はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

運動会

2007-09-19 18:19:10 | はがき随筆
 阿久根地区老人クラブの運動会が、小学校の体育館で行われた。
 班長の母は応援である。私が競技に出ると喜んで手をたたいていた。汗かきの私の背中をハンカチでふいたり、うちわであおぎ世話を焼いてくれた。
 「まあお母さんと一緒でよかなあ」
 「私は早く母と死別したから、うらやましい」
などと声をかける人もいた。
 館内を見回す。亡父は8年間、ここに校長として勤務していた。
 「由井ちゃん、よく来たね。お母さんも楽しそうだね」。過ぎる風に、優しかった父の声を聞く。
   阿久根市 別枝由井(65) 2007/9/19 毎日新聞鹿児島版掲載

遠花火

2007-09-18 08:01:54 | はがき随筆
 「わあ! きれい!」。夜空にまるで魔法使いが絵を描いているようだ。船上から見た鹿児島市の花火大会。垂水港から鹿児島港に向かって船から見た花火は真っ暗闇の夜空をパンパンと焦がす。多彩なデザインで楽しませてくれる。隣の女子高校生は「わあ!」と歓声を上げる。たまたまお盆の墓参りに帰省した私に8月18日、50年ぶりに鹿児島の花火大会との出会いがあった。息子5人を皆花嫁さんにバトンタッチしたばかり。子育てが終わった空しい心を癒してくれた。さあ! 残りの命を花火のように輝かせて生きよう。自分のための人生スタート。
   山口県光市 中田テル子(61) 2007/9/18 毎日新聞鹿児島版掲載

敬老プレゼント

2007-09-17 16:38:05 | アカショウビンのつぶやき

私は真っ赤な腕カバーをいただきました。






 鹿屋キリスト教会の婦人会は毎年、手作りの敬老プレゼントを教会員と、全国の信友に贈ります。今年も酷暑の8月はじめから制作スタート、かわいい「ミニ腕カバー」を、9月4日に発送しました。
 対象は70歳以上、もちろん私も対象者ですが、ご奉仕できる幸いを感謝しつつ制作に励みました。100組の腕カバー作りは、まるで縫製工場のような賑やかさ。直線縫いはまかせて! と、ガンガンミシンを踏む人、刺しゅうが得意な人は色とりどりの刺しゅうを楽しみ、糸切りの始末は私が! とそれぞれ得意の腕を発揮して楽しい奉仕が続きました。
 あの人この人のお顔を思い浮かべながらお便りを書き、きれいにラッピングされたプレゼントは全国に飛んで行きました。今、ぼつぼつお礼状が届いています。
ああ、今年もお元気だったよかった! と感謝しつつお便りを読ませていただいています。
 さて次は「クリスマス・タペストリー」です。貼り絵の色紙や、クリーニングハンガーで作ったハート形タペストリーなど、婦人会員のアイディアは独創的で驚かされます。さあ今年も期待し祈りつつそろそろ準備を始めましょう。

敬老の日を前に

2007-09-17 15:57:28 | はがき随筆
 東京や旧満州への進学を断念させた母。当時、母を恨んだりしたが養子が3代続いた家系。また、ようやく授かった息子を手放す気にはなれなかった心情。今更ながら有り難く思うこのごろ。兵役で内地部隊だったけど、やりたくなかったと思う。復員した時、母は驚喜した。以来、教職。県下を転々としたが、両親を喜ばせることは充分でなかった。後悔先に立たず、悔やまれてならない。3人の子供はそれぞれ成人、独立。家内と2人、静かに余生を暮らしているが、年をとるにつけ2人で半人前。敬老の日を前に、母の思いを痛感している毎日である。
   薩摩川内市 新開 譲(81) 2007/9/17 毎日新聞鹿児島版掲載

夢見る夢

2007-09-16 21:48:53 | はがき随筆
 最近よく夢を見る。日常生活にまつわるもので、はっきり覚えている夢だ。若いころに見た夢とは大違い。
 若いころの夢は、あれは何だろうと思う光景や奇妙な体験、思い出そうとしても思い出せない不思議な夢。
 はっきりと覚えている夢も多い。感銘を与えてくれた本の主人公になったり、プロ野球・長島選手を追い抜いた勇気百倍の夢も見た。
 もう日常生活に起因する小さな夢しか見られないのか。
 秋の夜長、若いころの「希望に満ちたでっかい夢」を見たい。いや必ず見てやるのだ、と……。
   鹿児島は 鵜家育男(62) 2007/9/16 毎日新聞鹿児島版掲載

