“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―                 科学技術研究者   勝 未来

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■科学技術ニュース■産総研、市販LPGカセットボンベを使ったハンディ燃料電池システムを開発

2013-01-31 10:41:15 |    エネルギー

 産業技術総合研究所(産総研)先進製造プロセス研究部門機能集積モジュール化研究グループの藤代芳伸研究グループ長、山口 十志明主任研究員、鷲見裕史研究員は、持ち運びできるハンディ燃料電池システムを開発した。

 同システムは、マイクロチューブ固体酸化物形燃料電池(SOFC)を用いているが、電極の構造をナノレベルで制御することによって、LPGなどの汎用的で運搬が容易な炭化水素燃料を直接利用できるようになった。

 急速起動性に優れ、持ち運びができることから、災害・非常時用、アウトドア用の電源としての応用が期待される。

 SOFCは燃料電池の中で最も高い発電効率が期待されており、現在、定置用電源としての実用化が進められている。さらに、次世代自動車などの移動体用電源やポータブル電源への応用も期待されているが、通常のSOFCの作動温度は700~1000 ℃と高く、また、急速起動性が低いという問題から実用化が困難とされてきた。

 一方、近年、スマートフォンやワンセグテレビ、ビデオカメラなど小型電子機器の普及が進んできたため、商用電源や急速充電器の確保が困難な災害・非常時やアウトドアでも急速起動が可能な数W~数十Wの電源が求められるようになっている。

 しかし、現状では水素燃料の入手が困難であるため、LPGカセットボンベなどの汎用的な炭化水素燃料で発電できるSOFCの実用化が期待されている。

 今回、水素燃料やメタン燃料に比べて汎用的で運搬が容易なLPGなどの炭化水素を燃料とし、急速起動できる燃料電池システムの開発に取り組み、開発に成功したもの。

 今後は、SOFCモジュールの発電性能や耐久性の向上に取り組むとともに、燃料改質や供給制御システムも含めたハンディ燃料電池システムを開発し、災害・非常時用やアウトドア用、次世代自動車などの移動体用電源などへの応用を目指す。

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◆科学技術書<新刊情報>◆「2100年の科学ライフ」(ミチオ・カク著/斉藤隆央訳/NHK出版)

2013-01-29 10:37:02 | ●科学技術書・理工学書 <新刊情報>(2018年5月4日以前)●
 

 <新刊情報>

 

書名:「2100年の科学ライフ」

著者:ミチオ・カク

訳者:斉藤隆央

発行:NHK出版

目次:はじめに―来る100年を予言する
    1. コンピュータの未来―心が物を支配する
    2. 人工知能の未来―機械の進歩
    3. 医療の未来―完璧以上
    4. ナノテクノロジー―無から万物?
    5. エネルギーの未来―恒星からのエネルギー
    6. 宇宙旅行の未来―星々へ向かって
    7. 富の未来―勝者と敗者
    8. 人類の未来―惑星文明
    9. 2100年のある日

 2100年までに科学は私たちの生活をどう変えるのか?コンピュータ、人工知能、医療、ナノテクノロジー、エネルギー、宇宙旅行…。現在の科学技術が、近未来(現在~2030年)、世紀の半ば(2030年~2070年)、遠い未来(2070年~2100年)の段階でどのように発展し、人々の日常生活はいかなる形になるのか。物理学者ミチオ・カクが私たちの「未来」を描き出す。(NHK出版紹介文より)

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◆科学技術テレビ番組情報◆NHK「サイエンスZERO」/BS朝日「BBC地球伝説」/TBSテレビ「夢の扉+」/他

2013-01-28 10:59:23 |    ◆TV番組◆

 

<テレビ番組情報>
 
 

 NHKテレビ Eテレ  サイエンスZERO 毎週日曜日 午後11時30分~0時00分
 
 2月3日(日) 湖に眠る奇跡の推積物

 女優:南沢 奈央/サイエンス作家:竹内 薫/アナウンサー:中村 慶子/ニューカッスル大学:中川 毅

 日本の湖に、世界の科学者が驚嘆したお宝が!それは7万年にもわたって作られてきた「奇跡の堆積物」。縄文土器の年代から、マヤ文明衰退の原因まで、歴史が書きかわる!

