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はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

メッセージ

2007-05-01 08:01:37 | はがき随筆
 風のまだ冷たい春の海。
 「はぎはら みきこ」。弟が砂浜に大きく私の10歳の娘の名を書いた。
 娘、三希子も棒を拾ってきて、自分の名を書いた。そしてすぐに、「かまだ まさつぐ君」と、大きく私の弟の名を書き、急いで「はぎはら ゆうこ けんざい(健在)」と書いて、ニヤリと笑った。
 弟も笑い、私も笑い、娘も笑いころげた。波が、ざぷーん、ざぶーんと大きく音を立てて、そんな私達の人生を応援しているよ、と言ってくれたように感じた。砂の上の3人の名は仲良く、しばらくそこにあった。
   鹿児島市 萩原裕子(54) 2007/5/1 毎日新聞鹿児島版掲載

ワニも姫も?

2007-05-01 07:50:27 | かごんま便り
 南さつま市の海岸線をドライブしながら国名勝指定の双剣石一帯や鑑真和上の上陸地などを楽しんだ。これらの名所、旧跡は写真付きでガイドブック、各種の観光案内などに掲載されている。その通りの素晴らしい景観と、興味を持たせてくれる土地だった。
 初めての土地では、人との触れ合いや、思い出づくりも楽しみの一つ。今回は2個の貝殻が記念の品となった。坊津歴史資料センター「輝津館」でいただいた。入館すると、色とりどりの貝殻が用意してあり、気にいったものをもらえる。
 近くの海岸から拾ってきたそうた。決して珍しいものではないけれど、貝殻を通して歓迎する気持ちが感じられ、うれしかった。私は長い年月で白くなった円すい状のクボガイと、細長くて茶色の筋が入っているイモガイを選んだ。
 館内には地域の歴史や民俗が豊富な資料で紹介してある。その中に「金毘羅府」があった。明治4年に二夜三日かけて、海上の安全を祈った護符だった。
 香川県の金刀比羅宮。昔は金毘羅大権現とも言われていた時期がある。海上安全の信仰で有名だ。薬師如来を守る十二神に宮毘羅大将がいる。インドのガンジス川に住むワニを神格化した神だそうだ。サンスクリット語は「クンピ(ビ)ーラ」。何だか「こんぴら」と発音が似ている。
 いろいろな説があるが、川の神様が日本に来て成長し、海上安全の神様になったと考えたら面白い。坊津は古くから海外との窓口であっただけに、ワニの神様もここから上陸したのかもしれない。
 また、もらった貝殻からは竹取物語に出てくる「燕の子安貝」を連想した。中国には竹取物語の原型ではないかとされる「竹姫」の話がある。姫が出す難題「火鼠の皮衣」など共通する部分も多い。案外、姫の話も坊津から日本に入り独自の物語づくりをしたのかも、と考えた。
 今回は飛躍した推測ばかりになった。笠沙などの地名は古事記や日本書紀にも残っており、実際にそう思わせる地域だった。二つの貝殻は支局の机の上に飾っている。
         ◇  ◇  ◇  ◇
 5月から斎藤毅記者が北九州市の西部本社に、内田久光記者が山口県の周南支局に転勤し、福岡本部から加藤学記者、久留米支局から福岡静哉記者が着任します。よろしくお願いします。
   毎日新聞鹿児島支局長 竹本啓自 2007/5/1掲載