真夏のルビー

2007-09-15 09:11:29 | はがき随筆
 菩提樹コンサートの帰り、農業センターへ足をのばしフェアで中粒の梅を買って塩づけにした。表の畑に自生繁茂するシソをとり塩もみ、とった梅酢につけて土用の日に干す。
 うっすらとした梅にシソを絞りかけたり、まぶしたり、くり返すうち梅はシソ色に存分に染まった。
 まさしく真夏のルビーである。その天然のなせる着色のみごとさに驚嘆する。
 祖母も母も毎年、このルビー色をたのしみ今日、私にリレーしてくれた。炎暑のかなたから「よくできたね」と声がする。
   鹿児島市 東郷久子(73) 2007/9/15 毎日新聞鹿児島版掲載

長かった10日間…

2007-09-14 22:38:35 | アカショウビンのつぶやき
 切除した二つのポリープの組織検査の結果がやっと分かりました、ながーい10日間でした。
「異常は見られませんでした」との先生の言葉に、「どうもありがとうございました」と深く頭を下げ、付き添ってくださったM姉妹と抱き合って喜びました。この喜びは体験した者でないと分からないでしょう。

「一個のポリープは癌化しやすいタイプだったので、これから年に一回は内視鏡検査を受けましょうね」と。
次は心臓の検査をうけねばなりません。指摘事項はもう一つあり、沢山の宿題を頂いた人間ドックでしたが、この機会を頂いたことを感謝せずにはおれません。
まだまだ生きて成すべき事があるんだよ! と言われているようです、一日一日を大切に、生きていきましょう。
案じてくださった皆様に感謝します、有り難うございました(*^o^*)


ご汁

2007-09-14 07:37:44 | はがき随筆
 いつものひじき煮を作るため水煮大豆を買いに行ったら、水に浸した生大豆を見つけた。遠い昔、母がよく作ってくれたご汁を思い出し買ってきた。台所の奥から大きいすり鉢とすりこぎを引っ張り出し、よく洗って新聞紙を広げて載せ準備OK。床に座り大豆を丁寧にすりつぶす。時々ピッと飛び出すのがいて、つまみ入れてまたすりつぶす。息子が帰ってきて「少し丸いのがあった方が楽しいよ」と言う。私も、ご汁を飲みながら丸いのがあると何かしらうれしかったものである。リウマチの不自由な手で母がすりつぶしている姿をふと思い出すひとときだった。
   出水市 川頭和子(55) 2007/9/14 毎日新聞鹿児島版掲載

心の肥満

2007-09-13 07:53:39 | はがき随筆
 座席に体が沈み込む。押し寄せてくる波に飲まれるようにおぼれそうだ。立つことができない。クラシックコンサートで、なじみ深いビバルディの曲に。
 島に戻ってきた。生徒の合唱コンクール。ビデオ係の私は器を失いそうだ。一人一人が体いっぱいに大きな声を出して歌っている。
 食べ物のおいしい喜界島。ただでさえメタボリック症候群の気になる私。
 私は太る。おいしい食べ物に。私は太る。美しい音楽に、美しい魂の響き合いに。太れ、太れ、どんどん太れ、私の心。
   喜界町 福崎康代(44) 2007/9/13 毎日新聞鹿児島版掲載

私の秋

2007-09-12 22:03:13 | アカショウビンのつぶやき
 エアコンを入れても、ガーゼケット一枚で過ごした数ヶ月だったが、一昨日から急に秋の気配が深まってきた。夜は肌寒さを感じ、とうとう布団を引っ張り出す。
でも昼間は30度を越す暑さ…。この時期は長袖から、ノースリープまで一日のうちに何回もお召し替えとなる。
加齢と共に体が耐えうる温度差の許容範囲が小さくなり、この頃は極端な暑がりの寒がり屋になったみたい。

40年前、長男の出産を前に切迫流産で入院し、クーラーもない病室でふうふう言いながら過ごした事があった。
9月12日、やっと秋の訪れを感じさせる涼しい風が窓から吹き込み、生き返ったように嬉しかったことを思い出す。その時から私の秋は9月12日。

四季の移ろいは確実に巡ってくる。
少々落ち込んだ日々ももう終わりにしよう!
なんて、自分を励ましているアカショウビンです。


ピンクのハンカチ

2007-09-12 08:03:17 | はがき随筆
 デパートは全館、夏物一掃でにぎわっている。
 特に目的もなく、ぶらぶらしながらタオルコーナーに立ち寄った。「ラッキー」。3割引だと素直に喜んだ。
 以前から心ばかりのお礼をと思っている人たちにと、ハンカチを品定めした。若い人の好みを探すのは少々おぼつかないが、桜貝のような淡いピンク系に決めた。3割引も手伝ってか、同じ種類を8枚も購入する気前の良さである。
 そして1枚ずつ袋に入れてもらった。喜んでくれるかなー。郵便配達の可愛いお姉さんの顔が浮かぶ。
   鹿児島市 竹之内美知子(73) 2007/9/12 毎日新聞鹿児島版掲載

