“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術ニュース●JAMSTECなど、小惑星リュウグウの水に満ちた化学進化の源流と水質変成の証拠を発見

2024-07-16 09:31:50 |    宇宙・地球
 海洋研究開発機構(JAMSTEC)海洋機能利用部門 生物地球化学センターの高野 淑識上席研究員(慶應義塾大学先端生命科学研究所特任准教授)、九州大学大学院理学研究院の奈良岡 浩 教授、アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェイソン・ドワーキン主幹研究員らの国際共同研究グループは、慶應義塾大学先端生命科学研究所、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社、北海道大学、東北大学、広島大学、名古屋大学、京都大学、東京大学大学院理学系研究科の研究者らとともに、小惑星リュウグウのサンプルに含まれる可溶性成分を抽出し、精密な化学分析を行い、水と親和性に富む有機酸群(新たに発見されたモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、ヒドロキシ酸など)や含窒素化合物など総計84種の多種多様な化学進化の現況と水質変成の決定的な証拠を明らかにした。

 その中には、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、ピルビン酸、乳酸、メバロン酸などのほか、有機―無機複合体であるアルキル尿素分子群を含んでおり、物理因子と化学因子のみが支配する化学進化の源流が明らかになった。

 次に、二つのタッチダウンサンプリングサイトの有機物を構成する軽元素組成(炭素、窒素、水素、酸素、硫黄)および安定同位体組成、分子組成、含有量などの有機的な物質科学性状を総括した。

 同成果は、初期太陽系の化学進化の一次情報を提供するとともに、非生命的な有機分子群が最終的に生命誕生に繋がる進化の過程をどのように導いたかという大きな科学探究を理解する上で、重要な知見となる。

 小惑星リュウグウの水質変成の歴史は、同報告の親水性分子群の性状のほか、二次鉱物群や変質した岩脈の観察によっても支持される。

 これらの知見を比較検討するため、これから注目すべき調査研究として、NASA主導のOSIRIS-REx探査機による炭素質小惑星ベンヌ(Bennu)の地球帰還サンプルは重要な対象。筆者らは、国際的なサンプルリターンミッションが、非生命的な分子進化を探求する極めて重要な科学機会であると考えている。

 一方、日本でも、JAXA主導の火星衛星サンプルリターン計画「MMX」を含め、新たな太陽系物質科学の国際プロジェクトが進行している。

 同成果の鍵の一つは、元素および分子レベルの先鋭的な分析技術と先進的な物質科学の相乗効果。このような技術基盤は、領域を超えた学術界への波及に限らず、性状未知サンプルの品質検定等の社会的な要請、革新的な研究開発を生み出す新しい知識の社会還元に貢献すると考えられる。<海洋研究開発機構(JAMSTEC)>
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ●科学技術ニュース●東大発の... | トップ | ●科学技術書・理工学書<新刊... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

   宇宙・地球」カテゴリの最新記事