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●科学技術ニュース●国立極地研究所とNICT、太陽風の観測値からオーロラの広がりや電流の強さを瞬時に予測可能なエミュレーを開発

2024-05-17 09:35:08 |    宇宙・地球
 国立極地研究所の片岡龍峰准教授、情報通信研究機構(NICT:エヌアイシーティー)の中溝葵主任研究員、統計数理研究所の中野慎也教授、藤田茂特任教授の研究グループは、南北両半球のオーロラの広がりや電流の強さを瞬時に予測する新しい手法を開発した。

 オーロラの輪を再現する物理シミュレーション結果の膨大な計算データを用い、物理シミュレーション結果を模倣する機械学習エミュレータSMRAI2(サムライ2)を開発することで、オリジナルの物理シミュレーションの約100万倍の高速化に成功し、これまで30日かかっていたものを数秒で出力できるようになった。

 高速なエミュレータを用いることで多数のシナリオを生成することができ、それに基づく現況分析や確率的な予測など、高度な宇宙天気予報への発展が期待できる。

 同研究では、NICTが宇宙天気予報の一環として運用しているオーロラ電流系の物理シミュレーションREPPU改良版で計算された、数年分の入出力データを機械学習の学習データとした。

 Echo State Network(ESN)という時系列機械学習モデルを訓練することで、REPPU改良版のオーロラ電流系の計算結果を高度に再現するエミュレータSMRAI2(サムライ2)を開発した。

 SMRAI2は、任意の太陽風時系列データを入力として与えることで、南北両半球のオーロラオーバルの広がり、その時間変化、オーロラ電流の強さを表すAE指数などを瞬時に出力できる。

 オリジナルの物理シミュレーションREPPUと良く似た計算結果を得るために、約100万倍の高速化に成功し、これまで30日かかっていたものを数秒で出力できることが、SMRAI2の最大のメリット。

 SMRAI2のパフォーマンスを示す例として、例えば、人為的に作成した太陽風を一定時間与え続けることで、太陽風に対応して規則的に変化するオーロラの電流系パターンが、ほぼ完全に再現されることは、従来の経験モデルの上位互換であることを意味する。

 また、実際に観測された複雑に変化する太陽風を与えることで、非常に複雑なオーロラジェット電流の時間変化も再現される。

 今後、SMRAI2のメリットである高速性を活かして、わずかに異なる様々な太陽風データの入力によって結果にどれほどばらつきがでるのか、という評価をリアルタイムで行うアンサンブル予測や、リアルタイム観測データとエミュレータの結果をデータ同化手法によって補正を行うことで現実により近い予測を選び出すなど、高度な宇宙天気予報の発展が期待できる。<情報通信研究機構(NICT)>
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