はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

5日間の試練

2007-03-20 11:31:23 | はがき随筆
「美術展の手本です。……12日に到着の事……」
 師からの速達だ。5日間しかない。まず筆と墨を選び、神を広げる。手本を参考にし文字のイメージ。
 夫と共に体調を崩し、冴えない気分で一向にやる気がなく無理をせず3ヶ月が過ぎた。
 突然の速達で弾かれたように心が揺れた。師の心遣いに感謝。
 友人たちは完成の由。自分は5日間でいつもの元気を取り戻し、皆の後を追いたいと一輪挿しの緋寒桜に目を注ぐ。
 素朴な良寛の句を空書で書く。
   薩摩川内市 上野昭子(78) 2007/3/20 掲載

今年もお別れ…の季節

2007-03-19 16:11:26 | アカショウビンのつぶやき














 一緒に歌った仲間がまた今年も…。
 
 明後日はお彼岸なのに今日は冷たい雨でした。しばらくお休みだったHさんも見えて、久しぶりに去年の「お母さんコーラス」で発表した曲、懐かしい「初冬」を歌いました。コンサート直前は週4回も練習したのに半年ぶりに歌うと、ちょっと怪しいかな…、転出されるお二人は今日が最後の練習。あの日の緊張を思い出しながらハモリました。
 練習後は、皆さん手作りの料理でランチタイム、アッと言う間に楽しい時間は終わってしまいました。 

Sさん、Kさん、さようなら。団の重要メンバーとしてお世話下さり本当に有難うございました。
でもね、ソプラノ二人・同時退団は辛いなあシクシク。

新しい土地で新しい仲間たちといつまでも歌い続けて下さいね。
ゆかこちゃんも元気でね。

   ちょっぴり寂しい、アカショウビンです。

千の風になって

2007-03-19 15:07:22 | はがき随筆
 還暦を過ぎて間もないY子さんの死は突然だった。早朝異変が起きて、数時間の後には帰らぬ人となった。遺族の悲しみは筆舌に尽くしがたい。遺族の方々に対してお悔やみの言葉が見当たらない。何とか励ましたい。何とか癒してあげたい。だが、ただそう思うだけで、どうしてもその術が思い当たらない。悶々としていた矢先、立ち寄った書店で「千の風になって」の本が目についた。そうだ、Y子さんは死んだのではなかった。千の風になって大空を駆けめぐっているのだ。これだ、あんなに悲しんでいた娘さんにこの本を贈って悲しみを和らげてもらおう。
   志布志市 一木法明(71) 2007/3/19 掲載

総会準備スタート

2007-03-18 20:59:22 | 毎日ペンクラブ鹿児島


 今日は「毎日ペンクラブ鹿児島」総会準備のため、役員10名が鹿児島市に集まり、昼食を共にしながら話し合いました。この会が産声を上げて7年。総会も回を重ねる毎に、息の合った役員の準備は手際よくなり、遠くから近くからお集まり下さる会員を余裕を持って暖かくお迎えできるようになりました。
 平成19年度総会は、5月13日(日)10時半から、2006年・年間賞の表彰式で始まり、午後が総会です。場所は鹿児島中央駅前の、キャンセビル7階、鹿児島市勤労者交流センターの第1会議室です。みなさんいらしてくださいね。
 
さあ、2006年・年間賞の栄冠はどなたに…。
 みなさんワクワクしながら発表を待っています。
年間賞受賞者は、6月10日(日)に北九州市で開催される、グランプリ大会で、大賞選考の対象になります。鹿児島県は会員数は少ないのですが、他県にひけをとりません。これまでも、大賞、優秀賞と数々の賞をいただいています。
 みなさん、賞だけが、目標ではありませんが、ますますキラリと光る作品を生み出してくださいね。


役員会終了後、めでたく第3の人生をスタートされた会員Uさんを尋ねました。いつものUさんスマイルで鹿児島の特産品をお客様にお勧めしてました。また新しい世界のエッセイがうまれそうですね。