 BS朝日     BBC地球伝説 午後8時~9時
 
 1月28日(月) 古代文明のルーツを求めて 古代ローマの興亡2
 1月29日(火) 知られざるイヌの生態に迫る!
 1月30日(水) セレンゲティ国立公園24時 動物達のサバイバルゲーム
 1月31日(木) 密着!知られざるパンダの生態

 「古代文明のルーツを求めて」(6回シリーズ)。私たち人類の文明はどのようにして誕生したのか―この壮大なテーマを探るため、約6000年前に最初の都市が生まれたメソポタミアから、ローマ帝国の崩壊にいたる歴史を6章のストーリーで検証するシリーズ。イラク、シリア、トルコ、北アフリカ、エジプト、パキスタンそしてヨーロッパを訪れ、古代文明の成立の過程を膨大な映像と工芸品からひも解いてゆく。
 
 TBSテレビ    夢の扉+ 毎週日曜 午後6時30分~7時  
 
 2月3日(日) 世界初!iPS細胞の実用化を加速させる「自動培養装置」
           ~人間の動作を完全再現し、医療分野の飛躍的発展に貢献する!~ 
 
 ドリームメーカー:川崎重工業システム技術開発センター 中嶋勝己
 
 現在、中嶋らのグループは、京大・山中教授のiPS細胞の培養法を、ロボット装置で再現し自動培養する方法の確立を進めている。約3か月間に及んだ連続培養実験もほぼ終了。果たして、人間の手で培養した細胞の機能と変わらない品質の細胞が培養できているのか?

 NHKテレビ Eテレ   地球ドラマチック 毎週土曜日 午後7時00分~7時44分

 2月 2日(土)  ライオンたちの夜

 百獣の王と呼ばれるライオンだが、夜に狩りを行うため、その詳細はこれまで謎に包まれてきた。このほど暗闇でも撮影できる特殊カメラで、狩りの一部始終を捉えることに成功。真っ暗闇の中、獲物に忍び寄り、一気に襲い掛かるライオン。チームを組み、追い立て役と仕留める役との絶妙なコンビネーションで獲物を仕留めていく。番組では、“最強のハンター”の技を子どもたちに伝えようとするライオン一家に密着する。

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■科学技術ニュース■分子科学研究所、超高速光誘起電子移動および長寿命電荷分離状態の実現に成功

2013-01-25 10:41:58 |    化学

 自然科学研究機構分子科学研究所の江東林准教授らの研究グループは、電子を与えるドナーと電子の受け手であるアクセプターからなる高分子を用いて、πカラム構造が周期的に繋がった接合システムを開拓し、超高速光誘起電子移動および長寿命電荷分離状態の実現に成功した。

 光を電気に変換するには、電子ドナーとアクセプターの界面において光励起で効率良くプラスとマイナスに電荷を分離し、その状態を長く保つことが重要。しかし、いったんは分離した電荷は容易に会合し、電荷分離状態はすぐに失われてしまう。理論的には、電子ドナーとアクセプターが電子移動可能な近い距離に位置し、かつそれぞれが独立した連続構造を形成しながら、接合していることが理想的。

 同研究グループは、電子ドナーとしてフタロシアニン、また、アクセプターとしてナフタレンジイミドを用い、縮重合反応により、電子ドナー・アクセプターからなる二次元高分子を合成した。

 この二次元高分子は、積層することにより、電子ドナーとアクセプターがそれぞれ上に来るように重なって、柱もしくは壁のようなπカラム構造を形成する。

 したがって、πカラムが周期的に繋がった接合システムを作り出すことができる。

 この周期的なπカラム接合システムは、超高速で電荷分離し、光吸収から電子移動、電荷分離までの諸過程を1.4 ピコ秒(1ピコ秒は1兆分の1秒)で完了することができる。さらに、電子移動で生じたホールと電子は、ドナーとアクセプターのπカラム中を長距離移動することができ、10 マイクロ秒(10万分の1秒)という長寿命の電荷分離状態を保つことができる。

 今回の成果は、究極のπカラム接合構造を有する材料として、次世代太陽光発電システム開発への展開が期待できる。

 

 

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■科学技術ニュース■NICTなど、ホワイトスペース利用の中長距離地域無線の実証実験に世界で初めて成功

2013-01-24 10:36:36 |    通信工学

 情報通信研究機構(NICT)、日立国際電気、アイ・エス・ビーは、テレビ放送周波数帯(470MHz~710MHz)におけるホワイトスペースを利用する中長距離地域無線(Wireless Regional Area Network)の国際標準である、「IEEE 802.22」標準規格に準拠した「基地局装置」及び「加入者局装置」の開発並びに実証実験に、世界で初めて成功した。

 同技術によって、今後、インターネット等が十分普及していない地域への有線の代替、補助回線及び災害時等緊急時における無線による通信回線確保等を目的としたホワイトスペースを利用する地域無線の技術開発が推進されることが期待できる。

