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●科学技術ニュース●北海道大学など、グリーンランドのアイスコアにより産業革命前から現在にかけての夏季積雪融解量が増加したことを解明

2024-01-19 09:33:52 |    宇宙・地球
 北海道大学低温科学研究所の川上薫非常勤研究員、飯塚芳徳准教授、的場澄人助教、北見工業大学の堀彰准教授、金沢大学環日本海域環境研究センターの石野咲子助教、国立極地研究所先端研究推進系の藤田秀二教授、青木輝夫特任教授、川村賢二准教授、名古屋大学大学院環境学研究科の藤田耕史教授、植村立准教授、弘前大学大学院理工学研究科の堀内一穂准教授らの研究グループは、2021年に掘削したグリーンランド氷床南東部アイスコアの高精度年代スケールを構築し、産業革命前から現在にかけての夏季積雪融解量が北極域の温暖化に伴い増加したことを解明した。

 近年、北極域では地球全体を上回るペースで気温が上昇している。

 今回研究グループは、複数の物理・化学的な解析から、グリーンランド氷床南東部のアイスコアの1799年から2020年にかけての時間スケールを、半年解像度という高精度での確立に成功した。

 そして確立された年代を元に過去221年の降水量と夏季融解層の厚さを復元した。

 の結果グリーンランド南東部では、年降水量は過去221年間にわたり減少も増加も示さず有意な傾向は見られなかったたが、融解層の厚さは北極域の温暖化に伴い19世紀から21世紀にかけて増加していることが明らかになった。

 同研究結果は、産業革命(1850年)前から現在において、温暖化によりグリーンランドの内陸高地で夏季積雪融解量が増加していることを実証した。

 今後、得られた地上真値を用いた長期間の領域気候モデルや衛星観測データの検証から、地球気温の将来予測の精度を高めることが期待される。

 1年のずれもない時間解像度で復元された産業革命前から現在までの降水量と夏季積雪融解量の構築は、地上真値として衛星観測、再解析気温データ、気候モデル分野など他分野の多くの領域で利用可能な実測データを提供できる。

 同研究の成果からグリーンランド南東ドームの降水量は1.04m yr-1であることが分かったが、この地域の気候モデルによる降水量の推定には誤差が2m yr-1もあるのが現状。

 今後は、このアイスコアで提示された降水量や夏季融解量の地上真値を用いた計算を進めていくことで、気候モデルの精度向上と地球温暖化のメカニズムの理解向上につながり、地球温暖化の将来予測の精度を高めることが期待される。<国立極地研究所>
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