートライブ参加を想定した自由視点鑑賞デモ環境を、IOWNのAPNとOCIを活用して構築した。

 NECと日本オラクルはIOWNを活用し、様々な人・場所・データをリアルタイムにつなぐことにより、だれもが場所に依存せずに安全かつ能動的に参加することで多様性ある体験ができ、かつ参加者全員が同等の臨場感や一体感を実感できるインクルーシブな社会を実現するため、共創活動を開始した。

 NECは、ネットワークを活用したオープンな共創の場であるNEC CONNECT Labにおいて、IOWN Global ForumのOpen APNアーキテクチャーに対応した光伝送装置Spectral Wave WXシリーズを使用し、IOWNのAPNの「大容量・低遅延」なネットワーク環境を構築・提供する。

 日本オラクルは、分散クラウド環境下でのデータ管理を高速・低遅延、高い電力効率で実現可能なOCIをNECが構築したIOWNのAPNのネットワークと連携させ、回線遅延や通信品質をモニタリングし、サービス品質維持のためのデータ管理を行う。このOCI上で提供される運用監視サービス「Oracle Cloud Observability and Management Platform」を用いてクラウドでのモニタリングとデータ管理を行うことで、実際に事象が発生する現場にデータ処理機能を実装する必要がなくなる。<NEC>
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●科学技術ニュース●NECとNTT、世界初、12コア光ファイバーによる7,000km以上の長距離伝送実験に成功し大洋横断級光海底ケーブルの大容量化に向けて前進

2024-03-27 09:34:11 |    通信工学
 NECとNTTは、世界で初めて、標準的な外径(0.125mm)の光ファイバーに光信号の伝送路を12本設けた12コア結合型マルチコアファイバーを用いて、大洋横断級7,280kmの伝送実験に成功した。

 同成果は、将来の光海底ケーブルをはじめとする大容量光ネットワークの実現に貢献する、次世代の伝送基盤技術として期待される。

 グローバルにおける5Gの普及や分散するデータセンター間の通信増などにともない、2018年から2022年における国際インターネット通信量は年平均成長率30%で増加し、この傾向は今後も続くと予想されている。

 旺盛な通信需要に対応するため、光海底ケーブルの増設に加え、光海底ケーブルシステム当たりの伝送容量を増加するニーズが高まっている。

 既存の光海底ケーブルには、1本のファイバー内にコアと呼ばれる光伝送路を1本設けたシングルコアファイバーが用いられています。

 これに対し、ファイバーを標準的な外径から変えずに複数のコアを設けて通信容量を増やすマルチコアファイバーを用いることで、ケーブルの大容量化をめざす研究開発が世界中で進められており、NECは現在、光伝送路を2本設けた2コアのマルチコアファイバーを用いた長距離光海底ケーブルシステムの敷設プロジェクトを手掛けている。

 標準的な外径の光ファイバーにコアを増やしていくと、コアから漏れた光信号が隣接するコアの光信号に干渉し混信することで、お互いの通信品質が劣化するクロストークが発生する。

 特に長距離の伝送では、クロストークの深刻化に加え、光信号間の遅延や損失の不均一性などが原因で、送信した信号を正確に受信することが困難になる。

 今回、これらの課題に対して、NECとNTTが開発した技術は、 MIMO (Multiple Input Multiple Output)技術により受信信号の復調を実現したアルゴリズムの開発(NEC)、12コア結合型マルチコアファイバー光伝送路の開発(NTT)。

 両社はこれらの技術を組み合わせ、大洋横断級の光海底ケーブルを想定した7,280kmの長距離伝送実験を行い、12空間多重光信号のオフラインでの正確な復調に世界で初めて成功した。<NEC>
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●科学技術ニュース●NECとTOPPAN、5Gの共創活動の一環として共同実証を開始

2024-03-21 10:19:16 |    通信工学
 NECとTOPPAN ホールディングスは、5G/6G の社会実装を目指し、NECの持つ最先端のネットワーク・情報処理基盤技術とTOPPANグループが持つ様々なソリューションを組み合わせることを目的に共同実証を2024年4月から開始する。

 5Gで使用されるミリ波帯(28GHz 帯)は、大容量・高画質の情報を高速で伝送することができるため、それを活用した遠隔地の監視や、リアルタイムの高精細な動画配信、テレビ会議など様々なデジタルサービスへの拡大が期待されている。