   こちらは冬眠からなかなか醒めないアカショウビンですが…。

思いやりの心

2007-03-18 19:24:01 | はがき随筆
 先日、病院に行った時のこと。やっと順番が来て診てもらったら、あっという間に診察が終わった。待合室に戻ったら、顔見知りの人に「さんざん待たされて、たった3分で終わり」。つい、愚痴ってしまった。その人は「3分で良かったですね」と、笑顔で言われた。その言葉を聞いてハッと気づかされ、大変恥ずかしい思いをした。もしかしたら、その人は重い病で診察を待っておられたのかもしれない。なのに優しく相手の事なきを喜ばれ、優しく応対された。その思いやりの言葉を聞いて、不満をこぼした自分が恥ずかしい。今もあの人に感謝している。
   出水市 橋口礼子(72) 2007/3/18 掲載

結婚記念日

2007-03-18 18:51:46 | はがき随筆
 双方の父母兄弟親戚に祝福されてスタートした私たち。長いようで短くも感じた泣き笑いの歳月だった。
 裸一貫職人の私の所によくぞ来てくれたものだ。10ヶ月目に長女誕生、19ヶ月目に次女出生、赤貧洗うが如し家庭だったが、家族皆元気で助け合って暮らせたので楽しい我が家だった。
 地域の方々の力添えもありがたく、この日を迎えることが出来た。感謝。
 娘たちから御祝い。特大の胡蝶蘭とケーキが届いた。嬉しくて目頭が熱くなった。夫婦で祝杯をあげた。嬉し涙っていいものである。
 七転び ありし 八起きも 50年
   大口市 宮園 続(75) 2007/3/17 掲載

写真はtacocchiさんからお借りしました。

恐ろしい春

2007-03-16 18:01:25 | はがき随筆
 チュ、チュッと蜜を吸う庭の梅のメジロ。大輪に赤い椿。見とれてしまう贅沢な早い春が来た。
 2月末、飽きずに、妻と東郷の臥竜梅を見に行った。紅梅も白梅も満開で、子ども連れや、年配の見物の人ががひしめいている。出店も並び、「梅茶をどうぞ」と勧めてもらう。実にうまい。人出が多く、慌てて帰ろうとして、車を逆進させ、叱られてしまう。
 それれでも、いっこうに春の酔いは醒めない。「浦島太郎の玉手箱」の話がチラと頭に。精いっぱいの抵抗か、花を愛でさせ、梅のメジロに酔わせ、時間も、年も忘れさせる春は恐ろしい。
   出水市 小村 忍(63) 2007/3/16 掲載

新し物好き

2007-03-15 11:45:36 | はがき随筆
 新し物好きの私は、このほどパソコンを最新の機種に買い替えた。以前の機種とは勝手が違い、なかなか使いこなせない。脳の働きが鈍ったことを突きつけられたような気がしてちょっぴり落ち込んだ。だが、ここで頓挫しては新しい物好きの名がすたるとばかりに、老眼鏡を拭き拭き4冊もの細かい活字の説明書と格闘。それでも分からず、買い求めた店に尋ねたり、メーカーに直接電話を入れたり悪戦苦闘。何とか使えるようにはなってきたが、まだ不明な点が残っている。〝女房と何とかは~〟ではないが、新しい物が楽しめるのは若いうちの話?
   西之表市 武田静瞭(70) 2007/3/15 掲載

補聴器

2007-03-14 10:09:33 | はがき随筆
 遠くから近づいてくる微かなB29の爆音。聴測班計算係だった。余切盤に各分隊からの所見を素早く記入。隊長へ「照射準備」「照射」。高射砲の弾幕、高射機関銃の火花。19歳の春から夏にかけての対空戦の様子。機種選定、高度、航速、進行方向等をやっていた耳だが、寄る年波、老化現象、難聴。薬は無いとのこと。初めは装着、調節に悪戦苦闘。会合に行ったり、日常生活に頼っている補聴器。多くの方のお世話になっている。「福耳ですね。長生きしますよ」と、形と中身は違うようだ。これからも補聴器と共に多少不自由だが毎日を過ごしていきたい。
   薩摩川内市 新開 譲(81) 2007/3/14 掲載

ああ、藪椿

2007-03-13 09:54:15 | はがき随筆
 K市の郊外の椿苑でのこと。昔ながらの、ひそやかな花の前に座り込んでいた。そこへ、冬帽にコートの衿を立てた初老の紳士が現れた。イケメンである。
 「藪椿がお好きなようですね。私もそうです。よく来るのですよ。私の名前はMです。お名前をお聞きしてもいいですか」「はい、由井と申します」
 その後、花の時期に何回か出会い、他愛のない話をした。
 住所もフルネームも知らないあの方は、今年もあそこにいることだろう。
 私は郷里で1人、あれほどの樹と巡り合えずに日を送るばかりだ。
   阿久根市 別枝由井(65) 2007/3/13 掲載

