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●科学技術ニュース●東京大学など、固体中で形が変わる金属分子を発見

2024-04-16 09:34:49 |    化学
 東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻の鬼頭俊介助教、徳永祐介准教授、有馬孝尚教授、理化学研究所創発物性科学研究センターの厳正輝基礎科学特別研究員らは、高輝度科学研究センター放射光利用研究基盤センターの中村唯我研究員と共同で、GaNb4Se8という化合物において、金属分子の形が冷やすと変化する現象を発見した。

 固体中において金属イオンが分子を形成する現象はしばしばみられる。しかし、そのほとんどは規則正しく並んだイオンが、ある温度以下で寄り集まることで分子を形成するというものであった。

 同研究グループは、室温でニオブ(Nb)イオンが正四面体型の分子を形成しているGaNb4Se8に着目し、大型放射光施設SPring-8(兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す理化学研究所の施設)のBL02B1においてX線回折実験を行った。

 その結果、Nbイオンがつくる正四面体分子が低温で変形して、正三角形分子と孤立イオンに分かれる現象を発見した。
 
 さらに、正三角形分子が結晶の中で規則的に配列することで、鏡に映らないと元に戻らないキラル(右手・左手と同じように鏡に映したときに元の構造と重ねることができない構造)な状態となり、分子内のイオン間距離は約2%変化するにもかかわらず、結晶全体は0.0001%の精度で計測しても歪んでいないことが分かった。

 このような結晶全体が歪まない金属分子の変形は前例がない。

 同研究成果は、キラルな秩序に起因した物理現象の発現や、センサーやスイッチングデバイスなどの応用材料開発につながることが期待される。<理化学研究所(理研)>
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