 現在、米国FCCや英国Ofcom等の規制当局をはじめ、日本でも総務省において、「ホワイトスペース無線通信システム」は、実現に向け、その技術の検討等が行われている。

 この検討では、特定の利用目的のために割り当てられている周波数において、既存業務(一次利用者)への影響を回避しつつ、柔軟かつ高度に周波数を活用(周波数の二次利用ともいう)するための技術を検討することが重要な課題であり、規制当局が定めた同一チャネル及び隣接チャネルへの干渉レベル制限値を満たす通信機を開発することが、実用化に向けた大きな技術課題となっている。

 中でも、比較的干渉回避が行いやすい地方において有線の代替、補助回線として、また、災害時に通信インフラの整備が難しい場合の緊急の無線による通信回線確保等を目的として、無線LANとは異なる遠距離をサポートすることが可能であるホワイトスペースを利用する中長距離地域無線が米国で検討されている。

 米国電気電子学会(IEEE)は、世界で初めてのホワイトスペース利用通信システムの標準化として、ホワイトスペースにおける地域無線システム規格(IEEE Std. 802.22-2011)を2011年7月に発行した。

 しかし、この標準規格に準拠した無線機の開発は、欧米各国の規制及び規格が制定した機能の制限が高く、開発例がこれまでなかった。

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◆科学技術書<新刊情報>◆「図解でかんたんアルゴリズム」(杉浦 賢著/サイエンス・アイ新書)

2013-01-22 11:17:35 | ●科学技術書・理工学書 <新刊情報>(2018年5月4日以前)●

 

<新刊情報>

 

書名:図解でかんたんアルゴリズム

著者:杉浦 賢

発行:ソフトバンククリエイティブ

目次: 第1章 アルゴリズムってどんなもの?
     第2章 変数と配列
     第3章 データ構造
     第4章 アルゴリズムの基本を学ぼう
     第5章 並べ替えのアルゴリズム
     第6章 探索のアルゴリズム
     第7章 そのほかのアルゴリズム
     第8章 アルゴリズムとコンピュータ

 プログラムにとってアルゴリズムは、屋台骨となるデータの処理手順を記述するもの。この世にプログラムがあるかぎり、アルゴリズムの改良が続けられる。同書は、アルゴリズムの基礎知識を厳選し、可能なかぎりやさしくまとめたもの。読むだけで、かならずアルゴリズムのおもしろさに気づいてもらえるはず。(サイエンス・アイ新書紹介文より)

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◆科学技術テレビ番組情報◆NHK「サイエンスZERO」/BS朝日「BBC地球伝説」/TBSテレビ「夢の扉+」/他

2013-01-21 11:09:12 |    ◆TV番組◆

 
<テレビ番組情報>
 

 NHK Eテレ  サイエンスZERO 毎週日曜日 午後11時30分~0時00分
 
  1月27日(日) 電子レンジで鉄が作れる!? 未知のマイクロ波効果を活用せよ 
 
  女優:南沢 奈央/サイエンス作家:竹内 薫/アナウンサー:中村 慶子/東京工業大学教授:和田雄二

  電子レンジでおなじみ“マイクロ波”が、マジックのような現象を次々と引き起こす! 詳しいメカニズムは闇の中。でもそのパワーたるや、産業界に革命をもたらしている!

 BS朝日     BBC地球伝説 午後8時~9時
 
 1月21日(月) 古代文明のルーツを求めて 鉄器の時代
 1月22日(火) 古代文明のルーツを求めて ギリシャ文明
 1月23日(水) 古代文明のルーツを求めて アレキサンダー大王の時代
 1月24日(木) 古代文明のルーツを求めて 古代ローマの興亡1

  「古代文明のルーツを求めて」(6回シリーズ)。私たち人類の文明はどのようにして誕生したのか―この壮大なテーマを探るため、約6000年前に最初の都市が生まれたメソポタミアから、ローマ帝国の崩壊にいたる歴史を6章のストーリーで検証するシリーズ。イラク、シリア、トルコ、北アフリカ、エジプト、パキスタンそしてヨーロッパを訪れ、古代文明の成立の過程を膨大な映像と工芸品からひも解いてゆく。

 TBSテレビ    夢の扉+ 毎週日曜 午後6時30分~7時  
 
 1月27日(日) 人体の臓器や細胞を3DのCGで超リアルに再現!
                現役研修医が医学界に革命を起こす!科学も医学も可視化する最先端技術 

 ドリームメーカー:東京大学医学部附属病院 研修医/サイエンスCGクリエーター 瀬尾拡史

 瀬尾が今、挑むのは、3DでCG化した気管支を、医療技術に生かすこと。内視鏡を手にした現役医師たちによる、医学史上、画期的な試みが行われる。果たして瀬尾のCGの有用性はー?美しくも圧倒的なサイエンティフィックCGの精密な世界を、テレビ初公開!
 