もう一つの書斎

2007-03-11 16:30:01 | はがき随筆
 久しぶりに見る月はおぼろで、ほぼ満月である。日の出までにはまだ1時間余り。光る水たまりを避けて歩く。3年前、傷心を癒すために始めた散歩も、昨年末で8600㌔を超えた。2時間かけて10㌔。体力維持、健康保持もそうだが、頭の整理に最も効果があったと思う。文字にはしないが思い出を綴ったり、はがき随筆の構想、委員会への提言もここで練り上げる。志布志湾を染める一瞬の朝日は何色というのだろう。燃えているとしか思えない。そのころには愛のメールの文案もほぼでき上がる。すてきな笑顔を思い浮かべながら。
   志布志市 若宮庸成(67) 2007/3/11 掲載

写真はT.ARさんからお借りしました。

野の鳥ながら

2007-03-10 19:17:05 | はがき随筆
 昨年来たあの鳥に違いない。今年は家の近くへ降りて来ず、テレビアンテナの先で鳴いていた。鳴き声をまねて手をたたいて合図していたら、1ヶ月もすると近くへ。しかし、アキニレの木、桃の木を伐採して隠れ家が取り去られたので、窓辺まで来ず囀る。
 墓に行けば墓地まで私についてくるようになった。暖かくなった先日、福祉館に行って門を出ると門前の桜の木に。チッチーと合図するので「あら、待ってたの」と。
 もう帰ったのかしらと2.3日多忙に紛れて帰ると、私より先に我が家の門に来てチッチー。
   鹿児島市 東郷久子(72) 2007/3/10 掲載

冬の雨が降る

2007-03-09 15:35:21 | はがき随筆
 寒い夜、みんな寝静まって、おれは畳の部屋に1人居る。
 外はしとしと冬の雨が降る。
 今日、おれは正直に生きたか。
 人を傷つけはしなかったか。
 自問……。
 自答……。
 外はしとしと冬の雨が降る。
 こんな夜は長渕剛や吉田拓郎は似合わない。
 小椋佳の〝雨だれの唄〟がよく似合う。
 「雨だれの音が優しかった……」
 ふと口ずさむ。
 外はしとしと冬の雨が降る。
   鹿児島市 川端清一郎(59)2007/3/9 掲載
 

アカジョウドリ

2007-03-08 10:08:57 | はがき随筆
 私が意識した初めての鳥はイソヒヨドリで、縁側の戸袋を塒にしていた。
 漁師はこの鳥をアカジョウドリと呼んで大切にしていた。この鳥が舞い込むと、アラに似たアカジョウという魚が釣れると信じられていたからだ。
 アルミサッシなど無い時代の事、朝夕の重い板戸の開閉は子供の仕事だった。朝早く飛び立つ鳥のために「早く縁の戸を開けろ」と、父に起こされたので、美しい声で鳴いても、子供の私にとっては迷惑な鳥でしかなかった。
 今も、その鳴き声を耳にする度に、父の声が蘇ってくるほどである。
   薩摩川内市 森孝子(64) 2007/3/8 掲載

写真はBird Watchingさんからお借りしました。

通学路に立つ

2007-03-07 15:28:28 | はがき随筆
 自治会で分担して小学生の通学路に立っている。私の当番は2月最後の月曜日で、寒い朝だった。子どもたちの朝は早い。太陽が昇る前から青信号になるのを待って走り出す。半ズボンかスカートの薄着で。「早寝早起き朝ごはん」が徹底しているのか、ほとんどの子どもが弾けるような足取りである。「あいさつあればいつも元気だね」の標語が集落のあちこちに立っている。子どもたちはそれを実行して爺さんにあいさつしてくれる。中には機嫌の悪いのがいて、「おはよう」と声をかけても返事が重い。皆が楽しい一日であるよう祈りながら帰路に着いた。
   出水市 田頭行堂(75) 2007/3/7 掲載
イラストは凪原さんからお借りしました。