 しかしミリ波帯の電波は減衰が大きく、かつ直進性が高いため、建造物や遮蔽物による電波が届かない不感地帯が発生し通信品質が低下しやすいという問題がある。

 これに対して、通信会社による5G基地局や中継局の増い設などの試験的な対策が講じられているが、コスト増加の抑制、設置場所の確保などの課題があり、問題の解決には至ってない。

 このような課題を解決するためNECは、ミリ波帯の利活用を目指した社会実装に向けて様々な企業や大学、団体との共創活動を展開してきた。

 一方、TOPPAN ホールディングスは、電子部品の製造で培ってきた電磁界シミュレーションを用いた設計技術や高精細なエッチング技術を活用し、電波を制御するメタサーフェス構造を有する、軽量かつフレキシブルなミリ波反射シートの開発に取り組んできた。

 今回、共創活動のもとで実施する共同実証は、2024年4月に開始する。

 具体的には、NEC CONNECT 5G Labにて、NECの28GHz帯ローカル5G基地局とTOPPANホールディングスが開発した意匠性のあるミリ波反射シートを用いて、5Gの室内電波不感エリアの解消を目指した実験を実施する。

 両社は2023年、意匠性のないミリ波反射シートによる電波通信品質改善に関し、既に事前検証を実施した。

 同実証では、実利用シーンに近い試験環境での通信品質改善の効果について検証する。

 NECとTOPPANホールディングスは今後、両社がそれぞれ保有するラボ、NEC CONNECT 5G Lab とTOPPAN DIGITAL SANDBOXをベースに 5G/6G のビジネス探索の観点で共創活動を強化していく。

 この活動を通じて、5G/6G 通信のユーザーの様々なニーズに応え、5G/6G、さらには「IOWN」による通信技術の社会実装を加速して新たな価値創出に向けた提案を行っていく。<TOPPAN>
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●科学技術ニュース●ソフトバンク、NECと米ブロードコム、仮想化によるRANのモダナイゼーションに向けた共同検証を実施

2024-03-06 09:48:34 |    通信工学
 ソフトバンク、NECおよび米ブロードコムによる買収が完了したVMwareの3社は、モバイルネットワークのフロントエンドである無線アクセスネットワーク(Radio Access Network=RAN)の仮想化による共同検証を実施し、O-RANアーキテクチャーとテレコム クラウドの融合によるRANのモダナイゼーション(システムの最新化)の実現性を確認した。

 今回の共同検証では、仮想化されたRAN(virtualized RAN、以下「vRAN」)のシステムにおいて、ソフトバンクが要件定義した汎用性の高い共通のインフラストラクチャーと、O-RANアーキテクチャーを採用したNECのvRANアプリケーション、テレコム クラウドに最適化したVMwareのvRANプラットフォームを使用した。

 共同検証で使用したvRANアプリケーションは、従来のBBU(Baseband Unit)で担っていたRANの通信機能がCU(Central Unit)とDU(Distributed Unit)に分割され、コンテナ技術により仮想化されている。

 また、O-RANアーキテクチャーを採用することで、それらはO-CUとO-DUとしてvRANプラットフォームであるO-Cloudに搭載されている。

 さらに、テレコム クラウドに最適化されたvRANプラットフォームは、クラウドネイティブ技術を採用することで、RANアプリケーションの構築と最適化を高度に自動化している。

 共同検証の結果、従来のRANシステムからvRANシステムへモダナイゼーションすることで、ネットワークオペレーションの共通化や効率化が実現できることを確認した。具体的には、O-RANアーキテクチャーを採用することで、設計・調達から構築・運用までオープンで共通化されたオペレーションが実現可能なことを確認した。また、テレコム クラウドに最適化することで、スケーラブルなRANシステムの構築・運用が可能となり、スマートで効率的なオペレーションが実現できることを確認した。<ソフトバンク>
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●科学技術ニュース●エアバス、NTT、ドコモ、スカパーJSATの4社、高高度プラットフォームの早期実用化に向けた覚書を締結

2024-02-08 09:33:50 |    通信工学
 エアバス、NTT、NTTドコモ、スカパーJSATの4社は、成層圏(上空約20km)を飛行する高高度プラットフォーム(High Altitude Platform Station:HAPS)の早期実用化に向けた研究開発、実証実験の実施に関する協力体制構築の検討を推進するための覚書を締結した。

 この覚書の締結は、HAPSの早期実用化に向けた研究開発の推進を目的としている。

 エアバスのHAPS「Zephyr(ゼファー)」とNTT、ドコモ、スカパーJSATの通信ネットワークのコラボレーションにより、HAPSの接続性およびHAPSを利用した通信システムにおける有用性の発見、および技術やユースケースの開発に向け、4社間の連携を推進する。