NHK BSプレミアム 宇宙は驚異に満ちている「コズミック フロント」 木曜日 午後10時~10時59分

 1月24日(木) 「星空の狩人たち」

 今ブームの星空撮影。その第一人者のひとり、アメリカのランディ・ハルバーソンさんは、長いレールに高感度カメラを乗せ、地上の風景と一体となって動く、ダイナミックな星空を撮影している。「広大な平原から雲のように流れる天の川へ」「部屋の中から一面の星空へ」「一本の木を登りながら天頂の星座へ」・・・時間を凝縮した美しくも幻想的な世界は、まさに私たちが宇宙の中にいることを実感させてくれる。ハルバーソンさんの撮影風景に密着し、その驚きの撮影テクニックに迫る。
一方日本では、めったに見られない幻の赤い星を追って、寒さをこらえて観察する星空ファンがいる。一目見たら寿命が伸びると言われる赤い星は、この冬見られるか。はるか昔から私たちを惹きつけてやまない夜空の星々。人類はこの輝きに憧れ、たくさんの星座を描き、想いを馳せてきた。星を愛し、夜空に恋する人々を通して、宇宙の魅力を伝えていく。

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■科学技術ニュース■産総研、スマートデバイスで操作できる超小型バイオセンシングシステム開発

2013-01-18 11:09:43 |    生物・医学

 産業技術総合研究所(産総研)電子光技術研究部門メゾ構造制御グループは、スマートデバイスで無線操作できる超小型バイオセンシングシステムを開発した。

 各種疾病や感染症の早期・迅速診断を実現するために、検体の純度や濃度を高めるための前処理や各種バイオマーカーの蛍光色素などによる標識が不要で、短時間で検出対象を高感度に検知する方法が求められている。また、ベッドサイド診療や在宅健康管理などの実現には、より患者への負担が少なく、使いやすいポイントオブケア検査(Point of Care Testing:POCT)が必須。このため、現在、小型で簡便なPOCTシステムの開発が望まれている。

 開発した超小型バイオセンシングシステムは、光学計測器(スペクトロメーター)と操作端末(スマートデバイス)とバイオセンサーチップで構成され、タンパク質やホルモンなどの生体物質の検出に応用できる。

 光学計測器はわずか600 gと軽量で手のひらサイズであることから、どこへでも簡単に持ち運びでき、100 Vの電源があれば使用できる。

 今回、産総研の光学設計技術やデバイス化技術などの基盤技術を活かすことで、バイオセンサーの小型化とスマートデバイスによる無線操作を実現。

 今後、臨床現場でのPOCTや小規模医療施設におけるスクリーニングテスト、さらには、在宅での日常的な健康管理への応用が期待される。

 

 


 

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■科学技術ニュース■日本原子力研究開発機構、直流磁場から交流電圧を生み出す機構を発見

2013-01-17 10:36:07 |    電気・電子工学

 日本原子力研究開発機構の先端基礎研究センターの家田淳一研究員、前川禎通センター長は、磁石の内部に存在する磁壁の運動を制御することにより、時間変化しない直流磁場から交流の電圧を生み出す機構を見出した。

 近年のナノテクノロジーの急速な進展にともない、極めて微細な磁石を自在に制御することが可能となってきた。この中で、ファラデーの法則とは全く異なる新たなメカニズムによって、磁石の磁気エネルギーを直接電気エネルギーに変換して起電力を生成する方法が発見され、電子の磁気的性質である「スピン」に起因するため「スピン起電力」と名付けられている。

 今回、同研究グループは、スピン起電力のユニークな性質を用いることで、直流磁場を交流電圧に直接変換する機構を発見したもの。

 これにより、入力する直流磁場の大きさや、変換に用いる微細な磁石の形状を変えることで出力電圧の交流特性が制御可能となる。

 同成果は、磁気と電気という異種のエネルギー形態を直接結びつけた、高効率なこれまでにないエレクトロニクス分野を切り開く大きな一歩であり、待機電源が不要な電子素子などへの応用が期待される。

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■科学技術書・理工学書ブックレビュー■100分de名著「アインシュタイン『相対性理論』」(佐藤勝彦著/NHK出版)

