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●科学技術ニュース●住友林業と京都大学、世界初の木造人工衛星を完成させJAXAへ引き渡し宇宙での運用へ

2024-05-31 09:47:00 |    宇宙・地球
 住友林業と京都大学は、2020年4月より取り組んできた「宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)」で、約4年かけて開発した木造人工衛星(LignoSat)を完成させ、6月4日にJAXAへ引き渡すこととなった。

 完成した木造人工衛星は、1辺が100mm角のキューブサットと呼ばれる超小型の衛星で、NASA/JAXAの数々の厳しい安全審査を無事通過。世界で初めて宇宙での木材活用が公式に認められた。

 宇宙空間での運用に向け2024年9月に、米国フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げ予定のスペースX社のロケットに搭載し国際宇宙ステーション(ISS)に移送する。

 ISS到着から約1か月後に「きぼう」日本実験棟より宇宙空間に放出される予定。

 今後は木造人工衛星から送信されるデータ解析を通じ、木の可能性を追求し木材利用の拡大を目指す。

 今回の木造人工衛星の開発は2022年3月~12月までISSの船外プラットフォームで実施した木材宇宙曝露実験をはじめ、地上での振動試験、熱真空試験、アウトガス試験など様々な物性試験の結果得られたデータに基づいて行っている。

 木材宇宙曝露実験では温度変化が大きく強力な宇宙線が飛び交う過酷な宇宙の環境下でも、割れ、反り、剥がれ等はなく木材の優れた強度や耐久性を確認している。

 その他の地上試験でも木材は宇宙飛行士の健康や安全、精密機器や光学部品などに悪影響を及ぼさないことが明らかになった。数々の実験、試験を経てNASA/JAXAの審査に合格したことで、宇宙空間での木材活用の安全性が証明された。

 木造人工衛星がNASA/JAXAの安全審査に合格し、宇宙空間での木材利用が認められたことは宇宙業界にとっても木材業界にとっても非常に貴重な1歩。持続可能な資源である木の可能性を広げ、更なる木材利用を推進する上で大きな意義がありる。

 ISSから放出後は、木造構体のひずみ、内部温度分布、地磁気、ソフトエラーを測定し、京都大学構内に設置された通信局にデータを送信する計画。今後はこの木造人工衛星から得られる各種データの分析を進める。

 京都大学は今回のLignoSat1号機の開発ノウハウと運用データを、これから計画を進める2号機の設計や2号機で計測を検討するデータの基礎資料としていく。

 住友林業は、今回の開発を通して得られた知見をさらに分析し、ナノレベルでの物質劣化の根本的なメカニズムの解明を目指す。このメカニズムを解明することで木材の劣化抑制技術の開発、高耐久木質外装材などの高機能木質建材や木材の新用途開発を推進する。従来は木材が使われていなかった箇所での活用、例えばデータセンター施設等への木材利用の拡大に繋げ、林業界、木材業界の発展に貢献する。<住友林業>
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