 4社は5Gのさらなる高度化、および6Gに向けた取り組みとして、空・海・宇宙などを含むあらゆる場所への「カバレッジ拡張」の検討を進めている。

 中でもHAPSによるネットワーク構築は空・海へのカバレッジ提供を容易に実現できることから、災害対策やイベント会場など人が密集する場所での通信容量の確保、建設現場での重機の遠隔操作などに有効であると考えられている。

 また、この「カバレッジ拡張」の実現に向け、HAPSに加え、静止軌道衛星(geostationary orbit satellite:GEO)および低軌道衛星(low earth orbit satellite:LEO)を用いた非地上ネットワーク(Non Terrestrial Network:NTN)技術が期待されている。

 4社は、GEO、LEO、HAPSなどのNTN技術を用いたアクセスサービスを「宇宙RAN(Radio Access Network)」と称し、検討を進めている。

 宇宙RANを提供して超広域カバレッジを実現することで、災害対策だけでなく、離島やへき地のエリア化、飛行機や船などの通信環境の飛躍的な改善など、利便性の向上や新たな付加価値の提供が可能となる。
 
 今後4社は、HAPSによる成層圏からの通信に焦点を当てた技術に関する研究開発に加えて、HAPSの機体開発やHAPSの運用に向けた標準化・制度化への働きかけ、およびHAPSによるネットワークサービスの商用化に向けたビジネスモデルに関する検討も行う。
 
 主な研究開発の対象として、地上の移動機との接続や基地局バックホールなどにHAPSを適用する可能性に関する検討や、HAPSを利用した通信システムにおけるさまざまな周波数帯の通信性能の評価、およびHAPSと衛星および地上基地局との連携に向けた技術的な検討を行い、宇宙RAN事業を促進する。

 また、今後は衛星・HAPSなどのNTN技術によるネットワーク構築の実証実験を視野に入れた協力体制も構築していく予定。

 なお、ドコモ、エアバスの2社は、エアバスが開発したHAPS「Zephyr S」を用いた成層圏と地上間の電波伝搬の実証試験に成功している。この実験により、HAPSによる成層圏から地上への持続的なネットワーク提供が可能であることを実証した。<NTT>
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●科学技術ニュース●NII、NTT、NTT東日本と富士通、光1波長あたり世界最長336km伝送と世界最大容量のデータ転送のフィールド実証に成功

2024-02-01 09:33:36 |    通信工学
 国立情報学研究所(NII)、NTT、NTT東日本と富士通は、光1波長あたり1.2Tbpsでの伝送では世界最長となる伝送環境を構築し、フルスループット(伝送環境で送受信可能な最大データ量)での伝送と、1組の汎用1ソケットサーバを用いた世界最大速度の1Tbps超データ転送に成功した。

 同実験は、NTT東日本の敷設済み商用光ファイバ、NTTが開発したデジタル信号処理技術およびデバイス、富士通製の次世代光伝送システム「1FINITY Ultra Optical System」、およびNIIが開発したファイル転送プロトコル「MMCFTP」(Massively Multi-Connection File Transfer Protocol)を用いて実施した。
 
 同成果は、学術通信ネットワークをはじめとする様々な高速大容量通信サービスの実現を可能とし、低コスト化や低消費電力化にも寄与するもので、今後各組織はこの成果を活用した学術通信ネットワークの更なる高度化やIOWN構想の実現に向けた研究開発を推進する。

 各組織は、2023年10月に、東京都と神奈川県の間に光1波長あたり1.2Tbpsの伝送が可能な光伝送ネットワーク環境を構築し、2種類の実験を行った。

 実験1:東京都千代田区を起点として神奈川県横浜市で光ファイバを折り返すネットワークを構成し、光1波長あたり1.2Tbpsの伝送が可能であることを確認した。実験2:1.2Tbps伝送環境下にて、1組の汎用1ソケットサーバを用いNIIが開発したMMCFTPによるデータ転送を行った。

 NIIは、世界最高性能のネットワーク基盤SINETの整備により全国の日本の研究教育の発展を支えており、今後も超高速・大容量性と低遅延性の両特長を追求していく。また、データ流通を効率的に行うためにMMCFTPをSINET利用者に幅広く提供し、その実用性を高めていく。