2013-01-15 10:24:57 |    物理

書名:100分 de 名著「アインシュタイン『相対性理論』」

著者:佐藤勝彦

発行所:NHK出版

発行日:2012年11月

目次:【はじめに】 誰にでもわかる「相対性理論」の世界へ
    第1回 光の謎を解き明かせ!
    第2回 時間と空間は縮む
    第3回 驚きのエネルギー革命
    第4回 ゆがんだ宇宙 重力の正体とは
 

 今回紹介する書籍は、通常の書籍とは少々異なり、NHKテレビテキスト「100分 de 名著シリーズ」の1冊として発刊されたものである。一般には、テレビテキストは、あくまでテレビを見ながら、補足としてテキストがあるのが普通であるが、このシリーズだけは、テキストを独立した書籍として読んでもいささかの不都合がないように、周到に編集されているので、一般の書籍扱いとする。同シリーズは、紫式部「源氏物語」とか、チェーホフ「かもめ」など、主に古典文学を紹介する内容となっているが、「100分de名著」初の理系モノを扱ったスペシャル版として「アインシュタイン『相対性理論』」が企画された。20世紀における物理学の最大革命の一つであるアインシュタインによる「相対性理論」。しかし、その有名な論文の内容を正確に知る人は少ない。そこで、今回は、アインシュタインが得意とした「思考実験」を軸に、高度な数式を使わずして同理論を紹介しようとしたとこから、この書籍が誕生したのである。

 アインシュタインの相対性理論は、高校の教科書に載っているほど、現在では至極当たり前の理論となっている。しかし、アインシュタインが初めて相対性理論を発表した当時、この新しい理論を理解できた研究者は、世界に数人しかいなかったと言われている。それが、今日では、書店の店頭には相対性理論についての書籍は山積みされており、読者はどれを読んだらいいか、見当が付かないほど。物理学の素人が高度の内容の相対性理論の書籍を購入してみても、ちんぷんかんぷんだし、逆に物理学専攻の学生が、相対性理論の入門書を読んでも実力は身に付かない。それと、購読数を伸ばす戦略のためか、どの相対性理論の書籍にも必ず「すぐ分る」とか「誰にでも分る」とかのキャッチフレーズが付けられているから、問題だ。これらのキャッチフレーズに連れられて、購入し、家で読んでみたら「さっぱり理解できない」といったこともしばしば起きる。その点、この佐藤勝彦著「アインシュタイン『相対性理論』」は、正真正銘の「誰にも分る相対性理論」となっているところが、最大の魅力となのだ。

 第1回 光の謎を解き明かせ!では、相対とはいったいなんだろう?という謎解きから始まる。相対性理論が分りづらい一つは、相対という概念を曖昧にしたまま、本題に突入することからくることが多い。その点、初心者が陥りやすい盲点をクリアにしてから、徐々に核心に入っていくので、誰でも納得がいくのだ。「マイケルソン・モーリーの実験」も分りやすい図を使い、丁寧に解説してある。第2回 時間と空間は縮む、では、「時間」は絶対でない、ということを、例の電車の進行の図を使い、解説するので分りやすい。そして、時間の遅れを計算する式を登場させ、数値で読者を迷わせることなく、説得力充分に解説を進める。第3回 驚きのエネルギー革命では、動いている時の質量の式を示した上で、世界で最も有名な数式である、エネルギーと質量の関係式E=m×C2乗の登場で、この本の山場を迎えることになる。そして最後の第4回 ゆがんだ宇宙 重力の正体とは、ではウラシマ効果と双子のパラドックス、タイムとラベルの可能性など、摩訶不思議な世界が紹介される。

 最初にも書いたが、この書籍は、正真正銘の「誰にも分る相対性理論」となっているところがミソである。まあ、これ以上易しく書けと言われても、そう簡単には書くことはできないと思われるほどである。これは、筆者の佐藤勝彦氏の力のなせる技である。佐藤勝彦氏は、1981年にアラン・グースとほぼ同時期に、インフレーション宇宙論を提唱したことで知られる。この理論は、ビッグバン直後に宇宙が急激に膨張したことを予想した理論であり、この理論の最初の論文投稿者が佐藤勝彦氏なのである。最近になって、インフレーション宇宙論の正しさが、いろいろな実験で確かめられつつあり、もし、近いうちにインフレーション宇宙論の正しさが実証されれば、佐藤勝彦氏のノーベル賞受賞も夢ではない、とも言われている。そんな、第一級の研究者が書いた書籍だけに、内容がしっかりしたものであることは、付け加えることもない。これまで、「相対性理論の本を読んだが今一つピンとこない」という人には打って付けの本である。(勝 未来)

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