はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

夏ごころ

2010-08-29 16:23:15 | 女の気持ち/男の気持ち
 毎年のことながら、この暑さはいつまで続くのかとうんざり。真っ青な空と入道雲の山には感動するが、ギラギラと燃える太陽がうらめしくなる。午後からはひたすら耐えて過ごすしかない。セミも息を殺している。力尽きて地面にひっくり返っているセミもあちこちて見かける。教材にと植えられた朝顔にはもう種ができている。
 芝生に置かれた大きなビニールプールの水はすでにぬるんでおり、子どもたちの歓声を待っている。ふと子供の声がしたような気がして、窓の外を見ると公園帰りの孫と友だち3人が水をかけっこして大騒動の始まりだ。子供たちはすぐにびしょぬれになり、押したり、体をぶっつけたりの大はしゃぎ。逃げ回るのはいつも女の子。その楽しさを分けてもらおうと、ガラス越しに私も一緒に遊びだす。急いでカメラを持ってきて、輝く夏の一瞬を切り取る。無邪気に遊ぶ子供たちの何と楽しそうなことか。
 大人はつまらないな。人目を気にして見えを張り、なかなかむちゃができない。常識が頭をよぎり、羽目を外せないことばかり。いつまでも子供でいられたらいいのにと思う。
 でも私はもう完全に手遅れ。だから心だけプール遊びに入れてもらうしかない。寝そべったり腹ばいになったり。そのうち、体も小さくなっちゃったよ。
 あれっ、いつの間にかお隣のママさんもカメラで子供たちを追いかけている。
  熊本県八代市 鍬本恵子(64) 2010/8/29 毎日新聞の気持ち欄掲載

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