 NTTは、この成果を活用した大容量光伝送システムの開発により、圧倒的な低消費電力、大容量、低遅延伝送を可能とするIOWN APNの更なる高度化を目指す。

 NTT東日本は、大容量光伝送システムを用いた高速大容量通信サービスの実現を目指し、検討を進める。

 富士通は、同実証実験で得られた効果を基に、光伝送システムの大容量化や低消費電力化を実現する技術開発を継続し、ユーザーやパートナの皆様とともに、持続可能な社会の実現に貢献する。
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●科学技術ニュース●世界無線通信会議において成層圏通信プラットフォームの携帯電話基地局向け周波数帯の追加が正式決定

2024-01-11 09:39:09 |    通信工学
 アラブ首長国連邦のドバイで開催されたITU-Rの2023年世界無線通信会議(WRC-23)において、700~900MHz帯、1.7GHz帯および2.5GHz帯の追加が正式に決定された。

 ソフトバンクは、国際電気通信連合の無線通信部門(ITU-R)やアジア・太平洋電気通信共同体(APT)において、成層圏通信プラットフォーム(High Altitude Platform Station:HAPS)向け周波数帯に関する国際標準化活動を行い、HAPSの携帯電話基地局で利用可能な周波数帯の拡大の検討について、ITU-RやAPTで日本を代表して議論を主導してきた。

 今回の決定により、各国・地域でHAPSによるモバイルブロードバンド通信を導入する際に、周波数帯の柔軟な選択が可能となり、既存のスマートフォン(スマホ)などでの利用が可能になる。

 ソフトバンクは、ITU-Rの2019年世界無線通信会議(WRC-19)において、WRC-23の議題として、HAPSの携帯電話基地局向け周波数帯の拡大を目指した提案が採択されて以来、同提案の実現を目指し、ITU-RやAPTにおける議論を主導してきた。

 この過程においては、ITU-Rにおける拡張候補帯域(700~900MHz帯、1.7GHz帯および2.5GHz帯)に関する技術的研究や無線通信規則の改定案の検討に関する議論や、APTからWRC-23に提案する無線通信規則の改定案の取りまとめなどに日本を代表して積極的に参加し、今回のWRC-23の決定に大きく貢献した。

 従来、HAPSを携帯電話の基地局として利用する場合、ITU-Rが規定する無線通信規則においては、2GHz帯の携帯電話向け周波数の電波の利用が国際的に認められている一方、その他のグローバルバンドである700~900MHz帯、1.7GHz帯および2.5GHz帯などの利用は認められていなかった。

 今回のWRC-23の決定は、ITU-Rが規定する無線通信規則を改定し、2GHz帯以外のグローバルバンドにも拡張することで、各国・地域におけるHAPSの導入をより柔軟にするもの。

 この決定を受けて、今後各国・地域におけるHAPSの導入に向けた検討や、制度の整備が進むことが期待される。

 また、将来的にはより多くの国・地域において、HAPSの携帯電話基地局とユーザー間で、既存のスマホを使って通信を直接行うことが可能になる。

 特に地上の基地局ではカバーが難しい上空や離島の他、山岳地帯や発展途上国など、通信環境が整っていない場所への安定した通信ネットワークの提供や、大規模な災害によって地上基地局の通信サービスが中断した場合の、早急な通信エリアの復旧を実現できる。

 ソフトバンクは、HAPSの技術を活用して世界中の人々やあらゆるモノがつながる社会を実現するために、引き続き各国・地域の関係当局と連携および調整をしながら、HAPS向け周波数帯に関する国際標準化活動や実用化に向けた研究開発に取り組んでいく。<ソフトバンク>
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●科学技術ニュース●NTT東日本、東京大学など、バイオ研究分野へのIOWNの活用を含むリモートバイオDX実現に向けた連携協定を締結

2024-01-05 09:48:05 |    通信工学
 東京大学 大学院医学系研究科、医学部附属病院、NTT東日本、日本電子、ニコン、ニコンソリューションズは、生命科学・医学分野において今後必須となる大規模データの共有と利活用、遠隔での実験等を可能にするリモート研究環境の構築および、その基盤となる要素技術やシステム開発により、わが国における研究デジタルトランスフォーメーション(リモートバイオDX)を推進する連携協定を締結した。

 同連携協定では、多様かつ先端的なバイオ研究を推進する東京大学 大学院医学系研究科・医学部附属病院と、研究や実験で使われる機器を幅広く手掛けるニコンおよびニコンソリューションズ、日本電子、地域に根差した通信事業者であるNTT東日本の4つの機関が継続的に協力する体制を構築する。