えっ、近くが火事だったの (*_*)

2007-09-11 13:04:48 | アカショウビンのつぶやき
 母親の一大事を気遣い、久しぶりに帰省した息子と、退院後初めての外出。疲れた体を休めようと横になったとき、近くで、ピーポーピーポーとけたたましい音。
我が家は消防車の出動の経路に当たるため、いつも聞かされるサイレンにいちいち驚いてはいられない。「ああ、またか…」と、うとうとしていると何故か息苦しい。
また近くで塵焼きをやってるなと窓を閉め切り、ぐっすりとお昼寝タイム。
すっきり目ざめてから息子の話を聞くと、我が家の近くが火事だったらしい。近いけど、心配なさそうだったから起こさなかったよ…と。

ああ、怖い!
よく夫に「あんたは焼け死ぬまで目が覚めないのじゃないか」と笑われた私だが…。
住宅火災警報器は、しっかりつけたけれど、これじゃどうしようもないか…。
「しっかりしてよ!」と心配そうな息子は今朝帰りました。
また独りの気楽な(強がりかな)生活に帰ったアカショウビンです。

戦場の兵たち

2007-09-11 12:33:55 | はがき随筆
 敵と銃火を交える時、いつも犠牲の出るのが第一線の戦場である。常に死線にある兵士たち。難攻不落と言われた大陸再前線の陣地攻略作戦。ある要所の突撃路探索決死隊が江崎軍曹以下3名に下令され、私もその一人として約400㍍前方の目的地まで死角を求めて進出。集中銃火の中、早く成果をと焦るが突破口の間隙は全くない。そのうち軍曹は撤収を指示し、各個前進で帰隊。残念な結果を報告する無念の軍曹。その後、部隊はなぜか攻撃中止、引き揚げとなった。理由など兵の知る由もない。「救援の敵部隊接近中」と撤収行軍の兵に伝わってきた。
   鹿屋市 森園愛吉(86) 2007/9/11 毎日新聞鹿児島版掲載

ラジオ深夜便

2007-09-10 13:03:50 | 女の気持ち/男の気持ち
 眠りつけずに机に向かう。深夜の2時だ。若いころから早寝早起きだった。早起きと言ってもまあ5時か6時と言う話。ところが還暦を超えて、4時が常態となっあた。3時のこともある。
 就寝するのは9時前後で、これは四半世紀変わらない。目覚めが早まった。つまりは睡眠する体力の息切れだろう。
 午前0時過ぎにトイレに起きて、再び寝つけない。それでもベッドでもぞもぞして、いかばかりと時計を見る。まだ1時半。えいっままよ、と起き上がって階下の洗面所に下りる。顔を洗う。昼間は湯のような水道水がひんやりしている。
そうして机に向かっているのである。
 パソコンを立ち上げ、ポケットラジオのスイッチをひねる。
 窓を開け放つと、すだく虫の声。網戸が傷んでいるのか蛾が飛び込んでくる。
 今年の「はがき随筆」のファイルを開く。末尾は16㌻を示す。投稿済あり、未投稿あり、没になったものも多い。
 死屍累々か、とぶぜんとなる。サビシノ、ココロノ、シーボルト。深夜、老人の独り言。物狂おしいものだ。
 ラジオからは、沖縄の島唄が響く。先夜は南沙織や天地真理の曲だった。
夜明け前の今この時、全国で幾万幾十万のリスナーが耳を傾けているのだろう。眠らない仲間たち……。
   長崎県大村市 高塚鎮昭(61)毎日新聞鹿児島版
   「男の気持ち」掲載

トマト

2007-09-10 12:33:22 | はがき随筆
 背丈より伸びたトマトのてっぺんに小さな実が赤く熟れている。夏野菜も終わりだ。
 今年は7本のトマト苗を品種を変えて植えた。成長期の葉は同じように見えたが、実がなり出すとそれぞれの特徴が見えた。とんがり柿のような実が充実したフルーツトマト、香り豊かで酸味とうま味のある桃太郎。早くから収穫できた瑞栄の実は大きく、サラダの器にして盛り、食卓を彩った。酸味と甘さを凝縮したミニトマトは本当においしかった。
 いろいろな品種を楽しめるのも家庭菜園のよいところ。
   出水市 年神貞子(71) 2007/9/9 毎日新聞鹿児島版掲載