 主に次の3つの取り組みを行うことでリモートバイオDXの実現を目指す。

 ①遠隔での研究機器操作、データ取得と解析を実現するデジタルインフラの実現

 日本電子とニコンの先端的な機器(顕微鏡、画像解析装置)を、NTT東日本が提供するAPN IOWN1.0等の高品質で低遅延なネットワークで接続することで、遠隔からでも現地で操作するのと同等の操作性を目指す。さらに取得した膨大な実験データを高速に転送し、研究者間で安全にシェアできる仕組みを開発する。

 ②遠隔での画像データ等の共有化による指導・対話・教育システムの実現

 バイオ領域の実験では、複数の専門家が1台の顕微鏡からの画像をリアルタイムで見ながら議論を行うことも珍しくない。また、操作にあたり専門知識が必要な機器も多く、その指導を遠隔で行えることは重要。リアルタイムにコミュニケーションが可能になり、遠隔地からでも同じ場所にいるかのように共同研究ができる世界(Remote World Collaboration)の実現を目指す。

 ③大規模生命科学・医学データの安全性の高い保管・移動・解析を可能にするデジタルインフラの実現

 バイオ領域では、最大でペタバイト級の膨大なデータ量を扱うことも多く、そのデータの転送は従来のネットワークの帯域だけでは不十分と言われている。また、経済安全保障の観点からも重要な実験データを安全に国内で運用・保管できる仕組み(ブロックチェーンの活用等)は研究者からも求められている。今後爆発的に増加するバイオ領域のデータを安全に格納保存できることはもちろん、データ自体を高速に転送し、かつ高性能なAIサーバを用いて解析できる仕組みを目指す。

 今後は、2024年3月に「“リモートバイオDX”に向けたキックオフシンポジウム(仮称)」を開催する。

 また、2024年度中に、世界最高レベルの顕微鏡等機器の遠隔操作ならびに、コミュニケーションのリアルタイム化に取り組み、”Remote World Collaboration” 実現に向け取組むことにしている。<NTT>
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●科学技術ニュース●ITU-T、NTTなどが推進する次世代通信基盤IOWN仕様の国際標準策定に合意

2023-12-21 09:32:49 |    通信工学
 次世代通信基盤IOWNをグローバルに普及・推進する業界団体であるIOWN Global Forum(IOWN GF)は、その代表としてNTTを通じ、国際連合傘下の標準化機関ITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)が主催した「CxO Roundtable」(2023年12月5日開催)において、IOWNの国際接続性の担保や、途上国も含めた世界展開に向けた公的標準策定の重要性を提案し、同会議に出席した世界各国のCxOならびにITU-T幹部の賛意を得るとともに、IOWN技術仕様の公的標準策定が合意された。また、IOWN GFとITUの連携を強化することについても合意された。

 国際標準化においては、先端技術分野において複数の企業などが集まって行われるフォーラム標準化(フォーラム/デファクト)と、ITUやIEC、ISOなどで行われる公的な強制力を持つ公的標準化(デジュール)がある。

 これまで、IOWN構想の実現・普及に向けては、NTT、インテル、ソニーグループの3社が設立したIOWN GFで、フォーラム標準化活動を進めてきた。
 
 今後、IOWNの国際接続性の担保や、途上国も含めた世界展開に向けて、公的標準化も両立して進める事が重要となる。

 ITU-T局長が主催するCxO Roundtableが12月5日にアラブ首長国連邦ドバイで開催された。この会議は、情報通信業界のハイレベル幹部(CxO)やITU-Tの幹部が一堂に集い、業界が今後優先して検討すべき課題や、それらの課題に関する標準化活動について今後の方向性や主要な行動分野を示すことを目的としている。

 IOWN GFの代表としてNTTより、IOWNがもたらすサステナブルな世界の実現に向けた国際接続性の担保や、途上国も含めた世界展開に向けた公的標準策定の重要性を提案した。
 
 同会議に参加した世界各国のキャリア、ベンダ、公的機関等のハイレベル幹部から、IOWNがもたらす価値やその重要性について賛意が示され、IOWN技術仕様の公的標準策定を推進することが合意された。また、IOWN検討の業界団体であるIOWN GFとITU-Tとの連携を強化することも合意された。

 今後、今回の成果を踏まえ、公的標準化と親和性の高い国際相互接続に関する技術仕様などについて、ITU-Tにて標準化活動を進めていく予定。<NTT>
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